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 だが、その大きなゴキブリは普通のゴキブリとは

 違っていた。

 口には鋭い牙が生えていたのだった。

 その大きなゴキブリは由希からターゲットを

 琢弥にかえ、牙を剥き出しに襲い掛かってきた。


 『なんだよ! コイツ・・・』


 襲ってくる大きなゴキブリに琢弥は驚きながらも

 咄嗟に近くにあった掃除機の柄を持つと思い切り、

 その大きなゴキブリを殴りつけた。

 だがしかし、大きなゴキブリは寸前のところで

 琢弥の攻撃を交わすと壁にへばりつき、キリキリと

 牙を鳴らし、琢弥たちの様子を窺っていた。

 琢弥も大きなゴキブリから目を離さないように

 見詰め続けながら


 「だ、大丈夫?・・・怪我はない?」


 恐怖でその場に座り込んでいる由希に声を掛けた。

 しばらく、放心状態だった由希だったが


 「・・・え、ええぇ。大丈夫です」


 返事を返した。


 「良かった・・・今のうちにここから逃げるんだ」


 由希が無事だったことにホッと安堵した琢弥は

 由希に逃げるように言った。


 「・・・でも・・・」


 由希が不安そうに琢弥のことを見詰めていると


 「僕もすぐに行くから・・・ まずは君から

 先に逃げるんだ・・・」


 琢弥は再び、由希に逃げるように促した。


 「わ、わかったわ・・・」


 由希は琢弥の指示に従い、その場から逃げ出した。


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