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十二連世界の『最強』  作者: Red_stone
5章 終幕への序章
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第40話 戦争の予感

バトルは45話から。

「さて、話を聞かせてもらおうか。ラクスリア。私がいない間に何が起こった?」

「さて、どこから話したものでしょうねぇ」


ルシフェレスの眼の前に居る金髪の妖艶な女性は諜報員の元締めだ。

もっとも、彼女の溢れんばかりの巨乳も、影を感じさせる怪しい笑顔も、彼にとっては興味の対象ではない。

まあ、この容姿があれば諜報も容易に進むことだろう。

実際に能力も優れている。

どれほどかというと、この大罪の国の殆どの情報を統括しているほどだ。

彼女に聞いてわからないことは、国自体ですら分からないような呪われた情報だけ。

ルシフェレスが戦闘に関する化け物なら、彼女は情報に関する化け物だろう。


「キリは良かったとはいえ、緊急で呼び出されるとは思っていなかったよ。この世界に帰ってきてから数分と経ってはいないが、化け物は見当たらないようだがね」

「いいえ。たくさんいたでしょう? それはもう――、うじゃうじゃとごみのように」


「ふむ、人間か? とうとう痺れを切らしたか。奴ら、そんなに殺すのが好きか? 英雄のように、殺せば幸せになれると思っているか? いずれにせよ、救いようのない愚か者どもだ」

「全くですね。この大罪の国に攻め込もうと、お笑い種もいいところですわ。いくら束になってかかって来ても、無駄死にするだけだといいますのに」


「ふん。数を侮るのは止めておいたほうがいい。特に防御の側に回るのならばな。で、どこの国が攻めてくる? リヒト法国か? シュヴァイン法国か? ヴァイス帝国か? それとも我等と起源を同じくする審判の国? それとも戦争の国? もしかして永久の国ということもあるかもしれないな」

「残念ですが、全てです」


「なに?」


ルシフェレスは呆気にとられる。

まさか、全ての国が協力し合うなどということがあり得るとは思っていなかったのだ。

上記の国は光人の国と闇人の国の2つに別れて、長年戦ってきた。

簡単にいえば国名がカタカナなのが光人側、漢字なのが闇人側。

長い確執の歴史がある。

さらに、原理はわかっていないが、遺伝子に戦いの記憶が刷り込まれているのか両者はお互いに憎み合う。

そこに敵側の人間がいたら、嫌わずにはおれないのだ。

それは生理的現象でどうしようもなく、人間の世界は真っ二つになっている。

まさか、その憎み合う両者が手を組むとは――。


「全て、なのですよ。『最強』ルシフェレス・ファフニル・イラ様。貴方でさえ、にわかには信じられないでしょうがね。証拠をご覧になられますか?」

「いや、いい。お前が言うからにはそうなのだろう。で、全軍が攻めてくるわけではないだろう? 貴族どもが自分の護衛を手放すとは思えん。相手方はどれだけの戦力だ?」


顔色を蒼白にしたルシフェレスはすぐに状況に対応する。

状況があれば、それがどんなに信じられないものでも対応する以外にない。

非人間的とさえ言えるほどの実際的な対応だった。

『絶望したところで状況が変わるわけではない』ルシフェレスにとってはそれだけだが、およそ人間的な反応では在り得ない。

人間だったら、それが無駄でも苦悩せざるを得ない生き物だ。

しかし、ここには人間的な生き物はいない。


「気が早すぎますわ、イラ。あちらさんは我らが大罪の国を含めた7国で会議をしようとおっしゃっているだけですわ。もちろん、他の6国は裏で通じ合っているようですが」

「しかし、戦争の準備は行われているのだろう? 振り上げられた拳は振り下ろされる。こうなったからには、中途半端な選択は在り得ない。我らが喰われるか、奴らを喰うか、2つに1つだ」


「話し合いで殺し合いを避けるのが政治というものですわよ?」


毅然と宣言するルシフェレスは容赦というものがない分、建前や駆け引きを理解できない傾向がある。

もっとも、彼はそんなものを理解する気など持ってはいないが。

対するラクスリアもわかっているのか、からかうように質問してくる。

自らの性を利用する者特有のねっとりとした視線がルシフェレスを舐めまわすように這いずりまわる。


「ならば、貴様に政治とやらが出来るのか? 理を解さぬ愚か者どもに道理を説き、言葉によって屈服させることが出来るか? 断言しよう、私には一生かけても不可能だ。貴様なら違うというのか?」

「いいえ。私には人の弱みは握れても、人の心はつかめませんわ。けれど、曲がりなりにも彼らは世界を支配する国家群です。対抗出来ますか?」


「不可能だ、などと言えるものかよ。やらねばならぬから、やる。ただそれだけのことだ。それに、我らが祖先は他人を愚か者としか見ていなかったのだぞ。彼らが子孫たる我らのために何もしてくれなかったと思うか? 我らは彼らの意思を継ぐ後継者だ」

「知りません。それはイラ家の管轄でしょう? 私が知ってることなんて、存在と位置くらいのものです」


「それだけでも十分知りすぎているさ。私さえ、あまり知らぬ。これから起動の準備をさせに行くところだ。お前も来るか?」

「いいえ、止めておきましょう。妹さんが怖いですから」


「で、肝心のことをまだ聞いていない」

「何のことでしょう?」


こくりと首をかしげる。白々しい態度だった。

ルシフェレスは相手を気にもしない尊大な態度で無視したが。

冷たい視線しか得られないと分かったラクスリアは口を開く。


「奴らの要求ですわね? 王との会談を要求しています。彼らの真意がどこにあるかはわかりませんが……」

「我らが王をこの王都から出すわけがない。そんな会談が成立することはない。しかし――」


「何か問題でも?」

「あるとも。これでは我らに後ろ暗いことがあるようではないか」


ラクスリアは眉をひそめる。

彼の言葉が理解できなかったのだ。


「何を言い出すのです? 愚か者にどう思われようとも関係ないでしょう」

「愚か者には、な。我らが大罪の国の精兵も正義がなければ戦えない。誰よりもまず、己に自らの正義を示さなければならない」


「祖国を守るというので十分では?」

「世界を滅ぼそうとする祖国をか? 国を相手取るとなれば苦しい戦いが待っている。その苦しさの中では正義は重要な意味を持ってくる」


「しかし、王を行かせることは認められません」

「私が行くさ。王に全権限を預かってな。元より私の名のほうが有名だ。彼らにしたところで、王が本人かどうかを見分けることは不可能であることだしな。王のご尊顔を拝見したことがあるのは王宮の限られた人間と7大罪の凶家の当主の七人。うち一人は既に亡い」


「話はまとまりましたね。私は少し息抜きにでも行かせてもらいましょう。貴方と話していると疲れます」


やれやれといった顔でため息をつく。

これからの労働を思えば当然だ。

きな臭くなってきたからには、馬車車のように働かなければならない。

事前に相手のことをどれだけ調べられるかは、そのまま勝敗に直結する。

そして、世界を災害が襲っている今、負けた方は確実に滅ぶ。

情報収集に終わりはないだけに、いくら鋼の精神力を持ちあわせていようともいつ削りきられてもおかしくない状況だ。


「悪いが、もう少し疲れてもらう。各国の軍隊の特徴を聞かせろ。大雑把でいい」

「はぁ。私はいつになったら眠れるのでしょう。私はあなた方が開発した眠気覚ましの連続使用数でトップを取ってしまわないか心配で夜も寝られませんわ」


「それはないな。私は一年間それで眠らなかったことがある。若気の至りというやつかな? 最終的には中毒の症状が出て来たので止めたが。ああ、私のケースを参考にするのは止めておけ。龍の細胞を受精卵の段階で移植されたおかげで、強い耐性がある上に暴走しかねないほどの再生能力を備えているからな。スペック上では人間なら精々が1ヶ月程度しか持たなかったはずだ」

「それを超えてしまうとどうなるのでしょうね? 怖い怖い。その期限の間にはお休みする予定は一切入ってないんですのよ、私」


「お前も人間とは言い難いからな、おそらく問題はないだろう。問題があったとしたら、どうせ止めても生き残れはしまい。それと、無針注射器だが、扱いには気をつけろ。内部構造が歪んだ場合、重要な神経を傷つけて後遺症が残ることもある」

「その辺りは聞きましたから大丈夫ですわよ。では、抗議を始めましょう。お題は各国の軍事について」



「まずは法国と帝国の面々について、これらは代わり映えしない戦法を採っています。すなわち、数による虐殺。兵の数は各国とは10万は下らないでしょう。もっとも、5対1ですら大罪の国の雑兵には敵わぬ者が大多数です。しかし、これが1000対1になったら精兵であろうと結果は見えています。さらに、彼らには聖堂魔術があります」


聖堂魔術。言ってしまえば合体魔法だ。

多数の人間と特殊な魔法陣、そしてそのために設計された建造物が必要となる。

それは大体が聖堂になるので、聖堂魔術と名が着いた。

この世界で唯一だった超長距離殲滅呪文だ。

しかし、発動が遅いため城攻めにしか使えない。

それでも一度発動されれば城だろうと、砦だろうとひとたまりもない。


「特徴は行軍速度が遅いことですか。早い部隊でも日に30kmほどです。遅い方は8kmほどだったでしょうか。こちらの常識ではまともな部隊なら50kmは進めますのに」


「次は審判の国ですわね。こちら側は特色があります。彼らは遠距離魔法に優れており、開けた場所でなら無敵ですね。しかし、入り組んだ場所でなら雑魚に過ぎません。彼らは歩兵戦には適していませんので。この大罪の国の深い森に踏み込んだ場合、やれることは援護くらいのものでしょう。もっとも、先に潰しておきたいのは援護の人間からと相場は決まっておりますが」


「戦争の国に移ります。こちらは打って変わって、騎兵部隊が存在します。騎兵とは馬に乗って戦う兵達のことです。6大国の中でも騎兵が居るのはこの国だけです。馬よりも早い人間ならいくらでもいますから。しかし、それでは数が足りないと思ったのでしょう。実際、平均行軍スピードで見れば彼らは飛び抜けています。精兵レベルで見れば馬は足手まといとはいえ、それ以下なら十分に脅威です。もっとも、森の中では活かせやしないでしょうが」


「最後は永久の国です。この国は謎が多く、大罪の国を除いてはもっとも嫌悪され恐怖される国です。他国では国を上げて呪術を扱う邪教徒の国と見られていますね。実際は邪教というより陰陽に属する者たちです。邪教徒に国が支配できないことを彼らは何故わからないのでしょうね? さらに、呪いを防ごうとして失敗しているようですが、呪いと陰陽では微妙に性質が異なります。他国の軍隊の強化に回られたら厄介なことこの上ありませんが、それはないでしょう。愚か者は邪教徒に魔術をかけてもらいたくはないはずです。しかし、この王都に限れば世界龍の鱗により魔力が満ち溢れている状態。陰陽術をかけることでさえ難しいはずです」




「大体わかった。しかし、厄介なのは数か。大罪の国は兵の数が少ない。元々の国の規模が小さいからな。それも、こんな辺境の生きることすら難しい土地ではな。それに、偶然を期待するわけにも行かない」

「どんな偶然がありえるのです?」


「災害が襲ってきたら、奴らも戦争に興じる暇はなくなるだろう。アケディアが災害を遠ざけるために張った結界は、後1ヶ月は持つ見通しだ」

「あらら。ソレは皮肉なことですわねぇ。なにせ、世界を守るために張った結界のお陰で世界は私達に反逆できる。亡くなったアケディアも不憫なことです」


「世界がどうなろうと、我々は大罪の国を守る。それだけだ」


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