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十二連世界の『最強』  作者: Red_stone
4章 滅び行く世界
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第25話 人の闇

「『通りすがり』とは一体何だったんだろうな?」

「そんなものマレフィに分かるはずないじゃろ。世界創造などと聞いたことがないぞ。それも、その中に人を閉じ込めるなんて無茶苦茶は」


あの異常というのでさえ生易しいほどの力を持った骨仮面について思いを馳せる。

まさか世界を創るほどの能力者が現世にいたとは。


「だろうね。そんなものは人間の領域の話ではない。世界創造は『世界龍』レベルの話だ」

「なんでそんなものが人間の領域に足を踏み入れておるわけがあるのじゃ? それならこの世界が崩壊しておるはずじゃろ。ルシフェの勘違いじゃよ」


確かに、あれほどの能力者が現世にいたら紅の世界は崩壊する。

しかし抜け道くらいはあるさ。


「違う。奴はおそらく、冥界にて全ての魔力を保管している。魔力自体が現世になければ世界は崩壊しない。その魔力をわずかに現世に持ってきてしまったのだろう。あれ以上の魔力が流入していたら、紅の世界は保たなかった」

「恐ろしい話じゃの。『通りすがり』が本気を出せば、それだけでこの紅の世界が壊れるんじゃろ? なんであんな化け物が人の世界にいるんじゃ。普通は冥界で孤独に暮らしておるはずじゃろ。ルシフェ相手でも残りカス以下の力でやり込めるなんて、冗談にもならんぞ」


ふざけてはいるものの、本気で戦慄している。

『魔女』とはいえ、あんなのを見れば当然か。


「さあ、あの化け物がここにいる理由なんてわからないさ。薄氷を走り抜けるような真似をしてまで現世にとどまる理由なんてな」

「その薄氷を踏み抜いたら、紅の世界が壊れる。なんつー危険人物じゃ」


やれやれ、世界の守護とは思っていた以上に難しい。

奴にその気がないことだけが救いだ。


「さっさと冥界にでも行って欲しいものだが」

「同感じゃ。奴と同じ世界になど居とうない」


「…..寂しかったのかも」


リリスがこぼす。

見ているだけでも、わずかに共感できたのか?

あんな、化け物と。


「そうか、寂しいという感情はよくわからん」

「マレフィはルシフェと居ないと寂しいぞ?」

「….リリスも」


特定の相手との話ではないだろうに。

まあ、いいか。

とりあえず、御神体の破壊を進めよう。




すべての御神体の破壊が終わった。

拍子抜けするほど、抵抗がなかった。

やはり『オーロラ・ブラッド』の影響だろう。

王や貴族が戦力を自らのもとに集めたせいで、民衆にはまともに抵抗できるだけの戦力が残っていないのだ。


「ああ――ルシフェよ。やっぱりこの異常なまでの警備の少なさは『オーロラ・ブラッド』の影響か? 国境警備すら満足に行われている様子はなかったぞ」

「それを考えていたところだよ、マレフィ。十中八九それが原因だ。再びの『オーロラ・ブラッド』を警戒して王都に戦力を集中させているのだろう」


本当に愚かなことだ。

それが後に己の首を絞めるとも気づかず。


「何じゃと?それでは逆効果であろう。お主が言っておったではないか。これの真の恐ろしさは農民が死ぬことであると」

「そうだよ。それを認識できない奴が多いのさ。近視眼的に自分だけ助かろうとするからそうなる。少し考えれば食料問題に突き当たるのにな」


愚か者共は、下を見ようともしない。

自分さえ良ければ、ということに異議を唱えるつもりはない。

ないが、全体を見れない者は何もやり遂げられない。

世界は様々な要因が絡まり合って予測不可能な模様を見せる。

小さい箱庭に閉じこもって、何かができると思う方が間違いだ。


「食料? そんなものはどうにでもなるのではないかの。不足したとしても、値段が上がるくらいじゃろ」

「そうだな。私たち不死者ならばその考えでも問題ない。なにせ食わなくても生きていけるのだから。しかし、人間は違う」


食わなくても生きていける、それは私たちのような化け物だけは生き残れるということ。

けど私たちだけ生き残っても、国は残らない。

国の存続は思った以上に大変だ。

こと異常事態においては。


「そういえば、人間は食わなきゃ死ぬの」

「そう。それを貴族共は甘く見ている。兵士を操る立場の人間は食糧危機など想像できない。なんせ、食料に困ったことがないからな。これまでは農民を絞ればいくらでも搾取できた」


いつも贅沢な品を食ってるデブが食糧難を想定しろ、という方が無理だ。

賢い人間もいるだろうが、農民の戦力流出は止められないだろう。

そこが、貴族社会の厄介なところだ。


「ま、上の人間にとってはいくら下の人間が苦しもうと、知ったことではないわな」

「食料を作る仕事は農民のもので、それを集める仕事は貴族のものなのだろうさ。だから、食料がどうやって作られるのかさえ知らない」


貴族に農作業の経験がある者などいないだろう。

他の国や自国の貴族と良い関係を築くことはできても、危機への対処能力は低い。

世界の危機に対抗できるほどの有能な人物は大罪の国にしかいない。

そもそも能力を重視している国がどれだけあるのか。


「それは酷いの」

「そうだよ、酷いんだ」


もう少し他の国がまともだったら、農民たちももっと生きられただろうに。

あるいは、民衆どもも幸せになれたかもな。

妄想に過ぎないが。

大罪の国も他国の牽制に忙殺されることはなかった。

甘えに過ぎないが。


「無関係面しおって。貴様とて大罪の国の上役ではないか」

「私は政治関係には関わっていないしな。それでも対策くらいは聞いているがな。大罪の国が取る対策は一味違う。非道な対策さ。他国が思いつけないほどの」


くつくつと笑う。

マレフィは興味深げに身を乗り出してくる。


大罪の国は他の国とは違う。

愚かなのではなく、狂ってる。

それでも、まともに運用できる戦力がある国の中では最も民のことを想っている国だ。


「くっく。何だ?面白そうじゃの。はよう話してくれ」

「選別さ。村の位置を確認して守れるところは、守る。そうでないところは、自力でなんとかしてもらう」


他の国が愚かだから、魔物に割ける戦力も限られる。

だから、救うことのできない分はすっぱりと諦める。

救える分だけをきっちりと救う冷徹さが大罪の国。

この守るけど、守らないという策は一貫性がないように見えて、感情的には少し気色悪い手だ。


「自力で、など見殺しを言い換えただけではないか。それに、村の位置で決めるなど残酷きわまりない。だれがそんなもので納得するのじゃ?」

「上の人間が納得するさ」


犠牲になる本人は絶対に納得できることではないだろう。

しかし私としては、最小限の義務さえ果たしていれば完全な庇護を受けられると思われる方が困る。

実際には見捨てるだけだから困らないが。


「犠牲になる人間は上の人間ではないじゃろ?」

「かといって助けたかったら、移動手段と生活手段を用意しなければならない」


下には下の思いがあるように、上には上の都合がある。

王都はともかく、国そのものの防御力を下げれば他国に侵攻される。

いちいち一人一人のことを考えていたら、何もできない自分に絶望して首をくくる他ない。


「そんなの無理じゃろ? 魔物どころか森の時点で詰んでおる。大罪の国なんて山岳地帯じゃったろ? もし移動できたとしてもそんな数の職があるわけないし、食料の供給だって無償でやり続けることはできん」

「だから無理なのさ。不幸をなくすことは不可能だ。だから、最小の不幸で最大の幸福を得る」


避難民に山を渡らせるのは無理。

避難民の保護もまた無理だ。

市民がこれ以上ない不便を受け入れてくれたら別だが。

そんな甘い話がある訳がない。


適当にマレフィと世の不条理を嘆いていたところに、声が投げ込まれる。


「だからこそ、この世界は滅ばねきゃなんねぇんだよ」


その声に、私はゆっくりと振り向いて答える。

……1日に3連戦は辛いのだが、などと思いながら。


「違うさ。人の存続する意思がある限り、世界は続いていく」

「それを断ち切る奴がいるんだよ、ここに」


おためごかしかもしれない、くだらない精神論だ。

それでも私は気に入っているし、相手には気に入らないだろう。

意思がある限り世界は続いていく、なんてな。


「それは君ではないよ『神』」

「オレの名前は『闇神』ネロ・アロラ・ナハトだっての。忘れたのか? 失礼な奴だ」


…見抜かれたか。

多少気まずくもあるが、相手は敵だ。

人間関係を気にする必要もない。


「流石に異名持ちの名前を忘れる程、礼を失しているわけではないさ。ただ、顔を忘れただけで」

「十分失礼じゃね? てか、名前を覚えるなんて最低限すぎんだろ」


正直に告白すると、なにやら呆れられてしまった。

まあ、私にはユーモアなんてものはかけらもない。

呆れられるのも当然か。


「まあ、一応謝っておこうか。で、本題に戻ろうか。気の抜けた顔をぶら下げてやってきて何用だ?」

「殺気がないからって、気の抜けた顔ってのはねえだろ。それとも、ここでガンガン殺り合いてぇのかよ?」


戦い以外に敵に用はないのだが。

まあ、話し相手になってやってもいいかな。

疲れているしな。


「今日はさすがに遠慮して欲しいね」

「だろ?」


なにせ、『通りすがり』の相手をしてから1日も経っていない。

あの精神ダメージをからたやすく回復できるほど、私の神経は図太くない。

殺し合いに気が乗らないなんて、いつ以来のことだろう。


「で、殺し合い以外に何かやることでもあるのか?」

「おいおい、選択肢が殺し合いしかねえとか。オレはな、ちょっと話をしにきたんだよ」


大げさに嘆かれる。

役者か何かか? 大げさすぎる反応だ。

とりあえず、要件を聞いてみた。

やはり話し相手を求めて来たのか。


「ふむ、付き合ってやろう」

「…なんで偉そうなんだよ?」


鷹揚にうなづく私。

開いた口を閉じられない相手。


「さあ、話せ」

「へいへい。なんでお前はオレ達の邪魔をする?」


じと目で聞いてきた。

男がやっても可愛くもなんとも無いな。

目を潰してやりたくなったが、そこは我慢だ。

取り敢えず綺麗事を言って反応を見るか。


「貴様たちは世界を滅ぼそうとしているのだ。当然だろう」

「何が当然だ? 貴様は、この世界を愛してなどいないだろう」


単なる綺麗事だが、意味は自分が死ぬのも周りが死ぬのも御免だという真っ当な理由だ。

自分を殺そうとするものを、殺し返そうとするのは当然だ。

ただ、私が世界を愛していないというのは早計だ。


「愛しているさ。我が大罪の国を、この紅の世界を」

「嘘だ。お前は、自分を縛り付けた大罪の国を憎んでいる。イラの名前を与え、人生のレールを定めた大罪の国をお前が恨んでいないはずが――ねぇ」


断言される。

しかし、それは勘違いだな。

確かに自分を束縛するものは憎いし、破壊してやりたい。


しかし生まれた国は別だ。

あの狂った国を、私は私なりに愛している。

愛しているからこそ、恨んではいない。

他人が同じことをすれば、絶対に許さないが。


「とんだ見当違いだ。お前は私のなんだと言うのだ?」

「兄さ」


驚愕で思考が停止した。

私に兄がいるはずがない。

記録には、そんなこと載っていなかった。

当主に閲覧できない資料があるわけがない。


「な……なんだと?」

「おお、びっくりしたかよ? けど、本当のことだぜ」


もしそうなら、イラ家の記録がおかしいことになる。

ありえるのか?

記録は魔導演算装置により、永遠に保存される。

記録が失われることはありえない。本体が物理的に破壊されない限り。


「ありえない」

「は、そう思うか? オレはな、失敗作なんだよ。無数に打ち捨てられた、龍の細胞を埋め込まれて死んだ1人だ。だがな、オレは復活した」


復活? それなら話のつじつまが合う。

失敗作として記録されているのなら、わからなくて当然だ。


「『闇神』が貴様に命を与えたとでも? 死んだ人間が生き返るはずがない」

「ま、そりゃそうだ。一応、オレは生きてたみてぇだからな。死んだも同然の、人間の形すらしていない状態だったがな。お前は知らないだろ? 廃棄されたもののことなんて」


死んだ人間は絶対に生き返らない。

それは普遍の真理だが、死んでいなければどうにでもできる。

それにしても、ややこしい言い方をするものだ。

法則が覆ったのかと――世界が歪んだのかと思って焦ったぞ。


「つまり、『闇神』は死にかけていた貴様に全てを与えたということか」

「そうさ。貴様らに奪われた俺の全てを『闇神』は与えてくれた」


そもそも手術が行われるのは胎児の時で、捨てられるのも胎児の状態でだ。

生命維持装置を外された胎児が数日も命を保てるとは思えない。

つまりこいつは生後1ヶ月も経っていない。

つまり『闇神』が人間としての知識や言語、大人の体まで与えたということになる。

…なんという万能な能力だ。


「ふん、知能さえなければ己の悲惨な境遇に涙することもなかっただろうに」

「ふざけんな! 責任逃れする気か? 意識もない赤子なら何してもいいとでも!?」


我々が実験するのは赤子ですらない胎児だ。

意識のない胎児になら何をしてもいい、というのが我々の言い分だ。

感情のない物のままであったなら、不幸にも幸運にもなりようがないから。

それを根拠に我々は、我々の行為を正当化する。


その中でもコレは我々が関与することではない。

わざわざ知恵を与えて不幸にしたのは我々ではないのだから。


「いいさ。意識そのものが存在しないのなら、何をしても」

「てめぇは犠牲になる奴の気持ちを考えたことがあるのか?」


物はいくら手酷く扱っても、壊されても嘆かない。

一般常識としては悪いことだろうが。

物に対してなら、何をやってもいいのさ!


「十分以上に考えている。だから、胎児で実験するんだよ」

「この外道が」


不幸になる人は少ないほうがいい。

だから、不幸になりようもない胎児を利用する。

それを外道と呼びたくば、呼べばいい!


「そのとおりだよ。しかし、貴様はどうだ? 貴様がしているのは八つ当たりで世界を滅ぼそうとしていることに他ならない」

「違う。貴様のような奴らが統治するこの世界が間違っているから、滅ぼすんだよ」


確かに私は悪の人間だろう。

だが、こちらがしているのは物に対して実験すること。

奴がしようとしているのは虐殺だ。


「はは、世界を滅ぼす前に統治する人間を変えてみたらどうだ?『闇神』」

「できるかよ。その時は国民ごと巻き添えにするんだろ?『最強』」


ひどい誤解だ。

ただ、やりそうな権力者に心当たりがあるだけに反論し辛い。

あの愚か者共なら、それに近い結果になる。

今ここで、我々だけは別だと言っても仕方ないだろう。

現に今、水鏡の国は国民を巻き込んで空中分解しかけている。


「しないさ。私はね」

「お前以外がするんじゃねぇか」


仕方ないとはいえ、私は愚か者ではないと言わずにはおれない。

闇神の言い分には、そのとおり、としか答えられないが。

権力者は愚図な愚か者ばかりだ。

私のように国を思う有能な人間は少ない。


「で、兄であるところのお前はわざわざ恨み言を言うために来たのか?」

「ちげぇに決まってんだろ。まだ、なんのために世界を守るのか聞いてねぇ」


ああ、それを聴きに来たのか。

一つ、面白いことでも言ってみようか。


「自分の命が惜しいからさ」

「は…ええ……ああ――それなら」


まさに、目からウロコが落ちた、という反応。

期待通り。


「納得してもらえたかな?」

「ああ、ある意味スゲェ納得だ。んじゃ、何言われようがやめるわけないわな―」


うんうんと頷かれる。

見ていて中々に楽しい。


「納得してもらえてよかったよ。嘘だがね」

「ああ、納得納得すげぇ納得――ん?今お前嘘って…」


さらりと言ってやる。

相手は一瞬何を言われたのかわからない様子。

目をパチクリしている。


「嘘だが?」

「て、てめぇ! さらりと嘘つくんじゃねぇ。信じちまったじゃねぇか」


怒鳴りつけられる。

その反応はとても面白かった。

嘘をついたかいがあるというものだ。


「君の頭は悪いな」

「てめぇ、涼しい顔で何断言してくれてんだ!?」


同情した顔で言ってやる。

思ったとおり、憤怒で顔を赤く染める反応を返してくれる。


「ああ、世界を守る理由だったか。そんなものは、こっちの方が面白い戦いができるからに決まっているだろう」

「決まってねぇよ、この戦闘狂。戦うなら正義の味方とかはどうだ?」


これは本音だ。

やはり戦うなら、エリスのような相手だ。

互いに死力や万策を尽くして戦える。

正義の味方を相手にするのは楽しくない。

アレらの強さはチートやバグというよりも、無慈悲な法則だ。

正義の味方は最後には勝つという結果だけが分かりきった面白みのない結末。


「あんな有様の奴等とは戦いたくない。私は、あらゆる手段を尽くして対等に戦いたいのだよ」

「正義VS悪じゃなく、悪VS悪の戦いがお望みってわけか。自分の欲望に忠実だね」


絶対に正義の味方とは戦いたくない。

どんな戦略でも、純粋な力で跳ね返してくるから。


言いたいことは終わったか?

これで、君のターンは終了だ。


「では、君はどうかな? 世界を滅ぼすのに躊躇しているのではないか?」

「はぁ?」


今度はこちらの番。

君の精神をガタガタにしてやる。


「君がここに来た本当の理由は後押しして欲しいからだろう? 貫き通す自分がないから、与えられた天啓に全てを委ねようとする。そこで、その天啓が間違っていると思い始めて―ここに来た」

「んなことあるかよ。オレはこの世界は滅ぼさなきゃなんねぇって思うぜ。なんせ、実験に失敗して捨てられた身の上なもんでね」


畳み掛ける。

こういうのは、詭弁だろうと勢いが大事だ。

つじつまが合わなかろうと、ガンガン攻める。


「なら、私に会いに来る必要などないはずだ。必要としてたのではないのか? 世界を滅ぼす理由を。もしくは自分に優しくしてくれる誰かを」

「確かにオレには優しくしてもらった記憶なんてねぇ」


よし、肯定した。

ここから3段論法で丸め込んでやろう。


「そうだろう。しかし、大罪の国に帰れば違うぞ。お前が捨てられたのはあくまで役に立たない死体と思われたからだ。実際に意思が目覚めたのは神の能力に目覚めてからだろう? 今の君なら、愛も友情も名誉も手に入る」

「...魅力的な話だなんて、オレが言うと思うのか? 捨てられたんだぞ、オレは。その憎しみは消えやしねぇ」


どうかな?

案外憎しみなんて脆いものだ。


「憎しみを乗り越えた先には何かがあるさ」

「イイことを言ったように見せかけて、実は適当に喋ってるだけだろ、お前」


ばれたか?

いや、まだ許容範囲だ。


「そんなことはない、本心さ。大罪の国は君を歓迎するよ」

「なんでその話に返る?」


君を裏切らせたいからだが?

言う気はないが。


「君が悩んでいるからさ」

「悩んでねぇよ」


ち、確固とした意志を持って来ているなら丸め込めるはずなどなかったか。

これは、無理かな?


「寂しいから私に会いに来たんだろう?」

「ちげぇよ。オレがここに来たのは成功作であるあんたに吠え面を欠かせてやろうと思ったからだよ。お前の寒い勘違いを聞くためじゃない」


「ほう?」


どうやら、無理だったようだ。

ここからはまた相手のターンだ。


「失敗作なんだよ、お前もな」

「….何を言っている?」


勘弁して欲しいね。

さっき君のターンは終わったばかりというのに。


「お前は近いうちに死ぬのさ。数年でな」

「ほう? 数十年は生きられると思っていたのだが」


私の認識に誤りがある?

とにもかくにも、動揺した顔は見せられない。


「そんなことはないさ。失敗作だからわかる。お前の欠陥は治ってなんかいねぇんだよ」

「……信じられんな」


口では何とでも言える。

私は奴より自身の感覚を信じる。


「事実だぜ。俺たちに協力する気になったか?」

「それはないな。君たちは殺す。寿命を延ばす方法は後で考えればいいさ」


真実だったとしても、協力する気はない。

私はエリスと戦いたいのだ。


「そうかよ。オレは死の宣告をしにきただけだから帰るぜ『最強』」

「そうか、さよなら『闇神』」


闇神は消えた。

暇な奴だな、私と悠長に話すなど。


今回は少し長くなってしまいました。

会話パートです。次も会話パート。空気だったマレフィは後ろでお話していました。

主人公は悪でも決めたことは最後までやり遂げる人なので、容赦というものを知りません。

かなり批判を受けても仕方のない話になりましたが、もっと突き抜けようと思います。私の厨二病はいつでも全開です。

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