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BlueEarth 〜攻略=世界征服〜  作者: まとかな
氷結都市クリック/フリーズ階層

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95/507

95.好きな事を好きにできるのは大人か子供か

──◇──




《イエティ王奪還戦》4日目

C班D班:最前線部隊

【第36階層フリーズ:氷晶洞窟】本拠点設営完了

代表【草の根】ヒョウによる拠点防衛開始


【第37階層フリーズ:追憶凍土】本拠点設営完了

代表【夜明けの月】アイコによる拠点防衛開始



D班:グレン・ミカン班

【第37階層フリーズ:追憶凍土】本拠点完工

──【第38階層フリーズ:雪中模索】最前線と合流。




──◇──




【第38階層フリーズ:雪中模索】

──────

深く降り積もった雪の中

道無き道を掘り起こすなれば、現れるは古代の獣か妖精か

未知なるモノが目覚めるならば、倒して進む他に道は無し

──────


「無事に追いついたのはいいんだけど、これは何かな?」


やっと合流できたグレンとミカン、フレイム。

そういえば説明していなかった。気になっているのはこの──イエティ達が操作する車の事だろう。


「手漕ぎ車だ。本当は足漕ぎ自転車にしたかったんだが、イエティは足より手の方が長かったんでな」


イエティ一人につき一台用意し、それを連結させて資材を運んでもらっている。

36階層以降は陸路での移動を阻害されないので、メアリーの思い付きで発明した。これがなかなか快適なもので、イエティ達もぶっ通しで漕ぎ倒している。楽しいらしい。


「ミカン。本職に整備してほしい」


「アイデアは素晴らしいですが作りが雑です。ミカンさんが改造するです並べ」


ミカンはノリノリでイエティ達の中へ埋もれに行く。すぐ見えなくなったな。


「んで……こいつかぁ」


「コイツとは悪くない悪態だなライズ。レベル上限解放の"ディスカバリーボーナス"教えな」


「知らん。いつもストレートなんだよお前はよぉ」


……【飢餓の爪傭兵団】総頭目ウルフ。【Blueearth】にとって良くも悪くも大きな変革をもたらした問題児。長い付き合いだが、本当にこいつと関わると面倒ばかりだ。


「お前がただの祭りバカだったら本当に色々楽だったんだがな」


「そう褒めるな。照れるって」


「ちゃーんと言う事聞けるか? クローバーで脅す必要あるか?」


「無駄だライズ。ソレは俺にも平気で噛みつく狂犬だぞ」


クローバーの言う事も(もっと)もだ。こいつは本当に人の話を聞かない。


そもそもが連合ギルドでもないのに傘下ギルドなるものを定義し、各拠点階層に手下を配置。

その結果として【飢餓の爪傭兵団】を志望する者は70階層までスムーズに攻略を進められるようになった。

各拠点階層の民間クエストを独占する事で、敵対者の炙り出しと排斥。

その結果として常連などによる民間クエストの独占が消え、誰でもどんな民間クエストでも受けられるようになった。


良し悪しではなく、【Blueearth】のインフラそのものになっているから始末が悪い。【真紅道レッドロード】が冒険者に寄り添うならば【飢餓の爪傭兵団】は【Blueearth】に寄り添っているとでも言うべきか。


「まぁまぁ仲良くやろうや。ライズは当然竜退治に行くんだろ?」


「いや、俺は今回第二陣だ。お前は建前上グレンと行かないといけないんだろ? じゃあ第一陣だ」


「あーん? おかしいだろソレ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。馬鹿か?」


煽っているようで、純粋に疑問といった表情。

コイツはまた核心を突いてくる。本当にやりにくいな。


「俺だけの問題じゃない。あくまで性能重視でだな……」


「いや客観的に見てお前が適任だろ。お前自己評価が正確じゃないぞ。スワンあたりと役割被ってんじゃねぇか。代わればいいのに」


「はいはいそこまで。ウルフ加えての会議しなくちゃならないでしょ。ウルフもライズもグレンもミカンも会議室来なさい」


メアリーが間に割って入る。ここには今トップランカー3ギルドそれぞれの最高戦力がいるわけなんだが、本当に肝が据わってるな。


「【夜明けの月】GMメアリー。お前の所にうちのサティスが流れちまった。()()()()()()()()?」


「何それ。()()()()()()()()()()?」


「……っかー可愛くねぇ!」


「いきなりカマ掛ける方が悪いでしょ。サティスが【飢餓】関係に関与しちゃいけないって契約を【朝露連合】の【ダイナマイツ】利用して反故させようとしてるんでしょ。まず【夜明けの月】と【朝露連合】には直接的な関係は無いし、サティスも【朝露連合】とは無関係の【満月】で活動してるから」


……今の会話、俺なら引っかかったかもしれないな。こういう時は頼りになるぜリーダー。




──◇──




「では、改めて。39階層イエティ王奪還作戦のメンバーは以下の通りとする」


──────

《イエティ王奪還班・第一陣》

・移動・運搬担当

【マツバキングダム】マツバ

真紅道レッドロード】フレイム


・案内・地理把握担当

【草の根】スワン


・威力戦闘担当

真紅道レッドロード】グレン

【夜明けの月】クローバー


・偵察潜入・イエティ王奪還担当

【飢餓の爪傭兵団】ウルフ

【夜明けの月】ゴースト

──────


──────

《イエティ王奪還班・第二陣》

・移動・運搬担当

【無所属】バルバチョフ

【コントレイル】エンブラエル


・案内・地理把握・各業務補欠担当

【夜明けの月】ライズ


・威力戦闘担当

【無所属】カズハ

【ダーククラウド】キャミィ


・通路確保・安全確保担当

【かまくら】ミカン

──────


「これより後続のイエティや資材の到着を待ち減速。各拠点階層のイエティの運送業務終了を確認次第我々も停止し、一時的に"39階層へ向かうイエティがいない状況"を作成する。

準備が完了次第作戦開始。イエティ全員で39階層に突撃し、第一陣を潜行させイエティ王を奪還する。

奪還成功の場合は38階層で控えている第2陣も39階層へ突入しイエティ王を受け取る。

以降はバケツリレー方式で各拠点階層まで王を運んだ後、命尽きるまでスフィアーロッドを妨害する。

……が、【真紅道レッドロード】と【飢餓の爪傭兵団】のパフォーマンスでもあるのでグレンさんとウルフさんは王と一緒に31階層まで向かってもらう」


マツバの意見に異論は無し。単独の生存能力が高いがメンバーの中では経験もレベルも足りないゴーストにウルフが付いてくれて助かる話だ。ウルフは結局俺が出ない事に不満そうだが……。


「数日に及ぶ戦闘でアイテムも武器もボロボロだ。各位周囲の敵を殲滅しつつ補給と休憩を頼む。現在の想定では作戦開始は20時間後の12時だ」


解散し、各位武器の点検等へ。俺も準備するかと立ち上がると、ゴーストが真後ろに立っている事に気付いた。びっくりした。


「question:ライズ。何か確認事項はありますか」


「あー……アドバイス欲しいってことか。そうだなぁ。メンバー的に不安材料はなさそうだが」


「ライズが要求すれば、私は従います」


「えっと……?」


「アンタの代わりに何か見ようか?って言ってるのよ」


ぺふっ。

背中をちっちゃい手で殴られた。

メアリーとゴーストに挟まれてしまった。


「気を遣わせちゃったか。悪い悪い。本当に気にしなくていいんだよ。好きにしておいで。

あえて言うなら……クローバー含め第一陣は全員お前を守ってくれるから、お前も皆を助けてやってくれ」


「consent:承りました。お任せ下さい」


「んーまぁ合格。行くわよゴースト」


何やら満足したようにゴーストとメアリーが去った。何だったんだ。


「ひょほほ。ライズよ。第二陣での作戦会議をするでおじゃるよ」


「うわぁバルバチョフ。わかった今行く」


更に背後を取られ白塗り平安貴族。お前のはホラーなのよ。




──◇──




【第31階層フリーズ:永遠雪原】

──第1区画 パフォーマンス会場


『──以上で【象牙の塔】魔法講演会・実践編を終了するのである。本日発表した新魔法については本日より《アイスライク・サプライズモール》4F書店にて取り扱いを開始するので、興味のある諸氏は是非足を運んで頂きたいのである』


『はいありがとうございました! 【象牙の塔】パフォーマンス、広範囲魔法講演会でしたー!』


まさかの【象牙の塔】三賢者全員によるパフォーマンスに会場は大盛り上がりです! 途中からはブックカバー氏の講演会でしたのでもう【ロストスペル】の方はお帰りになられましたが……。


舞台裏まで戻ってきたブックカバーさんとアザリさん。この後は《拠点防衛戦》を退室するだけですが、マイクや機材の返却を直々にして頂いています。この辺りがデキるギルドってやつですねー。


「オジキ。どうすんでぃ? 帰るかー?」


「うむ。あの愚物(ライズ)主催のイベントなぞ興味ない」


「はーはははー。その割には予定変えて一人残ってたよねぃ。39階層突撃は明日だってよ。ここまで戻ってくるのに3日はかかるし、ライズ自身はその場で死ぬつもりらしいぜぃ」


「聞いておらんわ。あとあの阿呆が玉砕なぞするわけ無かろう。解像度が荒いぞ」


「ガチ勢怖~……」


荷物だけ返却した後、ズカズカと第2区画へ向かうブックカバーさん。あっちは【バッドマックス】が延長戦と称してずっと戦っているのですが。


「素直じゃないねぃ。……あ、もしもし? 俺っちとオジキはすぐ戻れそうにないわ。イツァムナの護衛頼んだぜい、っと」


これは誤算でしたが、あまりにもビッグネームが集まっている事に加え、"久々に簡単に倒せる雑魚を相手できる"事に想像以上の快感を得たセカンドランカーがパフォーマンス後もある程度残ってくれています。一度抜けると再参加できない事、殆どのセカンドランカーやトップランカーが参加するためにすこし遊んでいても攻略の速度に影響しにくい事から、けっこう息抜き感覚で戦力が補充され続けています。


……そうなると基本的に《アイスライク・サプライズモール》側で働いている【井戸端報道】は取材が出来ないので不満そうです。向こうも人員に余裕ができたようで、ちょいちょいマスコミが混入していますが……。


さーて、そろそろ最前衛組の実況も準備しなくてはいけませんね!




──◇──




【第31階層フリーズ:永遠雪原】

──第7区画"無敵要塞"独壇場


4日が経過したようです。

わたしは依然変わりなく、ミカンちゃんが作ってくれたお城の門番係です。

MAP俯瞰図から後ろの戦闘要員さんのステータスを確認して、その人が無理なく倒せる魔物を選んで弾き回す。

数こそ多いですが、わたしのすべき仕事は変わりません。速度を4倍にしないと魔物があふれてしまいますが、なんとかシステム化できました。

システム化できるという事は思考停止できるという事。思考停止できるという事は実質睡眠しているという事です。

記憶を取り戻した今のわたしからすると"それはちょっと無理ありますぅ"って感じですが……。

体力消費がメンタルに依存し、物理的に体が動かなくならないという事は無限に戦えるという事です。そもMPさえ殆ど使わないので、数時間おきに仮眠しています。


目は離せませんが耳は空いています。マスカットちゃんの放送は面白くて楽しいです。

第90階層(ミラクリース)防衛戦の時は時間間隔を失っていましたから。確か3日通しだったはずですが、あまり記憶がありません。

さあ暇です。暇な時は考え事です。思考スペースも余っています。

嫌な記憶が渦巻く。いけません。肉体に反映されるほどの回想は良くない。

思い出したくは無かった記憶。でも、過去なので。過去の暴力が今のわたしを襲う事は無いと、自分を諭さなければ。

──ああ、諭し切れなかったから、恐怖も苦痛もすべて快感だと思うようになったのですね。


でも。


現実逃避は得意なので。


今はメアリーちゃんからの命令を守る。

今はライズさんに"信じてる"だけを反芻する。


ああ、ああ──




「誰かを守るのって、気持ちいい──!」




~裏方こそこそ話~

《タルタルナンバン苦悩編》



《アイスライク・サプライズモール》

B1F【かまくら】受付


受付に立っている絶世の美女は、【マツバキングダム】より出向している名物受付嬢ミーヤちゃん。

この《イエティ王奪還戦》にあってはここ数週間働き詰めで、受付の脇に空の酒瓶が並んでいます。


「いらっしゃいませー……あら」


まごついていると、ミーアちゃんの方から声を掛けられてしまいました。

まだ覚悟が出来ていません。が、いつまでも出来ないでしょう。腹を括ります。


「……久しぶり。新聞読んでるわよ。ナンバンちゃん」


「うん。久しぶり。勝手に抜けてごめんね、ミーアちゃん」


【井戸端報道】記者タルタルナンバン。ウチはかつて、ミーアちゃんと一緒のギルドでここまで来て──ここでギルドを解体してお終いになった。

……お終いだと、勝手に思って逃げちゃった。


「いいのよ。私達が悪かったんだから。"もう冒険がキツくなった子"を守るためにここに残ろうと提案した私と、"まだ冒険したい子"を守るために先に進もうと提案したウィゴちゃん。勝手に皆の意見を極端に切り取って、私達が代表だなんて思い上がって」


「ウチらのギルド【桃の国】は解散。12人いたメンバーは3人が【マツバキングダム】に移籍して、3人が先の階層にすすんで……残り6人は冒険を辞めてどこかへ行った。ウチもその一人」


「馬鹿だよね。誰もがそんな極端に考えられるわけないのに。無理に"どっちか"を強要したら半数が消えちゃった」


「ミーアちゃんとウィゴちゃんが悪いわけじゃない! 進みたくない子も、進みたい子も確かにいた。【桃の国】は遅かれ早かれ解散してたと思うの」


誰が悪いとかじゃない、と思う。

【Blueearth】をソロで攻略するのはとても厳しい。ギルドで他人と関わらなければとても攻略なんでできない。

での人と人が関わる以上、ズレは出てくる。どっちに動いても誰かは辛い思いをしたし、皆わざわざ口に出して雰囲気を悪くしたくないと思う程度には仲が良いギルドだった!


「ウチはねミーアちゃん。ただ皆で楽しんでいられたらそれで良かった。でもそれは何の責任もない団員だったからで、ギルドマスターやサブマスターとしての責務のあるミーアちゃん達は色々考えないといけなかったよね」


言いたい言葉が出てこない。喉がつっかえる。

そうじゃない。ミーアちゃんを責めたいわけじゃない。


「ウチは、ただ皆と仲良くしたかったから! だから、遅くなったけど。

ウチと友達になってください、ミーアちゃん。たまに意味も何もない話、しよう」


ただ一言。ウチは友達が欲しかっただけだった。

そんなことに気付けずに、すっごい遠回りしてしまった。


「──喜んで。ナンちゃん、ずっと悩ませてたんだね。ごめんね」


ぽろぽろと涙が溢れる。こんな一言だけなのに。

ミーアちゃんがウチを抱きしめてくれて。

人前なのに、大人二人情けなく泣いてしまった。




──◇──




「ふーむ。才能アリでして。いよいよですな」




──◇──



《【井戸端報道】社内NEWS》




[辞令]


本日をもって 第20階層圏記者 タルタルナンバン の任を解き、同日日付をもって第1編集部部長補佐に任命する。

また、第1編集部までの取材範囲対応の為、第80階層までの階層攻略を命じる。


【井戸端報道】局長 バロン


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