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『どうして?・・・』
琢弥が目の前に買い物袋を手に抱えて、
現れた由希を豆鉄砲を喰らったかのように
見詰めていると由希は息を切らしながら
「ごめんなさい。遅くなっちゃって・・・
買い物に夢中になって・・・
すぐにご飯を作りますからね!」
というと慌てて、キッチンに入り、
夕食を作り始めた。
『どうして?・・・ ここから出て
行ったんじゃないのか?』
慌しく夕食の用意をしている由希を
琢弥が見惚れていると
「今日はどこに行ったのですか?・・・」
由希は突然、琢弥に話しかけてきた。
『え?・・・』
突然の由希の言葉に琢弥は驚いたものの、
「ちょっと、高速道路が何処まで続いているかと
思って・・・」
正直に由希にそう言うと
「え~ぇ・・・ で、何処に続いていましたか?」
由希は琢弥に高速道路が何処に続いているのかを
聞いた。
琢弥は暗い顔で俯き、
「そ、それが・・・ 途中までは行けたのだが
それから先は別の方法を考えないと歩いてでは無理だ」
と答えた。
「そうですか・・・」
琢弥の話に由希は夕食を作る手を止め、哀しげな表情を
浮かべた。
そんな由希の表情を見兼ねて、
「何か、方法を考えるよ! それまで待ってて!」
琢弥は由希にそう言った。
琢弥の頭には一つの方法が浮かんでいた。
その夜は疲れて、二人とも深い眠りに付いた。
翌日。 一つの方法を実行するために琢弥が
出かけようとすると
「ちょっと待って!・・・これ」
由希は琢弥のことを呼びとめ、琢弥に手作りの
お弁当を差し出し、ニッコリと微笑んだ。
「あ、ありがとう!・・・」
琢弥は照れくさそうに由希にお礼をいうと
由希が差し出した手作りのお弁当を受け取り、
家を後にした。
琢弥が考えた方法とは・・・
高速道路内で動けなくなっている車で移動するものだった。
だが、車もバイクも運転できない琢弥はどちらとも
マスターする必要があった。
「さて。まずはバイクだな・・・ 簡単そうな原付からかな?」
そう思い立った琢弥はまず、街外れのネットカフェに
入り、原付バイクの動かし方と運転方法を調べた。
その後、街中を探し回り、燃料が微かに残っている
原付バイクを発見した。
「すまない! ちょっと借りるな!・・・」
琢弥は独り言のようにそう呟くとネットカフェで
調べた方法で原付バイクのエンジンをかけた。
始めは失敗を繰り返した琢弥だったがコツを掴み、
エンジンをかけるもの運転も慣れた。
夕暮れ近くになり、
「今日はここまでにするか?・・・」
琢弥は家に帰宅する前に街にあるガソリンスタンドで
原付バイクの燃料を補充し、家へ帰宅した。




