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黒金のバレットロード  作者: 真田 幸松
第一章 [空を翔る者達]
10/20

10話 [袖振り合うも]

 「レダルさん。色々と質問をしてもいいですか?」

 「あぁ、何でも聞いてくれて構わない。何が聞きたいんだい?」

 「何故、冒険者になったんですか? こんなに過酷で、苦しい思いをしてまで。街に行けば、他にも仕事があるんじゃないですか?」


 僕は、外の世界の話は父さんからしか聞いていない。父さんは元冒険者で、街には色々な物があるといっていた。それならきっと他の仕事もあるはずだ。何故、冒険者なのか。それが気になってしょうがなかった。


 「何故、冒険者になったのか、ね。難しい質問をするね、俺にも言えることだが、それはきっと人それぞれ違う。夢の為、金の為、名誉の為。きっと人それぞれ違うことを話すだろうね」

 「レダルさんはどっちなんですか?」

 「俺は、どちらかと言うと夢の為、かな。冒険者になって、未開の地を探索し、誰も見たことが無いお宝や、魔物の素材を集めて、それで誰も見たことも無い強い武器や装備を持ち、誰もが羨む五ッ星の冒険者になる!! ……それが俺の夢だった」

 「……夢だった?」


 「現実という壁にぶつかったのさ。その強さを見て、俺には届かないと思ってしまった。五ッ星の奴等は全員化物だ。ダンジョンボスを片手で捻る様に倒し、前人未到の秘境をすいすいと踏破していく。俺にはそんなマネ、絶対無理だと思ったよ」


 そう語るレダルさんの顔は、自分には届かない、遠い場所を見ているかのようだった。


 「夢も諦めてもまだ、何でレダルさんは冒険者を?」


 そう僕に質問されたレダルさんは、後ろにいる焚き火の炎に当たった仲間を見ながら、一言。僕だけに聞こえる音量で呟いた。


 「…仲間がいるからさ」


 レダルさんは、眩しい物を見るかのように、仲間達を見ていた。これが俺の一番の宝だとでも言わんばかりの表情をしながら。

 僕は、そんなレダルさんの表情を見て、少し羨ましいと思った。村に帰っても、僕には友達がいない。そんな自分が、少し悲しくなった。


 「俺は、夢を諦めてしまったことに後悔はしていない。冒険者になって、努力をし、そして仲間に出会った。今の俺にとって、夢なんて物は、あいつ等と出会う為の手段に過ぎなかったのかもしれない。最近は、そう思うことが多くなったよ」

 「なんか、かっこいいですね」

 「かっこいいものか。俺は落ち所を見つけただけさ。此処だと言える、落ち所をな。クロ君。もし、何か夢が出来た時、全力で取り組め。そして諦めるな。俺から言えることはそんな所だな。もし君が冒険者になりたいと思っているなら、すぐなった方がいい。君は強い。俺達よりも、ずっとね。すぐにCランク、いや、Bランクくらいならなれると思うよ?」


 レダルさんは頷きながら、冒険者はいいぞ~。と言っている。

 そう言えば、先程から星の数の話をしているが、冒険者の位の話だろうか?そこの所も聞いておこう。


 「先程からCとかBとか、冒険者の位みたいなやつですか?」

 「知らないのかい? まぁ、天狗には無縁の話しかもなぁ。教えてあげよう。冒険者にはS・A・B・C・D・Eの6段階のランクがある。冒険者になったばかりはEランクだ。そこから依頼を達成し、点数を溜めていくと昇格試験の後、次のランクになれる。この場合、Eランク次はDランクだね。同様にBランクまではここまでと同じだ。だけどAランクからは違う。Aランクになるには魔窟ダンジョンと呼ばれる場所の踏破を2つしないといけない」

 「魔窟ダンジョンって、魔物の溜り場みたいなものですよね?」

 「ああ、そうだ。知ってるのかい?」

 「ええ、父さんから話は聞いています。魔力の溜まった場所に偶然出来る、意思を持った場所だと」

 「そうだ、周辺の魔物をその魔力で誘き寄せ、中で魔物の住みやすい擬似的な空間を作り上げる。魔窟ダンジョンの中では食物連鎖が生まれ、死んだ魔物から魔力を吸い取り増長していく。それはコアを破壊しない限り永遠と続くんだ。まるで蠱毒にも似た場所だよ。そして、コアの前に立ちふさがるのは強力なダンジョンボス。これがそこらの魔物と比べられないほど強い」

 「そんな場所を2つ。…いっきに敷居が高くなりましたね」

 「そうだ、Aランクは生涯を賭けてもなれない奴が多い。俺達もBランクで止まっているしな」

 「レダルさん達はBランクだったんですね」

 「そうだぞ、Aランクだったら今頃、都市の中層ぐらいで悠々自適に暮らしてたかもな。なんたってダンジョンを踏破できれば、今まで溜まっていたお宝がわんさか溢れ出すそうだからな」

 「へー、ダンジョンってお宝なんてあるんですね」

 「高純度の魔石や、魔力を帯びた特殊な武器や装備。何故あるのか分からないが、金銀財宝まである。まるで取りに来いと言わんばかりに最下層に眠っているんだよ。ダンジョンに意思があるというのは、こういう所から来ているのかもな」


 ダンジョン。山の中にも偶に発生するけど、浅い内から大人の天狗達が潰して回っているから魔石ぐらいしかみたことが無い。父さんが確か冒険者時代に、一度深いダンジョンを攻略したそうだけど、父さんはお宝に興味が無いからなぁ、ボスの事しか話してもらったことがない。その時のボスが、確か巨大な猿王だったって言ってたっけ。


 「そうだ、出来立てのダンジョンを2つ踏破すればいいんじゃないですか? そしたらすぐに四ツ星ですよ?」

 「いや、そんな簡単な話じゃないんだよ。まず、何処のダンジョンを攻略するかの申請と、そのダンジョンの財宝の量で有無を決めるんだ。踏破するにも、財宝の量と深さが規定と満たなければ踏破した内には入らないと言う訳だ」

 「流石に厳しいですね」

 「Aランクの昇格試験とはそういうもんだよ。そして、その上が伝説のSランクだ」

 「…伝説のSランク」

 「Aランクが達人なら、生ける伝説、それがSランクだな。Sランクになるにはまず、各都市のトップから頼まれるような無茶難題な依頼を複数達成したものに与えられるそうだ。それか、ランクに相応しい偉業を達成した人物だな」

 「無茶難題な依頼…。一体どんな依頼なんですか?」

 「そうだなぁ、[魔物の大行進(テンペスト)]で発生したボスの討伐や、[災害級]の魔物の討伐。超希少な素材やモンスターの発見。偉業で言えば、単独でのダンジョン制覇や、都市を発展させる様な新たな魔法技術の開発等だな」

 「偉業はそれだけですごいですけど、魔物の大行進(テンペスト)や災害級モンスターって何なんですか?」


 余り僕達天狗には聞き慣れない言葉だった。


 「魔物の大行進(テンペスト)とは、ダンジョンで大量発生した魔物達が、ダンジョンボスを筆頭に、食い物を求めて都市へ侵攻してくる現象の事だよ。、魔物の大行進(テンペスト)が起きる理由はまだ解明されていないが、大体20年起き位に各都市の付近で発生するんだ。ボス単独でも厄介なのに、群れを引き連れてやって来るから、都市を守るために、Cランク以上の冒険者や、都市の兵士達が全員参加で挑むんだ」


 僕達天狗は、ダンジョンが発生した場合は、浅い内から踏破しているからこんな事は起きないだろうけど、もし魔物の大行進(テンペスト)のような事態が起きれば大変だ。

 起きてしまえば、天狗の里は壊滅してしまうかもしれない。それが都市では20年起きにやってくる。

 僕はレダルさん達を見ながら、都市の人々の逞しさを感じたような気がした。


 「そして災害級の魔物だが、その前に、魔物のランクの事を教えておこう」

 「冒険者みたいに魔物にもランクがあるんですね」

 「そうだ。魔物にはA~Eまでのランクがあって、Aが最も強く、Eが最も弱いと思ってくれ。冒険者への魔物討伐の依頼も、魔物と同じランクの冒険者が適役だと考えられている。しかし、この世界にはAランクという枠組みに収まらない魔物の存在がいる。それが、災害級だ」

 「なんで魔物はAから上がSじゃなく、災害級と呼ばれているんですか?」

 「それはな、昔ある魔物がSランク冒険者のパーティーを壊滅させた事件があった。その魔物はSランクとされていたが、規格外のその魔物はSランクの枠組みには入りきれんほどの強さだったわけだ。そこで各都市の話し合いの末、魔物のSランクという枠組みを外し、Sランク冒険者2組以上の参加が必要な災害級というクラスを新たに作ったわけだ。その代り、今まで討伐経験のあったSランクの魔物は、Aランクに格下げになったがな」

 「Sランクの冒険者でも勝てない魔物…」

 「魔物の大行進(テンペスト)で発生するダンジョンボスも、一応は災害級だな。ダンジョンにいるボスは、、魔物の大行進(テンペスト)が起きた際だけこのクラスが適用される。だが、昔いたとされるその魔物は、ダンジョンボスではなかったそうだ。この世界の広さを思い知らされるよ」

 

 もしかしたら、僕が倒した猿王も、成長すれば災害級位にはなっていたかもしれない。

 まぁ、そうなる前に里の皆で倒しただろうけど。


 秘境、ダンジョン、Sランクの冒険者。世界が広いとは思っていたけど、きっと今聞いたのは、世界のほんの一部の話なんだろう。僕の知る世界の広さは、想像を遥かに超えていた。


 「色々ありがとうございました、レダルさん」

 「いやいや、いい暇つぶしになったよ。これからも何でも聞いてくれ。俺に答えられる事は何でも話すよ」


 レダルは、クロの後姿を見ながら、クロと言う少年の事を考えていた。

 それにしても、一番の収穫はクロ君の性格が多少なりとも分かったことだな。話してみた限り、信用における少年だとも分かった。仮面のせいで顔は見えないが、天狗にはそういう掟の様な決まりがあるのかもしれない。天狗の事については、触れないほうが無難だな。

 離れていくクロの後姿を見ながら、レダルは見張りとして、周囲の警戒に戻るのだった。



-----



 僕は欠伸をしながら月が輝く空を見る。

 そろそろ眠くなってきた。時刻はもう深夜に入っている頃だ。僕は木の上に飛び移り、風魔法で枝や葉やツタを集めていく。しばらくすると、人一人が寝むれる程の、横に長い鳥の巣のようなベットが完成した。

 少し脚で揺らしてみるが、ビクともしない。上手くできたようだ。僕はベットで横になり、今日のことを考える暇も無く、いつの間にか眠りについた。




 夢を見た。悪夢ではない、不思議な夢だった。


 夕陽に当てられ、黄金色に輝く平原に、誰か男が立っていた。


 黒い目と、黒い髪色をした男だった。


 男は親しげに僕に手を振っている。誰かは分からない。だが、知っているような気がした。


 男の後ろからは、白い光の柱が轟々と立ち上りながら、こちらに迫って来ていた。


 しかし、不思議と恐怖は感じなかった。


 柱は男も僕も飲み込んで行く。


 何も考えられない。白く、白く、ただ白く染まっていく。


 僕は白い空間の中で、男がこちらに近づいて来ているのを感じた。


 男は僕の目の前まで来ると、男は顔を僕の耳元に近づけた。


 「また合おうぜ」


 男は一言そう言うと、消えるように姿を消した。



 

 ――目が覚めると朝だった。

 いつもは叫んで飛び起きていた僕は、久しぶりにぐっすり寝れた事に気分が良かった。

 ここ最近は悪夢にうなされ、ろくな睡眠が取れていなかったからだ。

 背伸びをしながら体を動かし、ほぐしていく。空の上では怪鳥が耳障りな泣き声を発していた。


 「それにしても不思議な夢だったなぁ」


 僕は今日の夢を思い出しながら、木から飛び降り、レダルさん達の所まで飛んでいく。レダルさんは寝ているようだ。昨日、ロギアさんが寝ている所で横になって寝ている。そうなると、今の見張りはロギアさんがしているのだろう。

 僕は、空からロギアさんを探すことにした。すると、森の中から皆が休んでいる川の方に、何かを担いで戻ってきているロギアさんを見つけることが出来た。


 「魔物か何かかな? あ、昨日言っていた朝ご飯か」


 ロギアさんが持ってきたのは、頭にキノコが生えた豚の魔物[クジブタ]である。クジブタには当たり、ハズレがあって、当たりは油が乗って美味しい豚の魔物だが、外れを食べた場合、麻痺、毒、眠り、興奮のいずれか一つの症状が起こってしまう。キノコや肉を見て判断するのは難しく、それ故にクジブタと言われている魔物だ。当たる確立は5分の一。獲って食べるには危険な魔物だ。


 「ロギアさん。それ、大丈夫ですか? その魔物、クジブタと言って、ハズレを引いたら危ないですけど…」


 一応、警告のつもりでロギアさんに尋ねてみる。


 「俺達はランダムピッグと呼んでいる。心配しているようだが、大丈夫だ。俺は魔物を匂いで見分ける。こいつからはハズレの独特の匂いはしなかったからな。それに、今まで俺が獲ってきたランダムピッグで、ハズレたことは一度も無い」


 成る程。獣人は鼻がいい。ロギアさんはその鼻を使って当たりかハズレかを嗅ぎ分けているのだろう。

 ロギアさんはクジブタの脚を縛り、木につるした後、血抜きと解体をやり始めた。慣れた手つきで魔物が肉となっていく。


 「昨日の夜は晩飯を取り損ねたからな。そろそろレダルやジェイが起き出す頃だろう。その前に、飯の準備でもしておこうと思ってな。なんならクロ君も食べてくれ。この魔物は美味いからな」

 「おはようクロ君。ロギア、私も何か手伝うわ。ロベルトも落ち着いてきたみたいだし」


 エドリナさんがこちらに来て、料理の手伝いをしに来たようだ。


 「おはようございます、エドリナさん。僕も何か手伝いますよ」

 「リナでいいわよクロ君。じゃあお言葉に甘えて、このお肉をこの木の枝に刺していってくれるかしら」

 

 肉を解体した後、ちょうどいい木の枝に肉を刺していき、焚き火の前に置いて行く。辺りに肉の焼けるいい匂いが立ち込めた。


 「おっ、飯か! 腹が減ってたんだよ」

 「おはようクロ君。手伝ってもらって助かるよ。恩人なのに申し訳ない」


 ジェイとレダルが起き、料理の匂いにつられて集ってきた。


 「おはようございます。ジェイさん、レダルさん」


 肉も焼きあがり、焚き火を囲んで、少し遅めの朝食をとる。

 僕は朝食を摂りながら、さっきから気になっていた事があった。

 それは焚き火のことである。木を積み重ね、燃やしているのではなく。手の平ほどの四角い箱の上部から、勢いよく炎が出ているのだ。

 魔法の場合、炎を出し続けるのならば、発動した魔法に魔力を供給し続けなければならない。そんな事を長時間し続ければ、魔力枯渇に陥ってしまう。

 何か、僕には知らない仕組みがあるのだろうか?

 僕がじっと見つめていると、隣にいたリナさんが教えてくれた。


 「これは魔導具って言う魔導装置よ。10年程前ぐらいに開発されて、今では魔導具を持っていない人は珍しいってぐらい普及したわ」


 10年前か。父さんは、母さんを嫁に貰ってからは里を出たことが無いって言ってたから知らなかったんだろうなぁ。こんな便利な道具、母さんが欲しがりそうなものだし。


 「見えるかしら。この箱の中心にある赤い魔石。これが炎を生み出している魔石よ」


 炎の根元を見つめると、確かに赤い魔石が薄っすらと見えた。


 「この箱に魔量を流し込んで、魔力を充電するの。すると、充電した分だけ魔石から炎が出るって仕組みよ。箱自体は魔力の充電器みたいな物らしくてね、大気中からも魔力を少しだけ吸収するから、魔力を少し溜めてあげれば、それなりに長く使えるの。材料には色々な魔物や魔石の素材が使われているそうよ。素材は秘匿されてて知らないんだけどね。でも、この箱の石は、ダンジョンから切り取って来てるって噂があるわね」


 リナさんは、僕に丁寧に仕組みを教えてくれた。どこかツクシ姉さんと同じような雰囲気を感じる人だ。


 「こんな便利な物が街には売ってるんですね。知りませんでした。教えてくれてありがとうございます、リナさん」

 「いいのよ、分からないことは何でも聞いてね。ハイどうぞ、お肉が焼きあがったわ」


 パーティーの男集は、クジブタの肉に噛り付きながら、旨い旨いと頬を膨れさせていた。どうやらロギアの言うとおり、外れではないようだ。外れの症状が出ていない。男集は、食べ方が汚いとリナさんから注意を受けている。

 僕もクジブタの肉を貰い、齧り付く。噛んだそばから肉汁が溢れ出し、地面にポタポタと汁が垂れる。色々と魔物の肉は食べてきたが、やはりクジブタの当たり肉はすごく美味しい。肉の味が口の中で広がり、芳ばしい香りが、口から鼻へと通り過ぎていく。


 「…美味しい」

 「ロギアは当たりを見抜くのが上手いのよ。沢山あるからじゃんじゃん食べてね」


 思わず出た言葉だったが、リナさんが笑顔で僕の肉を確保していく。やはりツクシ姉さんに似ている所があるなぁ。



 「っぐ、俺は…どれくらい寝ていたんだ?」


 遅い朝食をとっている最中に、後ろから声が聞こえた。どうやらロベルトさんが毒から回復したようだ。

 ゆっくりとした足取りで、仲間の所まで歩いてくる。


 「おぉ! ロベルト! 心配したぞ! 体の調子はどうだ? 目眩や吐き気はないか? 何せ毒を食らったからな」

 「いや、大丈夫だ。もうすっかり元気だよ。あの世界の終わりの様に感じる寒気と頭痛はもうない。少年から貰った解毒剤が効いたみたいだ。すまんな、皆。迷惑かけた」

 「もう、心配かけて…。一時はどうなるかと思ったけど。回復してくれてよかったわ」

 「まったくだ。あまり冷や冷やさせるな。お前が死ぬと、私が心置きなく前線で突っ込めんからな」

 「ここまで運ぶの重かったんだからな? 運賃として、お前の分の肉は俺が貰う!」


 レダルさん達がロベルトの回復に笑顔で喜んでいた。ロベルトさんの毒はすっかり抜けているようだ。

 仲間とひとしきり喜び合った後、ロベルトさんが僕の前まで歩いてくる。


 「助かったよ。天狗の少年。あの時、俺は死を覚悟していた。このまま毒で死ぬのだと。だが、君が助けてくれた。礼を言うよ。助けてくれて、ありがとう」


 ロベルトさんは、深く頭を下げ、お礼を言った。

 最初は、仮面の為に助けたに過ぎなかった。里長に何も言われなければ、僕は見殺しにしていただろう冒険者達。だけど、今は助けてよかったと心の底から思えてくる。僕は、前の自分の考えが恥ずかしかったと、心の中で反省した。

 袖振り合うも多生の縁。人との出会いは大切なのだと、父さんの言っていた言葉が身に沁みて分かった気がした。


 「そう言えば名前を聞いていなかった。俺の名前はロベルト・マクシドリア。ロベルトと呼び捨てにして貰って構わない」

 「僕の名前はクロです。僕も、呼び捨てで構いません」


 僕とロベルトは握手を交わした。その時、ロベルトには、何か、僕と近いものを感じた。

 何が、かは分からない。僕の気のせいかもしれない。

 そんな曖昧な感覚の違和感だった。


 「ロベルト! 体が汗でベトベトなんじゃないか? 飯は用意しとくから、先に川で体洗ってこいよ」

 「おう! 俺が体洗ってる間に、俺の分の飯食うんじゃねーぞ、ジェイ!」

 「約束は出来ねーな!」


 仲間達と騒ぎながら歩き去っていくロベルトの後ろを姿を見ながら、僕は漠然とした不安を、握った手の平から感じるのだった。


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