その6
6
「・・・なんですと?」
「今・・・塚原、宮本、上泉とおっしゃいましたか?」
宗矩が思わず問うた。
「・・・はい、それが何か?」
アヤは不審そうに宗矩に尋ねる。
宗矩は自分が武者震いしているのを自覚した。
- ふふ・・・俺も柳生の、親父様の子か -
- これでは十兵衛を叱る資格もあるまいて ―
「ヤギュウ卿・・・如何なされた?」
サウルが心配そうにたずねる。
「仮に・・・その三柱を斃せば、魔王の復活は・・・」
「『確実』に阻止できるのですな?」
「彼らは、我が故郷、日の本の国にいた剣豪たちです」
「某にも、このように疼く血があったとは・・・」
「この勝負、某の方からお願いいたしたい」
齢を重ね、己を封印し老練な政治家となっていた但馬守が、剣豪を目指す、血の気の多い青年マタエに戻った瞬間であった。
力の差は明らか、敗死はほぼ確定している状況で、他星の勇者と戦うことを嬉々としている宗矩を見て、二人は一瞬、彼が狂ったかと思った。
「・・・力の差は、魔力と仰いましたな?」
「剣技と魔力には、如何なる関係があるのか、知りたい」
「某の世界には、魔力は存在しなかった故」
至極当然と思われる宗矩の問いに、サウルとアヤの二人は、驚愕を隠せない。
「魔力が存在しない?・・・神官として申し上げれば、それはあり得ません!」
「では、どうやって、彼を、聖騎士アレクを破ったのです?!」
今度は、逆に宗矩が二人の疑問を消化しきれなくなった。
「私は、単に習い覚えた術を用いただけで・・・」
「仮に、某の強さが、魔力に依存するものでないとすれば」
「可能性は、皆無ではない・・・今は、そう考えるのが建設的と存ずる」
「そして私は、この世界の理を知らなすぎる・・・教えては下さらぬか?」
想定外の事態に翻弄されるサウルとアレクを宥めるように、宗矩は説いた。
老境にあった者の利といえよう。
・・・もう少し、この世界の事を調べ、知らねばなるまい。
己より確実に強い相手と対峙するためには・・・
対策は、そこからしか始まらないのだ。
自身の血の滾りを抑え込み、宗矩は己が冷静さを取り戻すことを最優先にした。
- 俺の剣は、後の先だ ・・・頭に血が上れば、遣えないのだ -




