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オタク的テクノロジー  作者: 相川 由和
~第四章~
8/9

ー・参・-

日がもうすぐで暮れそうになっている。

先輩達とついさっき解散した私達は、いつも通りゆっくりと帰路を歩いている。だが今日は植松さんは彼女のお母さんから大事な託を貰っているのだ。

一瞬だけチラッと彼女を見た。


・・・・・・楽しそうに笑っている。そして熱心に、携帯で何かをいじっているようだ。


言いにくい状況の中、私は何とか彼女に問いかけてみることにした。


「あのさ・・・・・・買い物は大丈夫?」


すると彼女は


「あぁ、大丈夫!だって今、お母さんにメールで許可を申請しているところだから」


あぁ、なるほど。私は心の中で勝手に納得していた。


「で、どんな申請をしたの?」


「今日は頼まれていた買い物ができないってこと。でも気にしないで。多分、返事はもうすぐ来るよ。さ、私達も急いで帰ろう。ほら、まだこの学校の校門をくぐれていないしさ」


「うん、そうだね」


ちょっと笑顔で言ってみた。だってたまには笑っておかないと、植松さんに『表情筋が堅くなるよ』と言われるのである。さすがにそれは何分嫌なもので・・・・・・。


気がつくと目の前にはあの大きな校門が見えていた。

そして日はちょうど西のほうに沈んでいた。


「さ、急いでここをくぐり抜けよう」


彼女が言った。


と、しばらくすると


pppppppっ、ppppppppppっ!


植松さんが「あっ、メールだ」と言って携帯をブレザーの右ポケットから取り出した。多分、彼女のお母さんからだろう。


「どうだった?」


何気なしに聞いてみた。

すると


「うん、OKだって!だから今日はいつも通りに帰れるよ」


そしてどことなく彼女は笑顔で言い放った。


「そう」


「あっ、そうだ!」


「ん?」


突然思い出したかのように、声を上げた。


「これから近所の公園に寄らない?ちょっと話したいこともあるしさ。どうかな?」


「いいよ」


「じゃあ、決まりってことで!」


その後また、いつものようにゆっくりと歩いていく。でも今日に限っていつもあるはずの会話というものがないのは気のせいだろうか?

そうこう考えているうちに気がつくと、目的地の公園に着いていた。見た目は子供がサッカーをプレイするのにもってこいの広さで、遊具はあまりない。だからこの公園を利用するのはサッカーの練習ぐらいである。その為か平日のこの時間帯はあまり人がうろついていないのだ。


「相変わらずここは静かだねー」


「そうだね」


と、この始末である。

そして近くにあるベンチに互いに腰を下ろす。


しばらくして


「ねぇ、草魔」


「ん?何、植松さん」


優しい声の調子で私を呼んだ。その顔はどこか不安そうである。

ついでに「どうかしたの?」と、付け足したのは言うまでもない。


言いにくい話なのだろうか、重い口を開けてついに、話始めた。


「私さー、正直言ってタイムマシンって作れるとはどうも思えないんだ。だってどんなに長い年月をかけても、今までに制作に成功した人はいないでしょ。しかもそれも私達のようなただの学生5人で本当に出来るのかなぁーって・・・・・・」


「そうかな?確かにタイムマシンなんて代物をサマーフェスタの展示物にノミネートされたのにはびっくりしたけどさ。何気なしに自分が思いつきで言っちゃったけど・・・・・・。でも、あの先輩達は諦めないと思うよ」


「どうして?」


不思議そうにこっちの顔を覗いていた。しかも確信があるような感じで言っちゃったのは自分なので仕方はないのだが・・・・・・。


「皆、興味があったんだと思うよ。特に夏樹先輩はね。現に私もそうだし。どうやってそれを作るのか?って。植松さんもそうでしょ?」


「そりゃそうだけど・・・・・・」


「なら今は、失敗を考える時ではないよ。まだ、始まったばかりだからさぁ」


そう言うと、植松さんは少し考え込んでいた。


そして


「ゴメン!」


いきなりのゴメンが来た。もちろん言われた私はびっくりしたが。


「私、どこか不安なところがあったみたい。そうだよね?だってまだ、始まったばっかりだもんね!どうかしてたよ。だから心配かけてゴメン」


「いいよ、別に。気にしてないし」


「それにこんな寄り道にも付き合ってもらっちゃって・・・・・・」


「あぁ、大丈夫だよ。ところでさぁ」


突然思い出したことがある。

それを聞いて植松さんが頭を傾げている。


「今、何時?」


「えぇーと・・・・・・あっ、やばい!もう、7時半だ」


「植松さんのほうは大丈夫?」


「あぁ、大丈夫だよ!草魔は?」


「急げば間に合うと思う、多分」


「えぇー何、それー!?」


顔を見合わせて笑い合った。

彼女の笑顔はいつ見ても本物で、いつ見ても綺麗だった。


「じゃあ、帰ろうか」


「うん」


そして公園を後にした。


ちなみに家に帰るとー


「今、何時だと思っているんだ!?」


「ごめんなさい」


と、このように運悪く説教を食らってしまったのだった。







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