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翌朝目を覚ますと隣に菊華の姿は無く、一気に血の気が引いた。
慌てて母屋に出てくると青龍殿に寄りかかり、寝息を立てている菊華の姿が目に入った。
思わずその姿にしゃがみこみ、盛大なため息をついてしまった。
きっと俺が寝ている間に何かがあり、今のこの状況になったのだろう。
「菊華、おはよう。」
2人に近づき挨拶をすれば菊華はゆっくりと目を覚ます。
「・・・・ん、おはようございます。春仁さま。」
「姫さま、起きていらっしゃいますか?」
格子を開けながら室内に入ってきたのは、すっかり女房姿が板についた雪華だった。
「おはよう雪華。悪いのだけれど朝の支度が終わった後、真っ白の衣装を準備してくれる?鎮魂用に。それが終わったら禊の準備を。」
「・・・・かしこまりました。」
私の意図を正確に汲み取ってくれた雪華は、私の着替えを几帳後でして、朝餉の準備をした後、北舎に戻った。
衣装関連は雪華の方が詳しいし、どこから引っ張ってくるのかわからないが様々な衣装を持っている。
〈蒼月も雪華の禊の準備を手伝ってきてくれる?〉
〈御意に。〉
〈琥珀、一先ず内裏を中心に都全体の重たい空気を入れ替えてきて頂戴。〉
〈分かった。〉
着替え終わり几帳から出てくるとそれぞれに指示を出し、春仁さまの元へと移動する。
指示を出している間、やってきた敦成さまと共に今日の仕事の打ち合わせをしているようだった。
ある程度は説明をしなければならない。
話の区切りがついた所で、声をかける。
「春仁さま、今よろしいでしょうか?」
「あぁ。話は終わった。」
「ちょっと本日儀式をいたしますので、篝火を準備させていただきたいのですが、どちらに許可を頂いたらよろしいのでしょうか?」
「篝火?」
「えぇ。鎮魂祭の小さいものを想像していただければいいのですが・・・・・。」
「あぁ、それだったら陰陽頭に許可を取れば大丈夫。あの者の状態が分かったんだな?」
「はい。あのままにしておきますと悪しきものに、再び囚われるでしょうからその前に。」
「何が必要だ?」
「火をつける木さえあれば大丈夫です。それも陰陽頭に聞いてみます。」
「ふむ。そいたら、私も陰陽寮に行こう。時平で行くのか?」
「いえ、このままで行きます。それに付き添いは大丈夫ですよ?きっと衣装が巫女衣装ですから。」
そう言って朝食を食べながらのんびり雪華が戻ってくるのを待つ事にした。
雪華が戻ってきたのは、朝餉を食べ終わった頃。
荷物運びに青龍を使い、必要な道一式を母屋に運んだ。
予想通り雪華が持ってきたのは、巫女装束、千早だった。
流石というべきか。
手取早く蒼月に運んで貰おう。
「青龍、このまま一度陰陽寮に連れて行ってもらえる?」
「・・・・そういう事だな。」
「そうなの。」
にっこり笑みを浮かべれば、意図をさしたらしくため息をつかれた。
「親王も一緒か?」
「いいえ。私だけ。目標は陰陽頭殿。春仁さまも気をつけていってらっしゃいませ。」
今日も今日とて、春仁さまに加護を付けて何か言いたげな表情を浮かべた春仁さまは、どこか諦めたような表情で主上のっと頃へ出仕された。
念の為檜扇を広げ絵、陰陽寮を目指した。




