12話 [僕]
【魔銃】を【魔導銃】に変更しました。
銃の名前を出すのを避けるため、大型のリボルバーと表記を変更しました。
度重なる変更、申し訳ありませんm(__)m
「ただいまー!!」
僕は家の玄関を開け、帰ってきたことを伝える。
木造建築の2階建て。
一階は父さんと母さんの部屋があって、ここで皆でご飯を食べたり風呂に入ったりする。
二階は僕と弟妹の部屋がある。
父さんが汗水流して作った僕の我が家だ。
「お帰りなさい、クロガネ。クロガネがいなくて母さん寂しかったんだからね? あら? お父さんとは一緒じゃなかったの?」
家に帰ると、母さんが食事の準備をしながら待っていた。
母の名前はモミジ。髪と目は紅葉の色をしており、身長は僕と同じぐらいだ。
昔は、東にある鬼の里で[癒しの鬼姫]と呼ばれ、知らぬもの無しと言われた巫女だったそうだ。
何故、母が癒しの鬼姫と呼ばれているのかと言うと、世界でも扱える人が少ないと言われる魔法である[治癒魔法]が使えたからだ。
治癒魔法は、属性魔法や種族魔法とはまったく違う系統に属する魔法で、扱えるもは[白魔法士]や[白巫女]と呼ばれたりする。扱える人間の割合は10万人に1人だそうだ。
治癒魔法を使うには、自分の魔力、相手の魔力、大気の魔力、の3つを同時に使う必要があり、使えば傷や病を癒す効果がある。
本来、魔力は自分の中にあるものしか使えないが、この3つを同時に使える感覚を持ってい者が、治癒魔法を使える理由なのではないかと言われている。
「そうだわ。今日は珍しく、アマトとツバキが帰ってきてるわよ」
母さんがそう言った瞬間。広間の方から走る足音が2つ聞こえてきた。
「兄さん! お帰りなさい!」
「兄様! ツバキは兄様に合えなくて寂しかったです!」
「ただいま、2人とも」
ツバキが僕に飛びついてくる。
二人は僕の弟妹だ。
2人には僕と違って、生まれながらに才能があった。
アマトは僕の一つ下の弟で、父と同じく黒髪に黒目、身長はもう軽く越されていた。生まれた時は大いに里の大人達が驚き、喜び、祭りが行われた。
何故かと言うと、弟は生まれながらに肌の色が赤く、背中に翼が生えていたからだ。
先祖返り。天狗は永き時代の中で、多種族との混血により翼を無くし、種族魔法しか残っていなかった。
その中で度々、この様な先祖返りを起こすものが数百年に一度は現れる。
本来、天狗の寿命は数百年とも数千年とも言われているが、今では混血によって血は薄れ、三百年が平均寿命のようだ。
アマトを見ていると、自分が兄なのは間違いではとよく思うが、アマトは僕を何故か尊敬してくれているので、兄として頑張ろうと思う。
妹のツバキは、二つ下の妹で、椿色の髪に黒い瞳をしている。母の血が強く出ており、幼い頃から治癒魔法を使うことが出来た。
身長は僕よりも掌程の差があり、まだ兄の威厳が保てている。幼い頃から僕に懐いてくれていて、凄くかわいい妹だ。
二人はその特別性から、アマトは昇天寺で次代の里長としての修行をし、ツバキは里の医師となるために医療の知識を勉強している。
二人とも、僕よりも優れた才能と役割をこなしている。
だから僕と同じ、同年代にとっては僕は落ちこぼれに見えるようだ。だけどそれは僕の努力不足なわけで、弟と妹のせいではない。
僕は2人の事を兄として誇りにしてるし、自分に出来ない事をやってのける弟妹の事を少し羨ましいとは思うけれども、それ以上に嬉しいとも思っているんだ。
「兄様、その箱は何ですか?」
ツバキが興味津々な顔をして、僕の持っている箱を見つめている。
「冒険者から貰ったんだよね? 里長から少し教えてもらったんだ」
アマトが得意顔でツバキに言った。
「そうなんだよ。ロベルトって人がくれた物でね、中には魔導銃っていう魔導具が入ってるんだ」
僕は、この3日間の間にレダルさん達から教えてもらった外の世界の事を二人に語り聞かせた。
二人は目を輝かせながら僕の話を聞いてくれて、話している間にお酒臭い父さんが帰ってきて、母さんが父さんを怒りながら夕飯の時間になり、久しぶりに風呂に入った。
やっぱり家が一番落ち着く。僕は風呂から上がり、両親と弟妹にお休みを言った後、自分の部屋に戻ってっ寝ようとした。
その時、月明かりに照らされて、机に置いてあった箱に目が言った。
「そう言えば、色々あって箱の中身を見てないや。どんな魔導銃が入ってるんだろう?」
僕が箱をゆっくり開けると、中には麻布に包まれ、紐で縛られた物が入っていた。紐を解き、麻布を開いていく。
すると、月明かりに照らされ、鳥肌が立つほどに美しい黒い光沢を発する魔導銃が麻布の中から現れた。
銃把の部分には、ひし形に加工された親指程もある赤色の魔攻石が填まり、長い銃身には、簡素でそれでいて人の目を引き付ける金の装飾が施されている。
魔攻石は淡い光を放っていて、まるで吸い込まれしまいそうな、そんな魔力を感じさせた。
「ほう、大口径のリボルバーか」
ふと、僕の口が勝手に動き、呟いた。
「――今、僕はなんて言った?」
自分の口から、まったく知らない言葉が飛び出してきた。
何が起こっているのかも分らない内に、急に胸の辺りが熱くなり、早鐘のように心臓が鳴り始める。
締め付けられるように胸が痛い! 僕に…一体何が起こってるんだ!
「あ゛ぁ……うあ゛ぁ………あぁ……」
声も上げる事も助けも呼ぶことも出来ず、魔導銃と胸を握り締めながら、僕は膝から崩れ落ちた。
目の前がぼやけ、意識が遠のいていく。だんだんと肌に感じる床の冷たさも感じなくなっていき、僕は意識を失った。
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夢を見てる。悪夢ではない。不思議な夢だ。
広い平原が、夕陽に照らされ一面を黄金色に染め上げていた。
前にもこんな夢を見た記憶がある。だしか…冒険者に合った初日の夜だ。
そして、僕が夢を見なくなった最後の夢だったはずだ。
僕がそんな事を考えていると、後ろから声がかかる。
「よう、また合えたな」
僕は後ろを振り向くと、黄金色に輝く平原に、あの時見た黒髪の男が立っていた。
「あ、…あなたは、誰ですか?」
男は、僕のその言葉に驚きの表情を作りながら、急に口元を吊り上げ笑い始めた。
「アハハハハ! おいおい、冗談きついぜ。俺が誰だって? もしかして、自分が何者かも思い出せないのか? ここまで来ておいて?」
頭に来る奴だ。僕は男に向けて指をさした。
「わ、わからないから聞いてるんだ! 一体あんたは誰なんだ! 前にも僕の夢の中にいましたよね!?」
可笑しな事だと思う。夢の中の相手に対して怒っているなんて。誰かに話せば僕はいい笑いものだ。でも、この男を見ていると、まるで思い出したくない、知りたくないと、そんな気分にさせられる。
「いるさ、当たり前だろう? なんてったって…」
さも当たり前のように答えた男は、僕と同じように、男は僕に指をさす。
「俺は、お前だからな」
その瞬間、男の後ろの背景がぐにゃりと歪み始め、自分の過去が映像になって巻き戻されていく。
見たことは無いが、これが走馬灯なのだろうか?
自分の過去の映像は、まるで穴が開いたように所々無かったが、自分の生まれる瞬間まで巻き戻った。
母の腹の中に戻り、暗い腹の中で丸くなる赤子の自分。
どんどん小さくなっていく。
形すら赤子でなくなっていく程に。
小さく、小さく。
小さく。
……。
――そして、僕は思い出した。
僕は切り離された存在だ。
切り離された魂と記憶の一部。
クロと言う男の、魂の切れ端。
それが[僕]という存在だった。




