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東方狐物語  作者:
1/21

第一話 惑いは少女の事

『幻想の向こうへ』のネタが切れてきたので、別に貯めていた話を投稿します。

「すいませーん。これ、全部お願いしまーす」




俺はそう言って券売機で買った食券をおばちゃんに差し出した。




「はいよー。ラーメン大盛りにカレー、あとは親子丼ね」




おばちゃんは差し出された食券を読み上げ、お盆を差し出した。




「あんた、いつも凄い量だね。全部1人で?」




「はい!あれくらい食べないと全然ダメなんですよ」



おばさんと話をしていると、注文したものがお盆に乗せられていた。


それを手に近くの席に座ると、クラスの面々がお盆を持って同じテーブルについた。




「お前、相変わらず凄い量だな。その量を食べてそのスリム体型…」




「普通ならデブになってるハズなのに…。妬ましい」



ちょっとぽっちゃり系のクラスメイトその1が橋姫と化していたが、そんな事を言われても仕方がない。


――別に太っているわけでも無いのに、恐ろしい量を食う男がいるらしい。


これは、今年の初めに学校中を駆け巡った噂だ。


そして、この男というのは当然俺。


この食欲のおかげで、入学1週間で俺を知らない人物は居なくなった。




「お前、また午後の授業で堕ちちゃうんじゃないの?」




「うーん、ヤバイけど、最大限の努力はするよ」




俺はカレーを掻き込みながらクラスメイトにそう答えた。



―――――


――――


―――


――



本当に授業中の居眠りは最高だ。


特に昼食後の国語系授業。


現代文も、古典も教師が授業中1人で喋って終わるようなものだし、特に注意もしないので、昼寝にはもってこいだ。


しかし、今日の午後は運悪く国語系の授業が無かった。


午後の2時限目、数学。遂に俺は眠気に耐え切れずに机に突っ伏して、そのまま夢の世界に旅立ってしまった。



―――――


――――


―――


――



物凄い大きな音で目が覚める。


教師に怒鳴られたかと慌てて飛び起き言い訳をする。




「すいません!寝てないです!…そう!気絶してたんです!です、か……ら?」



………………アレ?


言い訳をしつつ周りを見回し衝撃を受けた。


ナニ?コレ。


俺、確か教室の机(授業中)で寝てたはずだよね?


なのに、なのに、何故…




「俺は森の中で寝とんじゃーい!」




見渡す限りの木、木、木。


どこからか聞いたこともない鳴き声まで聞こえている。


さっきの大きな音のはこの声だったようだ。




「机どこ!? 教室は!?」




早く戻って授業を!!


………授業を…受けなくていっか。




「授業はいいとして、まずはここがどこで、何で俺がここに居るかを調べないと……。

とにかくどこか人がいる場所に行こう」




俺はサバイバルなんてやったこともない、出来ない、やる気もない。


一先ず何となく方向を決めて歩きだす。


………が。




「なんか地面ちかくね?」




すぐに異変に気付いた。


物凄く地面が近いのだ。


まるで、四足歩行をしているかの如く――




「なんじゃこりゃー!?」




え?え?ナニ?この手。


なんか毛が生えてる。


恐る恐る自分の後ろを確認すると――




「尻尾あるぅ!?なんで?」




そこにあったのは真っ白いフサフサの尻尾。


形からするに狐かな?




「フッ…狐の尻尾か…藍しゃまの尻尾をもふもふしたい…いや、




むしろ埋まりたいな……」



現実逃避をする東方厨の主人公。


ああ…、これ、アレかも、テンプレ、東方の、二次創作。




「此処が東方の世界だったら、俺にも能力あったりして……」




――――――――――――――する程度の能力




「…………肝心な所が分からねー」




「でも、まあ、能力が有るという事は……そういうことだね?」




以上から俺がたたき出した結論。


此処は東方の世界である。


それに気付いた俺は…




「………やっほーい!レミィを嫁にしに行こう!」




テンションがMAXになっていた。



―――――


――――


―――


――数時間後



「くぅ……この世に神はいないのか…」




俺はとある崖の上でorzこうなって泣いていた。


崖の下には数件の堅穴式住居。


時代がズレてるとか言うレベルじゃない。


完全に縄文時代だ。


レミリアなんぞ生まれてすらない。


次に、俺が嫁をとるのは無理そうだ。


なぜかって、狐だからさ。


さっき気付かなかったのは、やっぱり動転していたからかな……。


これでは、嫁に貰うどころか、エサにされる。




「うぅぅ……」




悲しみに打ち拉がれてると、後ろでガサガサと物音が聞こえた。


後ろを振り替えると、明らかに俺を美味しくいだだきに来た(捕食的な意味で)と思われる化け物。




「グルル…(物凄く旨そうな狐だぜ)」




「いや、私を食べても美味しくないと思われるのですが…」




後退りしながらお馴染みの無駄なセリフを言ってみる。


※()内は主人公の妄想です。




「グゥ………(久しぶりのエサ…)」




「………あっ!!UFOだ!!」




お決まりのセリフpart2を吐くが、やはり引っ掛からない。


そうこうしているうちに奴は俺に飛び掛かってきた。



「グガァァ!(飯、ゲットだぜぇぇ!)」




「キャァァァ!来ないでぇぇ!」




もう完全な女の子の悲鳴を上げて、その場に尻餅をついて目を瞑った。



ボッ!



何かが破裂したみたいな音が聞こえ、いつまでたっても化け物が俺に食い付く事はなかった。


恐る恐る目を開けると、襲いかかって来た奴は木っ端微塵に成っていた。


………えーと、




「また1人でふらふらと…本当にもう」




木の間から誰かが出てきた。


銀髪の女性。


身長は高くもなく、低くもなく。


それよりも、何だ?あの力は…。




「今のは…妖力?」




「急にどうしたの?そうに決まっているじゃない。お母さんは妖獣なんだから。涼花だって、今練習中でしょ?」




そっかぁ、私、妖獣なのかー それこそ藍しゃまを思い出すな……。




「俺も妖力を使えるようになるのか?」




「本当にどうしたの?あと、女の子がそんな言葉を使ってはいけません」




なるほど……。


この文明の進化具合じゃ紅魔郷どころか幻想郷が出来るまで1万年以上は有る。


平安になれば知ってる妖怪も出て来るから、かなり楽しいハズだが、それでも、時間がかかる。


見た感じだと、今のところ、文化レベルが低すぎて会話すらできなそうだ。


となると…。


この先、陰陽師等に滅されないためにも、やることがないなら、最善の選択だろう。


……………ん?


何か最後のセリフが引っ掛かったな。


女の子!?




「え?女の子?」




「そうよ。あなた、本当に大丈夫?熱でもあるんじゃない?」




新事実!!


俺は女の子になっていた!


これだと、嫁を貰うんじゃなくて逆に貰われる。




「ほら、帰るよ」




俺はその人の後に付いて行きながら、現在のことを整理していた。


うーん?どうやら転生ではないようだ。


今の俺(涼花と言ったか)は元から居たらしい。


更に前を歩く人物、涼花の母親のようだが、妖獣だそうだ。


と言うことは後々使い方を教えて貰えるかもしれない。


これらを整理し、考察した結果導き出された答え。


出来る限りの努力をし、怪しまれないように生活をする。




「ねえ…」




「ん?どうしたの?」




私の呼び掛けに涼花の母親はこちらを振り向いた。




「おかーさんの名前…何?」




「……あれ?教えたこと無かったかしら?鈴蘭よ」



―――――


――――


―――


――



母親?と思われる人物の後に付いていくと、大きな洞窟に着いた。


え?狐一匹だけで占領していいの?って位の広さがある。


此処で私の新生活ははじまるようだ。



―――――


――――


―――


――



「あっ!やっと帰って来たよ」




「ったく…今度はどこに行って居たのやら……」




洞窟の中で帰りを待っていた2匹の狐は心底呆れた様子で私を見ている。




「風も稜も大人しくしていましたか?」




「まあな。涼花じゃあるまいし」




「そう。じゃあ練習を続けましょう。次は逃げたら承知しませんよ。涼花」




「何の練習をするの?」




私は鈴蘭にそう聞いた。


妖術の訓練なのは分かるが何の術をやるのだろう。




「あなたは狐火もまだ出来ないでしょ。ほら、やってみなさい。私は向こうで風の練習を見てるから、稜。お願いね」




「分かったよ……ほら、涼花、やってみろよ」




「うん、分かった」




分かったと言ったものの、やり方が分からない事に今更気づいた。


ここで、やり方を聞くと明らかに怪しまれるので、一先ず狐火のイメージをしてみることにする。


イメージごときで妖術が使えたら苦労はしないわ!


等と自分の考えに内心ツッコミを入れつつ、なんとなく青白い炎をイメージしてみる。



――ボッ



すると、目の前に青白い火が燃え上がった。




「おお…出来た」




「おい、涼花、お前どうした?今までは目を瞑ってやってもダメだったってのに……」




稜がなにやら驚いているが、何の事やらサッパリ分からない。




「こっそり練習したんだよ」




「それでもだ!目を閉じずに妖術を使うのは上級編だ!俺だってまだ出来ない!」




「何を騒いで居るのですか?稜」




どうやら、稜の声が聞こえたらしく、鈴蘭がこちらにやってきた。




「あ!母上。それが、涼花が目を閉じずに狐火をつかって…」




「ふむ……」




鈴蘭は私を見て何かを考えたあと、




「稜。風を見ていて下さい。私が涼花を直接見ます」



「わ、分かりました」




稜は風の練習を見に走って行った。




「さて、涼花。ちょっと出かけましょうか」




私に背を向けて洞窟から出ていった鈴蘭を追いかけて私も洞窟を出た。


一体どこに行くのだろう。



―――――


――――


―――


――



「さて……」




洞窟を出てからかなり歩いて、少し拓けた場所に着いた。


そこでこちらに向き直った鈴蘭は明らかに様子がおかしかった。




「人に化けてみてくれるかしら?」



鈴蘭の真意は計りかねたが、一先ず大雑把な人の形をイメージする。


すると、何か妙な感覚に襲われた。


身体の細胞ひとつひとつを組み直されるというか、なんと言うか……。




「………大丈夫みたいね、涼花。」




「何が?」




「なにが?って、人化よ、もしかしたら私よりも上手いかもね」




自分の体をみて、思わず、唸ってしまった。


完璧だ。誰がどう見ても完全な人間だ。


変化とかによく有りがちな尻尾なんかが残るなんてこともない。


………が。




「なに?コレ…」




いや…、変化と一緒に服がデフォルメで着くのはいいんだけどさ……。




「なんでこんなに短いの?」




一応振り袖の様だが、裾がおかしい。


見えるか見えないかのかなり際どい短さ。


そんな自分の姿にげんなりしていると、



「それにしても、どうしたの?急にそんなに力を付けて」




「え?いや、えっと………練習をサボッて1人で別に練習してたんだよ」




かなり苦しい嘘だが大丈夫か?




「へー、1人で良く此処まで出来たわね。凄いわ!!」




どうやら、あっさりと信じたようだ。


この人は騙されやすいのかな?


……あ、狐か。




「これと狐以外に何かない?」




「ん?秘技みたいなの?」




「それそれ!」




あるのか!ワクワク




「でも、教えない」




「どうして?」




「秘密よ。ヒ・ミ・ツ」




なんだそりゃ。


でも、秘技って何だろうなすごく気になるな。




「じゃあ帰ろうか」




その声に促されて、私は鈴蘭の後に続いた。


結局彼女の意図は分からなかった。



―――――


――――


―――


――



「ただいま」




「あ、母上。おかえりなさい」




「おかーさん。おかえりー…アレ?それ誰?」




風が私の存在に気付いたようだ。




「フフフ…驚きなさい!コレが人間に化けた涼花の姿よ!」




どうして鈴蘭が得意気に胸を張るのかは全く分からない。




「な!人化だと!?」




稜が人化という単語に反応した。




「わー!涼花すごーい!」




風は手をたたいて凄い凄いと言っている。




「我が娘ながらかなり可愛いわぁ〜。稜はどう思う?」




鈴蘭はわたしの容姿に悶えながら突然稜に話を振った。




「何で俺に聞くんだよ」




「そりゃ勿論唯一の男だからよ?」




飄々と鈴蘭は言ってのける。




「…まっ、悪くはないんじゃないか?」




フンッと、鼻を鳴らして、素っ気なく感想を言った。




「さあ!今日はコレくらいにしておきましょう。随分遅くなってしまったわ」



―――――


――――


―――


――



どこからか呼ぶ声が聞こえる…。




「いい加減起きろ!!」




すぐ近くで怒鳴り声がすると同時に頭に衝撃が走る。



「うぅ……」




頭を抱えながら顔を上げると、稜が呆れた顔で立ってた。




「あ……」




昨日のは夢でも何でも無かったようだ。


目が覚めたら夢だった。


-----的なのをちょっとは期待していた。


とにかく、昨日やったように人に化け、足下の水溜まりで姿を確認する。




「そもそも、お前、朝に弱かったか?」




私に背を向けて歩き出していた稜は足を止めてふと呟いた。




「ねえ。人に化けた見た目って日替わりでかわるの?」




「はあ?んな訳な……」




稜は私を振り向いて言葉を詰まらせていた。


私自身何が何なのか判らない。


昨日、同じ水溜まりで確認した時は確かに少女が此方を見つめていた。


しかし、今、水溜まりから見つめ返して居るのは、昨日、狐になる前の自分。


つまり、高校生位の男だった。




「どういう事なのよ…」



「知るか!母上に聞けばいい。あと、その格好でその話し方をするな」




稜は物凄く気味悪そうにいった。




「涼花は起きた?」




そこに狙いすましたように鈴蘭がやってきた。


もちろん私とも目があった。




「あ、母上。涼花の――」



「うわ〜ん!涼花が可愛くな〜い」





私の姿を見ると、稜の言葉を遮って泣きだした。




俺が涼花であると認識すると同時に、稜の台詞に割り込んで泣きだした。


可愛くないっていわれるのって何だか傷つくな〜。



「涼花。このままじゃラチがあかない。昨日の姿になれないのか?」




「あ〜。まあ、やってみるよ」




私は稜に言われた通り、昨日の姿を意識してもう一度イメージする。




「…どお?」




「ん…大丈夫だ。…母上。昨晩と同じ涼花ですよ」




稜に足元をつつかれて鈴蘭は伏せていた顔を上げると一瞬で笑顔になり、私に飛びかかってきた。




「おっと…」


しかし、私が反射的によけた為、そのままの勢いで後ろの壁に突っ込んで行き、そのまま動かなくなった。



「「・・・・・・・・」」



稜も私もあまりの衝撃に暫く呆然としていたが、先に正気に戻ることが出来た私は、早々に逃げることにした。




「…さ〜て。散歩にでも行ってこようかな」




「おい!母上がのびているんだが!?」




正気に戻ったばかりの稜の言葉を無視して、私は森へと入っていった。



―――――


――――


―――


――



「お〜。すごく綺麗な水だ」




私は川底がハッキリと見えるほどに透き通った水に感動していた。




「こんなに綺麗な水は初めて見た…。あっ!そうだ」




何かを思い立った私は、そのまま服を脱ぎ捨て、川の中に入って行った。




「ん〜!冷たくて気持ち良〜い!……ん?」




その時、何者かが争うような音が微かに聞こえた。




「お!面白そうな事が起こってるんじゃない?」




野次馬魂に火が点いた私は素早く服を着直すと、声のする方へと向かった。



―――――


――――


―――


――



「どうしてこうなった…」



私の周りには各々が銃を持った男、男、男。


全ての銃口が私を狙っている。




「チッ…コイツ…。余計なとをするとどうなるか教えてやる」




…余計なこと?(野次馬魂に火が点いた)私はただ、向かった先で、この男達に囲まれて持ち物を奪われそうになっていた奴がいたから助けた。


それだけだ。




「ん〜?余計なこと?記憶にないなぁ〜」




妖怪の私は銃なんか全く怖くないので、ちょっとばかにしてみる。




「舐めやがって!ぶっ殺してやる!」



どうやらコイツら、随分と導火線が短いようだ。




「まあ…待て」




男達が引き金に指をかけた時、そのうちのひとりがそれを制した。




ソイツは一歩前に出ると、品定めするような目で私を見て、とんでもない事を言った。




「コイツ、見た目は良いから、殺すよりも売った方が良いんじゃないか?」



ああ、そうか…。妖怪相手に随分と大立ち回りすると思ったら、私のこと人間だと思ってるのか…。




「はぁ…。バカの相手は疲れるよ」




私はそう呟くと、森の中に全力で走って行った。


奴らも気づいて追ってきたが、わたしは、奴らの死角に入ったところで素早く狐の姿に戻って茂みに隠れていた。


男達は私に気付かずそのまま走って行った。




「さて…帰るか」




帰った私を待って居たのは笑顔の風とかなり不機嫌な稜、そして、放心した鈴蘭の姿だった。



―――――


――――


―――


――



この生活が始まって早くも100年。


この100年の間に私は凄く成長した。


妖力は格段に増え、尾が一房増えて、2尾になった。


更に、能力がハッキリした。


『能力を操る程度の能力』


ナニ考えてんだ!能力のネタ切れか!?適当にやるんじゃねーよ!能力決めた神出てこい!




「………と、考えていた時期が私にも有りました」




このテキトーそうな能力、実際かなり使えた。…と言うより、ただのチートだった。


能力の数を3つまで増やせたり、増やした能力を書き替えたり。


ただ、書き換えに時間がかかる上、増やすよりも疲れる。


そのため、安全な場所じゃないと雑魚にもやられる隙ができてしまう。


周りにも変化があった。


稜と風は力を付けて巣を出ていってしまった。


鈴蘭は




「新しい恋を探すわ」




と言って、同じく出ていってしまった。


それからと言うもの、これほど立派な洞窟を狐一匹で占領しているのが気に入らないのか、(まあ、当然だろうが……)毎日のように妖怪が襲撃をかけてきた。


まあ、全て返り討ちにしましたが?


そんな多忙?な生活の中、フラフラと立ち寄ったあの始まりの崖の上で、私は目の前に広がる衝撃の光景の意味を呑み込もうとしていた。




「あー。すんごくいやな予感がするよ」




あの低文明は、たった100年で超高層ビルが乱立する近未来都市になっていた。


これが夢でないとしたら、明らかに進化の速度がおかしい。




「フッ…。どうやら疲れているようだ。そろそろ起きないと……」




……………。


逃げていても、現実が変わる筈もなく。




「………やっぱり、旧人類の月移住前だよなぁ〜どう見ても…」



私は、頭を抱えながら、100年前の記憶を辿る。


月移住計画――確か記憶によると、その概略は汚れを恐れた旧人類が汚れの無い月に移住しようとする計画………だったと思う。


それよりも重要なのは此処からで、都市人口の約半分が移住を完了した頃、科学によって住みかを奪われた妖怪が、人間に復讐とばかりに総攻撃をかけ、後に人妖大戦と呼ばれる戦いが発生。


大戦後、地上の人間、妖怪は共に全滅し、その後暫く地球上から、人間も妖怪も姿を消すと言う恐ろしい結末が待っている。


――つまり、このまま行くと、私も例に漏れず消滅してしまう。


もちろん、戦い自体に参加する気はさらさら無いが、人間が居ないと妖怪は存在を保てない。




「……これは、かなりヤバイ時代に来てたみたいだ」



私は、踵を返し、洞窟に慌てて戻って行った。


理由は勿論人妖大戦の備えを作るためだ。


備えの具体的な内容は、人間が居なくても体を保てるように、能力を使って妖力を結晶化し、保存する。


更に、月移住計画の具体的な情報を得るため、都市の内部に潜入し、情報をしいれる。


という2つだ。



―――――


――――


―――


――



生き残り作戦を実行してから更に100年。


かなりの量の結晶が溜ってきたので、それらを洞窟の奥にうめて、そろそろ潜入ミッションを遂行するとしよう。




「ミッションスタート!」




私は、『能力を操る程度の能力』を使って、新たに能力を作り出した。


その名も、『封ずる程度の能力』




「その力で、妖力を封じると……何という事でしょう!あの2尾の妖狐が、可愛らしい小ギツネになったではありませんか」




まさに劇的変化だった。



―――――


――――


―――


――



とある“普通”の狐が、超絶未来都市と化した町を人間に見つからないようコソコソしながら徘徊している。当初は潜入といえばダンボールだろ!と、某ヘビさん方式を取るつもりだったが、我に返って作戦を変えた。




「ここがいかにもアヤシイな…」




この都市に似つかわしくない和風家屋。


それだけでも十分違和感を感じるにもかかわらず、その大きさがアヤシさをさらに増幅させていた。


通りに面した庭木に隠れて屋敷の中の様子を伺うと、その大きさがよくわかった。


ここに入り込めば、いい情報が入りそうな予感がする。


その時、背後で足音がしたかと思うと、尻尾を誰かに掴まれて庭木の蔭から引きずり出された。




「キュッ!?」




あまりの驚きにおかしな声で鳴いて硬直している私をのぞきこむ2つの小さな影。




「かわい〜!」




「ああ……もふもふしてる」




ちょっと気が弱そうな妹と姿形は瓜二つで強気そうな姉(私の尻尾をもふもふして恍惚の表情を浮かべている)。


ああ…綿月家の屋敷だったのか…納得。

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