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十二連世界の『最強』  作者: Red_stone
4章 滅び行く世界
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第17話 水鏡の国の事情

「さて、今日は闇人側の大国へ交渉に行く」

「もちろんマレフィも付いてくぞ」

「….私も付いてく」


やはり、この3人で行くことになるか。


まあ、いいさ。

礼儀なんて下らないことを気にしているようでは何も得られない。




「まずは水鏡の国だ。ラクスリアによると、『水神』により壊滅状態だそうだ」

「ふむ、懐かしいの。プルートゥはどうしておるのじゃ?」


「『水神』に殺されたらしい。全く無様な最後だな」

「そう言うものではないよ。あ奴も必死に国を守ろうとしたんじゃて」


「守りきれなかったのなら、その行為に意味はない」

「そういう考え方は好きになれんがのう。あまり結果ばかり追い求めると、その“結果”に喰い殺されてしまうぞ?」


「結果を得られないよりはマシだ」

「その考え方は、ちぃっとばかり悲しすぎやせんかの?現実的に過ぎる」


「知らないよ。理想を通せるほど、世界は甘くない。『転移』」


マレフィは、それでも理想は見るためにあるんじゃろ、とつぶやいた。

私は聞こえなかった振りをした。




「『最強』並びに、『魔女』、『吸血神祖』、何の用でここに来た?」

「用件を言う前に、君の地位を教えてもらおうか」


案の定、兵士に囲まれていた。

転移は姿を現すのに時間がかかるから、囲むのは容易だ。

後々の問題があるから、攻撃までは出来ないにしても。


まあ、攻撃の実行自体はできるが、やられたら脅迫材料にしようと思っていた。


「子爵のゴドフリー・ゴードン、外交官だ。貴様の仲間の『冥界』なら死んだ。さっさと帰れ」


子爵か、伝言くらいしかできない低い地位だな。

しかし、こいつはなかなかに憔悴しているようだ。

声に覇気がなく、頬もこけ落ちている。




「そうはいかない。私は王に話があってきたのだ。君に私を通す意思がないというのなら、勝手に通るまで」


しかし、そんなことは私になんの関係もない。

私にはこいつを気遣う義理など、何も無い。


「待て!王にはここに現れたのが誰であれ、ここを通すなと仰せだ。貴様を通せば、私が死刑になってしまうぅ。止まれ!止まってくれぇ!」

「君に何があろうと、私には関係の無いことだ。君には君の事情があるように、私には私の事情があるのだよ。死刑になりたくないのなら、自分でなんとかすることだ」


自分でなんとかせず他人にしてもらえるのが当然と思っている人間など、勝手に死刑になってしまえ。


「ぐぅぅぅぅ。あの『最強』が他人のことを気に止めることなど、ありえないことだったか。衛兵!こやつを捕らえよ!」


私を衛兵ごときでどうにかできると思うのなら、それこそ驚きだ。


まあ、頭をかきむしってうなり声を上げているその様子では、どれだけ正気かわかったものではないけれど。




「無駄だ」


殺気を放つ。

それだけで衛兵は全滅してしまった。

もちろん、恐怖のあまりに気絶してしまっただけだ、殺してない。


やはり、私の力は上がっている。

『終焉』の力の影響だ。

以前は兵士ならば、雑魚ですら気絶させることは叶わなかった。


先程まで話していた相手などは、陸に上げられた魚のように痙攣している。


「ふむ、話していた相手まで気絶させてしまったか。さて、どうやって王のところまで行ったものやら」


「ルシフェ、ルシフェ。この王宮の道ならマレフィが知っておる。案内してやろう」


はしゃぐマレフィ。

誰よりも老獪な雰囲気をしたと思ったら、子供のような行動をすることもある。

油断したら気付かぬ内に生贄にでもされてしまいそうな、悪魔的で素晴らしい女性だ。


「…..」


本当に、物静かなリリスとは大違いだ。


「さあ、こっちじゃ。マレフィに着いてくるがよい。にゃははははは」


踊りながら先導するマレフィにおとなしく付いていくとするか。




「着いたぞ、着いたぞ。王はこの奥にいるじゃろ」

「ありがとう、マレフィ。さあ、王と対面と行こうか」


扉を開ける。

相変わらず趣味の悪い成金王宮だった。


「出て行け!ここは余の国だ。誰にもやらん。誰にもだ!ひひひ。そう、余こそは水鏡の国の王ぞ。紅の世界よ、余に従え。いひひ、うふふふふふふふふ」


思わず顔をしかめてしまう。

そして、天を仰ぎ思う。


ダメだ。

壊れてやがる。


「頭が高い!余を誰と心得る?余は水鏡の国の王、世界の支配者ぞ。即刻この無礼者を死刑にせよ!」


やれやれ、いきなり死刑宣告とは。

王がこれでは、この国は終わりだな。

貴族たちはなぜさっさと、この狂った王を処断しないのか。


「君は人間の言葉を話せるのかな?」


とりあえず、話はうかがってみようか。

どうせ無駄だろうけど。


「ひひひ。無礼者は死刑だ。そこのお前!それとお前も死刑だ。いっひひひひひ」


おい。

これは、完全に話が通じていないぞ。

この部屋にいる貴族を適当に死刑にし始めた。


泣き叫ぶ指名された男を、衛兵がこの場から引きずり出している。

連行する衛兵の顔も暗い。

この世の終わりのような顔をするのなら、反乱でも起こせば良いものを。




どうやら無駄足だったようだ。

狂人の相手など、していられない。


そして、周りの奴らも腰抜けばかり。

国を変える気概があるものは、誰一人としていない。

皆、絶望に顔を伏せるのみ。

3大国のうちの1国も堕ちたものだ。



「やれやれ、それにしても何故こんなんが王なんぞやっておるのかの?」


マレフィがちょこんと首をかしげる。

空気を読めない奴だ。


「そう言ってやるな、マレフィ。この狂人も『水鏡』と『冥界』を失う前は一端の愚王の1人だったのだろうさ。しかし、一夜にして戦力のほとんどを喪失した結果が、この現実逃避なのだろうさ」


戦力の大半を失うという事態は、国家崩壊レベルの不祥事だ。

『水鏡』並びに『冥界』の2大戦力の代わりなど、易易と用意できるものではない。

その場しのぎですら、用意しようと思ったら王自身の身を削る必要がある。


「むぅ、現実を受け入れられなくて狂ったか。王という立場ならば、いろいろとやらねばならぬこともあるだろうに。すぐに対策を練らねば、国の体制が崩壊してしまうぞ?」


もはや遅い。

対策は『水鏡』が離反した直後からやらなければならなかった。

1日後の今日では、手遅れだ。


「もう崩壊しているだろうさ。これからこの国は空中分解して、小国が乱立するようになる。これにできることといったら王都の維持くらいのものだが、それも怪しいな」


戦力の大半を失っては、やれることなど少ないだろう。

『水鏡』並びに『冥界』と比べられては、正規軍もかわいそうな事だ。




「そうか、哀れなものよのう。で、次は何をするんじゃ?」


切り替えが早いな。

私と同じく、こいつらには一切の同情を抱いていないか。


「人に会いに行く」


この12連世界というゲームのもう一人の主人公に会いに行く。

おそらく私の記憶には検閲がかけられていた。

『神』に会うまで、その情報は隠蔽されていたのだ。


が、奴はおそらくこの世界を救う鍵となるはず。

彼を主人公とするストーリーを私は知らないけど、そうならない訳がない。

何故なら、奴は主人公。

それ以上に説得力のある説明もない。

ハッピーエンドが用意されているとは、限らないけれど。


「何じゃと!?」


マレフィは大きい反応をする。

小さな体で、驚愕を全身で表しているようだ。

ふわふわの服が舞うほど、激しいリアクション。


「どうした?そんなに驚いて」

「人じゃと!?女か?」


呆れて聞いてみたが、答えを聞いてさらに呆れた。

私の行動は、全てが世界を救うためのものだぞ?

なぜ、そこで私用が出てこなければならない?


「そんな訳があると思うのか?」

「ぬぅぅ。マレフィとリリスだけでは不満か!?このロリボディのどこに不足があると言うんじゃ!?マレフィもリリスもルシフェのためなら、何だってするぞ!」


足りないのは可能性かな。

なんだかんだ言っても二人とも200レベル。

これ以上力が発展する可能性は乏しい。


「私の興味を引くものは、世界を守ることのできる可能性と意思を持った人間だ。恋愛など、どうでもいい。もし世界の滅びを乗り越えられることがあったら、その時はお前と一緒になってやる」

「本当じゃな!?ならマレフィと一緒になってくれるんじゃな?」


やれやれ。

もしかして本当に私のことが好きなのか?

真実がどうであれ、今はそんなことに割く時間はないが。


「付き合ってやるから、今は黙って私を手伝え」

「応よ。このマレフィが全力で力を貸してやろう」


マレフィは鷹揚にうなづく。

マレフィがそうすると、小さい子供が大人の真似をしているようで可愛らしい。




「お待ちください!」


マレフィと雑談していたところに、若者の声がかけられた。

王はというと、奇声を上げて踊り狂っている。


「何か?」


見れば、こいつも憔悴している。

この国の人間は頼りないな。

必死にこびへつらおうとしている様は、哀れすぎて笑えない。


「この水鏡の国はご覧の有様なのです。どうか『最強』様のお力添えをいただきたい。」


さて、どうしようか?

この国を立て直すのには、戦力さえあれば可能だ。

元々戦力が激減して収拾がつかなくなっただけだから。

大罪の国の力を使えば可能だが、そこまでする価値はあるのか―


「へぇ、私の力添えね。それをしたら、私はどうなるのかな?」

「はい。貴方様の力添えにより復興した際には、貴方様の名前が後世にまで語り継がれてゆくことでしょう。水鏡の国を救った英雄として」


これで答えが決まったな。

国を救った礼が名誉とは、面白い冗談だ。




「そうか、私もできることならそうしたい。しかし、私は大罪の国の人間。その名誉を受ける資格はないのだよ」


とはいえ、こいつを利用したら面白いことになるかもしれない。

なるべく心優しい言葉を心がけよう。

こういう奴に限って、少し優しくしてやると、すぐに騙される。


「そ、そんなことはありません。あなたがどこの国の人間かを気にするほど小さな人間はおりません。どうか、どうかお力添えを」


嘘だ。

貴様たちがプルートゥにしていた仕打ちを知らないとでも?

親の爵位で差別するこの国が、出身国を気にしない訳がないだろうに。


「そうか。それなら……」

「やってくれるのですか!?」


考える素振りを見せてやると、哀れなほどに喜ぶ。

自分が助けられることに、何の疑いも抱いていない顔だ。

何も考えない奴が、私は嫌いだ。

そういう奴に限って、自分は助けられて当たり前と思っているから。


「いや、やはり私にはふさわしくないだろう」

「そんな….」


今度は死にそうなほどに落ち込む。

栄養が足りなさそうなのに、忙しいやつだ。




「待ちたまえ、私はこの国を救わないと、言っているわけではないのだよ」

「それは、どういうことでしょう?」


….少しは自分で考えろ。

相手に恵んでもらうことばかり考えている奴は、単なる間抜けだぞ。


「そう、国を救ったという名誉は君にこそふさわしい。恐れることなく、この『最強』に声をかけた君に」

「私が、ですか?」


目に希望の光が浮かぶ。

私が何を考えているかも知らずに。

つくづく、馬鹿だな。


「そう、君が、だよ。この国を復興させることができるのは君しかいない。君はこの国を復興し、歴史に名を残す名君となるのだよ」

「私が…..私が、歴史に名を連ねる名君に」


この馬鹿は感動に打ち震えながら、噛み締めるようにつぶやく。

実を言うと、私はこの国の人材事情など全く知らないのだよ。


「そう、将来の名君である君に託したいものがある」

「そ、それは!?何をいただけるので!?」


目の色が変わった。

浅ましい奴。



そんな感情は顔に出さず、3つの武器を“次元の鍵”より引き釣り出す。



“矢鎌・ヴィーヘイル”


“赫刀・レピデル”


“祈盾・ユーフォルソア”



この3つの武器を床に刺す。

その武器は、強大なポテンシャルを秘めている。

その威容は、心を揺るがす。


「この三つの武器を君に託す。これを使って水鏡の国を復興させるのだ」

「おお、おおおおおお。これがあれば、私でも王になれる。ありがとうございます、『最強』様。貴方の恩は一生、いえ、この国が滅びるまで忘れられることはありません」


喜んでいるようだな。

しかし、私はこう思っているのだよ。


例え、その武器が盗賊に渡っても構わない。

私が死蔵していた司祭級の武器が人に使われさえすれば、それでいい。


そんな思考を私はしているのだよ。

愚かな君は知らないだろう?


「励め、君には私がついている。私の加護の下、水鏡の国は復興する。他ならぬ君の手で」

「ありがとうございます、ありがとうございます、『最強』様。必ずや、必ずや、水鏡の国を復興し、この私が王となってみせます」


恩を着せるために、適当なことを言っておく。

具体的なことは一切言わないことを心がけておく。

この国の末路に責任を持つ気は、一切ない。



しかし、一体何を感謝しているのやら。

だいたい、加護とは何だ?

そんなものは恩を着せるための方便に過ぎないのだぞ?



私は哀れな道化を後ろに、水鏡の国を去った。




あの道化が三つの武器をうまく使えれば、水鏡の国の復興も可能だろう。

しかし、あのような道化にそれができるとは思わない。


せいぜい勢力を拡大させて、私に報いてくれ。

水鏡の国の復興は無理でも、そこそこの国なら作れるだろう。

くれてやったのはそれほどの武器だが、私にとってはその程度の武器だ。




しかし、私としては国を守る意思を持つ有志に渡って欲しいものだ。

あの武器が人を守るための力になるよう、祈ろう。


主人公の腹の中が真っ黒です。

思わず引いてしまうくらい黒い。


でも、主人公が渡した3つの武器は本当にとんでもない代物です。

RPG後期に手に入りますが、くせが強い代わりにステータスの上昇も半端ではありません。

そして、デザインも使用感を考えない奇抜なデザイン。

あらゆる意味で最上級品です。

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