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BlueEarth 〜攻略=世界征服〜  作者: まとかな
地底都市ルガンダ/ケイヴ階層

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65/507

65.気まぐれな強者

──《巌窟大掃除》最終日


【第20階層 地底都市ルガンダ】中央広場

──8:00


『さぁ始まりました《巌窟大掃除》遂に最終日です』


『最高得点はチーム"穿孔"!2455ポイントですな』


『21階層に根を張る戦略がしっかり決まったね。クローバーがサボりだしたのも要因になってるけど』


放送席から実況するのは【金の斧】GMナメローさん、ドワーフの族長さん、【飢餓の爪傭兵団】OBのサティスさん。


「おーいドロシーちゃん。こっちこっち」


アイコさんに声をかけられ、振り返ると──

猛獣2匹を従える(物理)アイコさんの姿が。


「痛み分けですわ。美しき停戦ですわ」

「そうねぇ。もうアイコちゃんに投げマワされるのは嫌よ」


プリンセス・グレゴリウスさんとプリステラさん。犬猿の仲(なかよし)の二人を抑えている。

戦闘行為が禁止されている拠点階層ではアイコさんに勝てる人はいない。


──あれから。

プリステラさんと一緒にプリンセス・グレゴリウスさんとその配下さんを倒し……プリステラさんはグレゴリウスさんと相打ちに。

その後追撃でやってきたアゲハさん達の作戦によってゴーストさんとアゲハさんだけ分断され──僕とアイコさんは、ナシノツブテさんとタツタダさんと相打ちになって敗北。アイアン8さんにトドメを刺された。

レベルがほぼ一緒で、第3職なりたてなのも一緒。こっちにはゴーストさん(レベル99)がいて装備が異常に強い状態での痛み分けなので、はっきり言って負けです。戦略も戦闘慣れも向こうが上手でした。


とにかく、僕とアイコさんは一足先にルガンダへ帰還。

【飢餓の爪傭兵団】と敵対した以上はいつ喧嘩するかはわからないので、色々と準備をしておくことになりました。


アイコさんに呼ばれるまま、膝に載せられる。悪い気はしませんが、これだと視界が狭まって急な対応が……。


「警戒する必要はありませんわ。

 従わないから敵対と言っても【飢餓の爪傭兵団】の恩恵を受けられない程度のものですわ。わざわざ拠点階層で襲い掛かるほどの事ではありませんの」


グレゴリウスさんが見抜いてきた。この人もプリステラさんも、2枚の皮を被っている。お姫様/淑女の皮を被った、獰猛な獣の皮を被った、優しくて聡明な本心。


「まぁ80階層までの民間クエストや傭兵稼業を牛耳っている【飢餓の爪傭兵団】の恩赦を受けられないのは厳しいけど、それだけならそこまで致命的じゃないわね。

 【飢餓の爪傭兵団】は闇ギルドじゃないからね。【真紅道(レッドロード)】が王道すぎてアングラ感出てるけど、ちゃんと正常位(正攻法)なのよね」


「そうですわよ。まぁ【飢餓の爪傭兵団】傘下の人からすればキツイ縛りになりますけど。だって【飢餓】に折れた冒険者ですからね、基本は」


「グレ子もそうなっちゃうんだけど?」


「あら〜、わたくしはスカウトですわ。一緒にしないで下さる? 貴女と違ってモテますので〜」


「そうね。貴女は猿にモテるわよね。今も猿山のメスゴリラやってらっしゃるの?」


「おん?」


「あん?」


「まぁまぁお二人とも」


「「いたたたた」」


アイコさんにそれぞれ手を捻られて仲裁される。

……実際にどうかはともかく、美女3人に囲まれてるこの状況は周りの目が痛いなぁ。


……あ、いや、僕は男に見られてないか。じゃあいいか。


『注目すべきはやはり昨晩よりずっと交戦中のゴースト選手とアゲハ&アイアン8選手だね。ゴースト選手は無限耐久値の双剣、それにサブジョブでヒーラーを選んでいるようだね。とにかく単体での長期戦に最適な編成だ。

 レベル差を補うは戦闘能力に長けたアゲハ選手と、その部下としてシームレスな意思疎通が可能なアイアン8選手。アゲハ選手による魔物を利用した波状攻撃のヒット&アウェイ戦法でなんと一晩中戦闘してるね。PKペナルティガン無視で殺りあってるけど、無事8時になって一安心だよ』


『あまりにも激しい戦闘に他の参加者が素通りできない状況になっています。というより魔物より冒険者同時の殴り合いが勃発してますね。次回ルール改訂の参考にします』


ゴーストさんは、あれからずっと戦ってます。

既に《巌窟大掃除》で23階層以降へと移動しようとする参加者はいないけれど、万が一にもアゲハさん達が行かないように、ずっと食い止めてます。


……ゴーストさんの正体についてメアリーさんから聞かされた時は驚いたなぁ。

電子生命体……って言うと今の僕たちもそうだけど。人造人間みたいなものなのに、しっかりと心があるのだから。

わざと機械的な受け答えしてるだけで中身は知識あるだけの1歳なんだもの。それを隠してるから僕も何も言いませんが。


『さて、何故か魔物を討伐せず奥へ奥へと進むチーム"バレルロード""夜明けの月A"、そしてクローバー。一体何が目的なのか』


『ふぉふぉふぉ。もしかすると成し遂げてくれるやもしれませんなぁ』


『おや、何かご存知ですか族長』


『ふぉっふぉっふおっ』


……しかし、思ったより今後が心配だなぁ。競争なんてやっちゃってよかったのかなぁ。

ライズさん、運の悪さには定評があるからなぁ。




──◇──




【第28階層ケイヴ:震える大地】

止まない振動の中に佇むは、崩れた廃墟達。

文化も技術も等しく喰らう神の食膳。

彷徨うは心無き機兵。恐れ知らず歩き廻り、貪られる日を待つ。


「凄い音ね。それに凄い振動」


「すぐ隣の階層で《ミドガルズオルム》が暴れてるからね」


最終日。今日で全てが決まる。

あたし達は"まりも壱号"を、スカーレット達は"じいや"を呼び出す。

──最後のレースが始まる。




「ほんじゃあ、位置について……よーい……スタート!」




クローバーの合図と同時に駆け出す。

お互いに直接的な妨害は出来ない。純粋な速度での勝負になる。


「ライズ! どうやって進むの?」


「こっからは真っ向勝負だ! 地響きの影響を受けないように出来るだけ空中移動で、魔物を避けて進むしかないな!」


「相わかった。では可能な限り空中ルートで行くぞ"まりも壱号"!」


相手は常に浮遊しているカロン(じいや)。地上を転がるこちらは真っ当には勝てない。

"まりも壱号"マニュアル操作モードへと切り替わったジョージが、人体の筋肉と近い性質を持つ《フォレストテンタクル》の触手を自在に操り、廃墟の角を掴み飛び、また掴み飛ぶ。


「多分、29階層では【バレルロード】との取り合いになる。追い越す事はできても引き離すところまでは無理だ。

 《ガーディアン・オブ・ロスト》は時間勝負だ。同時はマズい」


「同じターゲットで戦闘しちゃうと、撃破時のポイントはそれぞれに加算されるからよね。あたし達とスカーレット達の両方に得点が入ったらクローバーがどっちか決められなくなるものね」


共闘はダメ、遅れたらダメ、追い付かれたら引き分けに持ち込まれる。この段階でヨーイドンしていたら差は付きにくいだろうから、かなり厳しい状況ね。


「──でも、多分そうはならないわ。

 ライズ。知恵を貸しなさい。多分これから()()()が起きるから、対策を練るわよ」


「嫌な事……多分、俺も似たような事考えてた」


「奇遇だな。俺もなんとなくこの先の展開が想像ついてきたよ」


察しが良くて助かるわ。

そしてあたしの考えだと多分、十中八九起きるわ。




──◇──




【第29階層ケイヴ: 蟲神の祭壇】

(うね)り狂う大地は祭り上げられし蟲の神。

神の食膳を荒らす事は叶わず。

神は我が子を狙う土塊を許さず。

神は岩壁も神殿も問わず全てを吞み。

遺されるは慈悲の祭壇一つのみである。


「壮観ね。この動いてる大地全てが《ミドガルズオルム》ってわけ」


視界全てを覆う、蠢く大地。

遠方にはたった一つ取り残された祭壇。そして、機械兵──というよりは巨大な人型の城。あれが目的ね。


──【スキャン】情報──

《追憶の岩塊 ガーディアン・オブ・ロスト》

LV50 ※フロアボス

弱点:

耐性:水/火/風/雷/光/闇/斬/打/突

無効:地

吸収:地


text:何処からか流れつき、既にいない主を守る虚無の城塞番兵。

10種のセキュリティゲートを保持しており、9属性の耐性と機械兵工場を担っている。

セキュリティゲートを破壊すると対応する耐性が弱点になるか、機械兵の出現が止まる。

ゲート破壊後は自己修復機能でゲート回復を狙うが、その間は攻撃の手が緩む。

ゲート破壊率が60%を超えると全ての装甲を破棄し、継続回復状態で暴走する。

──────────────


「結局はギミックボスだ。倒す事自体は容易い! が──」


「倒すのに時間がかかるって事ね! こんなのどうしたって【バレルロード】と共闘になっちゃうわね!」


そう。ここまで差がついてない状況だと、引き分け確定。


──そんなの、面白くないわよね。




「悪いな」




スカーレット達の船が到着するより早く。


あたし達の"まりも壱号"が辿り着くより早く。


"影"は祭壇に辿り着き──クローバーが現れる。


「っ、メアリー!」


「詠唱済よ!【アイスショット】!」


まだ距離はあるけど、届く!


氷弾が着弾するまで7秒──




「この方が面白くなりそうだ!」




巨大要塞を覆う、光の壁。


アビリティ《クイックドロー》

──ヒット数2倍。

アビリティ《陽炎のガンマン》

──ヒット数2倍。

片手銃二刀流

──ヒット数2倍。

武器【地獄の番犬(ケルベロス)】二丁

──ヒット数3倍。

スキル【乱撃錯乱】

──ヒット数3倍。

スキル【速射準備】

──通常攻撃速度2倍(実質ヒット数2倍)

ラピッドシューターの基本攻撃速度

──秒間7発。


秒間1008発の弾丸。

インベントリにスタックできるアイテムの個数は1種999個。初期インベントリ枠は75。拡張できるレベルアップボーナスも全てラックに振っているとすれば、クローバーは僅か1分程度しか戦えない。


でも。

少なくとも、7()()()()()()()


1秒待たずで前方配置のセキュリティゲートを粉砕され、2秒も保たずに《ガーディアン・オブ・ロスト》は崩壊。


氷弾は虚空を飛び、あたしもスカーレットもやっと到着する。


クローバーは一切悪気なく、笑顔のまま。




「んじゃ、ゲームを変えるか! 俺をどうやって引き入れる?」




気まぐれな強者ほど恐ろしいものはない。

こうやって軽率にちゃぶ台返すからね!



〜【オクトパスブロー】解説〜

《ドロシーの書き残し》


クローバーさん……《掟破りのサムライ"アシュラ"》伝説の第一幕、【オクトパスブロー8】。

シリーズ最終作のつもりで作られましたが、アシュラ伝説により大盛り上がりしたので続編が作成されました。現在は【オクトパスブロー9】が最新作ですね。


【オクトパスブロー】シリーズは、"世界一有名な格闘ゲーム"です。初代【オクブロ】はアーケード版で、まだドット絵の時代でした。

ストーリーは王道RPGを格闘ゲームに落とし込んだようなもので、"勇者が魔王を倒す"ありがちなストーリーですが、主人公が素手で殴るタイプです。

格闘ゲームでありながら無印版の時点で刃物やら獣やら何でもありなスタイルが人気を博しました。

名前の由来は、主人公である宮廷破魔師ダゴンの前世が蛸の悪魔である事と、魔王スメラギが四腕四足である事から付けられました。


【オクブロ3】までは毎作品主人公が交代していましたが、【オクブロ3】主人公のマサカドが人気になった事で以降のシリーズの主人公はマサカドで固定になりました。マサカドは【無印オクブロ】の主人公ダゴンの血縁上の息子で、【オクブロ2】主人公リッキーの養子です。


そしてそのマサカドが闇堕ちした姿が、当時世界大会でアシュラの対戦相手が使用した"ダーク・マサカド"です。


【オクブロ】はゲーム以外にも、スピンオフ作品が多く存在しています。その中の一つ、【オクブロ5】後日談を書いた漫画【オクトパスブロー外伝・マサカド湯治旅行記】では闇の力を抑えるためにマサカドが世界各地の温泉を巡る……というお話です。

なんで温泉?となりますが、ここで登場したのが闇医者【ハッピーラックモンスター】です。第一話たった3コマしか出てきませんでしたが、突然マサカドを温泉キャラにした謎の医者としてカルト的人気を得ます。【オクブロ6】の人気投票では脅威の13位。非プレイアブルキャラとしては前代未聞のランクです。


さて、【オクブロ8】のキャッチコピーは、"全ての因縁よ集まれ"です。

これを終作とすべく、歴代の全キャラクターを時系列無視で全員参戦させた事で当時は相当な話題を呼んだそうです。

そしてそんな作品のDLCキャラに選ばれたのが"ハッピーラックモンスター"です。

全キャラ揃ってるのにDLCキャラとはなんぞやと話題になりましたが、シルエットが公開された瞬間に特定され、芋蔓式に他のDLCキャラも書籍等の非プレイアブルキャラだとバレてしまったとか。


ともかく、そんな感じで実装されたキャラです。

"ダーク・マサカド"と"ハッピーラックモンスター"に直接の因縁はありませんが、事実上"ダーク・マサカド"を御する手段をマサカドに教えたのは"ハッピーラックモンスター"なので、ある種勝ってもおかしくないですね。


さて、歴史的偉業を成し遂げた《掟破りのサムライ"アシュラ"》によって【オクブロ】シリーズは盛り上がりを見せ、遂には【オクブロ9】が発売されます。

とはいっても格闘ゲームとしての主戦場は最新機器に移植された【オクトパスブロー8:perfect】の方で、【オクブロ9】はストーリーモードを楽しむ方が主体となっていますが。

そのストーリーのラスボスは、力の求道者"アシュラ"なんです。あまりにも露骨ですね。

ちなみにゲーマーの方の"アシュラ"は、VR格ゲーに慣らすために格闘主体の"ダゴン"を持ちキャラとして使っていました。ファンサービスの時は"アシュラ"を使うらしいです。

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