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その2


宗矩にとって剣術・武術とは自らの社会的地位を上げる足掛かりであり、手段でしかない。


戦国の世が終わりを告げた先、必要なのは一人でせいぜい数名を相手できれば御の字の、不効率な殺人術よりも、それを通じた精神性へ剣術の価値を昇華させること。


単に人を殺すなら大筒や鉄砲、それに毒があれば良い。

剣など、もはや多くの敵を殺すために有効な手段などではない。


それゆえ、官僚として思想家として、幕府の安定に貢献することが、己の後半生の役割と考え生きて来た。


戦の無い世の若者ほど、武への憧れは強い。

特に、身近に戦を潜り抜けて来た猛者がいる、若者たちの世代では、それが顕著だった。

愚息・三厳然り、家光公然り。


だが、脆弱な人間の肉体は、武器ですぐに傷つく。

血は流れ出、骨は砕け、肉はグチャグチャになる。

それが戦だ。



正直、宗矩は戦が苦手であった。

大坂の陣で秀忠を守るため、7人を相手にしたが、それは偶々己の剣技を知らぬ者が乱入してきたからで、術を熟知した者たちであったら、命は当然無かった。

無論、宗矩を目的として囲まれても、結果は同じだ。


皮肉にも、宗矩は剣術が如何に非力かを良く知っていた。

それゆえ、指南役として大成できたのだ。

剛の者としてならば、小野忠明の方が遥かに上だったとも思っている。


そんなことを、案内された馬車の中でボーっと宗矩は考える。

無論、馬車の周囲や天井、床下に伏兵が居ないかを用心しつつだ。

生来、宗矩は臆病なので、そういう方面への警戒は怠らない。



「ヤギュウ卿、ご案じ下さるな」

「聖騎士として、卑劣な真似は致しません」


宗矩の様子を見てサウルが心配するなという。


「申し訳ござらん、何十年も昔より」

「武士として上様をお守りするお役目を仰せつかっており」

「辺りを疑う、この老骨に染みついた性分は、今さらどうにも・・・」


宗矩が言うと、サウルは不思議そうな表情になった。


「異なことを申される、卿はまだお若いように見受けられるが?」


「・・・はて?某、齢七十を超えた老人にござるが」

宗矩も大真面目に答える。



「これもまた、召喚の影響でしょうか・・・ご覧あれ」

サウルは手鏡を取り出し、宗矩に手渡した。



「・・・・!!」

「これは、なんとしたことか・・・」


さすがの宗矩も驚愕を隠せない。

鏡に映った自分の姿は、20代と思しきものだったからだ。


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