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第45話 VS園芸部

センリと別れた俺たちはホテルを目指すため森の奥地を歩いていた。



「……にしても、歯応えのないモンスターばっかりねぇー」


「わ、私的には、ほどほどの魔物ばかりなので助かりますけどね……」



 2人とも少し気が抜けているが、気持ちがわからないわけでもない。

 先ほどのブレードグリズリークラスが出ることもなく、低ランク帯から中堅ほどのモンスターのみだ。



「気を抜くでない。ここは戦場、油断したものから死ぬぞ」


「レオナ先輩の言う通りだ。いつ何時も警戒をする……特訓だと思ってやってみるといい」



 流石最年長だ、後輩たちに見せるべき背中として立派だな。

 ……まあ、中身的に、最年長は俺だけど。



「んー、それも分かるけど、どうしても何か物足りないって言うかなんというか……」


「……これも、成長の兆し、か」



 アリシアの実力は、特訓を始めてから飛躍的に成長している。

 初期値が高かったこともあり、今のアリシアが満足できるモンスターがこの森にはいないのである。



(魔人との戦いも影響があるかもしれないな……)



 死地を乗り越えた人間は、その時の高揚感から抜け出せずにいることがある。

 もっと強くなりたい、もっと強い相手と戦いたい、あの時の感覚をもう一度――


 その感覚に陥ったものは、抑制が効かずに死ぬ。


 この平和な時代ならまだマシかもしれないが、いずれにしろ危険な兆候には違いない。



(どこかでケアをする必要があるな)


「む……この気配は……」



 俺がアリシアの心配をしていると、レオナ先輩が茂みの方に向けて警戒をする。


 しまったな……考え事をしていたせいで警戒が緩まっていた。



「総員、戦闘準備だ!」


「ええ!」


「りょ、了解です!」



 この魔力……こいつは厄介な相手だぞ。



「うぉぉぉぉぉぉ!!!」


「うがぁぁぁぁぁ!!」



 茂みから飛び出てきた相手、それは――



「ト、トリングス先輩っ!?」


「そ、それに園芸部の皆さんまで……!?」



 トリングス先輩を筆頭とした、園芸部の面々であった。



「ど、どうして皆さんがここに……!?」


「たしか、森の序盤でラフレジアスの毒ガスで錯乱していたハズじゃないの!?」


「――恐らく、あの馬鹿力共のことだ、ご自慢の筋肉で錯乱状態のまま突き進んでここまで来たのであろう」



 ほとんど自我が無い状態で森の奥部まで……相変わらずのパワーとタフネスだ。



「せ、先輩方とどう戦えって言うのよ!」


「構わん。我が許可する、完膚なきまでに叩きのめすと良い」



 そんなご無体な……。

 レオナ先輩とトリングス先輩……生徒失踪事件を追っている時の様子的に、元々面識はあったようだが……もしかして不仲なのか?



「ヤツの頑丈さは折り紙つきだ。我が保証しよう」



 ……ま、まあ、信頼の裏返し……なのか?



「――けど、レオナ先輩の言う通りだ。手加減して勝てる相手ではない。いくぞ!!」




           *



「どりゃぁぁぁぁぁ!!!」


「ゴーマッスルッ!!」


「くっ……!」



 アタシ――アリシアは、相手を傷つけない戦い方が苦手だ。

 適正魔法は火と風……どちらも、殺傷性が高い魔法というのが大きい要素ね。



「――幽霊さんたちの舞踏会ゴースト・ダンスパーティーッ!!」


「ぬぉっ!?」


「ぐぅっ!?」



 イリーナは得意の死霊魔法(ネクロマンス)で、園芸部の先輩たち同士で同士討ちさせている。

 火力は高くない代わりに、こういう利便性においてはアタシより高い。



「よっ、ほっ……!」


『フンッ!』


「うぉぉぉぉぉぉ!!」


「暑苦しい男め――ミケよ」


「ガウッ!」



 ルーネスとリルは力加減に苦労はしてるものの、余裕で攻撃を避け、隙を狙っているし。

 レオナ先輩とミケは、トリングス先輩の頑丈さを信用つつ、峰打ちで対応している。



「うぉぉぉぉぉ!!」


「ウィンド――」



 風刃(ウィンド・エッジ)を放ちかけ、途中で辞める。

 やっぱり、殺傷力が高すぎる……演習場みたいな安全な結界も無いような場所で、人間に撃つのはダメよね……。



「どりゃぁぁぁ!!」


「きゃぁぁ!?」



 魔法を使うの躊躇った隙を狙われ、園芸部員に吹き飛ばされてしまう。

 けど、魔人の攻撃と比べたら――!



「ア、アリシアさん!」


「イリーナ、後ろ!」


「えっ――きゃっ!?」



 アタシに気を取られたイリーナを、背後から迫った園芸部員が殴りかかろうとしている。


 どうしよう……アタシのせいで――



『小娘っ!』


「ぐぁぁっ!?」



 イリーナが狙われた瞬間、もの凄いスピードでリルが飛び出し、園芸部員を突き飛ばす。



「あ、ありがとうございます! リルさん!」


『油断するでない。貴様は貧弱なことをもっと自覚するのだな』



 良かった……。アタシのミスのせいでイリーナがケガをしていたら――



「……もう、許さないわ」



 大切な仲間を傷つけようとするなんて許せない……手加減なんてしないんだから。



「――不死鳥の爆撃フェニックス・ストライク



 いかに先輩たちであろうと、敵だっていうなら容赦はいらない。



「――いけっ!!」



 不死鳥を飛び立たせ、園芸部員の1人に向けて突撃させる。

 魔人化したフィルゼの取り巻き――ライグにすら大ダメージを与えた魔法よ。


 これでお終い――



「――フッ!」


「なっ――ルーネス!?」



 園芸部員に当たる直前。アタシの不死鳥は割り込んだルーネスによって霧散させられてしまった。



「ルーネス! なんで邪魔を――」


「相手は魔人じゃない――人間なんだぞ」


「――っ!」



 ルーネスの鋭い眼光で睨まれ、ハッと正気に戻る。


 そうよ……相手はモンスターの攻撃で錯乱しているだけの人間なのよ……それなのに、アタシは、今――



「一度頭を冷やせ。今、終わらせる」


「……分かったわ」


「――(オリジン・スリープ)



 ルーネスを中心として、ドーム状のモヤがかった空間が形成される。

 その空間はアタシたちごと、園芸部員を包み込む程の大きさとなった。



「な、なんですか……これ……は……」


「むっ……我としたことが、戦場で、眠く……」


「ぐーぐー」



 周りを見ると、イリーナたちや、トリングス先輩を始めとした園芸部員たちが次々と眠り始めている。

 かくいうアタシも、なんだか、ねむ、く……。



「アリシア……早急に手を打たないとな」



 ルーネス、が……アタシの、名前、を……?

 なんなの……かし、ら――

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