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 「ただいま~!……」


 琢弥が疲れた身体を引きずりながら、家の玄関を開けると

 家の中から返事はなく、まるで廃墟のようにシ~ンと

 静まり返っていた。


 『あれ? あの子は?……』


 由希のことを探してみたがやはり、家の中に由希の姿は

 どこにもなかった。


 『出て行ったか…… そうだよなぁ……

 他人の俺と暮らすのはイヤだよな~……』


 琢弥はがっかりし、リビングのソファに腰掛けていると


 「ご、ごめんなさい! 遅くなっちゃって……」


 由希が息を切らしながら、昨日と同じように琢弥の前に

 現れた。

 琢弥の前に現れた由希の洋服は少し汚れていた。


 「すぐに夕食の用意をしますね!……」


 キッチンに立ち、夕食の準備をし始めた。

 琢弥が驚いた顔で由希のことを見惚れていると


 「……あっ、そうだ!……お弁当の容器を出してくださいね!」


 由希が琢弥に声を掛けてきた。


 『あっ! 忘れていた!……』


 由希にそう言われ、お弁当箱のことを思い出した

 琢弥は慌てて、お弁当箱を取りに戻った。


 琢弥が空のお弁当箱を持って、由希の前に戻ってくると

 由希の洋服はさっきと違っていた。


 『あれ?……』


 「服、着替えた?……」


 気になった琢弥が由希にそう尋ねると由希は自分の服を

 見ながら


 「うん! ちょっと汚れていたから……」


 由希は琢弥にそう答えた。


 『そうか!……』


 由希が嘘をつかずに正直に答えたことで琢弥はそれ以上、

 由希のことを疑わなかった。


 たが、その次の日もその次の日も……


 琢弥が夕方に家に戻ってくると家には由希の姿が

 何処にもなかった。


 『さすがにおかしいぞ! こんなに毎日、彼女は

 どこに行っているんだ?……』


 琢弥は由希の怪しげな行動を疑い始めた。


 ある日。琢弥は勇気を出し、


 「あのさ~…… 毎日、何処に行っているの?……」


 由希と食事をしている時に由希に毎日、何処に

 行っているのかを聞いてみた。


 『え?…』


 琢弥の質問に由希は一瞬、驚いた顔をしたが


 「べ、別に…… ただの散歩ですよ!……」


 由希は咄嗟に誤魔化した。

 そんな由希の態度に琢弥は


 『何かを隠している!』


 確実に由希のことを怪しんだ。


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