結んだ絆
弘徽殿では、皇后さまへ入内のご挨拶をし、その際に春宮さまの妹君、二の君にお会いする事になり、同腹の妹君はどことなく雰囲気が春宮さまに似ていらした。
同腹だと似るものね~。他の姫君達に会う事は無いと思いたいわ。
だって、
以前にお会いしたことがあるのは時平であって、私では無いのだから。
そろそろお暇しようかと思った矢先、弘徽殿に先ぶれもなくやって来たのは主上で、女房達が一瞬慌てたのが分かった。
「久しいな、菊華の君。いや、もう春宮妃と呼んだ方が良いか?」
皇后さまの隣に座った主上は、帝としてでは無く、父親としての表情になっていた。
「ご無沙汰しております。春宮さまと後ほどご挨拶に伺う予定でした。未熟者ではございますが精一杯努めさせていただきたいと存じます。」
あえて春宮妃という部分については答えず、にっこりと笑みを浮かべご挨拶申し上げる。
あくまでも(仮)でまだ、正式に春宮妃にはなっていない。
春宮さまがすぐに即位するような事態にでもならない限り、女御宣下もない。
現状ただの、嫁(仮)の状態だ。
「私としても、娘が増えるのは嬉しく思う。何かあれば私か皇后を頼りなさい。春宮でも良いがの。」
「お心遣い感謝致します。春宮さまはとても頼りになりますので早々ないかと存じますが、それでももし、|困るようなことがあれば《・・・・・・・・・・・》ご相談させていただきます。」
「そうしなさい。皇后は春宮妃がくるのをとても楽しみにしていたからね。」
「そうだったな。春宮妃ゆっくり休まれよ。」
「ありがとうございます。」
両陛下にお礼をいい、立ち上がると春宮さまから手を引かれ、そのまま弘徽殿を下がる事にした。
先ほどの陛下のお言葉で、周囲は私を春宮妃として扱ってくるだろう。
スキンシップはある程度大事だし、心象や家族以外に大事に扱われるのは正直、気恥ずかしい。
何より陛下、どんな事情があれ、身内として扱おうとしてくださる事が嬉しかった。
というのが本音だった。
梨壺に戻って来た私達は、ひとまず宮さまの昼御座に置いてあった畳に腰を下ろす。
正直疲れた。精神的に。
主上に挨拶に行くのは分かっていたけれど、逆に訪ねて来られるとは・・・・。
「菊華、大丈夫か?」
「いええ、今回のは流石に驚きましたし疲れました。」
「流石に、すまん。」
「大丈夫です。まぁ、先ほどの挨拶で私の地位がかなり強固なものになった気がします。」
何せ、主上自ら私のことを春宮妃と呼んだ。
思うところはあるにせよ、後宮のあの場にいた女房達は必ずそれに合わせるだろう。
私のことを、春宮妃と呼ばないなどをすれば、確実に衆生に対する不敬罪となり得るだろうし、色々めんどくさいなぁ。
と、正直に思ってしまった。
〈皐月。〉
〈あー、お帰り。2人とも。〉
〈大体予想はつくだろうけど、今回の件が片付くまでここに住むことになったっから。〉
〈今回と言うより、戻るまでの間違いだろう?〉
〈まぁ、そうとも言うよね。それより、何か進捗があった?〉
〈絢音と名乗る男なんだけれど、もしかしたら内裏に名前を偽って参内している可能性があるから気を付けて欲しい。〉
〈そうなのね。分かった。2人とも無茶のない範囲で引き続き情報を集めてくれる??〉
〈もちろん。〉
〈今日はもう、お休み。」〉
私から神気をもらうと、そのまま廂に移動した。
「菊華?」
「あぁ、すみません。使いに出していた2人から報告を受けておりました。」
「それで、進展はあったのか?」
「内裏に、名前を偽って参内している可能性があるそうです。」
「それは・・・・。」
「大丈夫ですよ。私、人の顔覚えるの得意ですし、あの顔が内裏にいるのなら女房達も騒ぐでしょう。」
何も問題ないという表情をして答えたら、春宮さまはなんとも言えない表情をして、敦成さまは笑いを噛み殺しながら春宮さまの後ろに控えていた。




