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BlueEarth 〜攻略=世界征服〜  作者: まとかな
氷結都市クリック/フリーズ階層

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76.色萌える奇跡の大地


吹雪く世界は白に染まり。

夜闇に混じり灰となる。

色のない世界を灯すは、燃える氷の赫き色。

魔物は求める。唯一の色を。

この過酷な世界に、赫の輝きがあらんことを。


──ここは【第30階層 氷結都市クリック】

世界を彩る、鮮血の赫。



──◇──



「「「おかえりなさいませ、ご主人様!」」」


長く籠った地底世界に別れを告げ、久方ぶりの太陽を浴びる。

快晴。薄く雪が積もっているものの、歩くのには苦労しない。


そんな事よりも。


並ぶは氷像──氷の肉体を持つ原住民。髪だけが赫く輝いているけど、燃え上がっているわけではないのかしら。おさげにしてる娘もいるし、肩口までかかった炎の長髪が身を溶かすわけでは無いようだ。

そして──多種多様なメイド服。メイド仲間のゴーストも目を丸くしてるわ。


……メイド仲間。そういえばゴーストにこの格好をさせたのは──


「彼女達は萌える氷の原住民"メイドレ"。他者に奉仕する事で命を萌やす、生まれながらにしてのメイドさんだ。

 ……ようこそ、地上の楽園へ」


過去1番にライズがキモくなってる。

いや人の趣味嗜好に口出ししちゃいけないわ。何よりあたしをからかってるだけなのかもしれない。

ドロシー、判定は?




(真正(マジ)です)




「あんたキモい」


「ひでぇ!」


というか何なのよこのメイドさん達。ドリアード・エルフ、ドワーフと来てなんで氷像なのよ。うわー艶やかで美しい脚線美。えっちじゃん。

髪同様に眼や口内も炎っぽい。どういう生物なのよメイドレ族。


「お荷物お待ちします」

「ライズ様はカフェに寄って行かれますか?」

「新しい建物が出来たんですよ〜」


「ちょいちょいちょい。なんでそんなモテモテなのよライズ。買収?」


「ひどい。人徳と思ってくれ」


「あー、いや俺知ってるぞ。ライズのやべー伝説の話」


「それよりゴーストさんがどこかへ拉致されました。僕追います!」


「ドロシー君1人では危ないね。俺も行くよ」


「あーもうぐちゃぐちゃ!」




──◇──




「クリックで定期的に開催されるイベント、《叫べ!メイド愛》で毎度優勝し、景品のメイド服を掻っ払って行くという伝説の(やべー)男。そのイベントは匿名性だったから長らく正体はわからなかったが……ここ最近になって、メイド服で攻略を開始した冒険者が現れた」


「……ナンバンさんがアドレで書いた記事ですね。やたらメイド服がプッシュされてました。そっか、唯一無二なんですねメイド服」


「正確には【バトルドレス】がな。型落ち品の【ゴシックメイド】【アニマルメイド】【スモールメイド】とかメイド服系の装備やスキンはあるんだが、どれもこれも実践向きじゃない。というか【バトルドレス】だけガチ性能なんだよ。数回だけそのやべー奴が出なかったイベントがあって、【バトルドレス】は4着だけ世に流れ……一瞬で落札され世から消えたんだが、登録の際にデータだけは測定されてるからな。

 防御力だけでなく全ステータス上昇、デバフ軽減、パーティメンバーへの永続(パッシブ)バフとか色々あるんだよ」


そうだったんだ。そんなヤバいもんなんだゴーストのメイド服。


「つまりは【バトルドレス】を着てるメイドさんがいたら即ち伝説の男の正体がわかるわけで、【夜明けの月】にライズの名前があったから……みんな解散した。だってライズしかいねーだろ。神秘も謎もへったくれも無ぇ」


「酷いぞクローバー。まぁそういう訳で俺はクリックでは"キング・オブ・ご主人様"となっている。

 ちなみにゴーストが拉致されたのは【バトルドレス】着用者用のイベントみたいだな。俺が独占してたせいで【バトルドレス】着用者がクリックに来たのは冒険者史初になる。今直ぐにゴースト達と合流してイベント確認しに行きたい」


……ゴーストが超美人メイドである事はわかるけど、変に注目されてるとは思ったのよね。


「いやそろそろいい加減にしなさい。お姉ちゃんからの依頼があるでしょうが」


「その辺も大丈夫だ。どうせ向こうから来るし」


メイドに担がれるライズ。なんか奉仕の仕方間違えてる気がするけど。




「見つけましたわ〜〜〜!」




聞き覚えのある、甲高い声。

青のドレスを身に纏ったお姫様(重戦車)が、ドシドシとやってくる。


「【夜明けの月】ィ〜! よくもまぁヌケヌケと出やがりましたわ〜! ワタクシは別に嫌いじゃありませんが、立場というものがありますわ〜!」


「姫様だ」「今日も元気ね」「道を開けるわよ。轢かれるわ」……メイドレさん達からの扱いがなんとなく分かるわ。


「数日ぶりねプリンセス・グレゴリウス。ここは貴女のホームだものね?」


──クリックに配置された【飢餓の爪傭兵団】の傘下ギルド【マツバキングダム】。

第20階層(ルガンダ)ではイベントのために一部メンバーが降りて来たけど、その一人だったのがプリンセス・グレゴリウス。元ヤンのお姫様。共闘したり、敵対したりしたけど……。


「丁度いいところに。王子様ん所案内してくれよ姫様」


「不敬〜! わたくし達、大絶賛敵対中ですのよ〜!」


「まぁ待て姫。無駄な時間を取るな」


そこそこ全身デカいグレゴリウスの影から出てきたのは、少し小柄な青年。(たてがみ)が逆立ったファーコートがサイズを誤認させてるけど、本体は結構細身みたい。


「──【マツバキングダム】ギルドマスターのマツバだ。王子、あるいはオーナー……勿論名前呼びでもいい。初めまして、ライズさん。メアリーさん」


頭は下げない。だが礼節を欠いているわけでもない。握手を交わして、マツバは足早に振り返り進む。


「すまないが話は歩きながらだ。時間が無くてな。そっちだって俺に用事があるだろう」


「……話が早いな。忙しいところをわざわざ顔出ししてくれたのか?」


「【飢餓の爪傭兵団】と【夜明けの月】の敵対は全傘下に通達しているが、どの程度の敵対かはわからんメンバーが多い。俺がいた方が面倒事も起きにくいと思ってな。

 こっちとしては敵対どうのはどうでもいい。てかそんな事気にしてる余裕は無い。【夜明けの月】には聞きたい事も知りたい事も山ほどあるからな」


文句(ゴタク)言うダボなんてすり潰せばいいのに。……ですわ〜」


「そうなるから俺も出る事になったんだぞ、じゃじゃ馬(プリンセス)

 それにライズさんはクリックにおいて"最高位ご主人様"だ。協力拒否こそすれ、危害を加えてみろ。メイドレ全員から嫌われるぞ。事業崩壊だ」


マツバが指を鳴らすと、冒険者2人とメイドレ4人がサッと現れて、巨大な(そり)を背負った……毛深いトナカイみたいな魔物が出てきた。


「クリックはかなり平面で広い。それに俺のホームは郊外だ。交通手段は豊富で、基本的に無料だ。気兼ねなく使ってくれ。

 あとさっき拉致されたお仲間さんにも俺の部下を飛ばしている。後で合流できるようこちらから伝えておくから安心してくれ」


テキパキと、トントン拍子に話が進む。焦ってるというか、めちゃくちゃ要領がいいのかしら。

ソリが発進。一面の雪景色に、氷の家がちらほら。


「あそこに見えるのが原住民メイドレ達の本拠地である氷の城ですわ〜」


「白と青、そして城の最上部で燃える赫の炎。アレがメイドレ達の原動力らしい」


「女王様でも住んでるの?」


「いや、メイドレ達に王はいない。だから誰かに奉仕するんじゃないかとか色々考察されてるが……ともかく。

 移動中なら落ち着けるな。改めて説明させてもらう。

 第10階層(ドーラン)で言うところの【鶴亀連合】よろしく、ここでもギルド連合が立ち上がっている。俺もその代表の1人だ。目的は利益利権というより……《拠点防衛戦》だな」


商人達が結託してドーランの商業を統べ、あまつさえ冒険者の攻略すら支配した【鶴亀連合】。でもそういう感じでは無いという事らしい。まぁ【鶴亀連合】の目的も《拠点防衛戦》だったんだけど。結果論よね。


「連合と言っても正式に提出しているものでは無いが。冒険者管理とクリックの自治を俺達【マツバキングダム】が、商業全般を【マッドハット】が。《拠点防衛戦》に伴う諸々の管理を【かまくら】ってギルドが取り仕切っている。【夜明けの月】の皆様は【かまくら】に顔を出して欲しい」


「なんか凄い勝手に話進んでるんだけど、そっちのメリットとか考えを提示せず行動を指示するのはどうなのよ」


「そうですわよ陰険チビ王子」


「テメェは今日は飯抜きだ。雪でも食ってろ」


「雪ではわたくしのプロポーションが保てませんわ〜! ステーキを所望します!」


「これ以上太くなる気か? 既に丸太みてぇな脚だろうが」


「無礼〜! 王子モテませんわ〜! 非モテ王子!童貞王子!」


「やかましっ。お前絡むと無駄話ばっかりで疲れる」


……別に【Blueearth】では食べ物で体型は変わらないのだけど。無意識に現実知識に引っ張られてるわね。


「……で、こっちのメリットか。確かに一方的過ぎたな。

 こっちは依然として変わらず、《拠点防衛戦》の決着を望んでいる。このまま《拠点防衛戦》で稼ぐ事もまた一つの選択肢だが……あまりに消費が激しすぎる。

 どうすればクリックの《拠点防衛戦》は終わるのか。その調査をライズさんの知識を以って解決して欲しい。それが狙いだな」


「【飢餓の爪傭兵団】と敵対してる件については?」


「《拠点防衛戦》を管理してるのは【かまくら】で、【かまくら】は飢餓傘下じゃない。フリーズ階層にいる間は俺も全面的にバックアップする。それでどうだ」


「……よし。話くらいは聞いてあげましょうかライズ」


「ギルドマスターの仰せのままに」


罠とかじゃ無さそうだし、とりあえず話は聞かないと。

そもそも現状の確認をしないと《拠点防衛戦》の解決なんてできない。目的も完全に一致してるし。

……ウチの可愛い嘘発見器(ドロシー)がいないのが不安だったけど。信用していいでしょう。


「良かった。さぁ辛気臭い話は終わりだ。到着したぞ」


郊外とは言ったものの、氷の城がまだ見える位置。

あたし達の前に現れたのは──巨大なドーム。


入り口でトナカイが停車。廊下を渡り、中へと入る──


「まぁ色々あるだろうが、折角だから楽しんでくれ! ここは俺の理想郷だ!

 欲しいものは何でも揃う、【Blueearth】最大の複合商業施設──《アイスライク・サプライズモール》だ!」


眼前に広がるは、巨大な吹き抜け。

上下5階はあろう空間に、メイドレやら冒険者やらがいっぱい。

──ショッピングモール!


「道具も服も、基本的な商業は【マッドハット】系列店とか、他の個人経営が好きにやってる。一日で満足させるつもりはないぞ!

 一番下、地下6階はここから見える通りのフードコートだ。ウチの直営店【グラトニーホール】が頭張って経営してる。

 渡り廊下を突き抜けた先は最高級ホテル【コールドスリープ】を筆頭とした宿区画だ。無論、【夜明けの月】滞在中は無償で提供させてもらう。これは協力の可否問わずだ。俺からの誠意と思って欲しい」


……困ったわね。めちゃくちゃ魅力に感じるわ。

ショッピングしたい。アイコと服屋巡りたい。我慢我慢。


「従業員は殆どがメイドレ族の皆さんだ。ドーランとかと違ってここまで来ると冒険者辞めて定住するって奴は少ないからな。だからメイドレに嫌われたらウチは潰れるんだよ」


「まーじでこの階層はメイドレさんがいなかったら何も出来ませんわ。マジ感謝」


「そして【かまくら】で《拠点防衛戦》参加登録をすると《アイスライク・サプライズモール》の全店舗で割引などお得な特典がたくさん」


「商売上手。でもその辺は【鶴亀連合】と変わらないわね。

 いいサービスで人数を確保するわけね」


「【Blueearth】で移動し続ける冒険者を操るならば、手っ取り早いのは商業だ。俺は【飢餓の爪傭兵団】の傘下だが、実質的には【マッドハット】にも頭が上がらない」


「とはいえ《アイスライク・サプライズモール》の起案者はこの王子。クリックで生活する上で王子に逆らえる人はいませんわ〜!」


……なるほどね。【マツバキングダム】とは仲良くしましょう。


「あ、ゲーセンあんじゃん。行ってくるわ」


「待てぃ自由人。もうちょっと大人しくしなさい」


(いやいやリーダー。今ゴースト達も人質に取られてるようなもんだぜ。遊撃隊が必要とは思わんかね)


クローバーから割と真面目な回答が来た。

確かに。あまり考慮する必要はなさそうだと思ったけど、クローバーなりに考えてるのね。腐っても最前線トップランカー。やるじゃない。


「うっひょーシューティングゲームあんじゃん血が騒ぐぜー!」


「いやアンタやっぱ遊びたいだけなんじゃないの?」




──◇──




《アイスライク・サプライズモール》B1F

【かまくら】受付


氷のカウンターで待ち構えていたのは──凄い露出度の高い受付嬢。眼鏡が知的だ。

酒瓶抱えてるのが気になるけど。


「いらっしゃいませ! 《拠点防衛戦》対策本部【かまくら】へようこそ! ……ってオーナー。それにグレちゃん」


「ちゃんと働いているようで何よりだ。素面の内に会えて何よりだよミーヤ。その重い荷物は預かろう」


「うぇー。私の命の水がぁ……」


当然のように酒瓶を没収される。そりゃそうだ。

不服そうながら、ちゃんと仕事はするようで。切り替えて美人受付嬢に変身した。


「……こちらは数日おきに発生します《拠点防衛戦》への参加受付となります。

 参加に必要な資格や現金などは一切不要です。情報共有や報酬贈与のためのデータ管理が目的ですのでご協力お願いします」


「……わかったわ。あたしがギルドマスターだから受付しとくわね」


メアリーが進んで行動してくれるなら俺はいいか。

……しかし《拠点防衛戦》受付ギルドなんて珍しいもんだ。


「【かまくら】は最近規模が拡大してね。ミーヤは【マツバキングダム】のメンバーなんだが、現在出向中だ」


「わたくしも稀に手伝いますわ〜! うるさくて摘み出される時も稀にありますが!」


……賑やかなもんだ。

ゴースト達もここに来ているらしい。どうやらどこかのメイド喫茶に呼び込まれたとかで。絶対後で行こう。


今日は《拠点防衛戦》も起きないだろうし、宿取ってのんびり観光かなぁ……なんて考えていると。


ぺそ。


お腹に誰かが抱きついてきた。

視界を下げると、白銀の毛玉。

……ではない。かなり小柄な──それこそドロシー以下、ジョージレベルに小柄な、長髪の少女が飛びついてきた。


「ら、ら、ライズさん! 見つけました……!」


顔を上げるその少女は──見覚えがある。


「ミカンか。久しぶりだな」


「また旧知の女? その子は流石に犯罪では?」


「いや違う違う。やめなさいメアリー」


もう何度目かの白い眼を受け流し、ミカンと目線を合わせるためにしゃがみ込む。


昔、それはもうお世話になったりならなかったりした……他の人とはまた違う、割と特異な関係。

だがミカンは間違い無く俺に敵意をぶつけたりはしない。そして久々の再会もどこへやらの大慌てだ。何があった?


ミカンは小さな口をぱくぱく動かして、なんとか伝えようと必死だ。




「リンリンちゃんが危ないの! 助けて、下さいー!」




〜【夜明けの月】は今日も仲良し④〜

《アイコと各メンバーの絡み》


・ライズ

かわいい。

自分の二面性に悩んでいるが、悩む時点でとても誠実な心を持っている事なので素晴らしいと思う。

自虐による自己認識の甘さがあるので、支えてあげたい。


・メアリー

かわいい。

立場にふさわしい自分になろうと努力している素晴らしい子。

めちゃくちゃ可愛いお人形さんみたいな服装がアイコのファッションセンスと合い、よくショッピングに行く。女友達、あるいは妹。


・ゴースト

かわいい。

メアリーの役に立ちたい一心でなんでもできてしまう危うい子。

食べ物……というか味覚の探究? が好きなようで、良く秘密の夜食会をする。肉体維持の栄養管理が必要無くなった今、スイーツをたくさん食べるアイコを知っているのはゴーストだけ。


・ドロシー

かわいい。だいすき。

壊れそうなほど思い詰めていたので助けようと依存先になる。最近はメアリーによって大分改善したので安心。

着せ替え人形にするくらい見た目が好み。異性として意識はしていない。が、そもそもアイコは異性に対して特別な感情を抱かない。性別ではなくその個人個人を観則し対応するので、"男性/女性だから""大人/子供だから"のようなレッテルで物を考えない。性欲も爆散している可能性がある。

だが最近の自分と向き合っているドロシーを見ていると何かキュンとくるらしい。恥ずかしいから言わない。


・ジョージ

かわいい。

尊敬するし畏怖している"最強の人類"。

現実でも関わりが少なくなく、その実力は誰よりも認めている。

それはそれとして、肉体どうこうより心の方が強いと思っている。全てにおいて完成された人間ってこうなるんだなぁ。私はまだまだだなぁ、といったレベルの高すぎる感覚を持つ。


・クローバー

かわいい。

ゲームが上手い人は凄いなぁ。くらいの距離感。

個人的に悩める子羊を導く事が多いアイコにおいて、人生観が割と完成されていて悩む事が少ないクローバーとは関わりが薄くなる。

肉体の使い方を教わりに来たので、体格の大きい相手として練習相手になる。

あれでいて真面目な人です。

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