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電脳少女は家族に入りますか?

 あれから、危険なほどテンションの高い作戦会議が延々と続いた。

 辰己は、運営長への報告書を会議中にまとめようとして邪魔され、怒号の中に放り込まれ……。

 19時を過ぎて、誰もいなくなり静まりかえった教室。

 辰己は、げっそりした顔でようやく報告書を書き始めた。

 ひかるは、作戦会議中にできなかった泣き顔の謝罪しようと、意を決して辰巳に話しかけた。

「すみません、さっきはいきなり泣いちゃって」

「……うん」

 一拍おいての反応に、ひかるの顔が強張った。

「辰巳さん……? あの、怒ってます?」

「いや。……ちょっと悔しくて、落ち込んでいるだけ」

「そう、ですか……」

 ひかるのしょんぼりした声に、とうとう辰巳はシャープペンシルを置いて、嘆息した。

「あー、ひかるが悪いわけじゃないの。ただの八つ当たりだ。ごめんな」

 机にしな垂れかかり、ばつが悪そうに頭を掻く辰巳。ひかるは不思議そうにまばたきした。

「八つ当たり……ですか?」

「や、お前がこんなに傷ついてるのにも気づかないでさ。その上、真っ先にお前の気持ちに気付いていたのが他の奴だ。自分に腹立つし、悔しいし。……ごめん、ひかる。俺、お前に酷いことした」

 タブレットの中で、ひかるはゆっくりと首を振った。

「いいえ。私、嬉しかったんです。私が、男体化したばかりの時、辰巳さんは拒絶しなかった。言ってくれましたよね、『外見がどうだって、中身はひかるだろ』って『俺が好きなのはひかるであって、男だろうが女だろうが変わんないよ』って。私は、それで救われたんです」

「ひかる……」

 イケメンだ……。外見どころか性格までイケメンであった。

「ね、今でもそう思ってくれているんでしょう?」

 しかも、にっこり笑ってくれたので、辰巳はなんだか変な気分になってきた。

「あ、当たり前だ。だって家族みたいなもんだし!」

 照れが高じて、辰巳は手元の報告書に意味のない記号をぐちゃぐちゃと書いていく。

「家族……」

 そのせいでひかるの呆けた声と、顔に気付くことができない。

「おう! もし妹ちゃんが弟君になっても、変わらず可愛がるし、世話を焼くよ! 俺は、何があっても家族を見捨てない! ……家族ってそういうもんだろ?」

「……もしかして、辰巳さんの好きって”家族愛”のことですか?」

 静かな声でひかるは呟いた。

「か、家族愛って……照れるからわざわざ言葉にするなよ。ひ、ひかるも勿論家族だって! ……俺、思春期男子なのに、何この羞恥プレイ」

 照れとよくわからない心臓の鼓動に、内心のたうち回りながら、辰巳は顔を覆った。

 おかげでひかるがどんな顔をしているのかすらわからない。

「ひかる?」

 反応がないひかるを、指の隙間から伺う辰己。

 そのころにはすっかりひかるはポーカーフェイスで、穏やかに微笑んでいた。

「いえ、なんでもないです。……作戦、絶対成功させましょうね」

「? あぁ、もちろんだ」


 その後、ひかるは珍しく、疲れているからと落ちる許可を求めてきた。

 運営長には一人で報告することになるが、ほとんど承認をもらいにいくだけだ。

 辰己は気前よく頷いた。

 辰己が足を向けたパソコン室。

『運営』が事態の打開に走り回っているんだろうか。

 すでにとっぷりと暮れているのにも関わらず、明かりは煌々とついていた。



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