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十二連世界の『最強』  作者: Red_stone
2章 自分探し
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第5話 色欲の「ラクスリア」

これからの予定を風呂につかりながら考えていた私。

とりあえず、私の中では適当に世界旅行をすることになったわけだが。


風呂の扉を開ける音がする。

装備を外して入る風呂には、誰も近づけるなと命令しておいたはずだが。

賊に遅れをとるとは思えないが、ステータスは装備着用時と比べて明らかに下がっている。

ダメージもある。


私の実力の1割を持っても倒せないと言うのは、中々の化け物という事になるが。

そんな気配はない、な。



入ってきたのは女。

ここは女湯ではないのだが。

というか、今現在は私の専用だ。

豊満な体は、色気を振りまいてるかのようで、とても妖艶だ。

タオルで隠しているが、そのタオルは小さくて逆になまめかしくなっている。

それも計算づくだろうが。


とはいえ、今の私には情欲など一切わかない。

なんというか、相手のレベルが低くて同じ人間とは思えない。

いや、どちらかというと私が人間でなくなったのか。

寿命も200レベルとそれ以外では異なる事も一因か。


気を付けないと触れただけで相手を壊してしまうしな。

いつも相手を壊さないように気をつけるのはごめんだ。


「何のようだ?あまり許可なく本家に入ってほしくないのだがな。ラクスリア」


「あら、ごめんあそばせ。しかし、許可ならちゃんとあなたの秘書にとってありましてよ?」


いけしゃあしゃあと言う。

誰が人の入っている風呂場に入っていいなんて許可を出すと?

まあいいさ。

こいつの侵入を防ぐことなどできない。

それくらいでなければ、諜報を一手に引き受けるラクスリアの当主にはなれない。


それにしても人の入っている風呂に入るほどの面の皮の厚さはどうかと思うがな。

少しくらい恥ずかしがれ。


「繰り返させるな。何のようだ?」


「ええ。あなたを口説き落としに参りましたの」


欲情しません?と首をかしげるラクスリアを睨む。

話をそらす癖があるのがこいつの悪いところだ。

そんな色恋沙汰に興味などあろうはずがない私が、話に喰い付くなどとそれこそありえない。

万が一そんな関係になったとしても、待っているのは泥沼だろうしな。


「言わないのなら、消すぞ」


「やれやれ、冗談の通じない殿方。もう少し余裕を持っても、よろしいと思いますわよ。そんなことだからモテませんのよ。では、良い知らせと悪い知らせのどちらからお知らせいたしましょうか?」


少し殺気を混ぜて、にらみつける。

消すと言うのはあながち冗談ではない。

本来、他の家とは対立関係になっていることが原則だ。


そしてこと戦闘に限れば、あくまでこいつは諜報員に過ぎない。

戦闘に関して私は絶対に負けず、この距離なら逃がすこともない。

あくまでこの女にできることは敵を陥れることだけで、戦闘することではない。


「悪い知らせからでいい」


「あら?あらあらあら。少しは余裕が出てきたのではありませんか。いつものあなたなら、私が言った順に選んでいたではありませんか。何に追い立てられていたのかは知りはしませんが。まあ、なんにしても余裕があるのはよいことです。その調子で私に優しくしてくださるとうれしいのですが」


まずい。

不審に思われたか?

いや、この程度なら問題ないはず。

こいつ相手なら睨んでおけば問題ないな。


「さっさと言え」


「そんなに睨まなくともよろしいのに。では、悪い知らせからでしたわね?漆黒の領域は以前拡大を続けておりますわ。闇人側の領土に存在しておりますのにね?どうせなら光人側の領土にあったらよろしかったのに」


わざとらしくため息をつく姿を見て思う。

三文芝居だな、と。

確かに、光人共が被害に会うのなら大歓迎なのだが。

さて、俺はこんなにも他人の不幸を願える人間だったか?


「そんなどうにもならないことはどうでもいい。漆黒の領域は冥界の扉が開いた影響だぞ?人間ごときには、表面的な現象しかわからないだろうよ。それで良い知らせというのは?」


「少しは付き合ってくださっても良いのに、つれない殿方。良い知らせというのは近々光人が侵攻を開始するとのことですわ。愚かにもやつらが死にに来るのを高みから眺めましょう。我ら闇人は光人共を虫けらのように殺すのが最高の娯楽。そう作られておりますもの」


ニタニタとこれまでの妖艶な笑みから、奈落のような蔑みへと表情をシフトする。

突然変わったその雰囲気は、まるで地獄の様で心地よい。


作られている、ね。

言いえて妙だ。

私は光人を殺せる機会を得てうれしいが、臆病な俺は気後れしている。

これは本当に神だがなんだか知らないがそういったものに、私達がそういう性質を付与されていると見て間違いないだろう。


私には光人を憎む理由が一切ない。

それでもなお、どろどろとした嫌悪感が光人という言葉を聴くたびに私の中を暴れ回る。



は、俺も意気地のないことだな。

どうせ、戦いに出てくるのは戦士か傭兵くらいだ。

民間人の虐殺などは闇人側では、ほとんど行われてない。

相手の総数が多すぎて、本土襲撃まで手が回らないのだ。


何よりそんなことは大罪の国の本分ではない。

行われていないと言うより、自分の国に手一杯でできないと言ったほうが正しいか。

.......あいつらどれだけ増えれば済むんだ?

ゴキブリ共め。


「で、今度も傭兵ばかりの構成か?指揮官を潰した後散り散りになって、魔物に食い散らかされても何も反省しないらしい。あいつらは自国の兵士がよほど大切らしいな。勝たなければ意味が無いというのに阿呆らしい」


「そうでもありませんわよ?無意味な自殺に見えてアレでも道や魔物の情報を収集していたようですもの。ま、あんな有様で情報収集といわれてはこちらとしては嗤いが止まりませんが。それでも今度はおそらく、まともに戦わなくてはならなくなるでしょう。戦力の要であるイラの部隊はどうなっていますの?」


へぇ。

いたずらに傭兵を送り込んで来たのは、遊びではなかったと言うことか。

それでも、あそこまでの戦力を消耗させながらやっていることが地形を調べることだけとは、呆れ果てる。

本当に殲滅させられるために送ってきたとしか思えない有様だったが。

指揮官部隊を強襲、殲滅して残りを脅かしてやれば散り散りに逃げていった。

逃げていった先で、来る前には簡単に処理できていた魔物に殺されているのはお笑い種だった。


義理も恩もない傭兵が指揮官が死ねば逃げていくのは当然とはいえど、それならそれで手を打てばいいと思っていたのだが単なる生贄に過ぎなかったか。

その影で、こそこそと地形を記録していたとは驚きだ。

光人の知能は思っていたほど低くはなかったか。

仲間を使い潰す、その精神には恐れ入るよ。


「お前のほうが良く知っているのではないか?聞きたければアメールに、秘書に聞け。イラ家を取り仕切っているのはあいつだ。私はただの、象徴だよ。何てことのない、普通のな」


「あなたの影響力はあなた自身が思っているほど低くありませんことよ。ま、もちろん彼女とは親しくさせていただいておりますけど。それに、アメール・ファルス・イラ、あなたの妹はあなたに絶対の忠誠を捧げています。あなたの号令の元、全ての能力を尽くし、あらゆる手段を用いて命令を達成することでしょう。あなたこそが7大罪の凶家、ひいては大罪の王国の影の支配者なのではありませんか?」


7大罪の凶家、か。


憤怒 『イラ』


色欲 『ラクスリア』


傲慢 『スペルヴィア』


嫉妬 『インヴィディア』


怠惰 『アケディア』


強欲 『アヴァリティア』


暴食 『グラ』


の七家で構成された7大罪の凶家は王の支配の下、貴族院と権力を2分する。

七家の当主は皆曲者ぞろいで、とてもではないが支配されるようなタマではない。

それでも、1番の強制力を持っている人間といえば、私しかいない。

この私―ルシフェレス・ファフニル・イラこそが最強なのだから。



さらに、金の問題もある。

ろくに他国との交易もできないこの国が豊富な金を持っているのは代々のイラ家当主が魔物狩りで馬鹿らしくなるほどの大金を稼いでいるからだ。

それほどにランクの高い魔物の素材は高く売れる。

強い武器がなければ、魔物に有効なダメージを与えられないこともあるのだから誰でも欲しがるのは当然だ。


しかし、その素材を売ろうとするものはほとんど皆無に近い。

ランクの低い者がランクの高い魔物に挑むのは命がいくつあっても足りないし、武器のことを考えれば素材的にはマイナスでしかない。



そして、そんな魔物を倒せるのは例外なく社会不適合者だ。

人里に近づこうともせず、高ランクの魔物の住処で暮らすことが通例。

むしろ、魔物の王として見られることもある。


イラも例に漏れないが王が手綱を握っており、王に手出しすることは難しいと言う条件があるからこそ人里に入って行ける。

イラは代々不義理を働いた者全てを殺してきたこともあって、騙されたりすることもない。

逆に言えばそんな虐殺をしても許されるのがイラだ。

むろん限度はあるが。




ふむ、私が裏の支配者でもおかしくない気がしてきた。

いや、裏の支配者としての地位を確立しないように旅に出ることに決めたのだった。

危ない、危うく為政者になるところだった。

四六時中、紙とにらめっこはごめんだ。

それに私のアイデンティティは戦闘狂だ。


「.......そんなわけがないだろう。この国を治めているのは王だ。王以外にわれわれを纏め上げられる人は存在しない。なにせ、100人以上の候補者から唯一生き残った強き者が王となるのだから」


「あなたなら殺せるのでしょう?誰が隠していたとしても。誰が圧力をかけたとしても。誰が守護していたとしても。無慈悲に、圧倒的に、完膚なきまでに候補者どもを殺せるのでしょう?だとしたら王を決めるのはあなたです」


くく、確かに殺せないわけがないな。

王の候補者は王宮から出ることを決して認められない。


相手が逃げられないのならばイラの独壇場だ。

最後の一人以外は王宮以外の世界を知ることもなく死んでいく。

それは決定事項でなく、確定事項。


破る者が現れれば、7大罪の凶家が総力を挙げて処断する。

だからこそ、イラに認められなかった者は王にはなれずに死ぬ。

しかし.....


「そんなことはないさ。イラは殺すことができても、誰かを守ることはできない。それは役割でないから、無理だな。イラに認められなかったものが死ぬのは当然として、貴様らにも認められなくてはならないわけだ。もっとも、そんな王を作り上げるためにこんな血生臭いシステムがあるわけだがな。残酷だな、強き者を作り上げるために弱き者を犠牲にするとは」


「あなたが言いますか?それを。でもまぁ、そうですわね。見るからに破綻しそうなシステムなのに良くここまで国が続いたものです。やはり能力さえあれば.....ということなのでしょうね。そろそろお暇いたします。私も暇ではないので。では、ごきげんよう」


能力さえあれば、ね。

一面の真実は捉えているのだろうが、単に運がいいからと言う可能性もあるな。


ま、私にはこのシステムを変える気もないし、変えられもしない。


「あ、そうそう。言い忘れてましたわ。貴族のお一人が殉死なされましたので確認をよろしくお願いいたしますわ。それでは本当にさようなら」


やれやれ、殉死ね。

物も言いようだ。

どうせ裏切ったから殺したのだろうけど、本当に容赦がない。


光人に内通した時点で殺すとか、ね。

実際に被害が出てなくても殺すから、貴族はかなりの数が殺されてる。

ラクスリアには記憶を覗く魔術があるから、いい加減に貴族もばれないでいるのは不可能だと学べばいいのに。

それとも多少の賄賂あたりは許しているから、それで調子に乗るのかな?



本当に、ままならないね。



さて、私も少し敵の殲滅を手伝うことにしようか。

こちらの戦力はできるだけ敵には明かしたくはない。

既知のものなら対処法を生み出せるが、未知のものはそうは行かない。

未知のものに対しては、過剰戦力のごり押しで行くしかないからだ。

私だけで殲滅できればいいが、夢物語だな。


私のことは知られている。

例え敵が1万人いたとしても殺される気は無いが、殲滅攻撃ができないと無視されて終わりだ。

しかし、殲滅攻撃ができる人物なんて歴史を紐解いてもそれほど数は多くない。

そのおかげでいちいち戦闘ごとに地形を変えられるような事態にはならないのだが。

大地にとっては良いことだが、敵を一掃できないのが困ったところだ。




基本戦略は以前と同じくラクスリアに指揮官を探させて強襲を繰り返し、指揮官部隊を全滅させて有象無象を掃討するだけだな。

今回は正規兵が来ることだしそう上手くことは運ばないだろうが、私のやることは変わらない。


敵との戦いが楽しみだ。




思えばこのとき、私は油断していたのかもしれない。

いや、浮かれていたとも言えるし、舞い上がっていたとも言える。


要するに調子に乗っていたのだ。

どうでもいいような徒の人間だった自分が大きな力を手に入れて、強固で冷静な心まで手に入れた。

普通なら、自分の心が変わっていくことに恐怖を覚えたかもしれない。





でも、それは大多数の人間の意見で俺はそうではなかった。

強い人間に変わって行くのがうれしくて、自分の心がどうなるかなどどうでも良かった。

しかし、俺は俺でしかなくって私にはなりきれなかった。


次からやっと戦闘シーンです。

俺と私の使い分けが少しややこしいでしょうか。


裏と色気がいっぱいな女性は好きですか?

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