2話 [出会いは唐突に]
三話目ですね!!がんばります!!
僕は12歳になった。今日まで訓練に継ぐ訓練。体を壊さなかったのは奇跡に近い。
毎日、来る日も来る日も体作りをする日々だった。10歳になり始めた頃、今まで入れなかった通路に通された。射撃練習場と言うらしい。銃を持たされ射撃の訓練をさせられた。
今まで弾丸を製作してきたが、これに使われていたのかと始めて知った。
教官が、僕達にこれからはもう弾丸の製作をしなくていいと言い、これからは上手く当てる事だけを考えろと言っていたので、弾丸はきっとココに来たばかりの子達が前の僕らのように製作していくことだろう。
射撃練習場でレオがジャム(薬莢が詰まること)をした時に、あわてて取ろうとして指を挟んだときは皆で爆笑したのがいい思い出だ。
悲しいことも会った。コルト兄さんが先に戦場へ連れて行かれたのだが、行く前に「先に行ってお前らを待ってる」と言ったので、皆で「すぐコルトに会いにいくよ」と見送りをした。
色々と失敗したりして教官から怒られ怪我や痣は何度も作ったが、これからはもう怒られることはない。
何故なら僕たちはこれからコルト兄さんと同じ……戦場に行くからだ。
今、僕達を乗せたは大きな輸送機は戦場に向かっているが僕達に目的地は知らされていない。
教官に何処に行くのか聞いていたのだが「お前たちはただ敵を殺すことだけ考えてりゃいいんだよ!!」と殴られていたので教える気はないのだろう。
コルト兄さんと同じ場所なのか聞きたかったんだけど仕方が無いと諦める。最後の最後になって殴られるなんて我ながら運が無いと思う。周りからは「どんまい」って言いながら笑われた。
輸送機の中には知らない子も沢山いた。きっと僕達が居た施設以外にも同じような施設は沢山あって、そこから来たのだろう。輸送機の中には僕達と同じような子達が120人ほど乗っている。それほど大きな輸送機だ。僕達の施設からは30人、1グループ6人の計5グループでA~E班と分かれている。僕とレオがいるのはE班のグループだ。A~E班まで余り年齢は変わらない。一番上が15歳前後で僕達は最年少だけど、訓練期間は同じだから経験の差は余り無いと思う。用はあの施設に早くから居たか遅いかの違いでしかない。
それにしても暇だ、最初の1~2時間くらいは雲の上に居るとレオと一緒にはしゃいでいたんだけど…ずっと同じ景色でちょっと飽きてきた。だからレオと輸送機の中を探検することにした。貨物庫には大きなコンテナにシートが上にかけられ固定されていた。それが二段になって奥まで続いている。一応奥まで行ってみようとレオと奥まで行って見ると、一番奥のコンテナの後ろに3人の人影が動き、何かを喋っていた。
僕は、一応のため足音を消して3人に近くまで近づき、話を盗み聞きしようとしてみた。
このような場所で隠れながら話しているのが気になったためだ。隠れながら話すことだ、きっと聞いてはいけない話なのだろう。好奇心が刺激された。
貨物庫の中はエンジン音とプロペラの音でけたましく音が鳴っているが念の為だ。横ではレオが「やっぱり止めない?」とか「やばいってこれ」とか言ってるけど付いて来た時点で同罪なのだ!
それにしても何を喋っているのだろうか、3人組に意識を集中しつつ聞き耳を立てる。
「おい、いつ逃げ出すんだ?このままじゃ戦場に着いちまうぜ?」
「じゃあ、お前だけこっから飛び降りろよ!! 生きていられたらだけどな!!」
「冗談言ってないでちょっとはまともに考えて欲しいッス、もう後が無いんッスよ?」
三人組は、脱走の算段を付けている様だった。
何処の施設も同じだろうけど、脱走する者には問答無用で銃殺されることになっている。
僕の居た施設でも、森に逃げた子供が銃殺され、見せしめとして広場に吊るされたことがあった。
そして、今この現状。聞いていたとなれば、僕達はあの三人組に殺される可能性があった。
殺さなければ殺される。ここはそういう世界だ。
(聞かなきゃよかった……)
こんな場所で隠れて話すような事だ、ヤバイ話かエロい話に決まっている。そう思っていたんだけど・・・、すぐにここから離れよう。
そう思い、レオに後ろに下がるように合図を送ると、レオは頷き引き足で後ろに下がり始めた。
ドンッ! とレオの背中に何かがぶつかり、俺も背中からレオにぶつかった。
恐る恐る後ろを振り返ってみると、身長175cm位、翠の瞳に赤い髪をオールバックにした厳つい少年が腕を組んで立っていた。
僕とレオの身長は150cm程度で少しレオが高いぐらいだ。
「おいガキ、お前らこんな所で何してやがる」
もう一人いたのか!!
僕とレオは冷や汗を流しながら顔を見合わせる。レオは青い顔をしたまま泣きそうな顔をしていた。
「おい、お前ら話を聞いてただろ?」
赤髪の少年はそう言って上から睨んでくる。身長差もあり、かなりの威圧感があった。
僕とレオは頭を左右に思いっきり振って否定した。
すると、赤髪の少年はニヤリと笑うと。
「嘘はよくねぇな? 実は俺、コンテナの上で一部始終を見てたんだけどなぁ~? 今、白状するなら許してやってもいいぞ?」
赤髪の少年はそう言ってニヤッと笑いながら僕とレオの後ろに回り、肩に手を回してきた。
僕とレオの体が《ビクッ》と震える。
そして恐怖に耐えかねてレオが口を開き・・・
「ごっ、ごめんなさい!! 誰にも言わないから許してください!!」
「レオお前!!」
レオがゲロ(白状)ってしまったのだった。
その瞬間、腕と肘を曲げ首を軽く絞める様に僕とレオを持ち上げた。
「やっぱお前ら聞いてたんだな?そうじゃないかと思ったんだよ。カマかけてみたら案の定そうみたいだしよぉ。さて、どうしたもんかね・・・。お前らはどうするよ?」
赤髪の少年は、騒ぎを聞きつけて来た三人組に話を振った。
「すんませんリーダー、まさか聞かれてるとは思わなくってよ」
「流石、俺の兄貴だぜ!! こいつらの失敗を軽く収めちまう!! そこに痺れる憧れるっ!!」
「だから一人は見張っとこうって言ったんスよ!! てか、なにナチュラルに僕達に責任を擦り付けてんッスか!! ……それにしても、リーダーは今まで何してたんッスか?」
リーダーに一斉に視線が集る。
「んなもん決まってんだろ、…昼寝だよ」
三人は一斉に黙ってしまった。
「…ウソ、嘘だって! まったく、俺が変わりに見張ってやってたんだぞ? 感謝しやがれ!」
「え…でもさっきカマかけたっ――グエっ!」
レオの首が絞まる。自業自得だが、何故この場面でそんな事を言うのか。馬鹿か天然かどっちかだろう。
「冗談は置いといて、その子達どうするんッスか?」
「だからそれを今から考えるんだよトロワ」
栗黄髪で蒼目にメガネを掛け、ヘアバンドを巻き身長160cm程、語尾に[ッス]を付けてる少年の名前は[トロワ]というようだ。
「窓から捨てちまうっていうのわどうですか兄貴!!」
「馬鹿かお前!! もう少し考えてからものを言えよなアール。こんな空の上で窓開けたりしたら警報が鳴るようになってんだよ。窓の横に注意書で書いてあるだろうが!! てかさっきトロワが教えてたよな?」
「うるせーっ!! ちょっと忘れてただけなんだよ!! てかアインス、今俺のこと遠回りに俺のこと馬鹿にしただろ!!」
黒髪黒目、身長155cm程の少年、リーダーと呼ばれている少年を兄貴と慕っているのが[アール]。
そして、アールに喧嘩を売った茶髪に茶目、身長165cm程の少年が[アインス]のようだ。
「おい!! いちいち喧嘩してんじゃねぇよ!!」
「リーダー、もうあの二人は放って置いて、そろそろその二人を放した方がいいッスよ? 金髪の子が限界そうッスから」
「おっとすまねぇ、絞めたまんまだった」
ドサッ! と地面に落とされ、やっと首絞めから開放された。レオは喉を押さえながら咳き込んでいた。最初から手加減はされていた様で少しして咳は治まった。
治まったのを見てリーダーと呼ばれていた赤髪の少年が僕達の前にやってくる。
「さて、分かっていると思うが俺たちの計画を知られたからには生きて返すことは出来ない」
赤髪の少年は僕達にそう言った。僕とレオの顔から血の気が引いていく。
「も…戻らなかったらきっと、僕の仲間たちが僕達の事を探しに来るぞ!!」
「そっ、そうだよ!! 殺したって、僕達が居なくなったら警戒が強くなって逃げられなくなるかもよ?」
僕とレオはどうにか状況を打開できないか頭を回転させる。
「あぁ、だからお前らに選択肢をやろうと思ってな。1つは、このまま俺たちに殺されるか。もう1つは…俺たちに協力するかだ。あとから俺たちのことを告発しても、一緒にお前らも道連れにしてやる。運命共同体って奴だな!! …さて、どうする?」
そう言って、赤髪の少年は僕達に2つの選択肢を迫ってきた。実質、協力しか選択肢が無いじゃないか…
僕とレオは顔を見合わせ頷いた。もう覚悟を決めたほうがいいみたいだ。
「わ、分かった。・・僕達も協力する」
「きょ、協力する」
「…ふぅ、そうかそうか、いやぁ、正直助かったぜ。ここから抜け出すには人手が足りないと思ってた所だったしよ、お前らみたいなガキを殺しちまうのも、正直胸糞悪いしな」
赤髪の少年はそう言って一息つくと少し安心したかのような顔をした。
「で? お前ら名前は?」
「クロです」
「か、金継レオンハルトです」
「クロにカネツグか、俺の名前はゼロだ。覚えやすいだろ? これからよろしく頼むぜ。何か困ったことがあったら俺に頼って構わない。まぁ、今は混乱してるだろうから戻っていいぞ。だが、もう一度忠告しておくが、俺達が話していたことは絶対に言うなよ? その時は……分かってるな?」
僕とレオに念押しした後、戻るように言って僕達は解放された。倉庫の最奥では僕達のことを4人の目が見送っている。
「どうするのクロ?」
レオが不安げにそう聞いてきた。
「どうするも何も…協力するしか道が無いよ…」
「「…はぁ」」
僕達はため息をつきながら俯くと、皆のいる場所に戻っていった。
これがゼロとの出会いだった。