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黒金のバレットロード  作者: 真田 幸松
第一章 [空を翔る者達]
18/20

18話 [幼き日の記憶5]

 凶岩鳥が急降下を始め、俺の体が降下の勢いにより球体の上部に叩きつけられた。

 髪で作った壁の隙間からは風が勢いよく入り込み、悲鳴のような轟音を鳴らしている。

 俺は、髪の隙間から地上に激突するまでの大よその時間を計りながら、右手に持つ小太刀を強く握り締める。

 現在、地上まで目算300mを切っている。

 防御に回していた髪の魔力も薄れてきており、風圧によって所々へこみ出してきていた。

 地上まで200mを切り、禿山の頂上が見え始める。


 「やるなら今しかねぇ!」


 地上に激突する数十秒前の所で俺は行動に出た。  

 防御に使っていた髪に残っている魔力の残滓を操作し、防御を解除。

 そのまま爪で鷲掴みにされている場所から、髪を這う様に移動させていく。

 凶岩鳥は這い寄る髪に驚き、鳴き声をあげながら足をジタバタさせるが、そう簡単に絡みついた髪を外すことは出来ない。

 俺は、そのまま髪を凶岩鳥の足から胴体、そして翼へと這わせて行き、翼を絡め取った。

 一瞬でいい、凶岩鳥の動きを少しの間だけでも止められれば上出来だ。

 このまま行けば、翼を封じられた凶岩鳥は降下の影響と翼の使えない状況が重なり、バランスを崩したまま禿山の岩場に激突する。

 だが、このまま行けば、髪を絡めている俺も一緒に地面に叩きつけられ、潰れたトマトと化すだろう。地面はもう目前にまで迫っていた。

 俺は持っていた小太刀を鞘から抜き放ち、髪をバサリと切り裂き魔法を発動する。


 「フライ!」


 少しでも落下の衝撃を少なくする為に、今持てる全ての魔力を使って落下の衝撃を緩和させる為の努力をする。

 空中では、俺の髪によって雁字搦めにされた凶岩鳥が金切声をあげながら、地面に叩きつけれた瞬間だった。

 自ら稼いだ高度から、自らの自重で自爆した凶岩鳥。落下の衝撃によって、頭からは目玉が飛び出し、口からは内臓がはみ出していた。


 「ざまあ見やがれ! この害鳥野郎!」


 俺は落下しながら中指を突き立て、爽快な笑みを浮かべながら落下していく。

 が、すぐに顔がみるみる青くなっていく。


 「あぁ、やばいなこりゃ。死んだわ」 


 自由飛行フライで落下の勢いを軽減する為に、残りの魔力を全て使ってしまったせいで、さっきから頭痛が酷く、眩暈もする。今にも気を失ってしまいそうだ。

 そして、フライを使って落下の勢いを軽減したのはいいが、地面まで20mはあり、魔法を使える精神状態でもない。

 この高さだと受け身も何の意味も無いだろうな。


 (一体、俺は何の為に生まれ変わったんだ?)


 薄れゆく意識の中、そんな疑問が頭をよぎった。

 地面が目前に迫った時、何かに担がれるような浮遊感を感じた。


 「天晴だ、クロガネよ」


 意識を失う寸前、威厳のある渋い声が聞こえた気がしたが、その声の主を確かめる事無く意識を手放してしまった。



―――――



 「って事があってだな。その後はお前自身が知っているだろ?」


 クロが語り、直接送られてくる記憶は、まるで自分が体験したかの様に、僕の虫食いの様になっていた記憶の場所にすんなりと馴染んだ。


 「だからあの時、アマトとツバキは……」


 僕は、あの日の事を思い出した。

 父さんとの魔力の修行で初めて魔力枯渇を体験し、頭痛と吐き気がしたのを覚えている。

 その後、ぐるぐると回る視界の中、気を失ってしまい、目が覚めると自分の部屋だった。

 僕が目を擦りながら体を起こした瞬間、横腹に衝撃が走り、ビックリしながらその正体を確認すると、目を真っ赤に泣きはらした妹のツバキが抱き付いており、辺りを見回せば、父さんと母さん、そして弟のアマトが、僕が目覚めた事に喜んでいる様子だった。

 僕は何が起きているのか全く分からなかった。

 起きて直ぐに父からは褒められ、母からは心配され、アマトとツバキからは感謝された。

 自分が眠っている間に一体何があったのか全く分からないまま、目の前の現実に付いては行けず、後から父さんに、自分がアマトとツバキを守るために凶岩鳥と死闘を演じ、そして勝ったのだと聞かされが、全く理解が出来なかった。

 僕が凶岩鳥に勝った?そんな事、出来るはずがない。

 硬い表皮に巨大な体格、魔法さえ撃ってくるような魔物に、魔法の修行を初めて数年の僕が敵うはずが無い。

 だが、里長にも褒められ、アマトとツバキの僕に対する態度もまるで別人の様に変わっていた。

 アマトは、前は僕に対して、お前とか兄貴とか言っていたはずなのに、急に兄さんと呼ぶようになっていた。

 ツバキは、僕を兄様と呼ぶようになり、将来は僕と結婚すると言い出す始末だ。

 修行で魔力枯渇を起こし、気絶した後、目覚めてみると周りがまるで違う世界の様になっていた。

 あの時感じた得体の知れない恐怖。自分の知らないところで、周りの対応が全く違ったものになっているという恐ろしさ。

 僕はその日から数週間。まともに眠れぬ日々が続いたのは言うまでもない。


 「あんただったのか……」


 今までにも、何度か身の覚えのない出来事や行動が多々あり、そして自分は身に覚えのないことばかりだった。

 まさかクロが僕の体を動かしていたなんて…

 今までの出来事を思い出すと、沸々と怒りが込み上げ知らず知らずの内に眉間にしわが寄ってしまう。


 「おいおい、そうキレるなって。別に悪い事をしてる分けじゃないしよ。それに、この体は俺の物でもあるんだぜ? 体の主導権はお前に有るみたいだけどよ、少し位は俺が使ってもいいじゃねぇか」

 「体を勝手に使われた後、僕がどれだけ苦労して来たか分ってるのか!」

 「おいおい、別にお前だけの体って訳じゃ無いだろ? 元は俺が動かすはずだった体だぜ? まぁ、少し落ち着けって、お前も何か色々聞きたいこともあるだろ? 俺はお前と少し話がしたいわけよ」


 クロは一体何を考えているのか、僕にはさっぱり分らない。僕の魂はクロから切り離されたことは分ってる。だけど、性格が全く違っていた。

 そして、何となくだが、僕の事を探りながら話しているようにも感じ、そこで僕は一つの疑問が浮かび上がった。

 ならば、話がしたいというクロの言葉通り、いくつか質問をしてみることにした。

 

 「じゃあ、いくつか質問がある」

 「おっ、何だ? 何でも聞いてくれていいぜ?」

 「一つ目の質問だけど、あんたは僕の魂の大元なんだろ? 何で僕の考えが分らないんだ?」


 僕の魂の大元なら、僕の考えてる事だって分るはずだ。現に、僕の記憶だって読み取れるんだ。今、僕が考えている事だって分っていてもおかしくない。


 「あのなぁ、言っとくけど、俺だって個人のプライベート位は守るぜ? ……まぁ、実際の所、分けた魂にクロガネという自我が芽生えた時点で、俺はもう干渉が出来ないようになっているみたいでな。根源の所で魂は繋がっていても、心や感情はまた別物という事らしい。そりゃそうだよな? 俺とお前では、今まで生まれて育った環境も、積み重ねてきた感情も違う。ならば俺達の思考や感情が混ざらないように無意識に壁を作るのは当然だ。だからお前も、俺の考えている事は分らないだろ?」

 「――あぁ。僕もあんたが何を考えているのか分らない」


 クロには僕の考えている事は分らないらしい。魂の状態だからからだろうか? 何となくだが、クロが嘘を吐いてはいないという事が分かる。


 「二つ目の質問。何故、あんたは僕の体を使えるんだ? 主導権は僕が持っているんだろ?」


 この質問は、僕にとってとても重要な事だ。

 今回のクロの記憶では、僕が魔力枯渇を起こした時にだけクロが僕の体を自由に出来ているようだけど、魔力枯渇はそうそう起こすような物じゃない。僕は魔力量を上げる修行の一環として、いつも父さんがそばにいる状態で行っているが、本来魔力枯渇は危険な行為だ。よほどの危機でない限りは、そんな事にはならないだろうし、これから修行では、魔力枯渇を起こさなければいいだけの話になってくる。だが、もし魔力枯渇以外にも方法があった場合、僕は知らず知らずの内に体を使われる事になるし、僕の質問に対して、クロが正直に話すかどうかも分からない。

 僕は真剣な目でクロを見ながら質問の答えを待った。


 「まず俺からお前に一つ訂正だ」

 「……なに?」

 「僕の体(・・・)ではなく、俺達の体(・・・・)だ。後、年上の人には少しは敬語を使えっての」

 「別にいだろ、僕は元はあんたの一部だったんだから。立場は対等なはずだけど?」


 僕がそう言うと、クロはチッと舌打ちをし、そうだったと眉間にしわを寄せる。


 「可愛げの無いガキだなぁ。まぁ、いい。お前の質問だけど、俺がこの体を自由に動かせる時ってのは、お前の精神か魔力に何かしらの変調が起きた時だ」

 「僕が魔力枯渇を起こした時見たいにか?」

 「魔力枯渇ね、それも俺が体を動かせる理由の一つだな。まず、魔力枯渇を起こした時に自分がどんな状況になっているか分るか?」

 「大体は、急激に魔力を消費したせいで気絶してると思うけど」

 「そうだ。人は魔力の消費量が命の危険に差し迫った時、防衛本能によって意識を眠りに就かせ魔力の回復に全力を尽くそうとする。その間、普段眠る時よりも深い場所に意識が落ちる事になる訳だが、ここで他の奴らと違うのは、俺達の意識が二つ有るという事だ。お前は俺と言う意識を表層に出さないように、いつもは無意識に張っている魂の壁がある。そのせいで俺は体を動かせないし、意思を飛ばすことも出来なかった。だが、お前が魔力枯渇を起こしている時だけはその壁が取り払われ、その間に俺が体を自由に動かせるという訳だ」


 クロは嘘は吐いていない。だが、全ては言っていない。やはりそんな気がする。

 だが、僕がそう感じた時、クロは続きを喋り出した。


 「もう一つは、危機的状況でお前が気絶してしまった時だな。記憶によると、お前がハヤブサと剣の稽古をしている時によく俺と変わったりしてたぜ? これは魔力枯渇と違う、俺達だけの防衛本能見たいなものかもな」

 「一体どう違うんだ?」

 「お前が気絶をすれば体が無防備になるだろ? だからお前の張っている意識の壁とか関係なく、お前が意識を取り戻すまでの間だけ、俺が表層に上がってこれるって訳だ」


 まるで僕に知られてもどうでもいいかの様に話始めたクロに、僕はクロが何を考えているのか分らなくなった。拍子抜けするほどに僕の疑問に答えるクロ。だから僕は最後の質問をすることにした。


 「じゃあ、最後の質問。一体、アンタは……クロは何を企んでいるんだ?」


 僕がそう質問をした時、クロはニヤリと不気味に笑った。

 そして、その不気味な笑い顔が、これから僕達に起こる波乱の幕開けになるのだった。


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