第十五話 ”ちっちゃい”は禁句です♪
皆様、お久しぶりです。篝です。
私、ついにアルバイトを始めました~ はい、拍手~
これでコミケ資金が増額間違いなしです。グフフ・・・
と、まあ、それはいいとして、最近、お話を書く時間が無くて困っているんですね。
理由としては、バイト、自作ゲームのシナリオ作成、キャラデザ、なんですが・・・全部やりたいことなんで、ひとつも手は抜けません!(ドヤァ)
もしかしたら、月一更新の原則を破ってしまうことになるかもしれません。
そうなった場合も、続きは書いておりますゆえ、どうか暖かい目で見守ってください。
それでは、東方狐物語 第十五話 始まります。
今回はあの人が登場か!?(煽り)
「フフフ……遂に、遂にできた。これがあれば、どんな凡人でも大妖怪から簡単に逃げおおせられる事間違いなし」
今日まで技の開発と札の研究に明け暮れ、使った紙の量は計り知れない。
散っていった紙々よ、安らかに眠れ…アーメン。
あとは札を破りながら『発動』と言うだけなのだが……。
「デカ過ぎる上に文字が真っ赤になってるんだよね…」
札のサイズが悪い意味で常識にとらわれていないため、持ち運びは不便なこと間違い無い。
さらに、普通の墨で書いた札に結晶を合わせたら、黒かった文字が真っ赤になってしまった。
これでは、一目見ただけで特殊な札だと分かってしまう。
「なんで私が作るものはこうも欠陥だらけなんだ…」
ほんっと、落ち込むわぁ〜。
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一通り落ち込んだあと、シャワーを浴びて久しぶりに神殿の中を歩き回っている。
引きこもってた日数を数えていないので、今が一体いつなのかが分からない。
そこで、誰かに聞こうと思ったのだが、いつものごとく誰にも会わない。
「なんでこうも会えないんだろう…」
「誰かを探して居るんですか?」
諦めかけた時、後ろから声をかけられた。
そちらを振り向くと、スケッチブックを抱えたアテネがすぐ後ろにいた。
「ちょうど良かった。今、何年?」
「何年…と言われましても、私が前回涼花さんに会ってから五百年くらい後ですとしか…」
五百年か…ひきこもり世界記録だな。
「あ、それが聞きたかっただけだから。じゃ!」
「ちょっと待って下さい!」
目的を果たしたので部屋に戻ろうとしたら、アテネに呼び止められた。
何事かと彼女を見ると、スケッチブックを抱きしめて、モジモジしている。
「あ、あの!私、服のデザインを考えるのが趣味なんですけども、涼花さんに着てみて欲しいデザインがいくつか有るんです。試着とか…してみてくれませんか?」
へースケッチブックを抱えてたのは、何処かで服のデザインを考えていたからか。
「そんな風に言われたら断れないよ。どんな服なの?」
「ありがとうございます!これらなんですけども――」
そう言ってアテネはスケッチブックのページをめくり始めた。
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「――で、次で最後なんですけども、コレがイチオシなんですよ」
「やっとか(ボソッ)」
スケッチブックをめくり終えたアテネに拉致され、彼女の部屋に引き摺り込まれた。
そこで、スケッチされた服を作り出す→着る→服を着た私を見てアテネ興奮をひたすら繰り返した。
デザインされた服は、ワンピース等のまともな物から始まり、中盤には巫女服やナース服等の典型的なコスプレ、そして、現在は後にも先にもアテネしか考え無さそうな奇抜な物に移っている。
「あれ?どうかしましたか?」
「いや、なんでもないよ」
何時間も着せ替え人形のような――いや、正しくソレとして扱われたため、流石に疲れてきた。
しかし、了承した手前今更やめる事は出来ない。
「最後はコレです」
アテネが自信有りげに見せてきたのは私が普段着ている振り袖と変わらない物だった。
「コレ、私がいつも着ているのと同じ物じゃない?」
私がそう指摘すると、アテネは絵の一点を指差した。
「ここをよくみて下さい。スカートです!」
確かによく見れば腰から下がスカートに変わっている。
裾が広がった分、今よりも動きやすそうだ。
「っと……こんな感じ?」
今着ていた(着せられていた)服をイラストの服に変える。
やっぱり今までよりも動きやすい。
尻尾も出しやすく……
「はうぅぅ!す、すごい破壊力ぅぅ!」
「へ?」
尻尾と耳を出して、スカートの裾を摘んだりしていると、突然アテネが絶叫して倒れた。
スケッチブックを開いた辺りから気になっていたが、この子こんなキャラだっただろうか……。
「あの、トリップしてるところ悪いけど、この服は気に入ったから、これから使わせて貰うね」
「はいぃ……どうぞ」
私は、恍惚とした表情でどこかにイッてしまったアテネを放置して、部屋を後にした。
「日本はどうなってるかな?」
五百年も経っていれば、人間が居るに違いない。
ならば急げと、八坂の家に跳ぼうと……したが、思い直して止めた。
この前、月に行ったとき、跳んだ先が射撃場になっていたのを思い出したのだ。
もし、何かの間違いで壁に埋まったらしたら……。
「……飛んでいこう」
私は、神殿を出発し、日本に向かった。
途中で風に会っていこうかな。
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神殿を出てすぐに亜音速飛行を始めた私は、既に中国上空に差し掛かっているのだが……。
「えぇ!?無い!?」
風が居る宮殿があるはずの辺りの上空で急停止し、下を見回すが、そこに宮殿はなく、荒れ地が広がるばかりだ。
「五百年も経てば国も滅ぶか……」
それに、国が残っていたとしても、風は住む場所を変えているだろう。
私は肩を落としてその場を飛び去った。
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諏訪子――もとい、諏訪湖上空。
諏訪湖の畔に広がる大きな諏訪王国を見下ろし、私はニヤリと笑って町から少し外れた森の中にひっそりと降りた。
耳と尻尾を隠し、神力は封じ、妖力はできるだけ抑えてから町に入る。
妖力を封じないのは、単にその方が面白そうだからだ。
漏れだす妖気はごく少量だが、気付くだろう。
彼女神だし!
「フンフン〜♪どこに行こうかな〜」
鼻歌を歌いながら森を出て町の中へ。
美味しそうな物があったら金貨を使って食べまくったる!
そんな事を考えてニヤニヤしながら、ふと周りを見回すと、誰一人居なくなっていた。
「ア、アレ?あんなに賑わってたのに、皆どこに行ったんだろう?」
「どこも何もないよ。皆して社に逃げ込んできたよ“怪しい奴が道のド真ん中でニヤついてる”ってさ。お陰で仕事が増えたじゃないか」
誰も居ないはずなのに、気だるそうな声だけが聞こえた。
声の主を探そうと、目を凝らして通りを見つめる。
しかし、正面には白い蛇が数匹居るだけ。
「誰も居ない……?」
後ろも同じく蛇が数十匹蠢いているだけだ。
もう一度前を向くと、道が何十倍にも増えた蛇で覆い尽くされており、建物の蔭からニョロニョロと次々這い出して来る。
気が付けば建物の屋根にも蛇がおり、完全に囲まれていた。
「あらら?もしかして大ピーンチ?……うわっ!」
私が、自分の置かれた状況を理解するのを待っていたかのような絶妙なタイミングで、一斉に蛇たちが襲い掛かって来た。
全方向に蛇の壁が形成されており、逃げ道は無い。
「ならば!うおりゃあ!」
私は雄叫びを上げながら地面を踏みしめ……結界を張った。
え?強行突破?ムリムリ気持ち悪いもん。
直後、私はこの判断が間違っていたと認めざるをえない状況に陥ってしまった。
「げぇ〜気持ち悪!目に毒だわ〜」
私がドーム状に張った結界に蛇たちがビッシリ取り付き、ニョロニョロウネウネ絡み合っている。
ハッキリ言ってトラウマ物だ。
「身動きも取れなくなっちゃった……って!何やってんだ、私は。転送!」
結界を解くと同時にかなり離れた場所に移動した。
そして、支えを失って地面にバラバラ落ちていく蛇を結界の中に閉じ込めた。
「最初からこうすれば良かっ――」
「でやぁ!」
結界の中でウネウネし続ける蛇を満足して見ていると、ロリな気合いの声が響き、左の袖が地面に落ちた。
袖を切り落とした輪のような物は、そのまま結界にぶち当たりソレも破壊した。
銃を抜きながら振り向くと、目の前にさっきの輪が迫っていた。
ガッ!ギギギ!…キィン!
「くっ……!」
咄嗟にクロスさせた銃身で受け止めるが、押し負け、蛇の大群(ニョロニョロ地獄)の方に押しやられてしまった。
あの地獄に放り出され、奴らに身体中を這い回られるのを想像してゾッとした私は、妖力を全解放して鉄輪を何とか弾いた。
それと同時に鉄輪を構えた幼女(諏訪子)が地面に降り立った。
「お前何者だ。私に喧嘩でも売りに来たのか?最初よりは妖気が強いけど、そんなんじゃ私にゃ勝てないよ。大人しく帰りな」
「ちっちゃい子に凄まれても大して恐くないです、はいww」
いえ、ただ美味しいものを買いに来ただけです。
「………ちっちゃい?」
ヤバっ!言ってる事と思ってる事が逆に!
“ちっちゃい”という単語を聞いた途端に諏訪子からどす黒いオーラが漂いだし、呼吸が苦しくなってきた。
「か…は……ぁ。息、が……」
喉を押えて膝をついて必死に息をしようとするが、ほとんど空気が入って来ない。
喘ぎながら諏訪子の方に意識を向けると、口元がうごいている。
……まるで呪いでもかけるかのように。
――パァン!キィン!
祟りを受けていることに気が付いた私は、諏訪子に向けて引き金を引いた。
しかし、発射された鉛玉は鉄輪によって弾かれてしまった。
それでも集中を乱す程度の効果はあったようで、祟りが一瞬緩んだ。
その瞬間を見逃さずにマガジンを取り替え、妖力弾を連射する。
「え…効いてない!?」
諏訪子は、鉄輪で弾きもせず、全て体で受けたにもかかわらず、平然として再度祟り始めた。
再び襲い掛かって来る息苦しさに堪えながら、今度は神力の封印を解いて神力弾を打ち込む。
神力を打ち始めた私を見て、諏訪子は祟るのを止めて、弾丸を鉄輪で弾いた。
「アンタ…神だったのか?」
「ぜぇ…ぜぇ…そう、だけど?」
「じゃあ、最初からそうやって来なよ。聞きたいことが有るから、妖力をキッチリ抑えてからちょっと来な。あ、ミシャグジは解散!」
諏訪子の一声で今までジワジワと私に迫ってきていた蛇たちはあちこちに散っていった。
私は、諏訪子の言った通りに妖力を封じて諏訪子の後に続いた。
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「先に本殿に行ってて。私は、国民に説明してくる」
社に降り立つと、諏訪子はそう言って国民の元に向かった。
「……本殿って誰かを入れて良かったっけか?ましてや他の神なんか」
その辺りは非常に疑問だが、一先ず本殿に向かいがてら神社を一周した。
一通り見て回ったが、一つ一つの施設が大きく、一般的に凄く立派だった。
月の神社は、この数倍くらいの広さの敷地に宝物殿等も有るのだが……。
最後に本殿にたどり着き中に入ると、既に諏訪子が待っていた。
「何で私の方が早いのさ。まあいいや、座って」
諏訪子が示す先には座布団が用意されており、そこに座って良いようだ。
「で、今日は何の用で来たのさ?」
「国の見物をしに来ただけだけど」
「宣戦布告を前にしての下調べ?」
「誰が宣戦布告するの?」
「は?アナタたちの盟主でしょ?」
「へ?」
「え?」
何やら話が噛み合っていないようだ。
どうやら、私は何処かの神の眷属だと思われているようだ。
「いや、私は誰かの眷属とかじゃなくて、ちゃんと独立してるんだけど」
「えぇ!?じゃあ、アナタが単独で戦争する気なの!?言っちゃ悪いけど、やめときなよ。そんな力じゃすぐ負けるって」
「いや…だから、戦争しに来たわけじゃないし」
因みに、力が小さいのは大部分を抑えているからです。
「じゃあ、何しに来たのさ?」
「だから、王国の見物。つまり、観光だってば!」
「ホントに?自分の神社を放置して?」
「ホントホント。って言うか、信仰はこれで十分だし」
ほっといても多分信仰は増えると思うし…。
「へー無欲なんだね。まあ、ゆっくりしていってよ。ただし、変な真似をしたら鉄輪のサビになってもらうからそのつもりで」
私は仕事が有るから、と素っ気なく言い、諏訪子はどこかに行ってしまった。
私は、銃の掃除でもしようと、神殿から掃除セットと予備の弾をこの場に取り寄せた。
時間は既に夕方、暗くなる迄には終わるだろう。
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「ねえ、一緒に呑まない?」
若干苦労しながらも銃の掃除を終わらせ、切り落とされた袖を直したあと、縁側に座ってボケーっとしていた私の隣に、酒瓶を持った諏訪子が座った。
素っ気なかった態度が、どういう訳か友好的になっている。
「自己紹介がまだだったね。私は洩矢諏訪子よろしく」
「私はす……葵よろしく」
「あ、いきなり態度が変わったから警戒してる?悪いと思ったけど、イマイチ信用出来なかったから、ちょっと試したんだよ」
なんと……いつの間に。
「私の鉄の輪を弾いた神具って一体何なの?最新技術の結晶だから、今まで防がれた事なんかないんだけど」
「触ってみる?はい」
そう言って私は片方の銃を諏訪子に渡した。
「おっと!…意外と重いね」
私が片手で渡したからだろうか、同じく片手で受け取った諏訪子は銃を落としそうになっていた。
「まあ、諏訪子の鉄輪と同じだからねぇ」
「え?って事はコレも鉄で出来てるの!?作り方は?」
「ありゃ、ごめん。貰った物だから作り方までは知らないや」
「なんだ…じゃあじゃあ!どうやって使うの?」
「ん?こうやってだよ」
私は、ホルスターに残っている銃を抜き、マガジンを確認すると空に向けて神力弾を一発撃った。
諏訪子も私の真似をして空に向けるが、引き金は私にしか引けないため、弾は出ない。
「あ、あれ?」
「当然、私にしか使えないようになってるよ」
ビクともしない引き金を、一生懸命引こうとする諏訪子にそう伝えると、ガッカリして私に銃を返してきた。
「ところでさ、何か特産物みたいな物ってないの?」
私がそう聞くと、諏訪子は盛大に首をかしげた。
「特産物って何?」
「こう……その地区で有名な物みたいなやつ」
「ああ、そういう事ならコレが有名」
そう言って諏訪子が片手を上げると、鎮守の森からミシャグジがワラワラと寄ってきた。
暗闇から蛇の波が迫ってくるのを見て、ちょっと引いた。
「……蛇以外で何か無いの?」
「無い」
即答されてしまった。
なんだ…美味しい物はゲット出来ないのか。
結構ショックだ……。
「葵の社はどこにあるの?」
沈んでいると、突然諏訪子がそう言った。
「え?」
「え?じゃなくて、社」
ど、どうしよう……月…とは言えないよな〜。
「えっと…もっと北の方…かな〜?」
「何で疑問形?」
「ちょっと位置関係が分からなくて…」
「ふ〜ん……じゃあ、ついでの時に遊びに行くよ。そうだ!分社を置きなよ。そうすればどこにいてもすぐに来れるだろ?」
「どういう事?」
「あれ?知らないの?神は自分の社の間を行き来出来るんだよ?」
なんて便利なんだ……。
能力を使うよりも安全かつ確実じゃないか。
「作ろっかな。分社」
「そうと決まれば明日にでも作りはじめようか。何か依り代になるもの持ってる?」
「無い…かな」
「じゃあ、私が使わない宝具をあげるからそれを使おう。とにかく、今日はガッツリ呑めー!」
そう言って凄い勢いで呑みはじめた諏訪子に付き合い、私も同じペースで呑みまくった。
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「洩矢ー!出て来ーい!」
一夜明けた昼。
誰かが大声で諏訪子を呼んでいる。
当の諏訪子はというと…
「頭、痛てぇ…」
「昨日呑みすぎたんだって…。呼んでるのどっかの神っぽいけど、どうする?」
二日酔いによる頭痛に苦しんでいた。
「…一先ず、黙らせて、くる。しばらく、出かけてて。見つから、ない、ように」
そう言うと、諏訪子はフラフラと声のする方に向かった。
私は見つからないように霊力だけを出して町に向かった。
帰ったら何事か聞…けないよなぁ…体調的に。
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―――
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またその次の日。
「で、何だったの?」
「八坂神奈子が宣戦布告をしに来た」
一日寝込んだお陰で、すっかり体調が回復した諏訪子が渋い顔でそう言った。
何というタイミング。
ここに来て三日目にして諏訪大戦とは…。
「いつ来るの?」
「一週間後だそうだ。ま、適当に蹴散らすよ。じゃ、分社を建てようか」
諏訪子はそう言って大工を呼びに行った。
私は、こんなに軽い感じでいいのか?と思いながら彼女に付いていった。