表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BlueEarth 〜攻略=世界征服〜  作者: まとかな
地底都市ルガンダ/ケイヴ階層
74/507

74.追憶の機械兵

──9:35

【第27階層ケイヴ: 嘆きの縦笛】突破


──13:16

【第28階層ケイヴ: 震える大地】突破


──16:45

【第29階層ケイヴ: 蟲神の祭壇】到達




「いるわねぇ」


「いるなぁ」


眼前で荒れ狂うは神蟲.《ミドガルズオルム》。遠くに見えるは機械城.《ガーディアン・オブ・ロスト》。


──【スキャン】情報──

《追憶の岩塊 ガーディアン・オブ・ロスト》

LV50 ※フロアボス/スキャン済

弱点:

耐性:水/火/風/雷/光/闇/斬/打/突

無効:地

吸収:地


text:何処からか流れつき、既にいない主を守る虚無の城塞番兵。

10種のセキュリティゲートを保持しており、9属性の耐性と機械兵工場を担っている。

セキュリティゲートを破壊すると対応する耐性が弱点になるか、機械兵の出現が止まる。

ゲート破壊後は自己修復機能でゲート回復を狙うが、その間は攻撃の手が緩む。

ゲート破壊率が60%を超えると全ての装甲を破棄し、継続回復状態で暴走する。

──────────────


「今更だが、イベントってのは超巨大な【ギルド決闘】みたいなもんだな。階層データそのままコピーして舞台にしたんだろ。コピー元は侵入禁止にして、終わったら全員ルガンダにワープさせてコピー階層は削除……って感じか。

 だから数日前に倒したこいつらがピンピンしてるんだろうな」


「まぁコピー世界のミドガルズオルムも討伐というより追い払ったって言う方が正しかったがな。この先の階層のもそうだけど、基本的にレイドボスは不死身なんだよ。こういう時に辻褄合わせるためなのかもな」


つまりはあそこで好き勝手壁を食べ散らかしているのは別個体……なのかしら。


「どうするリーダー。前回やったように俺が潰そうかー?」


「今回はクローバーもバーナードさんも抜き。あと……事前情報あるしエリバさんもライズもゴーストも抜きにするわ。

 前衛はあたしの【チェンジ】でアイコさんを近いところまで飛ばしてタゲ向けるわ。そのまま東へ旋回して北へ回って。

 速度のあるナンバンさんは東、ジョージは"まりも壱号"で一手遅く西へ。あたしは正面から。ドロシーは射程範囲ギリから()()()()。OK?」


「了解です」


前回はクローバーが瞬殺しちゃったけど、スキャンは済ませてある。対策は立てられるわ。

合計10のセキュリティゲートを全て撃破しながら本体を叩く……というのは効率が悪い。単純計算だけど、セキュリティを6つ破壊すると暴走モードになるみたい。

つまりは破壊するゲートの取捨選択。まず"魔物発生"で一つ、アイコ(素手)ジョージ()用で"打撃"、ジョージ(片手剣)用の"斬撃"、あたしとナンバンさんの魔法攻撃で"氷属性""炎属性"。この5つだけ破壊するのがベスト。


「じゃあ行くわよ。【セット】……【チェンジ】!」





──◇──




メアリーちゃんの【チェンジ】で《ガーディアン・オブ・ロスト》の正面へ。距離はまだ200mくらいはありますね。


向こうはこちらを認識したようです。私の役割は陽動。早速任務を果たすとしましょうか。


──手に持った線香の煙が、一筋に立ち昇るイメージ──


「──【瞑想】」


赫の"仙力"が滲み出る。これを薄く、薄く広げる。

【瞑想】状態の間は身体能力が向上するみたいですが……"能力で底上げした基礎身体能力"にも上限があるようです。


【Blueearth】冒険者の身体能力最低保証ライン<バフで底上げした身体能力の限度値=通常ジョージさん<私<リミッター解除ジョージさん<現実ジョージさん

……くらいの差がありますので、私には"仙力"による身体能力向上の恩恵が無く。ただ全身がダメージ判定となる点のみを利用するので、赫の"仙力"は薄く薄く、できるだけ長く保つ事のみに集中します。


こちらを補足した《ガーディアン・オブ・ロスト》。範囲内には今は私しかいません。手早く背後に回りたいところですが……まずは攻撃させてこちらに集中させたいですね。


──肩と呼ぶべきでしょうか。パーツが外れて……ミサイルがたくさん飛んできます。


これ現実だったら流石に無理ですねー。

とはいえこれは【Blueearth(ゲーム)】。投石程度の速度でしかありません。無論至近距離では避けきれませんが──軌道を視認できれば回避可能。


メアリーちゃんとゴーストちゃんなら計算で、ジョージさんは肌感覚で着弾地点を予想できるんでしょう。

ドロシーちゃんは"理解"できればあるいは、でしょうか。

クローバーさんはどうでしょうか。ゲーマーさんの反射神経と瞬発力は本当に凄いですから、もしかしたら容易く回避するのかもしれません。

ライズさんは……あの人は、当たってもいいように立ち回りますね。自分の身体能力を過信しないところがありますから。


──蒼の"仙力"を帯状に長く薄く伸ばし、遠方の岩を掴み収縮。

課題である機動力を、蒼の"仙力"でカバー。ミサイルを回避し、後半分といったところですか。


流石にまだエリバさんのように上手く使う事はできません。

蒼の"仙力"は繋がっている限り操作可能ですが、その操作に思考を割かれてしまいます。故にエリバさんは矢の形状とし、自分から切り離し思考スペースの節約を図っていました。

私の場合は機動力のみに特化させていますので、"伸びる""掴む""縮む"の三つの指示だけを与えます。教えの通り、あまりここに思考を割くのは得策ではない──今この瞬間も、限界まで抑えている赫と翠の"仙力"が溢れそうになっています。


──あ、回避しきれませんね。蹴り堕としましょう。


よしよし。現実(リアル)なら即死でしょうが、私はしがない空手家兼タレント。そんな経験無いので無理なく動けます。


そう。現実の知識がある事は必ずしも利点とはならない。特に銃とかは、無縁な日本人でも向けられたらびっくりしてしまいますからね。

そこは私とジョージさんの出番。ですが、ジョージさんは肉体に制限がかかってますので──肉体労働は、私の役割です。


私は役に立ててますか、メアリーちゃん。




──◇──


「あの蒼の布みたいな遠距離武器強いなぁ。武器ってかほぼ移動手段だけど、ちょいちょい非接触迎撃手段としても使ってるな。クローバー(ゲーマー)的にはどう見る?」


「いやぁアレは凄ぇぞ。【Blueearth】にゃ"伸びる""掴む""縮む"なんて挙動する武器もアイテムもスキルも無いんだぜ。つまり未知の挙動未知の感覚を自力で理解できるんだぞ。俺がマニュアル銃撃できんのは(現実にいた頃本場(アメリカ)で)練習してたからだぞ。しかも【仙人】になって日も浅いってのにどうやって慣らしたんだ?」

(バーナード(現実記憶無し)がいる手前言わなかったが、勿論現実にもそんなアイテムは無い。VRゲームのアドベンチャー系とかのギミックとかではあったなー。じゃあ使えるかって言われたら……まぁ練習くらいさせてほしいなぁ)


「【仙人】として言わせてもらいますけど、あんなの普通できませんよ。僕が蒼の"仙力"を矢にしてるのも(【Blueearth】では)身近でイメージ付くからで、ただ真っ直ぐ飛ばしてるだけですよ。存在しない道具使ってワイヤーアクション再現できるのなんなんですか」


「……遠距離攻撃はあれど肉弾戦で素手という致命的なリーチの無さが【仙人】の弱点ではある……。

 そも前衛で戦いながら回復を配列で出来る点が唯一無二の長所であるからして……比較的役割の薄い遠距離攻撃を捨て、移動or引き寄せで実質"広範囲の近距離戦"を仕掛ける事ができるのなら……そっちの方が強そうに見える。

 ……いかがお考えか、《最強の仙人》……エリバ殿」


「そりゃあ勿論今からでも練習ですが……アレはアイコさんの基本スペックに依存しているようにも見えますね。僕がやっても身体強化()伸縮武器()でこんがらがってミスしそうです」


「やっぱアイコすごいな。頼りになるわぁ」




──◇──




──アイコ、《ガーディアン・オブ・ロスト》北方50m到達(蒼の"仙力"射程圏内)


──タルタルナンバン、東方100m地点到達


──ジョージ、標的西方25m地点到達


ドロシーとあたしも準備完了。初めての超大型魔物戦。言葉が届かないから、チャットで連絡を取り合う。


[メアリー]:

『まず潰したいのは"魔物召喚"のゲートね。判断基準ある?』


[タルタルナンバン]:

『ゲートは基本的に弱点属性以外無効化しますが、一度衝撃を受けると対応色が浮かび上がります。雑に範囲攻撃で炙り出す手がありますね。"魔物召喚"はほっとけば魔物が出てきますが』


[アイコ]:

『きた てき でません』


[ジョージ]:

『こちら西方。この距離での攻撃のパターンは把握したよ。ゆっくり作戦を練ってほしい』


……うん。じゃあ早速やりますか。


「行けるわねドロシー」


「はい!……行きます!」


《ガーディアン・オブ・ロスト》がデカすぎて収まりきらないけど──赤い光円が出現する。


何度か練習したし、今回はダメージはそこまで求めていない。クアドラ化の必要もない。


「──48%……っ、【サテライトキャノン】!」


天から降り注ぐ光の柱。斬撃突撃打撃に属さない無属性──"魔物召喚"のゲートのみダメージが通り、全身のセキュリティゲートを発光させる!


[ジョージ]:

『標的腹部に赤色、これが炎属性かな? 右肩に十字マーク。多分アレが斬撃対応かな』


[タルタルナンバン]:

『標的背面に氷属性のゲート確認しました』


[アイコ]:

『右肩甲骨あたり まものでるやつ こわれてるます』


[メアリー]:

『左後頭部に打撃っぽいマークあるわね。これで目標は全部ね』


そして機械兵はドロシーを脅威と認定し、体をこちらに向ける。対応を考えると──


[メアリー]:

『アイコは背中から登山して"打撃"ゲート破壊

 ジョージは行けそうなら登って"斬撃"ゲート狙い、無理そうなら南下してあたしの代わりにタゲ取り

 ナンバンさんは南下合流、腹部の"炎"ゲート破壊

 位置的にあたしが背面にはいけないから"氷"ゲートは捨ててるわ』


《並行詠唱》していた魔法を構える。ドロシーを向いたって事はダメージ無くても脅威優先で動く。バッチバチに魔法撃ちまくって釘付けにしてやるわ。


「──【風花雪月】!」


1番派手でデカい魔法を、精度度外視で放つ。的がデカいと楽でいいわね。


「お待たせしましたァ! 忍法【火遁:鳶緋鍼(トビヒバリ)】!」


合流してすぐナンバンさんが【風花雪月】を目眩しに、腹部"炎"ゲートを破壊。これで本体に火属性が通る。


「──充分時間は有り余っていますね。ていっ」


蒼の"仙力"で機械兵の肩まで飛び乗ったアイコが、そのまま回し蹴りで"打撃"ゲートを粉砕。


「……流石にリミッター付きで空中機動は無理だなぁ」


[ジョージ]:

『"斬撃"ゲートは諦める。鞭で打撃戦に移るよ』


[メアリー]:

『お願い。じゃあ全員攻撃に回って』


あたしとドロシーは通用する攻撃が無いから、ドロシーにタゲ取りを任せて──


「【チェンジ】──飛びすぎっ!」


機械兵の認識外、後方上方へ転移。

──見える、水色のゲート。狙いを定めて──


「──【アイスショット】!」


"氷"ゲートを撃ち抜く。そのまま自由落下だけど【チェンジ】では落下ダメージを受けない──


「あ、やべ」


機械兵の左腕が、ぐるんと回ってこちらを向く。

人間じゃないんだ。関節なんて生ぬるい事言わないわよね。

巨大な拳がこちらを狙う──


「──蒼布!」


間一髪。アイコの蒼の"仙力"があたしをキャッチ。なんとか攻撃を回避できた。


「大丈夫、メアリーちゃん」


「いつもありがとね。仕留めるわよ!」


「……そうですね。ボッコボコです!」


……物騒になったわねアイコ。






──19:50

《追憶の岩塊 ガーディアン・オブ・ロスト》討伐



~クローバーの詳細~

《ライズの愚痴帳》


クローバー──最強の男についてを書き留める。


改めて、クローバーの戦術は"手数による確定クリティカル連打"だ。

攻撃力をちまちま上げるより、アビリティなどでクリティカルダメージそのものを倍加した方が効率がいい。

相手の攻撃は受けなければいい。

速度は移動速度より攻撃速度の方がよっぽど重要。

なのでレベルアップボーナスは全てクリティカル確率(ラック)に振っている。


さて、そうなると外付けの強化が必要になってくる。

愛用の三連銃【地獄の番犬(ケルベロス)】はかなり強化されており、俺も優先して強化するようにしている。

元よりレベルが頭打ちである現状は武器で火力を補填するのが常識だ。その常識に早いうちから気付いていて、この戦法なのだろう。


ただ、それだけだと火力に心配が残る。そこでクローバーは銃弾にも強化をかけている。

これ、正気じゃない。消耗品も強化はできるが、使い捨てだ。もったいないという話ではない。

しかもクローバーは本気を出すと秒間1000発、つまりインベントリ1枠1秒の速度で消費する。それを強化とか頭おかしい。

弾丸自体は質より量のようで、市販品での最高級品の大量購入している。消耗品は強化による威力上昇幅が大きく設定されているからか。

ちなみに弾丸の強化基準は+4。一個あたり9個の弾丸を強化に使うので……秒間1万発の弾丸が消えている計算だ。やばい。


上述の通りインベントリは即ち戦闘時間に繋がる生命線だ。インベントリ拡張機能のある防具で補っている。

防御性能は大きく落ちるが、そもそも攻撃を受けずに倒す速攻戦術だ。

現在のクローバーのインベントリのうち、弾丸用のものは120枠。フル戦闘2分。常に120万の弾丸を持ち歩いている。やばい。


戦法の基準、クリティカル威力増加の条件の多くは"ターゲットロックオン"を条件としている。

俺がやったようにロックオンを外す術は存在するが、そうなるとクローバーは点攻撃から面攻撃へ移行。素のラック値に物を言わせて広範囲にクリティカルをばらまく。

そして手ごたえあればそこに集中砲火。なんだこれ地獄か?


とまあこんな感じで、戦術自体は予想外の方向であるものの現実的で再現自体はできるが、資金的にも戦闘難易度的にもとても真似できない、クローバー専用戦法である。

そもそも敵の攻撃を全部避ける前提ってのがおかしい。


現在、【夜明けの月】の資金運用はほぼ弾丸購入費になっている。地下大倉庫の一角を占有している状態だ。

クローバーは弾丸の保管が出来て嬉しいと言ってくれるが……。

【朝露連合】の鍛冶師たちに依頼しているが、生産速度が追いつかない。何とかならんもんか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ