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BlueEarth 〜攻略=世界征服〜  作者: まとかな
地底都市ルガンダ/ケイヴ階層
72/507

72."ディスカバリーボーナス"

──12:44

【第21階層ケイヴ:カミサマの通り道】通過


──16:52

【第22階層ケイヴ:ドワーフ坑道】通過


──20:35

【第23階層ケイヴ:緑の地底湖】




──【スキャン】情報──

《クリアサーペント》

LV100※スキャン済

弱点:

耐性:水

無効:地

吸収:地


text:地底湖を縄張りにする《ケイヴワーム》の変異種。若く尖ってる時代。次代の《ミドガルズオルム》となるべく研鑽を積んでいる。湖の暴れん坊。ドワーフからは(単純に《ケイヴワーム》の変異種と思われてないのか)討伐してもお咎めなしである。

近くにいる生物に襲いかかる習性があるため、誘導中に他の魔物にターゲットをすり替える事が可能。基本的は交戦は非推奨。

─────────────


地底湖のど真ん中。

"まりも壱号"水上水車モードで最短経路を航湖中。


襲い来る近道許さないマン《クリアサーペント》に襲撃されるが──


「ははっ、楽勝楽勝!」


湖上を彩る光の絨毯──派手すぎるクリティカル演出で魅せるは"最強"のクローバー。


「安い弾ではないだろうに……温存しておけ……!」


バーナードさんは《クリアサーペント》の背を乗り継ぎ、大砲の反動で空中へ飛ぶ──


「……一網打尽だ……【ドロップアンカー】!」


大砲の雨で大蛇を捉え、狙いを済ませて巨大な錨を撃ち落とす!


2人のカンスト(レベル150)にかかれば、ギミックボスも雑魚敵扱いね。


「……実際、現在の最前線の魔物レベルは150超えばかりだ。100レベルなどソロでも余裕だとも」


「長く連携してきたクローバーと一緒ならミドガルズオルムだって勝ちの目はあらァな。まぁ俺は1人で勝てるが」


「……ちなみにバーナード。初期装備でスキル禁止で片手オンリーでミドガルズオルム討伐できる?」


「無理だ。 ……だがまぁ一応便宜させて頂くならば、クローバーはそもそも()()()()()()の戦法だ。その縛りならば……まぁ……比較的被害は少なくだろう」


そりゃ無理よね。良かった。最前線はこのくらい余裕、とか言われたら困ってたわ。

でもバーナードの言う通り、クローバーの戦術はかなり特殊。基本的にダメージソースとなる攻撃系スキルは一切使わずに通常攻撃のクリティカルダメージで戦っているのよね。

理由は明白だけど。その方がダメージが多いからでしょう。

スキルは人間に不可能な動きや速度を実現してくれるけど、良くも悪くも決められた動きしかできない。

ダメージ演出の長さの問題は、ブックカバー戦でライズが【デスペラード】を【スイッチ】でキャンセルしたり、スカーレットが【デスペラード】を身体ごと無理矢理捻じ曲げたり……解決手段や対抗策はこれまで色々あったけど。

クローバーにとってはそもそも、攻撃スキルは時間対ダメージ数効率が悪すぎるんでしょうね。秒間1000発の弾丸をぶち込むイカれた通常攻撃ができるんだから当然だけど。


「今日は24階層まで行ったら終わりかい、ライズ君」


「そうだな。俺もバッキバキに壊された武器の修理をボチボチやらなきゃいけないし、明日からは進むペース落とすか。んじゃー対岸まで頼むぞジョージ」


「相わかった。そぅれ"まりも壱号"発進!」


……ライズの武器は──切り札の【朧朔夜】を含めて──メジャー所は全部、昨晩のクローバー戦で破壊されている。今日は戦闘をほとんど周りに任せて、自分は臨時用の癖の強い装備でその場しのぎをしていた。


今更だけど。すっごい今更だけど。絶っっっ対に【朧朔夜】って一番強化させるような武器じゃないわよね。

抜刀に条件がある上にたった一度しか使えないとか、イカれてるわよ。フツーに使える武器強化しなさいよ。


……まぁなんかこう、拘りみたいなもんがあるんでしょうけどね。男のロマンってやつ?

効率厨なのかロマンチストなのか。そういう所、嫌いじゃないけどね。




──◇──




《【夜明けの月】のログハウス》ロビー


ンどうも! 【井戸端報道】新人記者タルタルナンバンですゥ!


【夜明けの月】の代名詞! 階層攻略と王国クエストの同時消化によるデスマーチ! 2回目の参加ですゥン!

今回はバーナードさんとクローバーさんがいましたのでかなり負担が減りましたが、役に立たねば取材はできぬ。全力で取り組ませて頂きましたァ!

疲れているのもありますが! 門外不出(無自覚)の機密爆弾保管庫ライズさん、現役最前線【真紅道(レッドロード)】の初期構成員バーナードさん、謎に包まれていた渦中の"最強"クローバーさん……。

この人たちが喋ってるのをメモするだけでもすんごい情報になるので! 本日はインタビューはおやすみです!

ふっかふかのソファ! マンゴージュース! メモ! ペン! 準備万端!


「"取材"終わったらベッドで寝なさいよナンバンさん」


お気遣いありがとうございますメアリーさん!


現在ロビーには、件のクローバーさんとバーナードさんがテーブルで晩酌中。そして鍛治台にライズさん。それを見守るエリバさん。

ウチの隣のソファにゴーストさんとメアリーさん。錚々(そうそう)たる顔触れェ!


「……ライズ。一つ土産話を持って帰りたい。聞いても?」


「あー? なーにー」


「"ディスカバリーボーナス"というものがある……。

 連続するクエストのうち、最初の方のクエストを初めてクリアした冒険者のみに……次のクエストの開始条件のヒントが与えられる……という」


……いきなり、知らない話ですねェ!

クエスト。今やウチのような一般冒険者が辿り着ける階層のクエストなんて先人が調べ尽くした後ですので、そんなボーナスがあるなんて思いもしませんでした。

連続するクエストと言えば、ライズさんが今打っている片手剣【月詠神樂(ツクヨミカグラ)】は入手するにあたって幾つもの無茶難題クエストを突破しなくてはなりません。これにもディスカバリーボーナスがあったのでしょうか。


「……その存在に気付いたのは第70階層(ヒガル)を越え、セカンド階層へと辿り着いてからだった……。

 何故なら……それまでの全ての連続クエストは、ある男が独占しており……そいつは"ディスカバリーボーナス"を秘匿していたからだ」


「ひでーやつもいたもんだなー」


「……お前だ!……いやまぁ、情報もまた武器、そして財産。そこを責めるつもりはないんだが」


「わりー。何も考えてなかったわそれ。常識だと思ってたわ」


「ライズ面白いなー。んで、それでどうしたんよバーナード」


クローバーさんは……なんか……虹色のジュースを飲んでいる。何味なんですかアレ。本人もわかってなさそうですけど。


「……連続するクエスト……間違い無く、連続していなければならないクエストは、明白だ。

 ……レベル上限突破クエスト。100の壁を突破したように、150の壁を突破するクエストも必ず存在する……」


今朝の話でもありました。レベル上限突破はライズさん待ち、即ちライズさんの武器であると。


「もう既に持っているんじゃないか? ……次の上限解放の"ディスカバリーボーナス"……!

 もしあるのなら……話が変わってくる。その情報を求めて……セカンドランカーがお前を狙うだろう」


「トップランカーこそ狙ってくんじゃねーの? 欲しいだろその情報」


「……我々は、現段階で最前線にいる。……結託さえすればまだ先へ進めない事もない。同じ前提ならばまだ我々に及ぶ者はいない……。

 ……恐れるべきは後続……セカンドランカーだけが上限を突破した場合だ。

 無論我々も知りたいが……必死さで言えばセカンドランカーの方が求めているだろうな……」


成程。これまでは"単にライズレベルの勘が無いと見つけられないクエスト"と思われていたからライズさんが自力で上位階層に辿り着いてもらわないといけなかったけど、もし"誰でも見つけられるかもしれないヒント"があったとするならば……!


「そうだなぁ。ハヤテは何も言ってないんだよな?」


「はい。僕も今言われて気付きました。確かにそれはあり得ますね。どうなんですかライズさん」


「答えればどっちに転んでも禍根が残る。答えない方が懸命だな。なぁメアリー」


「んー? あぁ、アンタの好きにしていいわよ」


「あいよ」


ライズさんがメアリーさんにわざわざ確認を取ったのは──【夜明けの月】としての行動・利益に繋がるから。

ライズさんとメアリーさんはかなり建前を大事にするお方ですので。しかし慣れ親しんだ受け答えには安心しますね。

ライズさんは不敵に笑って──




「──あるぞ。"ディスカバリーボーナス"。そのものズバリの大ヒントがな。【ダーククラウド】に持ち帰ってセカンドランカーでの武器にしてくれエリバ。俺からのプレゼントだ」




……あるんですか!?


これは、これは大変な事です!

それはつまり、内容は不明ですがライズさん──【夜明けの月】のみ保有する超重要機密事項!

この情報一つで億万長者とかどころではない、命を狙われてナンボの呪いじみた情報ですゥン!


「うひゃー流石ライズ。面白ぇ〜」


「……あ、これオフレコですね。タルタルナンバン筆を置きますね」


「良心的で懸命な記者で助かるよホント。聞き分け良すぎない?」


「根っからの記者ではないので……。あとこの状況で広まったら原因がウチ……私って丸わかりなので」


ライズさんはセカンドランカーからもトップランカーからも狙われる覚悟をしておりますが、ウチにはそんな覚悟は無いのです。

……そんな弱いウチでも、【夜明けの月】を守りたいなぁ、なんて思うのです。


「内容は教えないが、俺が知っているという事、ハヤテもツバキも知らないって事。ここまで広めてくれエリバ。

 土産はこんなもんでいいかバーナード。これでも結構大出費なんだが」


「……いや、むしろお釣りを返せん。後日【真紅道(レッドロード)】として何らかの返礼を用意しよう……あわよくば教えてもらいたいが」


「そこまでは言えないなぁ。まぁ"知ってる"事実だけでも美味しいだろ? ()()()()()()()()()()()()


「……よかろう。団長が暴走するかもしれんが、いい感じに流してくれ。長い付き合いだろ……?」


何やら悪い顔をしているお二人。クローバー氏はずっと笑っていますが、はてさて?


「あー……つまり、ライズが"ヒントを持ってる"事をセカンドランカーより先にトップランカーに広めようとしてるのよライズは。

 そうすればセカンドランカーに襲われた時、理由がトップランカーにもわかるでしょ。もしライズがセカンドランカーに漏らせば一気に不利になるのはトップランカー。だから仲裁に来てくれるよね? って事よ。

 それに対してライズはバラしてもバラさなくても本人が知ってるから痛手にはならないし。そういう話よ」


「answer:バーナードの質問は誘導尋問です。"ディスカバリーボーナス"は間違い無くあるとした上で、確認しただけでしょう。ライズが返答を誤魔化すと踏んでの質問です。

 返答さえされなければバーナード以外は"公的な確信"を得られず、バーナードだけが確信を持って情報を独占し持ち帰ることが可能でした。エリバや貴女がこの情報を持ち帰ったとしてエビデンスが無いので。

 ライズはそこを考慮し、カウンターとしてエリバ経由で全体に拡散しようとしています。トップランカーに周知され、セカンドランカーにエリバが周知した後であれば掲載しても問題ないと判断します」


お、おお……すごいですね。今の会話でそこまでの読み合いが展開されていたとは。

そしてそれを鍛治片手間に、あるいは酒をあおりながらやるとは。恐ろしいですね。


「……ははは。今回は俺の負けだ。ペナルティでも払おうか?」


「んじゃあ一杯イッキしな。俺製"最強"ケミカルハイボール」


「……俺はノンアル派なんで、悪いな」


「だと思ってノンアル版にしてあるのがこちらだぜ」


「ぐぅ……形容し難い匂いがする……!」


あぁ、みんなの憧れの無口系紳士バーナードさんと"最強"がまるで男子学生のごとき悪ノリを……。




〜【夜明けの月】は今日も仲良し①〜

《ライズと各メンバーのログハウスでの絡み》


・メアリー

熟年夫婦。口喧嘩はプロレス。でも相手が傷付いてるかも……とかお互いに心配する。最近は通訳(ドロシー)が間に入って双方のメンタルケアをしてくれている。

本質的にお互い大好き。娘だ恋人だというより、ノリが近い同級生感覚。でも本当にそんな感覚で接していると相手が未成年の少女である事を忘れてしまいそうで怖がって変に距離を取ったりする。

お仕事や悪巧みの時は普段のプロレスは控えて真面目に話す。二人がこのモードになると手が付けられない。


・ゴースト

親子。当初はライズのストライクゾーンど真ん中をハーレーで爆走しているかのような存在で風紀的な心配もされていたが、もうなんか親子みたいになってる。というかゴーストがみんなの娘。

それはそれとしてその姿誉高く、素直に興奮する。性癖ドンピシャ従順メイドへの劣情と娘への庇護欲がいつも脳内で殺し合う。最近は専ら庇護欲が勝ち越している。


・アイコ

表面上は苦手と公言しているが、ライズにとって希少な頼れる大人の女性で、やや母性を感じている。

歳下にバブみを感じてオギャるのはヤバいと思っているので若干反抗期。

それはそれとして、アイコが歳下特有の無茶をする時はライズがストッパーになる。何故なら他の大人組は常識が無く止められるのがライズしかいないから。


・ドロシー

最初の同性の仲間。見た目美少女だが、もっぱら弟扱い。ライズは無意識だが、相当甘やかしている。

メアリーと違い、ドロシーの"理解癖"は個性の一部と見るようになった。良い意味で特別視していない。ただの若い男の子としてしか見ていない。

実は最初の頃は性自認が女の子なのではないかと不安になり大浴場を拡張したのだが、後にそれを"理解"したドロシー自身の説明によって誤解が解ける。ドロシーと稀に一緒にお風呂に入る。


・ジョージ

中身は年上のおじ様、身体は年下女児。最初は扱いに困ったが、最終的に仕事の同僚くらいに収まった。

それはそれとして愛妻家で愛娘家なお父さんは最高だと思っている。大人の男として尊敬しているし、娘さんを見つけられたら脱退もやむなしと思っている。その辺の家族関係の問題の相談は何でも受けてあげたいし、家族愛による買い物なら財布の紐を引き千切る所存。


・クローバー

以外とノリが近い同世代。尊敬するプロゲーマーなので少し気後れはするが、クローバーから絡んでくるので割と確執は無い。

【Blueearth】というゲームにおいては、ギルド内で唯一の格上。学ぶ側として指導を受けたりしている。

凝り性な所が特に気が合う。

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