その5
5
「どうされましたか?」
「まず、お二人とも落ち着いて、呼吸されよ」
「そして、正しく言の葉に乗せねば、問題の姿を捉えられませぬぞ」
宗矩は年長者らしく、二人に冷静さを取り戻そうとする。
サウルが深い呼吸を取り戻し、冷静さを取り戻す。
年若いアヤも、宗矩とサウルが落ち着いている様子を見て、心を鎮めようとした。
落ち着きを取り戻したアヤが、宗矩に語り始める。
「この世界は、大陸の中心に滅び去った古の都がございます」
「その地は、光の届かぬ虚空として、人が足を踏み入れることの出来ぬ地」
「そこに魔王が眠っていると言われています」
「66年に一度召喚される勇者は」
「北、南、西、東の順で、その方角に位置する国に現れます」
「今回は、東のルーム帝国・・・わたくしたちの国」
「そして、当代の勇者が魔王の封印を引き継ぐ」
「・・・はず、だったのです」
そう言った後、アヤの表情がさらに厳しくなった。
「四星の勇者が同時に出現するという意味は」
「勇者同士が殺し合い、その結果、魔王が目覚める、強い可能性を示唆します」
「予言の書によれば、それは数百年以上先の話でした」
「ヤギュウ様の召喚が、予定よりずれていた事も」
「もしかしたらその影響かも知れません」
サウルも深刻な表情のまま沈黙を保っている。
「魔王の覚醒を防ぐ手立てはおありか?」
宗矩が沈黙を破る。
だが、二人の口は重い。
「それは、困難な事なのか、不可能な事なのか・・・その違いは大きいと存ずる」
宗矩は、再び促す。
「北、南、西の勇者を、ヤギュウ様が打ち倒す事・・・」
「ですが、周期を違えて召喚された異なる星の勇者には、強大な魔力が付与され・・・」
「とても、当代の勇者では太刀打ちのできるものでは・・・」
六百数十年前の記録では、北と南の星を持つ勇者が同時に現れ、当代の北星の勇者は瞬く間に南星の勇者に殺された。そして、南の勇者は虚空の地へ姿を消し、そこから魔王の瘴気が溢れ、南の国を除く周辺の国々で多くの死者を出した・・・という、史実が残っていると。
「女神イヴィリアの言葉によれば、北星の勇者『ツカハラ』、南星の勇者『ミヤモト』、西星の勇者『カミイズミ』の三柱は、みなヤギュウ様を遥かに超える魔力を有していると・・・」
アヤはそう言って、絶望的な表情を浮かべる。




