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めんどうくさい、そんなときは、思考放棄

ようやく、あらすじに書いた流れまでやってきた。


※これは学生の書くエセサラリーマン小説です。それを踏まえてお読みください。

大きさは、成人男性のそれと同じくらい。

現代女子受けしそうな長い指と楕円形の綺麗な爪。

でも節々がごついから、女の手とは見えない。


吉男は思わず自分の手と見比べた。

指が短くて丸っこい爪だからぶっちゃけ、


(うらやましいなぁ)


そして目をそらした。

しかし、扉のガラスには未だはっきりと映っていた。


2メートルほどの高さで浮遊する物体は、やはりどう見ても、人間の手だった。

一番身近なものだと、スマブラに出てきたラスボスのマジックハンドだろうか。

あの手袋を外したら出てきそうな手。

ビームとか出してきたらどうしようか。いやビームはなくてもいきなり掴みかかってきたりしたら……。


(めんどうだなぁ)


そもそもこれ、なんなんだろうか。


心霊現象的な何かか?

物理的にそこに存在してるなら、他の人にも見えているはずであるけれど、そんな雰囲気じゃない。

痴漢にあれほど騒いでいた乗客たちはすでにスマホに夢中であった。

ツイッターに「痴漢見たよ!」とでも書き込んでるのだろうと検討つけて、吉男もスマホを取り出した。


ちなみに、痴漢の情報と一緒に「手が浮かんでるよ!」というような呟きを探してみたが、それらしきものは見当たらなかった。


(とりあえず、めんどうなことは過ぎ去った)


駅が近づき、吉男も周囲にならって開く扉に向き直った。

人々が動くと、手はそれを避けて天井まで上昇した。

寄ってくる気配はないが、なんだか見られてる気もする。

これが自分にしか見えないとして、それは一体何を意味しているのか……。


だが吉男は、首を振って思考を放棄した。

考えてなんになる?


めんどうそうなものには関わらないほうがいい。

それが吉男にとっての正攻法であった。


考えて、なにか分かるのか?

否、分からん。

そして考えるのがめんどうくさい。


考えてもわからないことを延々と考えてもわからないものはわからないのだから、考えるだけ無駄なのだ。

公式を忘れた数学の式を解こうとしても無駄なのと同じなのだ。


扉が開き、人の流れに沿って吉男はホームに降り立った。

ちらと肩越しに見ると、例の手はまだ電車の中だった。

北を見失った方位磁石のように、ふらふらとさ迷っていた。


「来いよ」


と呟いたのは、ただの気まぐれだった。


なんだかおいてけぼりにしてるような気がして、このまま歩き出したら見捨てたみたいになるのが、後々めんどうな心境にしそうで。

一応声を掛けたという事実を作っておけば、むこうがついてこなかっただけだって言い訳できると思ったにすぎない。


そのまま扉が閉まっていたほうが、もしかしたらもっと、めんどうだとは思わなかったかもしれない。


主人を見つけた犬みたいにこっちに飛んで来なければ、そっぽ向いてエスカレーターに乗ってたさ。


さらに言えば、勢いそのままに突撃してこなければ、俺はひっくり返らずに済んだんだ。


「ぅぐっ」


視界が奇妙にぶれた。

実際に味わったことはないけれど、ボクサーのストレートパンチを食らったような衝撃が走り、吉男はその場に伸びてしまった。

端から見れば、突然ばたーんとサラリーマンが倒れたようにしか見えないから、周りが悲鳴をあげたり声をかけてきたりしてきた。


痛かった。

それは手が、物理的に存在することを示していた。


「大丈夫ですか?」


先程痴漢を取り押さえた駅員が駆け寄ってくる。

頭がぐわんぐわんして、本当に立ち上がってもまともに歩ける自信がなくてできるかぎり首を振ってみると、担架を持ってくるとかなんとか言ってきた。


吉男はすでに半ば意識飛んでいたから、詳しいことは覚えていない。

これで今日は昼出勤で済むかもしれないと思うと、そのことで頭がいっぱいになったし、それだけしかかんがえられなくなった。

まぁそれが脳震盪による意識障害という可能性もなきにしもあらずで、どこかでそれを感じるだけの力は残っていたようだった。


これは、怒るべきなのか、感謝すべきなのか。


(怒るのはめんどい)


だって、無駄にエネルギー消費するし。

ここは、感謝しとけばいいのだろう。

なんだか手のほうも、おろおろしているし。

さっきからずっと背中をさすっていて、今は顔の前に回り込んで、全体、というか全身を使って「ごめんなさい!」ってアピールしてくる。

ぶつかったであろう場所が赤くなっていて、そこそこ痛そうだった。

ふと、指先に注目してみると、別な赤みがある。

血だなぁと思って、それは自分の額から出たものではなく、別なものなのだと直感した。


痴漢の手の甲をおもいっきり爪でひねり上げて、血を滲ませたのは多分こいつだ。


なるほど、なんだか良い奴みたいだ。

宙を漂う謎の物体に良いも悪いもあるのか知らないが、そこは、あれだ。


(考えるのがめんどいくさいから、とりあえず放置で)


良い奴らしき謎の物体もとい右手首から先が現れて、そいつはどうやら俺にしか見えず物理干渉できるらしい。


とりあえず、今考えるのはここまでにしよう。

目を覚ましていなくなっていたら、夢だったってことで。


そう結論付けて、吉男は意識を手放した。

アニメでいうと、ようやく1話終わったらくらいか、半分いったくらい、ですかね。


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