ー・壱・ー
「じゃあ気を取り直して今年度の主な活動予定を決めたいと思う」
あのくだらない喧嘩を実に1時間くらい外で繰り広げられ、何とか区切りがついたらしい。よくもまぁ、あんなことで喧嘩が出来るものだ。この3人は。
「意見のある奴は手を挙げてからすること!!じゃ、まずは俺から。やっぱりー夏と冬にあるコミケは絶対に外せないと思うんだよねー。つまり、反対意見は認めないぞ!!」
バシッ!!
「アホか!それは部活動とは一切関係ないだろーが!!大体、そんなところに金を使うから実際のときに困るんだよ!!だから俺はこの意見には反対だ」
「でもさー周りはOK!!するかもしれないじゃないか」
いや、周りはしないと思うのだが・・・・・
「そうか?なら聞いてみろよ。どうせ皆が賛成するわけないけどな」
「じゃあ・・・・賛成の人!!」
・・・・・・・・・
「・・・・あ、あれ?気のせいだよね。じゃあ賛成の人!!」
・・・・・・・・・
「ほぉーらやっぱりな。じゃあ、この案はなしって事で」
「うぅ・・・・。じゃあ、他に何があるわけ?」
「あぁそれなら夏に行われるサマーフェスタや秋に行われるロボコンさらには文化祭などがある。そこに金を使うべきだと俺は思うぞ」
「あっ、そうか!」
今まで気づかなかったんかい!?
全く何てアホな部長なんだろう・・・・。こんな調子でよく部活動が出来たと思う。
「そうだったね!!そんな行事があったのをすっかり忘れてたよ。皆はそれでいいよね?」
『はぁーい!!』
当たり前のことだが、満場一致で鳳先輩の案は可決された。まぁ、普通に考えてもそうなるのはわかっているのだけれどもね・・・・
「てか先輩は今までに年間行事表は見たことはないのですか?大体年度初めに確認できるはずですが・・・・・・」
「うぅ!」
「もしかして夏樹先輩は年間行事表を見ずに部長をやっていたのですか?それでよく勤まりましたね」
「あぁー、草魔までそんなひどい事言わないで~!俺は頭で暗記してるだけなんだよ」
そして先輩は壁の端っこに体育座りでいじけだした。見ていて殴りたくなるような姿である。しかし、それが10分以上も続くとあまりにも哀れに見えてくる。
「先輩?」
「・・・・・・」
あぁ、ダメだ。完全にいじけてるよ、この人は。
「先輩、別に覚えてなくても勤まってますから気にしなくてもいいですよ。それにそれらの行事全般がヲタクのためにあるようなものですし」
「草魔がそう言うならそれでいっか!」
『そんな決め方でいいんかいっ!?』って一般の人なら誰でもそう思うだろう。でも、ここではそういった感じで突っ込みを入れると後々面倒くさいことになるので、あえてしない方が最善の策だったりするのだ。
「はい」
突然に爽やかな声がした。皆は手を挙げている所に視線がいった。その視線の先には、二年の春日先輩であった。
「あぁ、春日か。意見は何だい?」
「まず思ったのですが、今年のサマーフェスタはどういった方針で進むのですか?そもそも宗治朗君にサマーフェスタについて説明をするべきだと・・・・・・」
「そうだったね。すっかり忘れてたよ。じゃあ簡潔に説明するから、宗治朗君は聞き漏らさずに聞くように」
確かに忘れてはいただろうなぁ・・・・・・。で、先輩は話をこう続けた。
「そもそもサマーフェスタとはその名の通り、年に一回夏に行われる祭りであるのはもうすでにわかっていることだろう。しかーし、この祭りそんな甘ったれた祭りではなーい!なんと全世界の技術関係の人間がこぞって開催地に訪れて、そこで世界各国のありとあらゆる技術を見てまわる祭りなのだよ!で、この部は毎年イタリア代表になっている。だから俺たちはありとあらゆる技術を駆使して作品を展示しなくてはならない。・・・・・・と、言ったカンジだが理解出来たかな?」
「へぇー、そんな大きな祭りなんですね。わかりました」
5歳児にはちょっと理解しがたいワードは入ってはいたものの、彼はそう言ったのだ。まぁ、本当かどうかは知らないけど。
「そうか。いやー、よかったよ宗治朗君。それにこんな説明でどうかな?春日君」
「はい、これで納得しました」
そして
「よぉーし、それじゃあ今日はサマーフェスタでのチーム分けでもしよう!じゃ、それまでに朝彦は紅茶を用意して・・・えぇーと草魔は菓子を用意してきてくれ!それから話し合って決めようじゃないか」
「先輩、何故それがいるのですか?」
「えっ・・・・・・だってこれは技術部の公式サービスなんじゃあ・・・・・・」
いや、そもそも技術部にそんなサービスはなかったはずだ。確かに毎日のように菓子を持ち込んでいるのはやっているが。でもそれは美味しい菓子を皆で分けて食べるだけの話である。だからそれが公式サービスなわけではない。
「まずはこれをなくすべきだな」
「そんなぁ・・・・・・」
「当たり前だ。大体こんな無駄なところにも金を使うな」
「うぅ、朝彦のケチ」
「あぁ好きに言ってろ」
それでも二人が言い合っている間に仕方なく、私は菓子を出す準備をしているのだった。
数分後
「よし、これでどうだ!」
夏樹先輩が笑顔で黒板に書き連ねた。
「ん、どれどれ・・・・・・ってこれ前とそんなに変わってないだろーが!?」
「えぇーだってこのほうが違和感ないし、しかも他に思いつくようなこともないし」
「いや・・・・・・だからってそれはなぁ」
と、そこに
「先輩、ケーキ持って来ました」
「おぉご苦労さん」
「どうですか、話は進んでいますか?」
「うーん。それがさーまた朝彦俺の意見にケチつけて来てさー。草魔からも何か言ってやってくれ!」
何が何だかよく分からないので、黒板を見た。そこには制作チーム分けが書いてあった。しかも見たところ、メンバーはあまり変わっていなかった。
「・・・・・・あんまり変わってませんけど、いいんじゃないですか」
「おぉ、草魔もそう思うだろ?さすが俺の自慢の妹だな」
いや、私は思ったことを素直に言ったのだ。ゆえにあんたの妹ではない。
「いや、あんたの妹じゃないってば!」とあえて言っておこう!本当に・・・・・・ね。
「それにやっぱりこのいつものメンバーのほうが落ち着くしね。朝彦もこれでいいだろ?」
「うん、まぁ仕方がないからそうするか」
鳳先輩は呆れ顔でそう言った。
そして部長お決まりのポーズで
「よし、今日はここまで!詳しい事は明日、メンバー各自で決めること。以上っ!」
こう言い放った。しかも胸を張っている。正直言ってこの人はこれがしたくて部長をしていると思うのは私だけだろうか。
ちなみにここの部員は部長のこの『お決まりポーズ』が出ると帰りの支度を各々でする。まぁ、もうこれが日常となっているのは当の昔である。
「ふぅー、やっと終わった。あっ、そうだ!この後図書館に行くんだけどよかったら草魔も一緒に行かない?」
植松さんが綺麗に笑って私に頼む。実に綺麗過ぎて私としてはこの攻撃は弱いほうである。
「あっ、うん。行く」
「よし、今から図書館へLET'S GO!!」
そう言い残してさっさと部室を抜けた。しかも全速力で。
「あ、待ってー!まだ帰る準備が出来てないよー」
私は大声で叫んだ。しかし彼女は、私の目の届く範囲から見えなくなるところまで走っていた。全くこの人の本に対する情熱は誰にも負けてはいないと私はつくづく思う。
でも、明日からはサマーフェスタでの準備が始まる。とにかく世界中の人があっと驚くような作品を協力して作らなくてはならないのは確かだ。
それに今回もいつものメンバーだからきっと、また最高の作品が出来るのだろう・・・・・・そう考えてながら走って図書館に向かうのだった。
区切りが悪いところで終わっていますが、話が長いため少しずつ区切って投稿します。何卒ご了承ください。