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演奏を開始してまずは一箇所。
弘徽殿のすぐ近くだ。
軽いものであれば、演奏が終わる頃には綺麗になっていると思う。
念のため夜廻りには行くつもりではいるけど・・・・。
途中から、雪華が和琴で参加してくる。
驚きはしたものの、先ほどの気配を感じれば参加はするだろう。
ここから少しではあるけれど、テンポが速くなる。
2・・・・3箇所。
なんだか嫌な感じがする。
思わず眉間に皺がよりそうになるのをかろうじて抑えて、演奏に集中する。
4箇所目。
先ほどから実に嫌な形になりそうなものを見つけているような気がする。
これであと、二箇所あれば狙いは帝と言いたいところだが、中心がずれている。
ちらりと雪華に視線を向けると、雪華も異変に気がついている。
姿は見せないが、蒼月、朱桜、琥珀の3人も弘徽殿に集まってきている。
旋律のテンポをあげ、細かい音を奏でる。
5箇所目・・・・数が足りない。
もしかしてと思い、範囲を大内裏全体に霊力を広げると、10・・・・11。
二重に仕掛けてある。
演奏を終えると、弘徽殿を中心に強い結界を張る。
他のお二人も正直弘徽殿へ来てくれる方が助かる。もちろん主上も。
「素晴らしい演奏であった。他の楽器も演奏はどれもできますか?」
「ありがとうございます。そうですね、基本的に幼い頃より稽古をつけて頂きましたので。」
「お義姉様すごいです!」
「二の君さま、ありがとうございます。」
と、皇后さまと二の君様に返事をするもののこの異常事態、時平で動いた方がいい。
どう、伝えるべきか・・・・。
すると、足音がいくつか聞こえてくると御簾の外から敦成さまの声が響いた。
「春宮様が、妃殿下をお迎えにいらしております。」
「おや。」
「母上失礼してもよろしいでしょうか?」
「えぇ、構いませんよ。」
皆が御簾の中、さらに扇を広げたのを確認して返事をする。
私は夫なので気にしない。
「おかえりなさいませ。宮さま。本日はもう終わられたのですか?」
「あぁ。だから母上には申し訳ないのですが、菊華を連れて帰ってもよろしいでしょうか?」
「素敵な演奏も聞かせていただきましたし、宮自ら迎えにきたのですから構いませんよ。春宮妃今日は素敵な演奏をありがとう。次は別の楽器で演奏も聞かせてくださいね。」
「とんでもございません。それでは本日は失礼させていただきます。姫君達におかれましては、またの機会にお話しさせていただけましたら嬉しく思います。」
一言断り、宮様に手を引かれて国旗殿を退出する。
弘徽殿より梨壺へ向かう渡殿へ差し掛かったあたりで、少し歩く速度を速める。
「春仁様、助かりました。」
「事情がわからないが、何かあったのか?」
「えぇ。すぐに主上と、晴明さま、章平さまに連絡をせねばなりません。」
「・・・・それは緊急を要するという事だな?」
「えぇ。詳しくはまだわかりませんが、標的はこの内裏に住う者もしくは、参内して参内中は動かぬものが対象です。ひとまず梨壺に戻ります。」
「分かった。」
人目がつかぬ場所は小走りに、それ以外は仲睦まじくお淑やかに通り過ぎ、梨壺に戻ってくると、蒼月、朱桜、琥珀が姿を現した。
「3人とも、先ほど楽で見つけた11箇所を至急調べてきて頂戴。あと、ダルマの妖から最近見慣れぬ文使がいるらしいわ。見つけたら報告のあと調べて。玄武、陰陽寮に行くわ。準備を。」
それぞれに指示を出して、着ていた小袿を脱ぎながら、几帳の裏に入ってゆく。
衣冠に着替え、几帳から出てくると髪を一つにまとめ、烏帽子を念の為被る。
「春仁さま、私は今から陰陽寮に行って章平さまを呼んできます。衆生の所に晴明さまがいらっしゃられる気がするので、内密に会えるように取り計らってもらえませんか?」
「分かった。」
「ありがとうございます。途中まで一緒に行きましょう。と、」
ちゅっとリップオンをたて、朝にかけておいた結界をさらに強化する。
うん、これで大丈夫でしょう。
満足げに頷き、梨壺より外回りで清涼殿へと向かい、私はそこで春仁さまと別れ、春仁さまから一筆書いていただいた文を預かり陰陽寮へと急いだ。
雪華は、姿を消して私についてきている。
内裏から陰陽寮まで少し距離があるが、そこまで遠くはない。
建物が見えてきて、室内に見慣れた人が立っていることに気がついた。
というより一室に人が集まっているような気がする。
「章平殿!」
外からその人を呼べば、視線が合う。
「ひっ・・・・ぶっ!!」
“姫さん”と普通に呼びそうだったので、空気を固めたものをぶつけてみたら見事に顔面にヒットし、後ろに退ざった。




