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十二連世界の『最強』  作者: Red_stone
5章 終幕への序章
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第43話 7国会談

ルシフェレスは大罪の国での会議の後で6国に向けた文書を送り、自らを王の代わりとすることを認めさせた。

 6国の方でも、このようなことでは事を構えたくなかったのだろう。

 そして、ゴネても偽物を送り込まれるだけというのも計算に入れている。

 更に言うならば、彼らは現王の顔すら知らない。

ならば顔が知られているルシフェレスに出向いてもらったほうが手っ取り早い。


文書が送られたわずか7日後の今日に7国の代表が集まって会談が行われる。

参加するのは――

審判の国

戦争の国

永久の国

リヒト法国

シュヴァイン法国

ヴァイス帝国

そして、大罪の国。


「さて、私は会談の内容は知らされていないのだが――、何の話かな?」


7国の代表者の前で余裕たっぷりに言い放つ。

さすがにここに王様はいない。

しかし、ルシフェレスは知らずともかなり地位のあるものたちが顔を並べている。

護衛も100レベルを超えるものばかりだ。

たとえルシフェレスといえども、この場で皆殺しを演じるのは不可能といっても良いだろう。


「災害の話ですよ。2ヶ月前に我々を襲った紅い夜は君たちの仕業ではないかという嫌疑がかけられていてね」

「ふむ。大した冤罪だ。むしろ我々はそれを防ぐ側であるというのに。無論、1回目は防ぐこと能わなかったがね。それは単なる災害であって何者かの意志が働いたわけではない」


「嘘だ!」

「責任逃れをするな!」

「秘境に隠れ住む魔物どもめ!」

「大罪の国は我々に災いをもたらしてきた。今回もそうに決まっている!」

「罪人共が!」


多くの野次が飛ぶ。

こう勝手に叫ばれては聞こえる声も聞こえないが、非難の空気は分かる。


「静まれ! 叫んでいれば事態が勝手に解決してくれると思っているのか!?」


ルシフェレスが一喝する。

その一喝には死を連想させるだけの威厳が含まれており、場が静まり返る。

さすがは世界を滅ぼす役割を持つ『魔王』を倒した人外だ。


「イラ様」


そこに付き人の貴族からの仲裁がはいる。

このままでは喧嘩を売られるとでも思ったのだろう。

この分ではルシフェレスから宣戦布告してもおかしくない。

ルシフェレスは短気ではないが、愚か者を保護する寛大さは持ち合わせていない。


「ふん、貴様に任せる。状況を説明せよ。どうやら、こいつらは世界の危機を一片たりとも理解できてないようだ」

「は。了解しました」


ルシフェレスが下がり、仲裁した貴族が進み出る。


「我々が調査したところによりますと、“死滅堕衰の門”の向こう側の世界――我々は『異界』と呼称していますが、紅い夜はそこが私たちの世界に繋がった影響です。向こう側の世界は人知を超えた世界であり、紅い夜は人間が理解できる程度の小物が流れたものと考えていただきたい


「門とはいっても、物質的に形を持っているわけではありません。世界のどこにでも開いているのです。ゆえに、どこに逃げようが影響から逃れることはできません。あなた方が遭遇したのは弱い異形――、私達の世界で言えば羽虫が大量に紛れ込んできただけです


「このままで事態が進行していれば、世界は異界と同化し『漆黒の領域』と同様の状態になったはずです。しかし、イラ様が『破滅』エリス・アレストラ・ネロを利用し門を封印しました。しかし、見立てによれば封印はもって3ヶ月ほどです。あなた方の技術では一日たりとも封印を伸ばすことはできないでしょう。大罪の国でも2度目の封印は在り得ません。これに限っては大罪の国の至らなさです。もっとも、二度と“死滅堕衰の門”は封印できるような形で出現してくれないでしょうが


「これが紅い夜について我々が知っていることの全てです」


言い終わると後ろに下がる。

あくまでも大罪の国の代表はルシフェレスだ。


「証拠は?」


リヒト法国代表が質問する。

疑っている相手に対しては当然かもしれない。

しかし、この場では疑う事自体が不義理となる。


「証拠? 何故そのようなものを求める? 求めたければ、まず貴様から“死滅堕衰の門”を開いたのではない証拠を見せろ。話はそれからだ。そもそもが会談はここにいるものが嘘などつかないと前提にしておかなければ成立しない。相手の言葉に証拠を求めて、どう会談を成立させるつもりだ?」

「しかし、疑わしいことは事実です」


相手は引かない。

確かに大罪の国は怪しくないとは言えない。

しかし、そのような論法では相手の挑発にしかならない。

その条理を無視し事実を捻じ曲げる態度にルシフェレスは苛立つ。

もっとも、万人が納得できるような類の証拠など用意できないのも事実である。


「怪しい――、それは宣戦布告か? 私たちのことを君たちは知らない。なぜなら君たちが私達に接触しようとしてきたのは、あらかたの設備を築き生活方法を確立させた後だったからな。それ以前に接触してくれば協力もしたかもしれないが、君たちは協力が必要なくなった後に協力を申し出てきた。おそらくは大罪の国を支配するために」

「そのような事実はありませんよ。ただ、あなた方がつれなく協力を拒んだことは歴史書に乗っていましたがね」


 いけひょうひょうと答える。

 そのような態度にルシフェレスは頓着せず、叩き潰すように言を重ねる。


「君の祖先が自分に都合の良い書き方をしないとでも思っているのか? 実際の現実を書き表した歴史書は大罪の国にしかない。もっとも、書かれていることはわずかでしかないがな」

「我が国の歴史にけちを付けるというのですか? あなたはこの会談を滅茶苦茶にしたいようですね」


 挑戦的な態度で望むのはルシフェレスだけではない。

 舌戦の様子を呈してきた。

 ルシフェレスには友好的な要素が何一つなく、相手には敵意がある。


「それは君の方だ。疑わしいなどと言って、証拠を求め――根拠のない疑いで持って我々を貶めた。余程戦争をしたいのかと思ったよ。無論、我々はなんとしても避けたいがね。人にはできるだけ死んでもらいたくないのだよ」


「何を白々しいことを」

「根拠のないのは貴様の方ではないか」

「結局疑わしいのは変わらん」


代表たちは口々につぶやく。

この会談は平和のために開かれたのかもしれないが、彼らは結局大罪の国を信じてなどいないのだった。

それでは、逆に戦争の開幕の口実作りにしかならない。


「馬鹿な事を言っているな。結局、貴様らは私達に戦争を仕掛けたいのか? それとも協力を望んでいるとでも。その態度で?」


やれやれといった具合でルシフェレスは質問する。

彼とて平和を望んでいるのだ。

ただの一つの闘争もない世界を望んでいるという程ではない。

それでも、この状況で、いや、この状況でなくても人が多く死ぬ戦争という選択肢は選びたくなかった。

だから、彼らの戦争を望んでいるとしか思えない態度に辟易してしまう。

こんな手間をかけてまで貴様らは戦争をしたいのか? それがルシフェレスの本音だった。


「それは全くの誤解です。我々とて平和を望んでいます。あなた達を信じたいのですよ。信じるに足るだけの証拠がほしいのです。このような状況で不安になってしまっているのですよ」

「信じたい? 馬鹿な。嘘の上に平和を築こうとでも? 貴様らは我々を疑いたくて疑っているのだよ。信じているのなら、証拠などいらない。信じていないからこそ、証拠などを欲しがる。しかし、相手を疑っていては良い顔をされない。だからこそ、言葉だけでは信じていると言う。態度と言葉の裏で信じていないことを表明しているのにな」


 だが、平和を望む心は彼らの方が上だ。

 ただ大罪の国を信じられないというだけで。

 いや、それならここまで議論は敵対的なものにはならない。

 結局、相手は大罪の国を支配しようとしている。

 彼らの認識で、大罪の国が自分より上などということは絶対にないのだから。


「それは穿ち過ぎというものですよ。信じるに足る証拠さえ有れば、我々は協力できます」

「それこそ穿ち過ぎだな。信じるにたる証拠というものがどの程度であるかは知らんが、一度君たちの利益を脅かせばすぐにでも疑い出すのだろう? 自分で気づいているかは知らんがな。それが君たちの習性で、また自分の醜い面からは目をそらすというのも君たちの習性だ」


 あくまで証拠を欲する相手。

 そんなものは不可能と蹴るルシフェレス。


「そのようなことはありません。信用にはまず何をおいても証拠は必要でしょう? それとも我々とは協力できない、と」

「知らないものは提出しようがないな。信じるに足る証拠とは一体全体何を指している? おおかた人質か何かだろう。人質を出せというのは相手を疑っている証拠だが、自分から言い出すのは負い目があるだろう。だから相手に言わせるつもりだった。人質を握っていれば優位に立てるしな。このように言われては、己の醜さを直視する結果にしかならんだろうが。結局、君たちが大罪の国を信用することは不可能なんだよ。違うというのなら、なにか具体的に証拠の例でも出してみろ」


 再三の要求を繰り返す。

 それに対して牽制する。

 こんなことを言われては滅多なことは言えない。

 そもそも、相手を信用できて、なおかつ相手より優位に立たない証拠とは一体何なのか。


「信用出来ないなんてことはありません。むしろ、そんな言いがかりをつけてくる貴方こそが我々を信用出来ないのではありませんか?」

「具体的な証拠の例は?」


「私は貴方に我々が協力するための一歩を踏み出して貰いたいと――

「具体的な証拠の例は?」


「ですから、我々が協力しあうには、貴方にも譲歩してもらわねば――

「具体的な証拠の例は?」


「……く。そのようなことは一朝一夕で答えられるわけがありません。どのような証拠なら適しているか決定するには時間が――

「十分あった」


 言葉を遮って言う。

 心理的な効果を狙ってのものだが、かなり無礼な行為だ。


「はい?」

「ないはずがない。証拠を求めることは最初から決めてあったはずだ。そのためにこの会談を用意したのだろう? それが決めてなかったとすれば、それは私の言う人質を求めていたか、もしくは難癖をつけて戦争をするつもりだったかの二択でしか在り得ない」


考えなしという選択肢はルシフェレスには想像もつかない。

彼にとって政治というのはあるべき姿を鉄の意志で実行するものである。

よって曖昧で物事を考えることは大嫌いで、そんなことは思ってもみなかった。


「そ、それは……」


だとしても、彼には言える言葉がない。

ただの考えなしです、などと誰が言えるだろうか。

そして、証拠は人質にしてくださいとも言えない。

それでは逆に戦争をしたいと言い出すようなものだ。


「選べ。敵対か、協力か――。2つに1つだ」


ルシフェレスは冷たい目で宣告する。

曖昧さを嫌い、厳然たる結論を求める。

そんな姿勢に反発するものが出ないはずもなく。


「ふざけるな! 我が国に隷属しろとでも言うつもりか? そちらがそのつもりなら、厳然たる対処をするぞ。やはり、何をやっているかも分からぬ害にしかならぬ国など滅ぼさなくてはならぬ!」


賛同する声が上がる。

悲しいことに、大罪の国は初めから信じられてなどいなかったらしい。


「それが君たちの答えか。悲しいな、やはり戦争を仕掛けるつもりだったか。戦争を仕掛けてくるのならば、受けて立つ。話は終わりか?」


ルシフェレスの勘違いには、悪口雑言でもって答えられる。

その諸々を意味のない戯言と判断して立ち去る。




こうして、世界は戦争へと突き進む。


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