ー・壱・-
次の日。
私達五人は今日の部活を、学校の敷地内にある大きな国立図書館に行くこととなった。
まぁ、理由はタイムマシンに関する蔵書探索であるわけだが・・・・・・
「じゃあ今からタイムマシンについての参考文献を探してきてもらいたいのだが・・・・・・生憎見ての通り、この図書館はあまりにも広すぎる。だから、五人別々で探す範囲を決めたいと思う。ちなみに今日は一階部分を探すつもりだ!」
先にも先輩が述べたように、この『ローマ国立図書館』はヨーロッパ一の蔵書数を誇る図書館であり、その為か、一般人の閲覧も予約さえすればOKしているくらいである。
だからそんなたくさんの本の中から『タイムマシン』に関する参考文献を探すのは容易ではない。
「で、どうするんだ?」
「まず朝彦が奥の本棚6つ分。で、樹はその手前の8つ分。植松は左側本棚全部。そして、草魔は右側全部だ」
この人の後輩をさりげなくパシっているのが妙に腹が立つのは何故だろうか?
いや、この場ではじっとこらえておくべきかも。
「えぇーと、質問!南先輩は何するのですか?」
おぉ、そういえば夏樹先輩の役割を聞いていなかったっけ。
でももう、一階部分は全員(一人は除く)に分担されているから場所的にはもう、ないはずだが。
ビシッ!!
「よくぞ聞いてくれた!」
(いや、誰も聞きたくはないんだけど)
他の四人が同時に思ったことだ。
それでも構わずに
「俺は草魔の安全を守っておくのが仕事だよ!だって国立図書館には、実にたくさんの本があるんだ。もし、本棚から本の山が降ってきたらどうする?それが草魔だったらなおさら危険じゃないか。兄としては可愛い妹を守るのは当たり前の行為だ」
『・・・・・・』
この言葉に一同は固まってしまった。
相も変わらず妹扱いされるのは気分がわるいものだ。
それと同時に、頭の中で何かのスイッチが入ったようだった。
「朝彦先輩、今からこの先輩を処刑してもいいですか?」
横から『えっ、ちょっと何するつもりかい?』が聞こえたのはきっと、気のせいだろう。
しかし
「あぁ・・・・・・俺が許してやる。ちなみに流血や過度なグロは控えろよな」
と、淡々と言った。それに『いつもお前は腹黒いからな』と後から付け加えて言った。
そういえば誰からか『ミス・腹グロス』なんて言ってたな。
まぁ、いいか。別に、あっている事だしね。
それを聞き私は「はい」と答え
「えっ・・・・・・それはできない約束ですよ。だって、今から本気でやりますし・・・・・・ねぇ」
不敵な笑みを浮かべていたのか、樹先輩の表情はとても萎縮しているように見えた。
確か、グロテスクが苦手って言っていたっけ?
思い出した途端、さすがの私も一瞬はためらったがその後はケロリっと、そのことを忘れた。
と、そこに
「草魔、それなら私も加担しようか?もっといい処刑方法があるからさぁ」
植松さんが黒笑いを浮かべていた。
どうやら彼女も殺る気のようだ。
もちろん、私は
「あっ、是非とも教えてよ」と、応答した。
「いいよ」
そして、さらに黒笑いが増していったその時
「おいおいお前ら、何か怖ぇーぞ!」
あ、樹先輩が言っていたのか。
しかも泣きそうになる寸前だな、これは。
多分、この黒い状況にいたたまれなくなったのだろう。
ったく、せっかくいいところだったのにな。
「『いいや、気のせいですって』」と、笑顔を浮かべてそう言ってみた。
それに対して
「気のせいなわけがあるかー!大体、お前らが手にしているそれは何だ」
そう言ってくると、私達の右手に握られているものに指を指した。
「『ぺティーナイフですが何か?』」
いたって、平然と言った。
「いいや、問題大有りだろーが!何でそんなものを持ってきているんだ?」
えっ、だって護身用で。何て言ったらきっと、馬鹿にされるだろう。
これは習慣になってしまったのだから、仕方がないじゃないか。
「そんなに三途の川を渡りたいのならまずは、竜宮寺先輩から行きますか?」
「いや、遠慮しておくよ。うん」
どうやら樹先輩は限界のようだ。
その証拠に気絶していたからだ。
まぁ、お疲れ様です!と心の中で敬礼はしてあげた。
「じゃあ、南先輩をやっても文句はないですよね?」
そして、再び夏樹先輩を見た。
その顔には恐怖で染まっていた。
それでも、植松さんに至っては相変わらず黒笑いをされている。
「えっ、先輩に向って容赦なくやるきなのかい?それはカンベン!」
「いやぁー、前から草魔に対する扱いがなっていない南先輩をボコらないといけないなぁ。って、思っていましたので」
指をポキッ、ポキッと鳴らしている。
もう、そろそろ戦闘態勢に入るのだろう。
と、そこに
「はい、ストーップ!これ以上やると、夏樹が何か可哀想だからやめなさい」
「朝彦・・・・・・」
夏樹先輩が朝彦先輩に熱い眼差しを送っている。
まぁ、少々やりすぎたのは確かだしね。
ちなみに植松さんは『えぇー、せっかく面白そうだったのにぃ』と駄々をこねていた。
「それに、草魔についているゴミを処分するにはいい機会だったのになぁ」
「(あれ?今、コイツ・・・・・・俺のことをゴミって言わなかったか?)」
そう言いつつも、互いに持っていたぺティーナイフを折りたたんで、それをスカートのポケットの中に入れた。
しかし、危なっかしいものを持ち歩いている事を知った先輩達の顔には、どこか恐怖が残っているようにも見えたのは気のせいだろうか?
平常心にもどして
「別に安全ですから先輩は別のところに行ってください」
と、言ってみた。
こう言っておけば、ちゃんと追い払えるだろう。
さぁ、どんな反応をするのだろうか?
「じゃあ・・・・・・」
「じゃあ?」
「じゃあストーカーがいたらどうするんだい?兄として妹を放っておける訳がないだろう」
「大丈夫です!いやむしろ、先輩にストーカーされそうなんですけど・・・・・・」
こう言ってみたものの、確かにストーカーはされそうである。
ロリコンだし。
「あぁ、それなら俺も同感だ」
珍しく朝彦先輩が話しに割り込んできた。
「なっ!俺は朝彦みたいにエロ大使じゃないぞ!大体さぁ」
今から夏樹先輩が暴露しようとしたその時
「ストーップ!それ以上は言うな。て言うか、第一そういう事は一切ないぞ」
止めに入られた。
ちなみにこの先輩は、ある特定のことをするとこうなるらしい。
まぁ、もう皆知っている事だから隠すことはないと思う。
「お前らさー、さっさとまじめに探しに行こうぜ。このままじゃ、日が暮れるぞ」
いつの間にか樹先輩が復活していた。
このままだとまた、くだらないことで喧嘩が勃発すると悟ったのか、彼が止めに入った。
この言葉を聞いた当の二人は
「あっ、樹が正論言ってきたぞ」
「ゴメンよ・・・・・・つい、大人気なかったようだ」
「なっ、てめぇー一人で大人ぶっているな!」
「それについ、妹のことになると」
「いや、そもそも草魔はお前の妹じゃないだろ」
それは当たり前です!!
いや、鉄則ですから。
「じゃ、今からお目当ての本を探しに行くぞ!」
『オォォォォー!』
いつの間にかさっきの話は終わったようだ。
夏樹先輩がいつものお決まりの決めポーズを取っているのがその証拠だ。
「じゃ、ついでに夏樹は入り口付近を捜しておけよ」と、朝彦先輩は付け加えた。
こうして、探索が始まった。