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私、恋をしました2

 レオのお兄さんって、え?

 もしかしてこの人が、次期魔王なの?


 え?私、次期魔王の服汚しちゃったの?

 まじか。厳刑されちゃう?

 私、なんてことをしてしまったんだ……!


「す、すみません……!私、知らなくてっ……それでそのっ……」


 私は混乱して上手く言葉にならない。


「落ち着け、落ち着くんだ」


 彼は私を落ち着かせるように背中を優しく叩く。

 その仕草に私は少し落ち着きを取り戻した。


「ごめんなさい……少し落ち着きました」

「気にしないでくれ。突然話しかけた私にも非があるのだから」


 そう言って彼は苦笑を浮かべた。

 いい人だ……!レオのお兄さんなのに、めっちゃいい人だ!


「それで……どうして泣いていたのか理由を聞いてもいいか?まさか弟がなにか?」

「いえ、レオは関係ありません。恥ずかしいことですが、元の世界が恋しくなってしまったんです……」


 最後の方は小声になってしまった。

 もう本当に恥ずかしい。ホームシックで泣くなんて、子供みたいに思うだろう。


「そうか……すまなかった」

「え?」

「弟が君を無理やり召喚したのがそもそもの原因だ。兄として君に申し訳ないと思う」

「アルドヘルム様……」


 アルドヘルム様は悪くない。だから彼が謝るのは違う。

 悪いのはレオなのだ。奴が諸悪の根源なのだ。

 しかし、私の中でアルドヘルム様の好感度がぐんぐんと上がっていく。

 イケメンで、紳士。まさに理想の男性だ。

 どっかの鬼畜王子とは違う。本物の王子様だ。


「君に申し訳ないと思う一方で、君が来てくれて良かった、とも思っている」

「私が来て……良かった?」

「弟が、いきいきとしている」


 私はアルドヘルム様の台詞に半眼になる。

 そりゃあ、ね……私と鬼ごっこしている時の彼は、鬼かと言うくらい楽しそうですよ。イキイキした表情してますよ。このドSめ!


「あんなに毎日いきいきとしている弟を久し振りに見た。だから、君には感謝している」

「そんな……私は何もしてません」


 むしろ、されてる方です。

 そう思ったのが顔に出ていたのか、アルドヘルム様は苦笑した。


「君が大変な思いをしているのは知っている。レオにもやり過ぎるなとは散々忠告してるんだが……その様子では聞いてないな」

「……確かにキツイですが、でも、レオは私が『できる』範囲のギリギリで手加減をしてくれている、と思います。初日以来、意識をなくしたことはないし……」

「そうか。レオは、なんだかんだ言っても優しい子だからな」


 レオのことを話すアルドヘルム様は、とても優しい目をしていた。

 ああ、この人はレオを大切に思っているんだな、と感じる。


「………知ってます。レオが、優しいことは。普段は鬼畜なことばかりだけど、何気ないところで私を気遣ってくれるんです」

「……召喚されたのが、君で良かった。レオは、色々と面倒な事情を抱えている。何を知ってもどうか変わらずあの子に接してほしい」

「あの……よくわからないんですけど……」

「今はわからなくてもいい。だが、元の世界に戻るまで、あの子のそばにいてほしい」

「えっと……わかりました」


 私はよくわからないまま頷く。

 するとアルドヘルム様はにっこりと綺麗に笑った。


「何か辛いことがあったら私に言うといい。私にできる限り、力になろう」

「はい。でもどうやって……?」

「そうだな……この笛を渡しておく。この笛を吹くと、私にだけ笛の音が届くようになっている。この笛を鳴らしてくれれば、すぐに君のもとへ駆けつけよう」


 私はアルドヘルム様から、小さい笛を貰った。

 落とさないようにか、紐がついている。


「ありがとうございます」


 アルドヘルム様は忙しい。よほどのことがない限り、この笛を使うのはやめようと私は思った。

 笛を受け取った私を見て、アルドヘルム様はいたずらをした子供のように笑って言った。


「これは、私とユウの二人だけの秘密だ。誰にも言わないように。わかったな?」

「は、はい……」


 良い子だ、と言ってアルドヘルム様は私の頭を撫でた。

 私はアルドヘルム様の笑顔に釘付けになって、顔が赤くなるのを感じた。



 ーーー私、アルドヘルム様に恋したみたいだ。





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