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 猫の額のほどの小さな庭に洗濯物を干す

 新妻のような由希を琢弥はリビングのソファに

 腰掛け、ニヤニヤと眺めていた。


 「これで良し!」


 洗濯物を干し終わった由希が琢弥のもとに

 やって来て、


 「あの~・・・ この街から抜け出す

 方法はないのですか?・・・」


 琢弥にそう聞いてきた。

 そんな由希の一言にふいに現実に戻された琢弥が


 「う~ん・・・ この街の北には山、南は海。

 西には川が流れていて、その先に街があるみたいだけど・・・

 橋も何も架かっていなくていけないんだ。

 東には一応、道が続いているけど、その先が

 どうなっているかはわからないんだ・・・」


 由希に正直に街の状況などを話すと


 「そ、そうですか・・・」

 

 由希はガックリと肩を落とした。


 「何かあるの?・・・」


 琢弥が落ち込んでいる由希に話しかけると


 「いいえ、なんでもないです!」


 由希は慌てて、誤魔化した。

 でも、明らかに由希は何かを隠しているようだった。


 翌日。


 琢弥は家に由希を残し、一人、東側の高速道路の

 入り口にいた。

 先へと続く高速道路を眺めながら


 「さて、どうしたものか?・・・ 本当にこの先は

 どこかに続いているのか?・・・」


 不意に不安になったが由希が見せた哀しげな表情が

 頭を過ぎり、


 「まあ。いける所まで行ってみるか?・・・」


 独り言を呟くと車がまるで走っていない

 静かな高速道路を琢弥は一人、てくてくと

 歩き始めた。

 歩けど歩けど、道路はずっと、続いていて、

 終わりが見えなかった。

 途中に燃料が切れたいくつか、車が止まっているが

 中には誰も残っていなかった。

 2時間ほど、歩いた頃だろうか? 

 琢弥はやっと、パーキングエリアに辿り着いた。

 ここも誰もいなく、静まり返っていた。


 疲れ、パーキングエリアに椅子に腰掛け、


 『まだ、先にいけそうだが・・・ 歩いていけるのは

 ここが限界だな?・・・ 何か、別の移動方法を

 考えないと・・・』


 琢弥がそう思いながら、とりあえず、その日は

 街に引き返すことにした。


 夕暮れ過ぎに琢弥が疲れた身体を引きずりながら、

 家に戻ってくると家は静まり返っていた。


 「あれ? あの子(由希)は?・・・」


 家に居るはずの由希は何処にもいなかった。


 『そうだよな~・・・ こんな所に俺なんかと

 いつまでも一緒にいたくないよな~・・・』


 由希がいなくなったことに落ち込みリビングのソファに

 どっかりと腰を下ろしていると


 「ただいま~!・・・ 遅くなって、ごめんね!・・・」


 買い物袋を両手に持った由希が玄関から入ってきた。


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