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BlueEarth 〜攻略=世界征服〜  作者: まとかな
地底都市ルガンダ/ケイヴ階層

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64.割と不運なタイムアタック

【第26階層ケイヴ:虹結晶の洞窟】


色とりどりの結晶に包まれた、虹の洞窟。

輝きに潜む魔物達は隠れながら機を窺う。

光を遮る冒険者。結晶を踏み砕く音。その全てが天然の警報装置である。


「──隠してるわね」


「そうだなー。この階層は油断したらすぐ襲われるからなー」


「フェイちゃん。多分スカーレットちゃんは、【夜明けの月】の皆さんの事を言ってると思うよ……」


まぁどっちの言う事も正しいけど。

あの意地の悪いメアリーと、馬鹿知識のライズのいるチームよ。易々と私達を通す筈が無いと思ったのだけど。


「なーにか嫌な予感がするわ。さっさと抜けるわよ。"じいや"!」


船守を呼び出して、3人で乗船。

浮遊しているからどんな地形でも進めるのは利点だけど、そこまで速度は出ないのよね。

……何をしようとしてるのかわからないけど、負けないわよ【夜明けの月】。

別にこのイベントで勝てなくてもいいんだけれど、また【夜明けの月】に話題を持ってかれるのは癪なのよ。


元々は話題独り占めの期待の新生ギルドだったのに、アドレでの【象牙の塔】の大暴れだの、ウィード階層監禁事件だの、ドーランでの戦争だのと派手な事ばっかりして。

こっちは【真紅道(レッドロード)】に追い付く必要があるの。私の覇道はそのまま【真紅道(レッドロード)】の広告になる。

私のレッドカーペットに踏み入らせはしないわよ、メアリー!




──◇──




【第27階層ケイヴ:嘆きの縦笛】

垂直に拓かれた縦穴の底からは、悍ましき音色が響き渡る。

地獄の縦笛と恐れられるは悪魔の怨か、魔物の悲鳴か。

いずれにせよ、恐怖に飛び込まずして先には進めないのだ。


「──縦穴ね」


「縦穴だな」


底が見えない暗闇。なんか物々しい音が下から聞こえてくるのだけれど。


「基本的にはズルせず壁沿いに降りるのが正攻法だ。真ん中を落下して降りようとするとそもそも落下ダメージでやられるし、ワイバーン系の魔物に集中放火される」


「なるほど。《クリアサーペント》みたいなズル防止の奴がいるのね」


「そうだ。じゃあメアリー、【チェンジ】で全員飛ばしてくれ。落下ダメージ無くなるんだろ?」


もう当然のように落下前提で話してるわね。

まぁやるけども。スカーレット達を引き離すチャンスだし。


「ちなみに、極低確率で落下してくるやつを追い返す《ストームブレスホール》っていうエネミーが出てくる。これと遭遇したらここまで追い返されるわけだが、まぁ確率的にそう出るもんじゃない。懸念する価値も無いくらいの低確率だ」


ほーん。低確率なんだ。

じゃあ安心ね。


【チェンジ】。




──◇──




「《ストームブレスホール》が出たぞぉ!」


「もうアンタ今後黙ってなさいよライズゥ!」


そんな気はしてたけど!してたけど!


落下しながら《ケイヴワイバーン》を蹴散らす最中、めっっちゃデカいケイヴワームが頭を出してきた。こいつもケイヴワームの変異体なの?


──【スキャン】情報──

《ストームブレスホール》

LV100

弱点:炎

耐性:打/斬

無効:地/風

吸収:風


text:

巨大化したケイヴワーム。大空洞で落下してくる生物を追い返してくれる優しい魔物。

基本的には壁に擬態し休眠している。ミドガルズオルムへと進化できるだけの質量を得たがまだ扱きいる事はできず、その巨体を自在に動かすために力を蓄えている。

基本的に討伐はできないが、大穴を落下でもしない限りは動かないし敵対しない。

──────────────


「全然出てくるじゃないのよ!」


「あっははははは! もしかして【夜明けの月】って運悪いかー? 俺の運いる?」


「くれるなら欲しいけどな! とりあえず撤退!」


巨大な蟲の一息に吹き飛ばされて押し返される。ジョージがそのままどっか行かないように手を繋ぐ。


「メアリー君。着地の際は足じゃなくて膝を意識してごらん」


あっはい。

飛ばされながらも冷静なジョージのティーチングのおかげでよろけながらも着地に成功。

クローバーは"スメラギ"を利用して影に沈むように着地。

ライズは頭から着地。


「……ライズってもしかして、あんまり運動神経よくない?」


「(リアルの知識を)思い出してからむしろ悪化した。これまでは無意識でできてたんだがなぁ」


リアル知識が必ずしもメリットになるとは限らない。

ダメージ上死なないとわかってても、頭から丸齧りとかされそうになると身構えちゃう。こればっかりは仕方ないわね。

まぁライズは多分リアルだと相当運動音痴なんだろうけど。


「さて、どうする? ゆっくりと外周から攻めるか?」


「そうだなぁ。こればっかりはしょうがないか」


渋々といった形で、のんびり外回りで降りる事になった。


──地上まで着いた頃、《ストームブレスホール》が壁に引っ込むのが見えた。おのれ乱数。




──◇──




──《巌窟大掃除》3日目終了。

ポイントは1位で2500点ほど。点数的には順調だな。


「追いついたわよ」


追いつかれましたか。

スカーレット達がまたしても合流。結局はこうなるか。


「なんか遅くない? もっと先越されたかと思ったんだけど」


「大ハズレ引いたのよ。アンタ達は落下してきたのよね?」


「ええ。"じいや"は浮遊系だから落下ダメージも無いし」


「もしかして《ストームブレスホール》に引っ掛かったんですか? 《キーゴーレム》であれだけ苦戦して、アレにも捕まるなんて……あ、ごめんなさい」


コノカさんの無意識な毒舌が刺さる。

……うん。俺は比較的運が悪いと思っているが、これまではそのおかげで色んな発見ができたんだよなぁ。有り難かったかつての能力も今や呪いか。


「まぁせっかく合流したんだから飯だ飯。ほらほら座って」


そして唯一エンジョイしてるクローバー。

……こいつ、何かしてないよな?

考えすぎか。


何となく思ったが、クローバーはマジで楽しむ事しか考えてない。

ルガンダで当然のように名前を公表した事も、それにより【至高帝国】に隙が生まれる事も、全部別に企みとかじゃなく、"楽しいから"やってるだけだ。

悪辣な愉快犯とはまた違う。力があってこその無邪気な悪戯といえよう。


「……ライズ。ゴーストからの定期報告が途絶えたわ。多分やられたわね」


「そうか。まぁ追いつかれる事は無いだろうし、プリステラさんと一緒に観戦しててもらうかね」


「流石に集中的に狙われると厳しいわね。

 ……これから、こういう感じに狙われるのかしら」


このイベントでクローバーの人となりを確認できて、接点もできた。いい事だ。

だがいらないものも手に入ってしまった。つまりは【飢餓の爪傭兵団】からのヘイト。

クローバーに対して友好的すぎる態度を取った以上は、【夜明けの月】も【バレルロード】も今後【飢餓の爪傭兵団】と敵対する事になる。

なかなかの痛手だ。特に現地で傭兵を雇えないのは厳しい。

身内でクエストを回せるように10人メンバーの確保が急務になるな。

ツバキは……ハヤテとの因縁にケリ付けないとダメだな。

デュークも親友だがそういうのはダメだろうからな。

ソロの有名人……例えばクアドラみたいな……

……考えるのは今度でいいや。クローバーを見習って楽しむか。




──◇──




【第161階層デザート:氷晶砂界の第一幕】

熱を奪われた砂漠に氷の柱が突き刺さる。

太陽に溶けない氷柱は大地から水を吸い上げ、天へ天へと伸びてゆく。

摂理を嘲笑う氷砂の世界。逆転と不条理の世界。


──トップランカー最前線。

野生の魔物の最低レベルは155を超え、一体倒すにも数人がかり。最早ギルドがどうとか関係無い。

ぶっちぎり最強のソロプレイヤー、クアドラの100%【サテライトキャノン】でさえ一撃で倒せる魔物はいない。そんな魔境に辿り着いたのだ。


光の壁に囲まれて。僕達は戦う。


「──いい加減貴様との殴り合いも飽いたわ! 【王威断絶】!」


【飢餓の爪傭兵団】──大幹部"絶対王権"キング.J.J。王を名乗りながらも【聖騎士】である彼は、咆哮と共に巨大化した片手剣を振り翳す。


「うはははは! そういうな。お約束というのは重要だ。オレ様達のような前菜には特にな!

 後ろの()()()諸共! 強火で焦がす! ──【メテオダンク】!」


「んげっ、なんでわかんねんバケモン!」


我らがブルドックヘッド、ハートが必殺の振り下ろし。キングの【王威断絶】を受け弾き──返す左の斧で、隠れて奇襲してきたファルシュ(リベンジャー)に2撃目の【メテオダンク】を打ち降ろす。


「──だが、3人目は無理だろォが!」


二人の陰から飛び出すは本命、飢餓の王ウルフ。

致命の短剣を容赦なくハートの首に突き立てる、その刹那。




「【チェンジ】」




ハートとウルフを同時に、攻撃の届かない最低限の位置へ移動。《()()()()()()》。金のドレスを身に纏う女王──ダイヤが、場を支配する。


「またテメェか、"無座の女王"! 完全に接触まで行ってただろ! どうやって【チェンジ】してんだソレァ!」


「余所見とはまた中火な事だ。【オーガチャージ】!」


「王が許さん!【絶対防壁】!」


ハートの突進を盾で受け、ウルフから進路をズラすキング.J.J。


──そろそろだね。


「ナイスやオッサン! 喰らいやダイヤ! 【復讐牙】!」


「【チェンジ】──【ブラックホール】」


「んげ!」


ダイヤは襲い掛かるファルシュを一瞥すらせず暗黒の渦に投げ落とす。


──隙を見せたウルフの背後。全員の視界が向いていない、完全な死角。




「──【不可視の死神(インビンシブル)】」




死神の刃が、餓狼の首を無慈悲に刈り取る。




──◇──




「勝者【至高帝国】。勝利報酬により本日の【ギルド決闘】は終了となります」


《審理》の輩、顔の無い灰色の審判が姿を消す。ウルフら【飢餓の爪傭兵団】は文句を言いながらも第160階層(ブルード)へと帰っていく。


「やれやれ。クローバーがいないと厳しいなァ、スペード」


「ごめんねハート。負担増やしちゃって」


「なぁに。この程度美味い美味い」


「馬鹿が調子に乗るんじゃねーし。スペードがいないと普通に負けてたし」


べしっと錫杖をブルドッグ頭に乗せるダイヤ。


「ぐぬ。お前に馬鹿とは言われたくないぞ天才肌」


「確かにあーしの肌はサイキョーに綺麗だけど今褒めても意味無くね?」


「あぁ貴様は何で喋ると馬鹿なのだ。黙っていれば最高の女王なのに」


「女王キャラだってアンタの趣味じゃん」


「やめよ。その背中と脚を出すのもやめよ」


「そっちはスペードとクローバーの趣味だし」


「やめてダイヤ。違うから。健康的な脚は誰だって見惚れるってだけの話だから」


「クローバーも似た事言ってたし。ウケる。

 見たいなら見ればよくね? アンタらが嬉しいならあーしも嬉しいし」


無垢故に不安すぎるこの女王。

これにはハートも溜息だ。


「んでスペード。いつクローバー帰ってくんの?」


「……んー、いつだろうねぇ」


「それより晩飯だ。折角倒したのだから【飢餓の爪傭兵団】に集りに行こう。オレ様はらぺこ」


「あーしもお腹減ったしー。カツカレー食べたいし」


「女王はカツカレーなぞ食べない」


「えー。福神漬け山盛りのカレー食べたーい」


「女王は福神漬けとか言わない」


……ハートが話題を逸らしてくれたけど。

ちゃんと今後の事も考えないとね。



〜【夜明けの月】装備集〜

《ゴーストのlog保存庫》


log.

【夜明けの月】メンバーはライズより装備を支給されます。

しかしその事をライズが全然説明しないので、ここで紹介します。


・メアリー

紫蓮の(ヴァイオレット・)晶杖(ロータス)+90】

最初にライズからぶんどったマスターの基本装備の両手杖です。特殊効果がありますが、レベル制限のかかるLV100に到達するまではただの強い杖です。

本来はある女性に送るために強化していたようです。


・ゴースト

無限蛇の双牙(ウロボロス)+68】

ライズからもらった双剣です。武器耐久値を自力で回復できる機構があり、無限に使えます。

とてもお気に入りです。とても。


・アイコ

清浄なる十字(クリス・クロス)+48】

光属性の片手槌(メイス)です。十字形状ですが槌としての火力を出すに十分な重量をしています。

ヒーラー系が装備すると常時継続回復の効果を発揮します。アイコがやたらタフなのはこれで回復しているからです。


・ドロシー

天使と悪魔の螺旋階段(ドミニオン・シェイド)+55】

白黒の螺旋が装飾された両手銃です。構造がファンタジーなので"神の奇跡"には使えません。

光と闇の属性を持ち、着弾時に有効な方の属性に変化する性質があります。

ライズには【天国送り(エンジェル・バトン)+58】があるので、こちらはドロシーが【夜明けの月】に加入してから急拵えで強化したもの。素材が【天国送り(エンジェル・バトン)】や【煉獄の闔(ケイオス・エイギス)】と共通しているものがあったため在庫があり、かなり強化されています。


・ジョージ

紫呪竜の髭鞭(ボイゾナ・ウィップ)+55】

ライダー系専用装備の鞭です。魔法防御力を下げるデバフ効果があり、【調教(テイム)】においてはかなり重要な効果をしています。

ライズのお下がりです。私の【無限蛇の双牙(ウロボロス)+68】もライズのお下がりですが。

基本的に手に巻きつけて使用していますが、ちゃんと鞭としても使いこなせるようです。


【ヴィオ・ラ・カメリア+28】

ライズの倉庫にたくさんあった片手剣の中からジョージが気に入った一振りです。

名前と色が気に入ったらしいです。素材がレアで強化値が物足りないそうで、ライズは現在ツテを伝って素材を集めているらしいです。

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