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父のこと。④

 面会を済ませ、帰宅。

 その道中、弟から緊急に電話連絡がありました。

 父がいよいよ危ない、という知らせを病院から受けた、会うつもりなら面会に行った方がいいという内容でした。

 たった今、面会してきて帰る道だと話し、(父の)意識があるのかないのか微妙ながら息子や私を認め、声を出すことで話しかけるそぶりはあったと弟へ伝えました。


「そうか、昨日の夕方頃はまだ普通にしゃべれたんやけどな」


 と弟が言うのへ、


「今はもう、しゃべれるような状態やなかったで。確かに早よ会いに行った方がエエとは思う」


 と、私は答えました。

 すると何かが彼の逆鱗に触れてしまったのか


「そんなん、わかってるワ!」


 と怒られてしまいました。


 彼もここ二、三日、職場に気を遣いながら休みや早退を繰り返していたので、心身ともにギリギリだったのでしょう。

 ちゃんと余裕を持って父に付き添いたかったでしょうが、仕事もあるし(どこの職場もそうでしょうが、基本的に人員に余裕がないので、急に誰かが抜けると同僚に多大な迷惑がかかるものです)で思うに任せない状況だったと察します。


 とりあえず。

 弟は、今日の仕事にケリがつき次第、病院へ向かう予定だと言って、電話を切りました。



 帰宅後、簡単な夕食を作って食べ、入浴。

 何故かよくわかりませんでしたが、異様に疲れました。

 電話(スマホ)だけは肌身離さず持っていましたが、こちらから弟へ連絡するのは憚られます。

 父の状態がどうなっているのか、どのくらい切羽詰まっているのか、わからなかったので。


 だから、連絡がある時は『その時』。

 いつそれが来るのかわからないものの、それほど先ではないでしょう。

 でも、一時間とか二時間以内、でもないでしょう。

 ある程度の長丁場を覚悟し、私は、枕元にスマホを置いて横になりました。

 


 うとうと……としていた時、スマホが鳴りました。

 父の呼吸が止まった、という知らせでした。



 その後のことは弟が手配してくれ、病院から紹介された葬儀社へ父の遺体を託しました。


 ああついに来たな、というような、妙に冷静な感慨と、現実感があるようでない不思議なリアリティのなさの中で、私は、弔事に臨むことになりました。

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