ー・参・ー
「じゃあ私は・・・・・・最先端の便利道具とかがいい・・・・・・かな、なんてね」
『えっ・・・・・・』
一瞬だが、この空間に沈黙がほとばしった。そしてその後は皆で唖然した。で、それに一番早く反応したのが鳳先輩だった。
「あの・・・・・・それは、どういったもののことを指すのかな?草魔さん」
「だからあったら便利だなぁって、カンジの物」
そこにははぁ。と一つ溜息を漏らしてから私にこう言い放った。
「草魔、いくらお前の意見でもそれは範囲が狭すぎる。よく考えてもみろ、今のこの便利になりすぎたご時世にまだあったら便利って言う道具なんて思いつくか?」
「でも、案を決めてもいいって言ったのはそういう朝彦先輩だったと思いますが」
「そうですよ!大体鳳先輩が私達に案を提案しろと言ったじゃないですか!?」
「まぁ、確かにそうだけどな・・・・・・。でもこれとそれとでは、話が違うだろ」
と、そこでまたも空気を読まずに食いついたのが・・・・・・
「じゃあさぁ、タイムマシンなんてどうだろうか?」
『えっ・・・・・・』
一同は再び唖然した。
「おいっ、夏樹。お前、まさかそれが本当に出来るって思っているのか?おいおいやめとけって!いくらなんでもそれは無茶振り過ぎる」
明らかに無理だと言っているような素振りで夏樹先輩に突っかかる朝彦先輩。確かに私自身も朝彦先輩の言っていることには一理ある。
「だって今までにタイヤなしで走れるエコカーや食べ物は全てコンピューターで作ってくれるハイテクシステムキッチンなどの作品を昔の人はやってのけたんだ!それなら俺達もタイムマシンを作って人の役に立てばと思って・・・・・・」
「お前・・・・・・それ、本気にしているのか?」
「当たり前さ!この便利になりすぎたご時世に唯一ないものといえば、それはタイムマシンしかないよ。皆もそう思うだろ?」
未だに笑顔のままで言い放った。
しかも、朝彦先輩のほうはというと前より僅かながらもひるんでいるようだ。
「まぁ、芸術作品じゃないけど俺は夏樹に一票」
「いやそもそも、サマーフェスタは芸術品の展示会じゃないぞ」
「私も南先輩に一票入れます!で、草魔は?」
「ん、私?じゃ、今回は夏樹先輩に一票」
夏樹先輩の一言が効いたのか、意外にも賛成派が多くいた。多分、理由は『興味があるから』であると推測される。
「じゃあ俺の案は、賛成多数で可決だな!いいよね?朝彦」
「うぅ・・・・・・別にまぁ作れたら、俺たちの実力もしっかり世界に見せ付けられるし。それに・・・・・・興味もあるって、笑うな!特に夏樹と樹」
急に顔を真っ赤にした。あぁーあ、夏樹先輩の悪い癖が出た。ちなみにこれは冗談だってことを後輩である植松さんと私は知っている。
「あぁーゴメン、ゴメン。いやーだって、人の揚げ足しか取らない朝彦がまさか、そんなことを言うとは思ってもみなかったからさぁ・・・・・・ププッ!」
「それどういう意味だ、ゴルァ!」
「まぁ、確かに朝彦は人の揚げ足ばっか取ってるけどな」
「キッパリと言うなよ。確かに俺は昔っから夏樹や樹などに突っ込みばっかり入れてたけどさー。でもこれは、好きでやっている訳じゃないんだぞ!」
それは皆が知っていますよ、先輩。
それに反して主犯の二人はなにやら楽しんでいるようにも見える。
・・・・・・仕方がない。
「先輩」
「おぉ、草魔。お前からこいつらに何か言ってやってくれ」
先輩の目はすでに泣く寸前だった。
だが、しかし
「あぁ、でも事実ですから朝彦先輩も受け入れたらどうですか?それに・・・・・・」
「もういいよ。十分だから」
とうとう落ち込みだした。朝彦先輩は隅っこで体育座りで病んでいた。
しかも、紫のオーラがさっきからずっと肌に当たって気持ちが悪い。
それでも
「えっ、まだあるのですが?」
と、その時
「ちょっと、草魔。いくらなんでも鳳先輩に言いすぎだよ!それに、他の先輩方も言いすぎです」
「植松・・・・・・」
目の色が変わり、いつの間にか笑顔になっていた。
「大体ですね、それが事実でもむやみやたらと言ってはいけませんよ!確かに人の揚げ足ばっかり取っていて正直、こっちは迷惑被ってますけど」
純粋なだけあって、このセリフはかなりココロを抉り取っていた。
さすがドSなだけはあるな。と、思ったのは私だけだろうか?
そして
「いや・・・・・・もう、俺はこのメンバーでやっていく自信がない」
本当にうつ状態になり始めた。
これを見て、さすがにまずくなり始めたので一同は励ましにかかる。
「そ、そんなことないですよ!鳳先輩は思ったことを素直に言っているだけですから。ね、草魔?」
私の方に目を向けた。いつの間にか本をパラパラと読んでいる。
しかも「うん」と相槌を打っている。
「(ヤバイ・・・・・・コイツ、本を読むのに集中してやがる)」
どうやら彼女は私に、口裏を合わせてほしかったようだ。
しかし私がこのような状態に陥ったためか、この作戦は使用不可となってしまった。
「はいはいじゃあ、この話は終了!」
ここで夏樹先輩が勢いよく言い放った。彼女からするとこの言葉はさぞやタイミングがよかったことだろう。
パンッ!と手を叩きながら夏樹先輩は次にこう述べた。
「俺たちで先人が成し得なかったタイムマシンを作り出そう」と。
ここで少し長い説明になるが、そもそもこの便利になりすぎたご時世に『タイムマシン』だけが作られなかったことについては幾多の疑問が浮上する。
例えばこれまでにたくさんの技術者は幾度となく、このプロジェクトに多額の資金などを費やし、研究した。だがしかし、誰一人としても決して完成したことはない。
またあるときは『このプロジェクトの成功には今の人類の先端科学では到底なしえることは不可能である』と述べた学者もいる。
もし、完成させた人がいるとなると少なくともノーベル賞はくだらないとも言われている。
これをただの学生である五人が作るとなると、はたから見れば無謀に見えるのは確かだろう。
「じゃあ、明日は俺たち五人で学校内にある国立図書館に行くぞ」
『おぉー!』
こうして無謀にも見えるこのプロジェクトは始動したのだった。