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2人が姿を消した後敦成さまも、雪華も今後の打合せだとかで殿舎を後にした。
北舎は私の荷物を置いているが、基本的には雪華の控え場所になるそうだ。
まぁ、私付きの侍従、女房が神将だということは簡単に説明できるし、困ることは特にないでしょう。
時平=菊華で繋がった敦成さまは、菊華であっても時平同様に陰陽師としての力を使えるという事を柔軟に受け入れてくれた事に感謝した。
この時代の人達は頭が硬いイメージがあったから意外だった。
陰陽師なんてやってる人間は基本的に、見たものが全てで事実だ。だから、自分が想定していない事が起きても、柔軟に対応できる。
一部は頭でっかちもいるけれど。
朱桜と琥珀に関しては何も問題ないだろう。
蒼月は私の後ろに常に居る。
神将とのキスなんて私にとっては自分自身の力の発散及び、スキンシップ、じゃれ合いといったものにしか思っていない。
特別な感情を特に、あの2人に抱き様がないのだ。
蒼月に関しては正直どう接したらいいのかわからないけれども、でも春宮さまにも私を取り巻くキスという環境については話しておかなければならない。
立ち上がり、春宮さまの前というより傍にくるとぎゅうっと抱きしめてみる。
正直、唐衣、表着、よければ打衣まで脱いでしまいたいけれど、この時代の常識的によろしくないので、諦めては居る。
せめて袿姿に着替えれば良かったけれど、どうせ後は寝るだけなので、何も言わなかった。
動きにくいせいか、そのまま私を受け止め損ねた春宮さまは後ろへ倒れ込んだ。
蒼月の視線はちょっと気になるが、私がすることに文句は言わないだろう。
これ幸いと思い、そのまま頬に唇を寄せる。
一瞬驚いた表情をしたけれど、うん、これで、眉間のシワは無くなった。
「ふふ。頬にキスなんて挨拶ですよ?」
そう言って体を起こそうとすれば、後頭部に手が周り引き寄せられる。
「ぅん?!」
「仮でも夫婦なのだから、接吻くらいいいであろう?」
反撃だというような、揶揄う表情を浮かべた春宮さまの言い分に、まぁいいかと納得してしまう。
何より“嫌”だとは思わなかったのだ。
「構いませんけれど、私からいくつかご説明をします。」
身体を起こし、春宮さまも腕を引っ張り身体を起こさせる。
「説明?」
「青龍。」
「はい、ひぃさま。」
隣に座るように蒼月に指示をだし、言われるままに座った蒼月の手を握る。
「春宮さま、どこまで主上よりお聞きになられているかわかりかねますが、ここに居る時間が私には分かりません。そして、安倍一族の中で私は特殊で、特別な子供だそうです。力だけで言うなれば晴明さまと同等、もしくはそれ以上だという話です。」
「特別だというのは?」
「玉依姫・・・・、というのはお分かりでしょうか?この時代の玉依姫とは少し違うのですが、安倍一族の中で玉依姫というのは、我が一族に仕えてくれている、神将の嫁としての資質、魂、価値を持っています。」
「菊華が、安倍一族の玉依姫・・・という事か?」
「はい。玉依姫と同時に安倍家の当主にもなります。詳しくは機密事項らしいのでお話はできませんが、そう言った安倍一族独特の風習?みたいなもので私は今、この時代にいます。一つ決まっているのは、この肉体での生を終えた後、100%この青龍へ嫁ぐという事です。」
「それは、生きている間は結婚出来ないということか?」
「いいえ。それはないです。私は次代を残す義務がありますので。元の時代に私には、婚約者候補の方が何人かいらっしゃいます。それでも私の気持ちが最優先ですので、婚約破棄もできます。ある意味春宮さまの立場に近いかもしれません。」
こちらの時代に来てから教えてもらった事を、春宮さまにも説明をする。
事情が分かったとしても割り切れるかどうかは謎だが、何も知らないよりは全然ましである。




