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その3



恐らくこれは、死を間際にした老人の幻覚なのだろうと宗矩は思った。


だが、意識は明晰で、衰えていたはずの四肢にも力が漲っているし、目もはっきりと見える。

幻覚にしては明晰に過ぎるのだ。



ここに至って、宗矩は記憶に縛られて疑う事を捨て、己が目と耳、そして身体の感じることを基準とすることにした。兵法家伝書に記した「病の身を捨てる事」、いわば過去の記憶という執着を捨て、現状を受け入れる事だ。


まさか、この歳になって、自らが沢庵と著した言葉で冷静さを取り戻すとは・・・。

とはいえ、まだ全てを受け容れられた訳ではない。

あまりにも荒唐無稽な出来事であったのだ。



「驚かれるのも無理はありません」

「むしろ、そこまで落ち着かれている事で、貴殿が老境に達した御仁だと納得できますね」


呼吸を計ってサウルが声をかけて来た。

この拍子の上手だけで、この金髪の青年が只者では無い事が、宗矩には分かった。

仮に剣を交えても、無事では済むまい・・・よくぞこの若さで。

世界が広い事を、改めて宗矩は感じた。



しばらくして、以前オランダの商人に見せてもらった城の絵に似た、石造りの巨大な建物が見えて来た・・・恐らくは城塞だ。


建築方法も戦略思想も、日の本とはまるで異なる観点からの設計のように宗矩には見える。

そして、反射的にこの城をどう攻めるかに思いを巡らす・・・戦国を生きた武士の癖だ。


「・・・恐らく、この国の主たる兵装は、槍と弓ではない」

「もっと大掛かりで、強大な、大筒に似た何かなのだろう」

「だが、先ほど見た兵士は剣を佩いていた・・・何かが矛盾しているような」


それを極力表情に出さぬよう、思いを巡らしているうちに、城に着いた。


「・・・さ、ヤギュウ卿、着きました、こちらへ」


馬車を降り、城の中へと宗矩は案内された。



城内では、手厚いもてなしがされた。

突如、何処からか湧いて出た異人に対しては、破格の待遇である。



「エル・ローランス殿、何故、某のような異人にこれほどの歓待をなされるのですか?」


宗矩は直截な疑問をぶつける。

この場合、まわりくどい質問は誤解の元だからだ。



サウルはその問いに答える。


「これもまた、後ほど詳しく説明しますが、魔法陣による召喚によって出現するのは・・・」

「魔王による魔獣、もしくは、女神による勇者なのです」

「貴殿の振舞いは、魔獣ではなく、人のそれだった・・・その剣技も含めて」

「つまりご貴殿は、この世のために戦う勇者として、この世界に転生召された・・・という事が理由です」



サウルの回答は、確かに完結明瞭ではあったが、宗矩には、すぐには飲み込めぬ内容でもあった。


まずは、厚意に甘え、腹ごしらえをしよう。

そして身なりを整え、落ち着こう。



考えるのは、それからだ・・・宗矩は思った。

ここは異国、いや異界の地、なのだから。


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