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第33話 『長い夜の始まり』

 慌ただしくも着実に式の準備は進み、遂に前夜となった。僕は大広間に全員を集めた。シェリル、マリアに、ギムリ、ルルさん、ナナの魔獣討伐隊の面々、ナツにアイリーンだ。


「当日の体制を説明する前に、皆に紹介したい人が二人いる。入ってくれ」


 声と共に入ってきたのは、巨体のギガンテスとキュラン侯爵家の息女ソレイ・ド・キュランだった。意外な人物に驚く皆を落ち着かせ、説明を始める。


「二人ともヨギル家の暗殺集団の一員だった。だが今はこちらに寝返っている」


「信用できるのですかな?」


 ギムリの当然に疑問に、僕は頷き返した。


「信用する」


 彼らの体内に注入した僕の霊気が保険になっている。万が一裏切りがあってもすぐに始末できる。それに自分の霊気を介して彼らの行動を定期的に監視していたけど、特に不自然な場所へ移動した事も無かった。


「では明日の事を説明する前に、ソレイからヨギル家の暗殺者たちの密会で得た情報を共有して欲しい」


「どうやらリオン様の暗殺は諦めて招待客を狙うみたいです。式の招待客は貴族ばかりだから、それで社会的に始末するつもりかと」


「なんと!」


 驚くギムリに対しアイリーンが冷静に反応した。


「式場に招待されている以上、その暗殺者も貴族階級です。もし凶行に及ぼうとして掴まり、暗殺者とヨギル家との関係がばれればヨギル家も一巻の終わりです。リスクが高すぎるのでは?」


 アイリーンが言う通りだ。ソレイの伝える作戦は穴がありすぎる。やはり彼女には本当の作戦が伝えられていない。こちらが襲われる立場である以上、やはり後手に回されるのは仕方ないか。


「そうだね。でも警戒するに越したことはない。それでは明日の体制を伝える。ナナ。君は受付係だ。招待客の招待状を受け取り、例の花の香りがする招待状を持っている者が居たら皆に伝えるんだ」


「分かったの!」


「ナツ。君はシェリルの給仕としてシェリルの傍にいるんだ。霊気で周囲を探り、姿を隠した刺客が居たらシェリルを守って欲しい」


「おう!」


「ルルさんとギムリは大広間の左右に待機し、警護を頼む」


「うむ」


「承知しました」


 それぞれが使命感を持った表情で頷く。


「オーグは屋敷の周辺で待機。不審者が近づいてきたら捕まえて。ソレイはキュラン侯爵家のご息女として参加してほしい」


「怪シイ奴イタラ捕マエル」


「了解しました」


 表情を変えずに仕事を認識した二人。正直彼らを明日の体制に組み込むのが正しいかは分からない。しかしルルさんにフェルゼーン出身のナツやアイリーンを受け入れろと言ったように、元々敵であっても仲間になれると僕自身も示さないといけない。


「そしてマリアとアイリーンはアスピアの本邸で待機だ」


「分かりました」


「リオン様もお気を付けて」


「基本的には、まず招待状の香りでナナが怪しい人物を特定し見張る。次に僕とシェリル、ソレイの三人が顔をそれとなく確認し本人確認を行う。霊気で顔を変えていた場合は僕が検知する。役割分担は今言っただけど、最後は各自臨機応変な対応を頼む。じゃあみんな気張って行こう」


 *


 式の早朝、僕は懐から小ぶりな箱を取り出して開いた。柔らかい材質のクッションにダイヤの指輪が三つ埋まっている。


 まったくひどい男だな……僕は。 ……いや! これから二人と幸せな家庭を築くんだ! 


 罪悪感がもたげるも、漢として覚悟を決める。ついでにマリアへの告白をする覚悟も決めた。式の当日までにはしようと思っていたが、気づいたら当日になっていた。


 言い訳をすると、式が近づくにつれて暗殺者達に命を狙われているというピリピリとした空気が屋敷に張りつめ、とても告白できる雰囲気ではなかったのだ。


 それもこれもヨギルの暗殺者達のせいだ。などと自分のヘタレ具合を他人に責任転嫁する。とにかく今日で終わらせる。


 そう決意を新たに青い外套を羽織って、部屋を出た。


 夕刻になり各領地の貴族の方々や宮廷の法衣貴族達、近衛騎士の同僚が到着し始めた。それぞれが招待状を笑顔で受け取るナナ。


 何人か同じやり取りをし、銀髪の貴族の招待状を受け取った時、ナナの背中に隠れていた尻尾が不規則に揺れた。


 あいつがヨギル家の刺客の一人か。


 侍女の一人がナナから受け取った招待状の名前と、帝都の結界部から借用した貴族名簿の一覧と突合している。やがてこちらにやってきた侍女がそれとなく僕に耳打ちした。


 北ムーンドールのベレス・ド・ラーク男爵。確かヨギル家の遠縁の家系だ。


 だがそうと分かっても現時点ではかれは全くの無罪。今手を出せばこちらに非が生まれる。


 見る限り他の列席者と普通に会話しているだけの様に見える。式が始まるまで後一時間というところか。どう出てくる。


 そう思った時だった、ここに居ないはずのアイリーンが大広間に入って来るのが見えた。速足でこちらに近づいてくる彼女の、血相を変えた表情を見た時に僕は全てを悟った。


「リオン様、アスピア本邸に暗殺者が現れました。マリアさんが人質に取られています」

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