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第13話 急展開

 私たちは慌ててリビングに駆け込んだ。リビングには私たち以外にもゾフィやロジー、そして他の大人の男達とDQNのマシュー、エドガーもいた。

 騒動の中心にいるのは椅子に座ってふんぞり返っている長い金髪を後ろで束ねている男だ。そしてその側でシモンズ子爵が真っ赤な顔をして立っている。

 「なぜ私がヒルズ子爵夫人を殺したと?」シモンズ子爵が椅子に座っている男に尋ねる。

 「だってそうだろう。お前以外に誰が殺すっていうのだ。大方別れ話がこじれて殺してしまったんだろう」男はそう言いながら立ち上がって、近くのテーブルに置いてあるグラスを手に取り、氷を氷入れから手で取り出すとグラスに入れて酒を中に注いだ。声からするとコイツがシュターケン侯爵っていうヤツらしい。

 「私は彼女と今日久しぶりに会ったんですよ」シモンズ子爵が反論する。

 「そんな事わかるものか。陰でこっそり会っていて今日久々に会ったかのように演技していたんじゃないのか。いやそうに決まっている。衛兵!」シュターケン侯爵はエドガーに向かって言う。

 「もうコイツで良いだろう。とっとと連れて行って水攻めでも鞭打ちでも良い、白状させろ」

 「いやちょっと落ち着いてください」エドガーがなだめる。

 「貴族を捕まえて後で違っていました等ということにあってはならないですよ。私共の首が飛びます。それにメアリーが殺された理由も方法も分かっていないんですから」

 「まったく、どいつもこいつも時間ばかりかけて何も事態が進まないじゃないか。いいか僕はもう家に帰りたいんだ。何時間もこんな所に閉じ込められて、家じゃあ僕の愛おしいナルニアとエアちゃんが僕の帰りを待っているのに・・・」

 「お気持ちは、分かりますがもう少しお時間を頂きたいです」エドガーは一生懸命になだめる。なんか、エドガーが可哀想になってきた。

 「美しい・・・」そんな事を思っている私の横で突然ガストンが呟いた。

 「へ?」私はガストンの方を見た。

 「何という美しい光景だ。太陽の女神ソラルと月の女神ディアーナが揃って顕現されたのかと思った。このガストン! 今まで生きてきてこれほど美しい光景を見たことがない!」どうやら私とゾフィが揃っているのを見て言っているようだ。こんな状況で何言っているの。変態の考えていることはわからん。

 「あのマーガレット様・・・」ゾフィが怯えた様子で私に話しかけてくる。「あの人何言っているんです?」

 「相手にしちゃダメ、ゾフィ。ただの変態の戯言よ」私はロジーの背後にゾフィを隠しながら切って捨てた。

 「ご、誤解です! 私は純粋にお二方の美しさに心打たれた訳で、やましい思いなど微塵もありません!」うるさいド変態。

 「えー、皆さん少し落ち着いて・・・」エドガーが何か言おうとした瞬間「隊長!」と兵士が一人リビングに駆け込んできた。

 「今度は何だ!」エドガーが兵士に言う。

 「騎士のチャールズ・ウェンストン卿が来られました。何があったのか説明しろと言われています!」


 チャールズ・ウェンストン卿は、騎士の格好はしていなかった。どちらかというと平民の着るようなシャツに吊りズボン、ブーツといったラフな格好をしていた。そして顔がエドガーによく似ていた。彼を少し老けさせた様な感じだ。

 あれ? ウェンストンってエドガーの姓じゃなかったっけ?

 「兄上」とエドガーが入ってきたチャールズ・ウェストンに声をかける。「なぜここに? 今日近衛騎士団は休息日のはずだが」

 「その事は後で話す。何があった?」チャールズはエドガーを問い詰めた。

 エドガーはチラリと皆の方を見た後「人が二人死んだ。恐らく殺人だ」と言った。

 「ウェンストン卿!」ここで熟年の茶髪に立派な口髭を生やした人物が声を発した。剣を腰に佩き長身で肩幅も広い、エネルギッシュな感じの男だ。声からしてレギウス公爵らしい。

 「驚いたな、休息日ではなかったのかね。なぜここに?」

 「申し訳ありません。その問いには答えかねます」チャールズは再びエドガーの方を向く。

 「で、誰が犯人だ?」

 「それについては、今調べているところだ」

 「コイツだよ、コイツ!」グラスに入った酒をあおりながらシュターケン侯爵が言った。

 「シモンズが殺ったんだ。間違いない」

 「だから私は違うと言っているじゃないですか!」シモンズ子爵が抗議の声を上げる。

 「だって死んだ内の一人はお前の情婦じゃないか。まったくこの国も乱れた物だ、汚らわしい。別れ話で情婦を殺してしまうなんて。まあ今の国王だからここまで乱れても仕方ないよな。なんせ、双子の王子の母親が実は違うなんてこと噂されているくらいだから・・・」

 「やめんか!! 子どももいるのだぞ! 口を慎め!」雷鳴のような大声でレギウス公爵がシュターケン公爵の言葉を遮る。

 シュターケン公爵は悪びれた様子で肩をすくめ、グラスをテーブルに置いた。

 ここで私はDQNマシューがシュターケン公爵を睨みつけているのに気付いた。耳まで真っ赤にして、今にもシュターケン侯爵に飛びかかりかねない感じだ。彼の父親は両肩を後ろから掴んで止めているように見える。

 「疑わしいのは誰だ。その者を引き渡せ。後は我々がやる」チャールズがエドガーに言った。

 「今の段階で一番疑わしい人物でいい」チャールズは更に言う。

 「わかった、今の段階で一番怪しい人間だな・・・」エドガーはそう言うと、クルス男爵の方を向いた。

  「クルス男爵、あなたをヒルズ子爵夫人および使用人メアリー殺害の廉で捕縛する」へ? 何言ってるのコイツ?

 「なぜ私がエレーナとメアリーを殺さなければならない!」クルス男爵は当然の事だが抗議の声を上げた。

 「それは貴方だけが地下の扉の鍵を開ける事ができるからだ」エドガーは言った。

 あ! そういえばそうだった! その事を忘れていた!

 「な・・・、それはそうだが私がエレーナを殺す理由がない!」

 「理由については分からないが地下室の鍵を開けて出入りする事ができたのは貴方だけだ。加えてメアリーについても主であれば気付かずに毒を飲ませるのも容易だっただろう。現時点で一番怪しいのは貴方だ」エドガーの言う事は確かに合っている。

 「兄上、そういう事だ。クルス男爵を・・・」

 「ち、違います。私です。私が殺しました・・・」突然、小声でゾフィが言った。

 「ゾフィ様?」

 「ゾフィ、止めなさい!」

 ロジーが驚いて振り向くのとクルス男爵が制止する声が重なった。しかし、ゾフィは止まらない。

 「騎士様! 私です! 私が叔母様とメアリーを殺しました! エリーゼ叔母様を刺して地下室に閉じ込めました! メアリーにも食事の時に毒を混ぜました! 父は関係ありません!」

 「止めなさいゾフィ! お前じゃない! お前は何もやっていない!」クルス男爵が必死にゾフィを制止する。

 ヤバい、この状況は非常にヤバい!

 ゾフィの顔色は真っ青で体が小刻みに震えている。明らかに嘘を言っている。しかし、彼女が主張を曲げなければ騎士は親娘を両方取り調べる事になるだろう。そこでもゾフィが主張を曲げず、かつ男爵も彼女を庇うためにここで起きた事件の罪を認めたとしたら、私の守護霊プレシエンシアが言ったように二人が処刑されてしまう可能性が高い。と言うか、プレシエンシアはこの状況を予知していたのだ。ここは何とかしないと・・・と思うけど何をどうしたら良いか分からない!

 「騎士様! 私です! 私が・・・」

 「止めなさいゾフィ! お前じゃない。お前は殺してなどいない・・・!」男爵とゾフィがお互いをかばい合う。

 「そう! お二人ではありません! 怪しい者は他におります!」と突然野太いガストンの声が響いた。


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