表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
十二連世界の『最強』  作者: Red_stone
4章 滅び行く世界
33/57

第30話 『破滅』狂悦

やっと、神々の負けが決まりましたか。

これで策も最終段階。

やはり、計画の締めはルシフェレスの前で行いましょう。

何をやらかすか、分かりませんから。


「こうなりましたね」

「そうだ。残念だったな、貴様の負けだ。エリス」


姿を現すと同時に、いきなり負けを宣告されてしまいました。

しかしルシフェレスは私が来ることを予想していたのでしょうか、全く驚いた様子を見せてくれません。

確かに、7神のうち6神までを失った私にもはや残された手段はない――

―と、誰だってそう考えるはずです。

しかし、慎重なあなたまでその短絡的な考えを信じてしまうとはいささか警戒が足りないのではありませんか? ルシフェレス。


「本当にそう思いますか?」

「なら、どうやって“死滅狂衰の門”を開くというのかな? 貴様の神はもう1人しかいないのだぞ」


あなたの言うとおり、私につく神はもはや『水神』ただ一人。

だからといって油断するのは早計というものです。

私には、この状況からでも逆転する手段がある。

いいえ、逆転ではなく最初からこの状況を狙っていました。


「エリス様。ただいま御元に帰還いたしました。が――」

「言わなくてもいいわ。でも、あなたがここにきてくれて助かったわ」


うふふ、来た。

万が一の時のために前もって、勝利したらルシフェレスのもとに来るように言っておいた。

水神の尋ねたいことはわかるわ。

ここからどうするつもりか聞きたいのでしょう?

あなたたちに話した計画はここでお終い。先はない。

真の計画は誰にも話していない。


「水神が来たとしてどうなる? お前にはもう手段など残されてない。さっさと諦めて私に殺されろ」


ルシフェレスに横槍を入れられてしまいました。

せっかちな方ですね。

ここには幻などではなく私本体が来ています。

もちろん必要に駆られてのことですが、私に止めを刺せると調子に乗っているようですね。

甘い、甘すぎます。


「それは、どうでしょう? 実を言うとここまで私の計画通りです。ただ、あと一つ。あなた方が不甲斐ないせいで私が苦労することがあります」

「エリス様、何を? 私は聞かされておりませんが。しかし、私はどこまでもあなた様についてまいります」


ちょっと文句のひとつでも言ってルシフェレスを困らせてやりましょう。

水神が跪いて何か言っていますが、正直うざったいのですよ。

神を気取る薄汚い人間が、言動の端々に騎士のような高潔さを匂わせやがって。

神々は初めから憎きクズでしたが、最も嫌いだったのは水神だったのです。

だから、この状況には少し感謝してもいいかもしれません。


「ありがとうございます。なら、お願いします。死んでください」


けど、水神にも感謝くらいはしてやろう。

驚きに固まった阿呆な面で、私の『神炎刀”レーヴァテイン”』に貫かれてくれるのですから。

ふふ、馬鹿みたいに棒立ちですね。

それでは、悪い人に殺されてしまいますよ?


「え? エリス様。何をおっしゃって――


突き込む。

貫かれた水神は一瞬で蒸発します。

それも当然。

これはルシフェレスの“明けの明星”と同格の武器。

これを前にしては、さすがのルシフェレスでさえ恐怖を隠しきれない様子。

ただ、これは莫大な魔力を持ってはいても収束しすぎているので大地を焼き払うことに使えないのが残念です。


「仲間を殺して、どうするつもりかな?」

「ふふ、こうするのですよ」


ルシフェレスは分からないのですね。

私が何をしたかったのか、この段階になっても。

最初から全てが私の計画通り。

神々が死んだ事で、真なる神の力が正当なる人間に受け継がれる。


黄金の光で辺りを照らし出す。

自分で出しておいて何ですが、とても眩しいです。

ルシフェレスは反射的に後ろに跳びます。

良い判断です。

4つに目標を割く分、どうしても威力と範囲は下がってしまいますから。

そこまで下がられたら範囲攻撃に巻き込めません。


『災神の黄金林檎』


魔法を発動する。

とてつもない威力が大地を襲う。

地を壊す破滅的な音を響かせる。

大地が崩れる。

木々や表土まで根こそぎ吹き飛ばしてしまったようです。


いかにルシフェレスといえど、直撃したら命はなかったでしょう。

忌々しいことに、威力は届きませんでしたが。

しかし、これで残った4つの鍵はすべて壊しました。

“死滅狂衰の門”が現れるまでには、わずかな時が必要です。

その間はルシフェレスと遊んでいましょうか。


「初めから鍵への侵攻は失敗することが目的だったわけか。私に神々を殺させて神の力を奪う、と」

「そのとおりですが、元々私のものになるはずだった力です。“残念だったな、貴様の負けだ。ルシフェレス”」


指をピッと突き刺して、今回私が姿を現して初めて言われた言葉をそっくりそのまま返してやります。

ちょっとした意趣返しでしたが、屈辱に顔を歪める人間を見下ろすのはとても気分がいいものですね。


けれど、あなたの言うとおりです。

神々に襲撃させたのは、返り討ちになってもらうため。

いいえ、鍵の襲撃だけでなく以前から死んでもらうための任務を与えていました。

たったの3人だけであなたたちに挑んでもらうという任務を。

1人だけでは行ってもらえそうにありませんでしたから。


まあ、失敗もありえました。

和解なんかされたら私の計画は狂ってしまいます。

けれど、あなたたちは敵を説得するなんていたしませんものね?


「私たちが不甲斐ないというのは――?」

「ええ、水神も殺しておいて欲しかったのですよ。あなたたちにはできなかったようですが」


あらあら、分かりきったことを聞いてきましたか。

それとも落ち着くまでの時間稼ぎですか?

いずれにせよ、付き合ってあげましょう。

もはや私の勝利は揺るがないのですから。


「しかし、門が現れる前に君を殺せば何も問題はない!」


格上に対して、そんなことを言い出すとは。

あなたらしくもない。

私の能力はさきほど十分に見たでしょうに。


「ふふふ。『神炎刀”レーヴァテイン”』にさえ気をつければ勝てるとお想いですか? 私の持つ能力は『破神』といって、この世のあらゆるものを破壊できる能力です。あなたでは敵いませんよ」

「物騒なことだな。その能力を手に入れて有頂天というわけか?」


あらあら、ひどい言いよう。

確かに念願の能力を手に入れて浮き上がるような気持ちはありますが。

出来ることと出来ないことの分別くらいは付きます。

“死滅狂衰の門”など、紙くず同然です。

対象が人間ならば言うまでもありません。


ルシフェレスには少し状況を分かってもらうことにいたしましょう。

ここまでやって来たことを誰にも知ってもらえないというのは、それはそれで残念ですし。


「ふふ、負け惜しみですか? では『破神』について少し説明してあげましょう。実は『破神』は7つに別れてしまった状態で世界に堕ちてきました。原因は私にもわかりませんが、その弱々しい状態のまま人間に宿ってしまったのです。しかしこの能力は初めから私に約束されていたもの。不届き者がネコババしようと、最後には私のもとに戻ってきました。そのためには最後の一人まで殺さねばなりませんでしたが。これが『破神』をめぐる、おおよその経緯です」

「へぇ、大層なことだね。最初から仲間は殺されるためだけにあったということか。友情も何もあったものではないな。しかし、7つの欠片を集めるとはどこかで聞いたような陳腐な話だ」


あまり興味はないようですね。

せっかく『破神』の能力が私のもとに戻った顛末を聞かせてあげたというのに。

しかしあなたがそのようなセリフを言うとは、まるで仲間を犠牲にした私を責めているようではありませんか。

仲間を駒扱いするあなたにそんなことを言われる筋合いはありません。


「そうですよ。仲間なんて犠牲にしても構わない、それを教えてくれたのはあなたではないですか。それだけではありません。事態がどう転ぼうが目的を達成する手腕も、あなたから学んだものです」

「……教えたつもりはないよ」


そう、全てはルシフェレスのやり方を真似ただけです。

私は目的を達成する手段はそれしか知らない。

誰も教えてくれなかったから。

誰も彼もが、おとなしく利用されていろとしか言わない!

私のことを想って何かをしてくれる誰かなんて、居なかった!

教えてくれないのなら、真似ることしかできないでしょう?


「ええ、誰一人として私を世話してくれる方なんておりませんでしたもの。私はただ、使われる中で見て覚えたのです。単なる道具がじっと見ている分には、誰も興味を持ちませんでしたから。ただ、余計なことをしようとすると殴られましたが」

「へぇ、それが君の責任逃れか。自分が見たやり方はそれしかないから、それしか見せてくれなかった皆が悪いと? とんだ戯言だ。お前は仲間になろうとしてくれた者を裏切った、ただそれだけだ。自分のことを想ってくれたかもしれない仲間をな」


そんな返しをしますか。

ただ、あなたの言うことの方が戯言です。

安っぽい挑発です。


自分のことを想ってくれたかもしれない? ありえません。

人が人を想うなど、単なるまやかし。

友情などは自分に都合のいいように人を操るための詭弁。

愛は女を支配するための言い訳。

誰かが私のために何かをしてくれることなどありえません。


「人は誰かのためを思うなんてことはありえませんよ。だから私は世界を滅ぼすことを決意したのですから。親でさえ子を商品としての価値しか見ないこの世界にどんな救いがあるというのです? 商品価値が低い子は無視され、虐待されるのですよ。親がもともと存在しない人造人間は幸せですね」

「いや、これでも親のいない不幸というものは感じたことがあるさ。親がいるということはそう悪いことではないだろう。そう――」


ルシフェレスはそこで言葉を切る。

そして、口をニタリと歪める。

なんて奈落的な嘲笑なのでしょう。

なりを潜めていましたが、この恐怖をまき散らしてなお荘厳に屹立するのがこの人でした。

私も元はこの人の仲間でしたから、この悪魔の顔こそが本性なのだと知っている。

今までの為政者のように善良を装った顔など、単なる虚飾でしかありません。


「何ですか? 何だというのですか!? 今の私には『破神』があるのですよ! あなたなど恐るるに足りません。身の程を知りなさい! “明けの明星”が禍動していない『最強』に何ができるというのです!?」


紛れもない恐怖に駆られて叫ぶ。

けれど体の奥底に刻まれた恐怖は抜けない。

ルシフェレスは、私よりもずっと弱いはずなのに。


「そう――。そうかもしれない。私は君よりずっと弱いのかもしれない。『最強』なんて称号は強さではなく有名さで付けられたようなものだから。けれど、私は知っているぞ?」

「な、なにを…….何を知っていると?」


おののく。

攻撃したいのに、耳を塞ぎたいのに、できない。

けれど私の口は勝手に開く。

弱くて愚かな『最強』に、逆らいたくないと言わんばかりに。


「君は愛を与えられなかったのではない。自分から捨てたのだ。親は子に愛を注ぐものだ。どんなにわかりづらくても――」

「そんなことはありません! それは、あなたの勘違いです! 自分以外に愛を注ぐ人間など――何処にいると言うのですか」


そんな訳がない!

私と顔を合わせることもなく、あげくには生贄にした父が私を愛している?

そんな訳がない。

これは当てつけだ。

頭に花畑が咲いているような人間の言いそうなことを言って、私を絶望させたいだけだ。


ああ、見たくない。

あの恐ろしい、闇の果てのような黒々しい空洞でできた笑顔!


「それこそ勘違いさ。自分が愛されなかったからといって、他人が愛されていないとは限らない。いいや、君以外の子供はきっちりと親に愛されているさ」

「…!? あなた、さっき何を言ったのか覚えていまして――? いえ、そんなことはありません。愛など存在しません。そんなものが存在しているというのなら、私の人生は一体どうなるというのです!?」


これだ。

ただ、相手を絶望させるためだけの主張。

それの意味するところは、先ほどまでの論をいとも簡単に覆せる。

あの人は私を論破したいわけではないのだから。

ただ、絶望させたいだけなのです。

人を傷つけるためだけにある嘲笑はルシフェレスに刻み込まれたまま。

なのに、無視できない。


私は誰にも愛してもらえなかった。

それはいい。

だから世界を滅ぼそうとしている。

けど、それは私だけ?

不幸なのは私1人?


愛をもらえなかったのが、私だけというのなら――


「そう、君の人生には愛がない。いや、君が愛されないということじゃない。君の方が受け入れらないのだ。幼少に絶望しか与えられなかった君は、人を信じることをできなくされた。君が幸せを得ることのできない人間だ」


あああ。

ああああああ。

ああああああああ。


崩れていく。

信念も何もかも。

築き上げてきた全てが。


「私は幸せを受け止められない? なら、私は苦しむためだけに生まれてきたの? それとも、あなたの人生に華を添える使い捨て? やっと目的ができたと思ったら、それはくじかれるためだったの? もしそんなことが許されるなら、私の人生は?」


絶望した瞳でルシフェレスを見る。

そんな理不尽なことがあっていいはずがない。

嘘だと言って欲しい。


「君の人生、か。そんなものが私に分かるはずがない。ただ、それを決めるのは形のない天運のようなものだろう。人生なんてものは、いるかどうかもわからない神様の気まぐれでしかないのだよ」


理不尽すぎる。

私は何をしても幸せにはなれない?


「なら、私はどうすればよかったというのです? 苦しむための人生を与えられたものに救いは?」


ぼんやりとルシフェレスを眺める。

私の全てが絶望に沈んでいく。

彼はそんな魂を抜かれたような有様の私に対し――


「そんなことは知らない」


―断言した。


「はは。そうですか。知るわけありませんよね。あなたは、家の人間に愛されましたものね! けど、私だって生きているんです! そんな理不尽なことは認められない! そんな世界なら私が壊してやる!!」


激高した。

世界がそんなに私に対して冷たいのなら。

幸せな人間だけが幸せを享受して生きてられる世界ならば、ぶっ壊してやる!

この私が!

不幸な人間であるこの私が!


絶望は、世界を認めない拒絶へ。

私は、この世界を破滅する。



『悲哀の終幕劇』



現れた“死滅狂衰の門”に魔法を打ち出す。

忘れかけていたが、門を破壊できれば紅の世界を滅ぼせる。

もはやルシフェレスにこの魔法を止めることはできない。

盾になろうが、彼ごと吹き飛ばす威力。


勝利を確信する。

ルシフェレスに防げない以上、この魔法は門を破壊する。

自分を愛してくれなかった世界が滅ぶのだ。

精神攻撃です。よく○戯王でもありますね。

調子にのせておいて、どん底へ。

あいにく悪役は主人公でしたが。まあ、相手も悪役です。


と思ったら、アレ? 打ち切りエンド?

この世界が滅んだら、この物語はそこで幕引き。

ガンバレ主人公! あ、主人公、今、何もできない...

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ