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黒金のバレットロード  作者: 真田 幸松
序章 [夕陽が沈む]
3/20

3話 [作戦決行]

「なんであのガキ共を仲間に入れたんだ兄貴?」

「さっきリーダーが理由言ってただろうが。お前は何も聞いてねぇな」

「俺が聞きたいことはそうじゃねぇ! 兄貴の本心を聞いてんだ!」

「そうッスよね、何かと俺たちだけの方が動きやすいのも事実ッスからね」


 3人は、ゼロが何故あの2人を入れたのかを聞きたいようだ。


「いや、さっきあの二人に話したとおりだ。俺達だけじゃ必ず何かと不便なことや、動きにくい状況も出てくるだろう。その時のに自由に動けるような奴が必要になってくるからな」

 

 三人は首をかしげ唸りながらも、自分たちのリーダーが決めたことなので文句は言えない。しぶしぶ、分かったと頷いた。


「まぁ、あいつらはきっと使える。俺はそう思っている・・・勘だがな!!」


 ((( …半分位は勘で決めたなこの人 )))


 三人は口には出さず、頭の中で呟いた。







 シートベルト着用のランプが点灯すると、輸送機が揺れ始めた。着陸の準備をしているのだろう、ガタガタと機内が揺れ始めキュッキュッとタイヤのすれる音が聞こえてくる。

 しばらくすると輸送機は停止し、後ろのハッチが開き始めた。


「到着したぞ! 1分以内に荷物を持って施設と班に別れ整列しろ!」


 迷彩服を着た軍人らしき男が叫んで指示を出している。

 僕達は荷物を持って急いで外に走りだし整列をした。並んだまま外の世界を観察してみる。なにせ施設と飛行場以外で初めての外の世界だ。

 好奇心には抗えず外の景色を観察すると、どこまでも広がるかのような草原が地平線の先まで続き、あちらこちらに木がぽつぽつと生えていた。

 しかし、感動をする暇も無く全員そろっているかの確認の点呼が始まった。



 全員がいることを確認すると、飛行機の近くに止めてあった荷台が半円のテント状になっている10台の輸送車に2班ずつ乗りこむよう指示が出る。皆それに従い続々と輸送車の中に入ってゆく。軍服の男達は後ろに停めてあった堅牢な輸送車に乗り込んでいった。


 そしてまた、行き先の分からない移動が始まった。ガタガタと車内が揺れるので眠れない。輸送機の中じゃ余り眠れなかったからこっちの方で寝ようと思ったのに…。そう思い隣を見るとレオは普通に寝ていた。レオの特技はどこでも寝られるというものだ。正直うらやましく思う。

 レオが寝ていて暇なので窓から景色を眺めることにする。外には広大な草原が広がっていた。



 しばらくすると、破壊された村や街などを通り過ぎるようになってきた。そこら中にやせ細った人や、行き倒れている人、男、女、子供、老人、皆生きるのに疲れた顔をしている。赤子を抱いた女が虚ろな瞳でこちらを見ていたので、怖くなって直ぐに頭を引っ込めた。

 少しして次は石と岩の更地が見えてくる。地雷注意の看板がそこら中に立てられていた。輸送車は鉄のフェンスの中に入っていき少しすると止まった。周りはもう日が落ち、暗くなっていた。


「よし、到着したぞ! 各自、車からテントを出し、この周辺で班ごとにテントを張れ! 明日から作業に取り掛かってもらう!」


 そう指示を出した男は、大きな4階建でコの字型の白い建物の中に入っていった。





「レオ、端っこ持ってー」

「クロ、釘が足りないから余ってる所からもらってきてってさ」

「分かった、貰って来る」


 僕達6人一班でテントを張り終え支給された栄養食材と缶詰を食べていた。月と星の明かりが周りを照らしている。

 テントに入り6人で寝袋に入り川の字で寝ていると、隣のレオが話しかけてきた。


「これから誰か知らない人たちと戦争するんだよね?」

「ここに来た理由も、今まで訓練してきた理由も、全部戦争するためだからなぁ」

「クロは怖くないの?」

「怖いよ。死にたくないもん」

「何で戦争なんかしなくちゃいけないのかな」

「さぁ、戦争の理由なんて何も教えてもらってし、聞いても殴られるだけだったから…分からないよ」


 レオと色々な事を話していたが、途中でレオが寝てしまったので僕も寝ることにした。


 次の日の朝から、土嚢か削られた場所へ土嚢の補充と、有刺鉄線をポイント毎に設置していく。そして、子供では出来ないことを大人たちがやっていく。大人たちはこの基地に100人ほどいるみたいだ。地雷の設置や武器のメンテナンスをしている人。トランプやゲーム機で遊んでい人。色々いる。僕達は黙々と作業をしていった。


 作業が終わり夜、昨日と同じでように横になっていると誰かが僕達のテントに近づいてくる。

 テントの前で止まると入り口に人影が覗き込んできた。


「クロ、レオンハルト、起きてるか? ゼロだ」


 こんな時間に何のようだろう?と思いもしたが、脱走の件についてだろうと思いレオを起こしゼロに付いていく。

 テントから少し離れた食糧倉庫裏まで行くと僕達のほかに、輸送機であった3人組みと合わせて15人ほど集っており、合わせて18人が食糧倉庫裏に集る形となった。


「リーダーが来たので今から作戦をの説明を始める。リーダーお願いします」


「おう、俺がリーダーのゼロだ。夜遅くにすまないが今から脱走の計画を説明する。作戦は明日の夜に決行する。だがその前に皆には聴いて欲しいことがある」


 ゼロはそう言って言葉を区切り、周りを見た後口を開く。


「この中には俺に弱みを握られ嫌々手伝うことになった奴らもいるだろう。だが、この話を聞いてもし、俺達と一緒についていきたいと思ったのなら明日、俺の所に来てくれ。明後日、戦争の火の手はここまで届くそうだ。作業中に大人の兵士が喋っているところを盗み聞いた。たぶんこの中にもそんな事を聞いた奴もいるだろう。そうなった場合、俺達は前線に立たされ大人たちの壁役件、自動小銃の代わりにされる。そうなった場合死ぬことは目に見えてる。俺はそんなゴミみたいに死にたいとは思わない。俺はそんな地獄に行くくらいならここから抜け出すことを選ぶ。だが、ここに来る時に見た奴もいると思うが外も地獄と変わりない」


 ゼロの話を聞き周りに少なからずの同様が走る。しかし、少し考えれば分かることだ。僕達みたいな少年兵はこの世界に腐るほどいる。逆に、僕達みたいに訓練をされてから送り出される方が珍しいのだそうだ。普通は少し銃の説明をされ撃つを方法を教えられた後は、すぐに戦地に出され殺すか殺されるかの血みどろの戦いしかない。僕達の使い道は限られてくる。


「だが、俺についてきた奴を俺は絶対に見捨てない。外が地獄だったとしてもここよりはまだマシだ、まだ外の方が希望がある。俺はそう思っている」


 僕とレオはどうしよう。そう思いながらレオと顔を向き合わせていた。


「…んじゃ、言いたいことも言い終わったし、脱走の作戦内容を説明させてもらう。脱走するにはまず2つの出口がある。北門と南門だ。俺達は昨日のうちに昼と夜の警備の数や、動きをある程度しらべた。結果的に言うとどちらも警備の数は2人づついる。どちらも同じで、交代は夜の12時と朝の6時だ。結果的に言うとどちらから出ても同じなんだが、ある班の奴が食料の受け渡しと荷積みのために大人と街に輸送車で行ったそうだ。その時出たのが北門だった。用は北門から出れば街にたどり着けることになる。そいつが言うには車に揺られながら体感で1時間程で着いたそうだ。だから今回、俺達は北門から脱走する。だが、そのためには車が必要だ。徒歩で車が1時間で着くような場所に徒歩で行けば途中でばれて殺されるか、よくて拷問だ。どっちにしたって碌な事じゃない。だからまずは輸送車を盗み、それに乗り込んでこっから抜け出す。だからまず輸送車の鍵を奪うことになる。持ってる奴はもう目星をつけてる。これがまず最初で、一番重要な作戦だ。だからこれは、俺とこの三人でやる」


 そう言ってアインス、アール、トロワが頷く。


「鍵を奪いったあと輸送車を奪うことになるが、5台の輸送車の近くには見張りが5人いる。見張りの奴らは見張り用のテントの中で暇を持て余しながらトランプかゲームでも弄くってるから見つかる可能性は低いが、輸送車が動き出した時にこいつらにばれるのは避けたい。だからまず、こいつらを始末しなきゃならない。これには鍵を取ってきた俺達を含めて10人でやる事にする。だから輸送車の近くに6人待機することになる。盗むのは一台だがもし見つかって車で追いかけられでもしたら面倒だ、残りの4台には昨日、俺達4人で盗んできた地雷をタイヤ周りに埋めて設置する。そうすれば車が発信した時に爆発してタイヤが駄目になるからな、もう追ってこれないだろう。最初に4人が地雷を設置した後、俺達に合流。その後、見張りの始末だ。計10人、この作戦には一度戦争を経験したそこの6人の奴らに入ってもらう」


 6人の少年達が前に出てくる。


「分かった、やれるだけやってやってやる」


 そう言って、6人の真ん中にいる片目にアイパッチをした少年が頷いた。


「次に、北門には見張り台が挟むように2つある。そのライトやスピーカーの電気ケーブルの切断に8人だ。電気ケーブルは地面に垂れてるから直ぐに分かるはずだ。この作戦は成功すれば御の字、ぐらいの気持ちだが、出来れば成功させて欲しい。どうせ輸送車を奪った後は地雷付きの輸送車しかないんだ、追ってこれないはずだ。この作戦には合計8人にやってもらう。この作戦には俺達に付いて来ない奴も要るだろうが、付いて来る奴は途中で拾うから安心してくれ。付いてこない奴は混乱に乗じて自分たちのテントに戻ってくれればいい。これが大体の作戦内容だ、今の内に4人組を決めといてくれ」


 そう言われ、僕とレオは隣にいた2人組みに話しかけてみた。


「いっしょに組む?僕達と一緒で2人組みならちょうど4人だけど」

「あぁ、ちょうどよかった。俺達も二人なんだ、一緒に組もう」


 あっさり決まってしまった。話しかけた少年の影で気づかなかったけど二人とも同じ顔をしていた。

 レオが興味深げに質問する。


「同じ顔だけど、双子?」

「あぁ、俺達は双子だ。俺が[バル]。この後ろの弟が[バン]だ」

「バンだ、よろしく」

「僕はクロ、こっちがレオだ。よろしくね」

「あ、レオです。よろしく」


 軽く挨拶をしていると残りの4人も決まったようだった。ゼロがそれを見計らって指示を出した。


「決まったようだな。あとは各自で静かに解散してくれ。見張りの奴らに見つかっても誤魔化すように。」


 そう言って皆は各自解散を始めた。だけどその前に聞いておかなきゃいけないことがある。

 僕はゼロの方に行き、ゼロの後ろから先ほどから引っかかっていたことを質問した。


「ゼロ、なんで僕達しかいないの?」


 そう、僕が居た施設からは僕とレオ、2人しかこの作戦にはいなかった。他の28人はこの中に入っていない。

 ゼロは僕の言葉足らずの質問を理解したのか向き合うように振り返って理由を言った。


「これ以上増えると大人に見つかってしまう危険性がある。それに誰かが俺達の脱走のことを大人に言うかもしれない。輸送車も乗れる人数が限られてくる。これ以上増やすと、そういうリスクが大きくなっていくからな、これが限界なんだ」


「残った奴は見捨てるのか?」


 いつの間にか後ろに付いて来ていたレオがゼロを睨みながら言った。


「そう思うなら残ればいい。誰も咎めないし、俺も作戦さえちゃんとしてくれれば言うことは無いしな。でも、これだけは確実だ。ここに残れば、近いうちに死ぬ。俺は…俺達は死にたく無い。誰かも分からない奴に殺されるなんて、まっぴらごめんだからな。だからここから抜け出すんだ。それにもし俺達がここから抜け出した後、俺達のように抜け出してくる奴も出てくるかもしれない。それならその時に、俺達が先に行ってそいつらを匿える場所を作って置けばいい」


 ゼロは3人の方へ振り返り、テントに戻っていった。

 僕達も静かにテントに戻った。

 その日、僕とレオは無言で眠った。





 土嚢を積みながら僕は、同じように土嚢を積んでいるレオに話しかける。昨日、深夜まで考えていたことだ。


「レオ、僕はゼロに付いて行こうと思う」


 レオは、一瞬動きを止めたが僕の方を向きながら手は止めずに話し始めた。


「…クロが行くなら僕も行くよ」


 レオはそう言って僕に笑って見せた。


「…そっか、ちょっと安心した。レオは残ると言った時は、どう説得しようかと思ってたんだ。でも、なんで付いて行こうと思ったの?」

「いや、本当はここに残ろうかと思ってたんだ。皆のことは置いていけない、裏切れない、そう思ってた。でも、このままここに要ればいつか僕達は死んじゃうし…」


 レオは俯いたまま強い意志の宿った金の瞳で僕を見た。


「だから、ゼロが言ってたように先に行って、後から来た皆を迎えられるような場所を作ろうと思ったんだ。…でも、結局の所はクロに死んで欲しくないからかな」


 レオはそう言いながら頬を掻いた。

 僕は、嬉しい様な困った様な感情を同時に味わった。


「レオは、もし僕がココに残ろうって言った時はどうするつもりだったの?」

「その時は、後から皆と一緒にゼロ達を追いかければいいかなって思ってた」


 あぁ、ここから抜け出すのはレオの中では決定してるらしい。


「用は、僕が言った方にしようと思ってたの?」

「アハハ、そういうことだね」


 レオはそう言って、少し笑いながら土嚢を積んでいく。


「僕は賭けとかで勝った事が無いからね、だから二択の時はクロの言ったほうにしようと前から決めてたんだ」


 そういえばレオがジャンケンで勝った所を見たこと無い。それにレオはのんびりしてる様だけど僕より深く先の事を考えてた。

 僕はただ単に、ここに残って死ぬくらいなら外の世界を見てみたい。ぐらいの気持ちだったし、ゼロが言うように後から抜け出せるのなら脱走するだろう。そう思ってた。結局は自分の事しか考えていなかったんだと、レオと話していて考えさせられてしまった。


「レオと話してたらなんだか自分の事しか考えてなかった事に気づいて恥ずかしくなってきた…」

「なに言ってんの、結局は僕もそうだよ。クロに丸投げしてる様なもんだし」


 喋っていると後ろから軍服を着た大人が歩いてきて、僕達のお尻を強く蹴った。


「喋ってないで、さっさと土嚢を積めガキ共!!」


 僕とレオはお尻をさすりながらせっせと土嚢を積んでいった。




 深夜2時。辺りはひどく静かで、大人達の笑い声が空に上っては消えていく。

 現在18名は食料倉庫裏に少ない手荷物を持って集っている。

 僕とレオは、有刺鉄線を切るための大きなペンチを持ってこの場にいた。

 そしてゼロが静かな声で喋りだす。


「集ったな、今から作戦を開始する。俺と三人は鍵を取りに行く、その間に6人は4台の輸送車に地雷を仕掛けながら俺達が来るのを待っていてくれ、もし俺達が10分経ってもこなかったらそのままテントに戻ってくれ、全ての責任は俺達が被る」


 6人はコクリと頷く。


「残りの8人は、二手に分かれて見張り台の下近くに待機。俺達の輸送車が見えたら電気ケーブルにペンチをかざして待機。ヘッドライトを2回点滅させるからその時にケーブルを切ってくれ。そしたら輸送車であの薄いフェンスの門をブチ破って5秒待つ。その時に来たい奴は来い以上だ」


 8人は《ゴクリ》と喉を鳴らしながら頷いた。


「いくぞ、3、2、1、GO!!」


 少年達は足音を出さずに静かに散っていった。 

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