第十三話 射撃は得意ですか?
「なぜ今まで隠していたんですか?隠す必要なんて無いのに……」
「いえ、決して隠していた訳では……ただ、険悪なムードになってしまったので、タイミングを逃しただけです」
「ありゃ…私自身のせいだったか…」
「いえ、私も会って直ぐに伝えれば良かったんです。…そう、私が全部悪いんです」
ゼウスのテンションが手の付けようが無いくらい下がってしまった。
「多分設定が変わって妖力量が変わらなくなったのね」
いつものように鈴蘭さんがゼウスを無視して話しかけてきた。
「規格外も良いところですね。あれ?そうすると、私はずっと二尾のままなのかな?」
「ん〜それはどうかしら?ゼウスに聞くのが一番よ」
「それもそうですね。ゼウスさん」
未だに俯いてブツブツ言っているゼウスに話しかけてみる。
もしかしたら、苦労が絶えないせいで若干鬱なのかもしれない。
「やっぱり僕が主神なん…何か御用ですか?役立たずの私に…」
「あー…結局、私の妖力は減りはしないけど、増えることはあるんですか?」
「ああ……ご心配なく。尾の数と一緒にちゃんと増えますよ。私の存在意義とは違って……」
「成る程…やっぱりゼウスさんは何でも知ってますね」
「いいんですよ…慰めなくても……フフフ」
本当にどうしようもない状態のゼウスを見て、鈴蘭さんに目配せをしたが、彼女は首を振るだけだった。
……つまり、放置しろと?
「一時間くらいしたらまた来なさい。その頃には元に戻っているハズだから」
「それじゃあ、天照を帰して来ます。転送」
『後でね〜』と手を振る鈴蘭さんの見送りをうけて、私は八坂の家に跳んだ。
「やっと帰ってきたね。心配するから、次からは自分の尻尾の中を確認してからにして欲しいねぇ」
「その割りには、随分とゆっくりしてたみたいだね」
「そんな事はないぞぉ〜」
私が帰って来たときから、ずっと寝そべったままで、起き上がりもせずによく言う……。
「で、どうだったんだい?アンタの秘密は」
「八坂の言う通り、設定が操作されてた。……手違いで。ほい。天照を還すよ」
そう言って天照を見ると、再び爆睡していた。
寝ながらもしっかりと尻尾に掴まっている天照にも驚くが、それを支える尻尾にはもっと驚く。
「また暫くそのままだねぇ。じゃあ、設定を直す必要は――やっぱり無いよねぇ」
八坂は感慨深そうに頷いてそういった。
減ることのない妖力……凄すぎる。
ただ……
「何だか恐いんだよね」
「なにが?妖怪で神の上に妖力は減らない。しかも、それは神力と打ち消されない特殊な妖力と来た。一体何を恐れる必要が有るって言うんだい?」
確かに戦力的には問題ないだろう。
しかし、過程に運が溢れすぎている為、この後逆に……と思うのは杞憂だろうか?
「何か上手く行きすぎているような気がするんだよね」
「まあ、確かに幸運を使い果たしつつある気がするねぇ」
「だとしたら全く笑えないんだけど……」
「まあ、運と言うものは努力や苦労から生まれるものさ。だから、これから人一倍努力と苦労を重ねるんだね」
笑顔でバッサリ切り捨てられた私は、ただ苦笑いを浮かべるしか無かった。
「ところで、一時間位時間を潰してからまた戻らなくちゃいけないんだけど、何か暇を潰せる物は無い?」
「だったら酒を――」
「お酒以外で」
「………」
うわっ!黙っちゃったよ!
酒呑む以外に何も無いなんて……鬼ですら喧嘩という暇潰しを持っていると言われるのに……。
「無いなら向こうで待つよ。天照をよろしく――っと。転送」
尻尾にしぶとくへばり付いている天照を引き剥がし、その辺に転がし、神殿に跳んだ。
学習装置的な物があるあそこだったら、〇iiは無理でもファミコ〇位はあるだろうから、それをやってよう。
「あれぇ?部屋には無いのかな?テレビ(DVD/BDプレーヤー内臓)はあるけど、やっぱり何も映らないし…ゲーム用かと思ったんだけどな…。ん?こ、これは!」
ソレはテレビ台の奥の方から出てきた。
「スペ○ンカー……何でこんなものが……」
伝説のクソゲーだった。
確かにゲームは存在したが、ハードが無いから出来ない……と言うよりも、この部屋の備品は一体どうなってるんだ!?
日本なんか人間が未だに居無いのに、この部屋だけは二、三千年後を突っ走っている。
「便利だから良いんだけどさ……」
ガタンッ!
ゲームソフトをもとの場所に戻し、振り向きながら立ち上がると、テレビに何かが当たったような音を出した。
首だけで振り向くと、出しっぱなしにしていた尻尾が見事にヒットしていた。
「ありゃりゃ…忘れてた」
直ぐに尻尾をしまうと、一緒に耳も消えた。
「尻尾の出し入れには耳を伴う。しかし、耳の出し入れには尻尾を伴わない…か。不思議だなぁ」
なにやらこの世界の住人では無い者の意思を感じるが、気にしたら負けなのだろう。
とにかく、ここにも暇を潰せるものはなかったので、仕方なく神殿を歩き回る事にする。
カラン、コロン
まるで鬼〇郎のような足音が神殿の中に響きわたっている。
勿論出所は私だ。
神殿はまるで誰も居ないかのように静まり返っており、いつもは気にも留めない下駄の音がとても良く聞こえる。
まあ、本当のところは、気に留めるとかじゃなくて、移動手段として地面を歩く事が殆んど無いだけなのだが、今回は稜と戦った後に体力不足を痛感したのをふと思い出したので、歩く事にしたのだ。
「しっかし誰も居ないなぁ……」
この神殿にはオリンポス十二神が住んでいる――のかは知らないが、頻繁に出入りしているのは確かなはずだ。
にもかかわらず誰にも会えないのは一体何故だろ――
「うきゃあ!」
つい今しがた通り過ぎた通路からヘラが悲鳴を上げて飛び出して来た。
「お母さん。こんなところに隠れて何してたの?」
「ア、アテネ!何を言っているのかしら?別に隠れたりなんかしてないわよ」
そのあとに続いてゆっくりと通路から姿を現したのはとても賢そうな容姿のアテネだ。
アテネに関しては今しがたここに来たようだが、どうやらヘラは私の後をストーキングしていたようだった。
「あれ?そうなの?てっきり前回の夕食の時に涼花さんを怒らせてしまったけど、そのまま謝れなかったから、『謝りたいな』って思っている時に丁度姿を見かけたから、謝ろうと思ったけど気恥しくて素直に謝れずに後ろをこっそりついて行ってタイミングを見計らっているのかと思ったよ」
「……」
「おぉー」
ヘラは無言になり、私は驚きの声を上げてしまった。
ヘラが無言になった時点で、アテネの言葉が正しいことが私にもよくわかった。
なんという賢さなのだろうか。
将来が非常に楽しみだ。
「――くっ!この前はごめんなさい!それじゃあ!」
ヘラはこちらをキッと睨むと、吐き捨てるように言って走り去ってしまった。
なんだありゃ?ツンデレ?
「はあ……すいません本当に」
ヘラが居なくなったあと、残ったアテネは済まなそうにそう言った。
「あれでも本当に申し訳なく思っては居るんですよ。素直じゃないんです」
「やっぱりツンデレなんだね。大変だね」
「つんでれ…というのは良くわかりませんが、大変なのは確かです。涼花さんを連れてきた夜の折檻は特にひどかったみたいですよ」
「せ、折檻!?」
「ええ…何でも天井から吊り下げられて、死なない程度に切り刻まれるとか…」
ツンなうえに病んでもいるのか…なんと恐ろしい。
これでゼウスの草臥れように説明が付いた。
度々…いや、毎日と言っていい頻度でそんなことをされれば疲れるだろう。
「おっと…そろそろ一時間経ったな」
「何か御用ですか?」
「鈴蘭さんに一時間経ったら来るように言われているんだよ」
「それなら自室にいらっしゃるのではないでしょうか?あちらの角を曲がった突き当たりがそうです」
「ありがとう。じゃあまた後で」
私はそう言って再び下駄の音を響かせて歩きだした。
ゼウスが再起動しているといいのだが…。
……コンコン
廊下の突き当たりにたどり着いた私は、そこにあったドアをノックした。
「来たわね。待ってたわよ。それじゃあ、ゼウスも復活したし、さっきの話の続きをしましょうか。」
「先程はお見苦しいところをお見せしてすみません」
「いえいえ、お気になさらず」
ゼウスに会うと、最初に必ずこのやりとりをしている気がする。
込み上げる笑いを堪えていると、ゼウスが何やらケースのような物を2つ取り出した。
「涼花さんにこれを…」
ケースを開くと、片方にはハンドガンが2丁、もう一方にはライフルが収められていた。
「………ナニコレ?」
「銃です。こっちはスナイパーライフルで、そっちの2つはハンドガンです。涼花さんはご存知でしょう?」
「まあ、多少は」
ゼウスはどうやら、鈴蘭さんから私が未来から来たことを聞いているようだ。
実物を見たことが無かったが、なかなか重みがある見た目だ。
私は、生粋の日本人なので見たことがないのが当然なのだが…。
「そういう事ではなく、何故私に銃を?」
「いえ、倉庫でソレを見つけた鈴蘭さんに『涼花がこれを使ったら画になるわね〜』と言われましたので、先ほどのお詫びもかねて、特別に改造を施して差し上げようかと…」
なんじゃそりゃ…。
鈴蘭さんに言われたら何でもやるんだな、この人は。
「それで、次の改良点なんですけど、この弾倉が凄いんです」
ちょっと呆れている間も銃の説明は続いていた様で、弾倉の凄さについて語っていた。
話によると、ケースの底に弾倉が一丁につき、2つずつ入っており、片方は只の弾倉だが、もう片方は、妖力や神力を籠めると弾丸になる優れ物らしい。
ハンドガンを手に取り、じっくりと眺めてみる。
「凄いですね……でも、良いんですか?私は神である前に妖怪です。こんなに戦力を与え――」
ドンッ!――カシャンッ
一通り眺め終わり、引き金に指をかけたまま銃口を下に向けたら、突然銃が暴発(誤って引き金を引いてしまった)した。
弾丸は私の足元に穴を開け、銃は反動で宙を舞い、床に落ちた。
あれ?私、安全装置外したっけ?それ以前に撃跌起こして無いんだけど?
「…これから言おうと思っていましたが、とっさの先頭を考慮して、普通の安全装置は外しましたので、暴発には気を付けてくださいね。あと、貴方になら、たとえ軍隊を持たせたとしても安心だと言い切れますので」
「安全装置無しは流石に……持ち歩いている間に暴発とか嫌ですよ?」
「普通の安全装置は外しましたが、代わりに涼花さんがグリップを握らなくては発砲しないようにしてみました」
どうですか!と言わんばかりにゼウスは胸を張った。
随分と面白い物だとは思うが、実戦では使うことはほぼ無さそうだ。
弾幕が張れないならば話は別だが、流石にそれは無い……よね?
だって、妖精だって張れるんだよ?
まあ、貰うけど……。
「それでは、ありがたく頂戴いたします」
「あ、これもどうぞ」
私がケースの蓋を閉じ、此方に引き寄せると、ゼウスが再び箱を2つ取り出した。
見た目以上に重い箱の中には弾丸がギッシリつまっており、もう一方には様々な形のポーチのような物が乱雑に詰めてあった。
「弾薬と……ホルスター?」
「銃の携帯に予備の弾薬とホルスターは欠かせません。因みにオススメのホルスターは太ももに着けるタイプですね。涼花さんは足が盛大に出てますから、似合うと思いますよ」
似合う……のか?
振袖を着た少女の太股に銃………変だな。
いや待て……此処は東方の世界だから、奇抜なファッションの一つや二つ恥ずかしくないかな?
巫女は脇出してるし。
それに、いくら妖怪かつ神と言えども、見た目はたたの白髪少女。
これからの旅の途中で賊に絡まれる可能性は高い。
コレはそういった輩に対する牽制として役に立つかもしれない。
「コレですか?」
ぐちゃぐちゃの中から革製のホルスターを2つ引き摺りだし、ゼウスに訊ねた。
「オススメはその型ですね。布製の物も有りますよ」
革製品は手入れが大変だって聞いたことが有るな……布の方が蒸れ無さそうだし、そっちにしようかな。
「布の方が良いかな。ん〜……あ!コレかな?」
「あ、はい、それです。着け方は判りますか?」
「多分こうじゃないかと」
形状から着け方を予想し、両足にそれぞれ一つずつ装着してみた。
「大丈夫です。それで合ってますよ」
自然に手を下げた位置にグリップがあり、抜きやすそうだ。
ここで私はどうしても聞いておきたいことをゼウスに聞いてみた。
「あの倉庫は一体何なんですか?以前の装置はゼウスさんが作ったと言うことですが…」
「あの倉庫は、この先、人間が進化の過程で生み出す様々な装置が収納されています。私の発明に関しては、置き場所がないので混ぜているだけです」
「じゃあ、私の部屋にある物はそこから?」
「ええ、機能性が良いものを選んでみました。最も、その時は涼花さんが使い方を知っているとは思っても見なかったので、後で説明書を作って渡そうと考えていたんです。実はもう――」
――ガッシャーン!
「半ブッッ!――」
何かが部屋の窓を突き破って、ゼウスの後頭部に当たった。
ゆっくりと前に倒れこんだゼウスの頭には――
「…ペンシルロケット?」
何処から入ったか不明なちっちゃなロケットが煙を上げて突き刺さっていた。
その側面には大きく『To 涼花 From 依姫』と、書かれている。
どうやら手紙が入っているようだ。
ゼウスの頭からロケットを引き抜き、中から手紙を取り出すと、そこには一言『ちょっと来て』とだけ書いてあった。
強制呼び出しの代替手段がロケットを打ち込むって……。
「あー…鈴蘭さん。月からお呼びがかかったので行ってきます。ゼウスさんも」
「あら、そう?たまには顔を見せに来てね」
返事は一人分しか帰って来ない。
床に突っ伏しているこの人は大丈夫だろうか?――主に脳的な意味で。
ちょっと心配だったが、スルーして月に跳ぶ事にした。
「月に転送!」
―――――
――――
―――
――
「…ここは?」
漠然と月に跳んだため、自分が居る位置を把握するのに少し時間がかかってしまった。
確か、この荒れ地はこの前依姫に呼ばれと現れた所だったはず……なのに、
「当たり?」
何やら大きな板が横一列に綺麗に並べられており、反対の面を覗くと、何故か当たりと書かれた丸が――
チッ――バコッ!
「………」
引きちぎられた髪の毛が数本舞い、同時に板に穴が開いた。
“当たり”の文字が向いているほうを目を凝らして見ると、黒光りした細い筒がズラリと此方に向けて並べられている。
つまり、ココは……。
「射撃場!?て、転送!」
射撃場のど真ん中につっ立っていたら、命がいくら有っても足りないので、慌てて安全地帯――正確には此方に向いている銃口の向こう側に跳んだ。
そこには、一列に並び銃で的を狙“っていったと思われる”月のウサギ達と、般若と化した依姫がいた。
「アンタなにやってんのよ!安全確認をしろとあれ程言ったのにぃぃ!」
「ず、ずびばぜっぐえ…」
「依姫様、その辺りで…」
「お前も生け贄かぁぁ!」
「え?あ、ちょっ!ぐえぇ!」
怒り狂った依姫は私の髪を掠めた弾丸を発射したと思われるウサギを絞め上げるだけに留まらず、止めに入った無関係のウサギにまで制裁を加えており、そちらに気を取られているこの場に居る生き物は誰一人として私が現れた事に気が付かない。
チャキッ――
遂に依姫は背中に担いだ刀に手を掛けた。
「流石にやりすぎ」
私は右足の銃を抜き、空に向けて一発発射した。
突然の銃声にその場にいた全ての視線が此方に集まった。
「涼花、久しぶり。さっきはゴメンね」
依姫は、ミスを犯したウサギをヘッドロックしたまま此方に笑顔で話し掛けて来た。
「当たらなかったから大丈夫。ところで、そろそろ放してあげたら?泡吹いてるんだけど」
依姫の腕が完璧に極っているウサギは白目を剥いて泡まで吹いてしまっている。
「ああ!忘れてた!起きろ!」
依姫が繰り出した平手打ちが瀕死のウサギのHPを更に削って行く。
やめて!彼のライフは(ry
「……で、今日はどうしたの?まさかプロレスを見せるためじゃないよね?」
「うん。今日は訓練の成果を見てもらおうと思って呼んだんだけど……訓練不足だったよ」
「そんな事はないよ。私は一発位食らっても治るし、狙いは正確だったよ?私も見習いたい位に」
「涼花もやってみる?手に持ってるのは銃だよね?今の地上にそんなものがあったの?」
「これは人間から貰ったわけじゃないよ。知り合いの神から貰ったんだ。こいつも一緒に」
そう言って私は左足のホルスターをポンポンと叩いた。
「それは涼花の神具なの?」
「そうなるのかな?良く分かんないや」
「射撃の腕は?それをくれた神も涼花の腕が良いからくれたんでしょ?」
「やったことが無いから判らないよ。その神がくれた理由だって、『絵になるから』だったし」
「じゃあ、それは……」
「うん。ただの飾りだよ?でも、使えるに越したことは無いから、少しくらいは練習しようとは思ってるよ?」
「なら、私と一緒に射撃訓練をしない?ほとんどやらないから上手くは無いから教えられないけど、射撃場位なら貸せるよ」
「それじゃあ、お願いしようかな」
―――――
――――
―――
――
――パァァンッ!
「すごい…。また同じところだ…」
依姫は双眼鏡を使って的を見ながらそう言った。
二人で射撃を始めて既に一時間がすぎているが、二人が使った的は全く様子が違っている。
一方は人の形を模した的に上から下まで至るところに穴があいている。
しかし、もう一方の的に空いている穴はたったの二箇所――頭にあたる部分と心臓にあたる部分だけだ。
「何で弾痕の位置が判るのよ!?そして、手ブレとかは無いの?」
「まあ、しっかり持ってれば狙いはズレないし、頑張って目を凝らせばハッキリと見えるから」
「神様って凄いんだな…」
「確かに神様の力はすごいとは思うけど、すべての神が出来るわけじゃないと思うよ?目がいいのは分からないけど、力が強いのは私が元々は妖怪だから。永琳とかに聞いたこと無い?」
「い、いや…全く」
私は的から目を離していないが、依姫が驚くのが手に取るように分かった。
ついこの前まで消息が掴めなかった知り合いに会ったら、突然『実は妖怪でした』なんて言われたら、誰でも驚く。
というよりも、逃げられて居ないのが奇跡と言えるだろう。
「でも、そう言われてみるとなるほど~って思うな」
「あれ?思ったほど驚かないね。もしかして、この前会ったときに首輪をしてなかったから薄々感づいてた?」
「うーん…涼花ってさ、その姿であった時から色々とおかしかったからね。動物を人の姿に変えられる首輪があったら、一部の特殊な趣味を持つ人がすごくほしがるよ…。そんな一儲けできそうな話に永琳が飛びつかない訳がないもの。この前会ったときに首輪がないのは気づいたけど、その時は神様パワーなのかなって思ったんだよ。他には能力がある動物なんて聞いたことなかったし…」
アラー…私の計画最初からバレてたようなもんじゃん!
私にはファッションセンスの他にも悪巧みをするセンスにも欠けるようだ。
「…射撃訓練はこれくらいにして帰ろっか」
依姫の提案に返事をする代わりに、私は銃をホルスターに戻した。