第15話 地下室にて
地下室の扉の前には男爵を除く十数人以上の人間が集まった。おかげで空気が以前入った時よりも薄く感じられた。全員は多かったかなと思いながら、必要なのでそこは仕方ないと割り切る事にした。
「さあ、皆揃いましたよ。これから何が起こるというんです」エドガーが口火を切る。
「少し待ちなさい。もうすぐ扉が開くから」
「何を言ってるのです。男爵が持っている鍵でしか扉は開かないんですよ。あなたもご存知でしょう。この場に男爵がいないのに・・・って、エ?」エドガーがしゃべっている間に扉の鍵がカチリと音を立てて開いた。私は素早く扉を全開にし、足下に落ちていた適当な石をかませる。
「はい、開いたわよ」
「――エ? これは一体・・・」エドガーは口をパクパクさせている。
「何をしたんだい、お嬢ちゃん」モースが説明を求めてくる。
「私は何も。男爵が二階の書斎で鍵を使っただけ」
「書斎で鍵を? 奥の金庫部屋を開けたって事か?」
「そうか、これは範囲魔法・・・」ガストンが声を上げる。
「あの魔法錠は、広範囲に魔法が届く様になっている。だから上の階で魔法錠を使用すると、下の扉まで連動して開いてしまうという事ですか」
「多分そんなところ。恐らくこの仕掛けを知っている人間が扉を開けておいたんだと思う」
「それは誰です?」エドガーが言う。
「・・・それはメアリーよ。メアリーが犯人に頼まれてこの扉を開けておいたのよ」
「メアリーが? なんでそんな事を? いやそもそも何でこの事を男爵に報告しないってそうか、酒か」モースが地下室内をランタンで照らしながらそう言った。ランタンの光に埃をかぶっていない酒瓶が照らし出される。
「そう、恐らくメアリーはこの仕掛けに気付いてからちょくちょくここから酒を盗んでいたんだと思う」私は地下室の中に入りメアリーの部屋にあった空の酒瓶を思い浮かべながら言った。思い返してみれば、あの部屋にあった酒瓶はここにある酒瓶と一緒だ。男爵が二階の金庫部屋を開けるのを見計らい、ここまで来て扉が開くのと同時に中に入り酒を盗んでいたんだろう。
「――マーガレット様、言われたとおりに鍵を開けてきましたよってエ? 開いている?」ここでクルス男爵が二階から下りてきた。
「これは一体?」クルス男爵が地下室の中に入りながら言った。
「クルス男爵、どうやらその魔法錠は欠陥品らしいですぜ。上で鍵を開けると地下の鍵まで開いてしまうようです。不用心だから鍵をもう一つ付けた方が良いと思いますよ」モースが説明する。
「わ、分かった。そうしよう」
「さて、犯人はこの仕掛けを利用してメアリーに扉を開けたままにする様に言い含めたの。そして、メアリーが言うとおり扉を開けたままにした後、今度はエレーナ様に地下室に来る様に言った。エレーナ様には中で待つ様に言って、皆の隙を見て書斎からナイフを盗み地下室に降りてエレーナ様をナイフで刺して殺害。その後扉を閉めて出れば勝手に鍵がかかる。こうしてどう考えても鍵を持っている男爵にしか犯行が行えないという状況を作り出した」
ここまで言って私は恐怖で口の渇きを覚えた。そう、この後ある人物の名前を呼ぶことで、私は引き返せない道へと踏み出すことになる。
もし間違っていたら・・・。しかし、私はそんな素振りは見せないようにその人物に向かって言った。
「――ですよね? レギウス公爵」




