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安倍邸に戻ってきた私は朱桜と蒼月の2人に湯殿の準備をしてもらい、全身の汚れを落とすことにした。
砂埃に、土まみれ。結い上げていた髪の毛もボロボロ。
帰宅早々、若菜さまにより強制的に湯浴みをするようにと言われた。
準備が面倒だからと、朱桜と蒼月に頼んだので、そんなに時間は掛からなかったけれど全身ピリピリするから、擦り傷ができているのだろう、地味にお湯が染みる。
さて、綾音が持って言った石はきっと妖の力と人の私怨の塊が固形化したものだろう。
もう、ほぼ蠱毒じゃん。
絶対よろしくない。あれはゆっくりと侵食していく類のモノだろう。
となると、時平で出仕するのは動きやすいが、成果はあまりないような気がする。
かといって、菊華で出仕すれば確実に入内になる。
どぷん。
と湯殿に頭まで潜ってから上がり、身体の水気を取り準備しておいた着物に着替える。
最近安倍邸では、女物の着物を着ている。
主に若菜さまの若い頃の着物なのだが、ありがたく着させてもらっている。
「皐月まだ濡れているぞ。」
髪を掬い丁度よい熱風を当ててかわしてくれた。
「ありがとう。朱桜。ついでにその簪貸してくれる?」
「もちろん。」
乾かした髪の毛を器用に簪一本でまとめて、晴明さまの元へ向かう。
「お待たせいたしました。」
室内にいたのは、晴明さまと章平さまが持っていた。
「姫さん、身体辛くない?」
「あれくらいなんとも無いですよ?章平さまは平気ですか?」
「あ、うん。俺は平気。」
「それは、よかった。晴明さま、今回調べたお屋敷ですが、藤原一族にゆかりのあるお屋敷でした。ただ、藤原一族と芦屋一族が繫がっているかどうかは分かりかねますが・・・・・。五芒星を使用していた事に関しては、まぁ私達に対しての嫌がらせの可能性が高いです。
そっこから派生されたモノに関しましては、ロクな使い方をされないでしょう。」
「芦屋一族が動いていると思うのかのう?」
「5割くらいですか・・・・。主に動いているのは綾音でしょうが。ただ、きっかけはなんであれ、教えたのは芦屋一族の者ですね。」
「爺様、俺が思うにあの男の執着は、気持ち悪かったです。」
「執着自体があまりよろしくない。」
ふむ。
あーでも、石の存在は、話しておいた方がいいだろうな。
私的に、アレは蠱毒だ。
「晴明様、時平としての出仕ですが、極秘密裏に菊華として入内することは可能でしょうか?むしろ、トッキヒラと菊華両方で動ければ1番良いのですが。」
「それは、なぜ?」
「絢音の目的は私です。時平だろうと菊華だろうと、私の性質は変わ利ません。だから狙われにくくなると言うことでは無いのですが、色々情報を集めるにしても時平でいた方がいい場所と、菊華で行った方がいい場所というのがあるかと思うのです。まぁ、菊華で一句のでしたら、藤壺の女御様、梅壺の更衣様、そして皇后様の局です。私の立ち位置を考慮して、表より入内が好ましいのであれば、それでも構いません。一度、主上にご相談をして頂きたいのですが・・・・。」
「姫さん、東宮妃になっちゃうの?!」
「春宮様の仮でも妻ですから、そうなりますか・・・?今の所神将たちがいい顔しておりませんので“仮初”がつきますけど。」
「分かった。丁度衆生に呼び出しをされておるので、その時に伝えてみよう。」
「ありがとうございます。後、絢音が持ち去ったモノですが、神将たちは違うと言っていますが私的にアレは“蠱毒”です。なので、取り扱いというか対峙する時の為に準備はしていた方が良いです。」
石の存在も伝えて、強い力を宿しているという事を伝えておく。
今後の方向性も決まったところで、私は一度自身の室へ戻ることにした。
明日、明後日には話し合いの結果が聞けるだろう。
それまでは、朱桜たちと日々のお勤めをしながら、ゆっくり動き出すのを待つ事にする。




