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BlueEarth 〜攻略=世界征服〜  作者: まとかな
地底都市ルガンダ/ケイヴ階層
71/507

71.仙人も助走付けて殴るレベル

──────────

パーティ 10/10 ▼[レベル順]


【ラピシュ:   クローバー:150】

【ヴァイキ:   バーナード:150】

【仙人  :     エリバ:141】

【スイッチ:     ライズ:115】

【リベンジ:    ゴースト: 99】

【ニンジャ:タルタルナンバン: 61】

【仙人  :     アイコ: 52】

【エリアル:    メアリー: 52】

【ビースト:    ジョージ: 52】

【サテライ:    ドロシー: 51】

──────────


《【夜明けの月】のログハウス》ロビー

──朝7:45


「当日の内に帰ってくるとは思わないじゃん」


当たり前のように朝食に参加するエリバとアイコ。昨晩【仙人】になるために旅立ったばかりだが……。


「まぁ朝までに帰れという指令は守りましたよ。アイコさんだとヌルゲーでした」


「早速実践訓練したいですね。メアリーちゃんにもよく見てもらって作戦に練り込んでもらいたいです」


今日の朝食はでっっかいハムエッグサンド。クローバーが突然マニュアル操作で作り始めた時は少し不安だったが、ちゃんと美味い。

パンパンに詰まったエッグサンドが好きらしい。レシピに無い個人の自由なアレンジはマニュアル操作するしかないから、この趣味嗜好はクローバーに記憶が戻ってこそだな。


「貴重な先人もいるし参考にさせてもらうわ。結局【仙人】って何ができるの?」


「範囲攻撃以外は何でもできますよ。【バトルシスター】や【悪魔祓い(エクソシスト)】は攻撃と回復が同時に出来ないので支援も戦闘も一歩遅れてしまう弱点がありましたが、【仙人】は常に3種類の"仙力"を操る事ができますので同時に攻撃と回復を行う事ができます」


「……単体完結のジョブだ。チームを組んでもソロで行っても問題ない優秀なジョブで……しかし母数が少ないので魅力が通じにくい。

 ……当然、【真紅道(レッドロード)】はその強さを理解している。これはあくまで例え話だが……アイコが【真紅道(レッドロード)】に加入したいと言うのなら、かなり破格の条件で受け入れるだろう。それほどまでに希少で有用だ……」


バーナードはホイップ盛りまくりのフレンチトースト。ファンシーすぎないか。

とかく、【真紅道(レッドロード)】の初期メンバーにして重鎮であるバーナードのお墨付きだ。そんだけ有用なジョブってことだな。


「武器を持たないなら攻撃力判定はどこから出てるの?

 あと種類的には何攻撃なの? 物理なのか魔法なのかわかんないんだけど」


「武器は"仙力"で代用するんだけど、判定的には自身のステータスそのものに倍率が乗る感じだね。"仙力"を鍛えると倍率が上がるよ。

 種類的には物理と魔法の中間だね。比率半々」


「……武器とかの外付け強化もできなければ、レベルアップボーナスも火力のみ見ると事実上半減するわけね。しかも本体ステータスは上限が決まってる。かなりステータスとしては厳しいものがあるわね。

 その辺どう? 最前線のバーナードさんとクローバーの意見を聞きたいわ」


「……そう言われると確かに頭打ちだな……だが、まぁそれでも欲しいな。特に【夜明けの月】の所なら」


「それ俺も思うぜー。むしろメリットになるよな?」


はて。どういう事だろうか。

メアリーの言うように、【仙人】は今後──最前線に近付けば近付く程に弱体化するジョブのようだが。


「……なんせ頼みの綱のライズがいる。お前なら易々と見つけてくれるだろう?……レベル上限突破の手段を。

 むしろ早くして欲しい。こっちは"お前待ち"だ……」


「そうだぞライズ。ぶっちゃけ野生の雑魚でもソロじゃ厳しいくらいのレベルなんだ最前線は。はよしろ」


「我々【ダーククラウド】もリーダーが元【三日月】というだけで結構優遇されていますからね。そのくらい影響あるんですよ、ライズさんの存在は」


「ははは。おだてるのが上手だ」


「こいつの自己肯定感どうなってんだリーダー」


「馬鹿なのよ」


心外。

……レベル上限突破。レベル100で打ち止めだった【Blueearth】の天井を、それはもう回りくどい方法で遂に突破したのは遠い昔。

【夜明けの月】は最前線ギルドとの【ギルド決闘】権を得るために良質なメンバーを集めているが……最も手っ取り早いカードはある。

──レベル150の上限を突破する、二つ目のレベル上限突破手段の獲得。

これを俺が選択肢の一つとしてカウントしていないのは、"辿り着くまでに誰かが見つける可能性がある"からだった。

俺は第79階層以降(セカンド階層)に踏み入れた事が無いし、今は当時の俺と似たような事をしている階層探究ギルド【草の根】もある。強みにするにはあまりに脆いと考えていた。


「……ま、もし見つけたら独占するけどな。レベル200のクローバーとか無敵だろ」


「俺は逆に今のレベルで200レベルの奴と戦いたいんだがなー。縛りプレイ楽しいぜー」


……ヌルゲーはダメか。まぁ見つけてからでいい話だな。


「さて、改めて今日からのデスマーチの話をするか。

 《巌窟大掃除》は特殊な【ギルド決闘】みたいなもんで、29階層にはまた《ガーディアン・オブ・ロスト》が待ち構えているしミドガルズオルムも健在だ。……クローバーがいれば全部撃退できるだろうが」


「王国クエストの回転率を上げるのに使い潰すつもりはあるけど、そういうので頼りすぎるつもりは無いわ。クローバーやライズありきのギルドになりたくないから」


「えらい。四葉ポイントをあげよう」


「いらん」


「あはん」


仲良いなこいつら。




──◇──




【第21階層ケイヴ:カミサマの通り道】


「今回は《巌窟大掃除》で29階層まで一度行った事あるからね! さっさと行くわよ!」


「さっさとね。ちなみに今から大体800体くらい魔物を討伐します」


21階層はとにかく魔物が多い。ここで数物のクエストを消化して、後半の入り組んでるところのクエストは討伐系を減らす……というのが今回の作戦よ。


「ドロシーは【サテライトキャノン】の訓練。ライズ付いてあげて。あとは速度あって巻き込まれにくいナンバンさんも。

 クローバーとバーナードさんはどっちもソロでいいわよね? ジョージはゴーストと組んで。

 アイコはエリバさんと【仙人】の練習ね。囲まれた時に対応できるあたしが付くわ」


「りょーかい。多分かなりの速度でクエスト達成するから各位再受注忘れないでくれよな」


……カンスト二人ってのは初めてね。どんなもんかしら。


「バーナード。競争しようぜー」


「……ほう。範囲攻撃なら【ヴァイキング】の砲撃が有利だが?」


「だからこそ面白いだろ。お前を舐めてるわけじゃないぜ。むしろ困難だと思ってるから提案してんだ」


「……受けよう。どうぞ気兼ねなく、"最強"」


なんかバチバチし始めた。嫌な予感するわ。




──◇──




バチバチの化け物コンビから離れて、ドロシーからもできるだけ離れて。あたしとエリバさんとアイコは、手頃な魔物を見つけた。


「【仙人】の基本は3種の"仙力"を同時に操る事です。このように」


エリバさんの身体を覆うように赤いオーラが展開して、周りを青と緑のオーラが旋回している。


「基本となるスキル【瞑想】で"仙力"を高めます。"仙力"は時間により自動で消費されていきますが、常に全ステータス補正+継続回復+弱体耐性のバフがかかります。他で言えば武器を鞘から抜く行為=【瞑想】と思って下さい。

 常時消費に加えて、それぞれの色に対応したスキルを使うと"仙力"が更に消費されます。【瞑想】は若干の隙になってしまうのでタイミングが重要です」


隙とは言うけどエリバさん、いつ【瞑想】したの?

そんな一瞬でできるもんなのね。


「赫の"仙力"は近距離戦闘と自己強化の力です。僕は【ダーククラウド】では比較的支援寄りなので、赫は薄く使っています。

 言い忘れましたが、赫蒼翠の"仙力"は必ず同時に展開しなくてはなりません。その比率は自由なので、どこに重きを置くかを取捨選択する必要があります。

 基本は全ての色を最小にして節約するのがいいですね」


「では私も──【瞑想】」


ずあっ、とアイコさんの体から溢れ出す赫のオーラ!

(某スーパーなんとか人みたい)

……秒で消えた。ガス欠ね。


「加減が難しいですね」


「一瞬で使い切りましたね。今のは蛇口全開にしていたようなものなので……まぁ慣れですよ。

 次は蒼の"仙力"です。こちらは遠距離攻撃の力ですね。僕の場合は矢をイメージしています」


エリバさんが遠くの魔物に手を向けると、浮いていた蒼の"仙力"が矢の形になって飛んでいき、一撃で仕留めた。


「そのまま操作する事も可能ですが、他の"仙力"に使う思考余力を削られますので……放って帰ってこない"矢"でイメージして、放ったら"赫"操作に頭を切り替えて防御を固めます。

 が、それは僕のやり方なのであくまで参考の一つにお願いしますね」


……教え上手ねエリバさん。優しいし落ち着いてるけど、18歳なのよね? 本当?


「最後は翠の"仙力"。回復や補助の力ですね。味方に回復の闘気を投げる事が出来ます。単体でも複数でも」


エリバさんが指をひらひらと揺らすと、あたしとアイコさんに翠の鳥が飛び掛かってくる。実体は無いけど、少しびっくりした。


「……まぁこんな感じですね。この3種を上手く使えば、闘いながら同時に回復もできるというわけです」


翠の鳥を自身の周りに旋回させるエリバさん。さっきの蛇口全開アイコを見た後だと、形を変えるのも凄い技量に見える。矢も随分と細部に拘ってたように見えたし。


「──よし、こんな感じですね。イメージできました」


アイコは──何か、全体的に"仙力"が足りない?みたいな感じになってる。

翠の"仙力"は今使わないから小さくアイコの隣で浮いていて、蒼の"仙力"は何故か両手首に。

そして全体的な赫の"仙力"は、赫というより薄桃色になるまでかなり薄く、一見展開していないようにさえ見える。


「凄い……もう制御のコツを掴んだんですね。しかしその蒼の"仙力"は……」


「ちょっと試してみます」


アイコの見る先には──岩石と機械の集合体、《バグゴーレム》。


アイコが右腕を大きく降ると──手首の蒼の"仙力"が、勢い良く伸びて《バグゴーレム》を捕える!


「──こうです!」


そのまま力技の綱引きで《バグゴーレム》を引っ張り、飛来する《バグゴーレム》。蒼の"仙力"を千切り、アイコはそのまま──


──空中回し蹴りで撃ち落とす!


見るも無惨に粉々になった《バグゴーレム》。中から出てきた本体の寄生虫は【アイスショット】でトドメを刺しておくわ。


「こんな感じですかね!」


いい笑顔。

エリバさんもまぁ笑顔だが、やや引いてる。


「……ほぼ蒼の"仙力"しか使ってませんし、赫の"仙力"は極限まで絞っている。スキルも使ってませんから、ほぼ"仙力"消費はナシ……この形態で【瞑想】補給無しでの長時間格闘が可能ですね。

 ははは。これが"最強の格闘家"ですか。甘く見てました」


遠距離攻撃用の蒼の"仙力"を、相手を引き寄せる手段として使ったのね。そして待ち構えて丸太のような脚で粉砕。こんなの即死攻撃じゃないの。


「これで少しは役に立てますね! メアリーちゃん!」


本気で言ってんのか。化け物フィジカルに火力与えちゃったのよ。


……裏切られたら終わるメンバーが多すぎるわね、うち。

〜舞台裏:【ダーククラウド】〜


かつては【三日月】の、今は【ダーククラウド】のギルドマスターをしているボク、ハヤテ。


所用でルガンダを訪れたら、ライズが来ているらしく秒でホテルへ逃げる。顔合わせられないもん。


ホテルから出てみると、なんとライズの今のギルドのギルドマスターが偶然歩いてきたので世間話をしようと試みた!


──何故か臨戦対戦に入られた。

ここ拠点階層だよ!? 戦うイカれた奴に見えたの!?


なんとか説得したいんだけど、こうなると何もかも胡散臭くなるよね。


そして飛んできましたライズ。

そうだよね。構図的にボクがメアリーを殺すんじゃないかって間違えるよね!


……ボク、本当に話したかっただけなんだけど!


その後"敵対行動ペナルティ"によって丸一日ルガンダに拘束された事をサブリーダーに報告したら、めっちゃ怒られた。エリバが宥めてくれなかったら【ダーククラウド】追放まであったかも。


……で、なんか丸一日空いちゃった。ライズはホテルに監禁されてるらしいし、ボクは折角だから散歩でもしようかな。


ナメローさんと久しぶりに会って、【三日月】時代に一緒に通ってた焼肉屋さんに一緒に行った。

あの頃はナメローさんは攻略を諦めて、ここでドワーフとの和平に取り組もうとしてたんだよね。

話し上手聞き上手のツバキが大活躍したっけ。ツバキは第70階層(ヒガル)から動かないけど、ナメローさんに並ぶレベルでドワーフから歓迎されてる冒険者なんだよ。

……ツバキがあそこから動かなくなった原因はボクなんだけどね。


いらん事考えちゃった。二件目はツバキが通ってた酒場。今はナメローさん管轄の大衆酒場になってたけど。マスターは健在だった。

……ツバキの事を聞かれた。ごめんなさいマスター。答えられなくて。


気を取り直せてないけど三件目。のんびりできる足湯居酒屋。

足湯にしかならない浅い温泉を持ってたドワーフが困ってたから、ライズが提案したんだよね。

店長からライズの事を聞かれた。ごめんなさい店長。ライズは今監禁されてます。


……全然気分転換できなかったな。


丸一日のリミットが終わりかけたタイミングで、ライズを監禁してる【アルカトラズ】のブランから連絡があった。ライズが外出するらしい。


『いいよ。ボクはホテル側には行かずに時間潰すから』


メッセージに返信して、ナメローと別れて。

……ホテルが見える高台から、ライズを一目だけ見た。


ライズからは宣戦布告を受け取った。ボクと【決闘】しないとライズは先の階層に進まないつもりだ。

ボクとしては、ライズが記憶を取り戻すのはいいけど……【Blueearth】の攻略に参加するのは反対だ。

というか、僕のやるべき事を、もう目の前で見せたくはない。


……どこかで冷静にお話できたらいいんだけど、向こうもボクも冷静にお話とかできないよなぁ。


せめて【ダーククラウド】としては協力関係にまで持ち込みたいなぁ、なんかきっかけないかなぁ……。

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