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ゲームで青春をもう一度  作者: 正宗
本編
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プロローグ

作者自身も格闘ゲームが大好きなため、可能な限り取り入れていきたいと思います。

僕はゲームが大好きだ。

ゲームの事を考えていない時間の方が少ない気がする。

それで良かった。それで楽しかった。


特に格闘ゲームが気に入っていた。

理由はたくさんある。

その中でも一番大きいのは、たぶん、やり込んできた時間が、僕の中に確実に残っていることだと思う。


本日100回目のネット対戦を終えた僕は、ようやく画面から視線をはずし、ずっとアーケードコントローラーにそえていた手をはずした。

大きく息を吸って、ゆっくり吐く。

少しボーとした後、僕はノートパソコンに向かった。


「今日は全体的に安定していたな。相手から接近してきてくれるとはいえ、やっぱり画面端に居座るのはリスクが高かったんだな。だから今度はもっと…」


独り言をつぶやきながら、今日の感想を残す。


時計に目をやると、時刻は深夜2時を過ぎていた。

もうそろそろ寝ないと。

高揚していた気持ちが一気に萎えた。


目覚ましに無理やり起こされ、ダルい体に無理やり朝ごはんを入れ、1時間半かけて高校へ行き、机に座ってゲームのことを思い、また1時間半かけて家へ帰る日々。


わかっている。

嫌でも面倒くさくても、このレールからはずれないことの重要さを。

だからこそ妄想してしまう。ゲームの技術が僕を生かしてくれないかと。


布団に入り、スマホの目覚ましをセットして、部屋の電気を消す。


すぐに寝付けないのはいつものこと。

10分前までゲームに熱中していて、まだ脳が緊張状態のままだ。


この時間が一番つらい。

何度も、何度も、嫌な事を延々と思い出す。


僕にはゲームしかない。本当にゲームしかない。ゲームしかまともにできない。

このままだと、生きることに精一杯になり、ゲームができなくなり、生きる意味を失ってしまう。


未来が怖い。


ならば、いっそ太く短くという生き方もある。

もちろん、そんな勇気も根性も無い。


僕みたいな奴が多いから、ゲームの印象は良くならない。

酔っ払いの暴行、歩きタバコ、ギャンブル破産。

ほんの一部のダメ人間のせいで悪い印象が強くなっているものはたくさんある。

その理屈を頭でわかっていても、嫌悪感は拭えない。

そして、僕はそのほんの一部の人間側なんだと、自分が嫌になる。


「ゲームに嫌気がさして逃げ出したい奴がいたら、代わってやるぞ?」


馬鹿か。なんだそれ。


時間が経つにつれ、少しずつ落ち着いていき、眠りに入ろうとしている感じがする。

よかった。これでようやく寝付ける。

僕はこの眠気を離さないように、瞑想するように全身をベッドに預けた。


気持ちが落ち着いてくる。


頭を駆け巡っていた嫌な日常が、楽しかった思い出に変わっていた。

ゲームは誰でもできて楽しいから、ゲームを通してすぐに友達になれた。

素晴らしい発明だ。


ふわふわした感じがしてきた。心地が良い。

まるで、真っ暗で何もない空間を浮遊しているようだ。


こんな風にリラックスさせてくれるゲームだって存在する。

世にもっと広めたいゲームがたくさんある。


僕がもっと健康的で、身なりに気を遣えて、社交性があったら…。


そうそう、こんな感じかな。

目も前に、今まさに思い描いたような自分がいる。

姿勢が良くて、筋肉がちゃんとあって、髪が整えられていて、服をちゃんと選べている。


漂っているだけの僕は、理想の僕に軽くぶつかった。

その衝撃で、お互いが少しずつ離れていく。


はは。現実の僕はひ弱だから飛ばされてやがる。

背を丸めて来た方向へ戻っていく自分の姿を見送った。


そして僕は、忘れられない一日を迎える。

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