作品概要・テーマ解説1
とりあえず、作品内容のおさらいと説明から。
生存の為に、生き物が他の生き物の魂を“喰う”世界で、逃亡の旅をするユキトとスカンクのジョージ、そして別の理由から逃亡するアステル。
その二人と一匹の、逃げたり逃げたり、たまに戦ったり、やっぱり逃げたり――そんな話です。
冗談のようで、大体合ってますよね?(笑)
舞台のドーア国は、近世ヨーロッパ風のイメージでした。
中世ではなく近世というのがミソで、街中にネオンサインがあったり、(主にモノクロ)カメラが普及していたり。交通手段は鉄道もありますが、まだまだ馬車も一般的という事になっています。
確か技術的には、1910年代ぐらいを想定していたような?
そういう『発展途上で、国がぐんぐん成長している最中』という空気感を出したくて、あえてファンタジーの王道の中世っぽさからは一歩先に行った時代にしました。表現出来ていたかは謎ですがね……。
国は発展していても、まだまだ古い因習が残り、窮屈な思いをしている人がいる。人魚と呼ばれるアステルがまさにそうで、ユキトもヤヴァン族の掟のせいで人生が狂った一人ですからね。
そんな闇の部分が、明るい街並みとは対照的に描かれ……られていたら良いですね!(泣)
作品の大まかなテーマは『人生』でした。
自分を曝け出して生きにくい世界で、それでも懸命に自分の人生を生きる“喰われた”人々を主軸に置いていた――と、当時のメモに書いてあったからそうなんでしょう(笑)
ユキトは“喰われた”後もなお人間である自分を捨てず、他人からは直接血を奪わず生きていこうと抗い。アステルは“喰われた”事で自分を守る為に、他人を偽って生きる事を強いられ。
そりゃ生きにくいってもんですよ。他人と接点が持ち難いのも無理はない。
そこから、どちらも周囲の人間と接して、自分の内心を見つめ直し、一歩前に進むというところで終わらせる事が出来たので、そこは満足しています。
他方、オノリイヌのエピソードは失敗例というか、バッドエンドになったらこうなる……みたいな感じで入れました。
“喰う”側も“喰われる”側も、そのもう一方の人生(相手が人じゃない場合もあるけど)に捕らわれ過ぎると、本来生きるべき道を外れてしまうという事ですね。
それじゃ何の為に魂を奪われたのか、もっと言えば命を落とす羽目になったのか、まるで無駄死にですからね。
作中でユキトが言う、「誰かの犠牲の上に立って生きるなら、胸を張って自分の人生を生き抜くべき」という心持ちは大事だと思います。
食物を口にするのだって、まさに何かしらの犠牲ですからね。――とか話し出すと、某酪農学校漫画の話になってしまいそうなので省略するとして(笑)
あとは細々としてテーマとして『人は、頑張っている人を好きになる』とかもありました。
序盤でシャオンが「人を好きになるのは、何も恋愛感情だけではないのでは?」と言うのですが、つまり異性や同性なんてのは関係なく、『人間性に惹かれる』という事が世の中にはあるという事ですね。
シャオンのアステルに対する愛情は、恋愛感情抜きの主従愛であり家族愛なのでしょう。
ユキトのアステルに対するものも友情とかよりは、気分的には『好きな芸能人を応援する』あの感覚に近いものなんじゃないですかね。
どちらも見返りを必要としない、本当にただただ“その人がそういう人だから”自然と支える……みたいな。
……作者なのに、自分もよく分かってませんが。
要するに、『助ける事に理由はいらないけど、助けたいと思うのはそう思わせてくれる人だよね』とでも言いたいんでしょう!(←半ばヤケクソ)