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BlueEarth 〜攻略=世界征服〜  作者: まとかな
地底都市ルガンダ/ケイヴ階層
62/507

62.仲良き事は素晴らしい……かなぁ?

【第23階層ケイヴ:緑の地底湖】


この階層の転移ゲートは、地底湖を挟んだ向かい側にある。

なので、左右どちらの迂回路を選ぶかが重要になるが──


「いくわよ"じいや"! 正面突破!」


木船の渡守、《カロン》を従える【バレルロード】は、湖を正面から突っ切る様子。無論それが最短経路だ。


「あんた達の"まりも壱号"じゃ湖は渡れないものねー! ここで先行かせてもらうわよー!」


「いけるが?」


「なんでよ!」


湖上をざぶざぶ転がる"まりも壱号"。


──外殻が本体と別に存在する《フォレストテンタクル》は、触手で穴を塞げば浮き輪の様に浮く事が可能。いや本当かよ。ジョージの提案でやってみたけども。

水陸両用の怪物じゃねーか。助かるけども。


「うはははは面白いな。四葉ポイントをあげよう」


"スメラギ"に抱きしめられて背泳ぎしてるクローバー。元来海遊種族の《ネビュラウィンドウ》は水中では実体化しているようだ。


「四葉ポイントが増えるとどうなる?」


「俺が楽しくなる」


「そんなんばっかねアンタ」


──さて、この湖横断作戦。問題が一つある。


「お、来たぞ」


「そりゃ来るわよね。総員戦闘準備!」


湖に浮かぶ黒い影──しかも複数。

湖面の餌に反応し現れたのは、巨大な海蛇──否。でかいケイヴワーム。あるいはミドガルズオルム候補生。

──《クリアサーペント》。この階層でのギミックボスと呼ぶべき、異様に強い魔物。


──【スキャン】情報──

《クリアサーペント》

LV100

弱点:

耐性:水

無効:地

吸収:地


text:地底湖を縄張りにする《ケイヴワーム》の変異種。若く尖ってる時代。次代の《ミドガルズオルム》となるべく研鑽を積んでいる。湖の暴れん坊。ドワーフからは(単純に《ケイヴワーム》の変異種と思われてないのか)討伐してもお咎めなしである。

近くにいる生物に襲いかかる習性があるため、誘導中に他の魔物にターゲットをすり替える事が可能。基本的は交戦は非推奨。

──────────────


「強くない?」


「そりゃ楽しようとした奴を叩くギミックみたいな奴だからな! 俺とクローバーなら倒せるだろうが……目的を間違えるなよ!」


「もちろん! ジョージ、躱せる?」


「浮かんでる間は難しいな! 足場が必要だ」


【バレルロード】は──《カロン》に乗ったまま、迫り来る管蟲を射撃し撃退している。ペースは落ちるが、ちゃんと進んではいるようだ。


「──【アイススパイク】! 湖面を凍らせるわ。これで上陸よ!」


「それ無駄よメアリー! 《クリアサーペント》はそういう陸地を積極的に潰してくるわよ」


"まりも壱号"が上陸する隙も無く、蟲蛇の群が氷の舞台を絞め壊す。なんとしても水上戦に持ち込もうという意思を感じる、が──


「──掴める場所が出来たわよ! ジョージ!」


「応とも! "まりも壱号"! 俺に従ってくれ!」


鞭を振るジョージ。

魔物を扱うだけなら【ライダー】でなくとも可能。クローバーや【バレルロード】が例の一つだ。

では【ライダー】系の強みとは何か。


──【調教(テイム)】した魔物を自在に操る、魔物のマニュアル操作だ。

ジョージは今、"まりも壱号"とリンクしている。

ジョージの感覚が適応されるのなら、それはもう無茶な事ができる。

例えば──湖上の《クリアサーペント》の胴体を触手で掴みながら飛び渡る、とか。


「──そんなんアリ!?」


「じゃあねスカーレット。その辺の相手よろしく!」


宙を飛ぶ緑の毛玉。

荒ぶる《クリアサーペント》だが、その攻撃の矛先は近い何か──スカーレットとクローバーに向く。


「さぁ急ぐぞ。

 ……で、何でわざわざこんな勝負にしちゃったんだ? 適当にはぐらかせば良かったのに」


29階層のフロアボスを倒す作戦は、道中の魔物の討伐を諦める時点で諸刃の剣だ。しかも逆転できるようなポイントなのかは不明だしな。


「クローバーの興味を惹くためよ。こういう遊びにした方が良さそうって思ったの。まぁスカーレットが自力で辿り着くなんて思いもしなかったけど」


あー、確かに。

何でもかんでも行動原理が"楽しい""面白い"の男だ。その方がいいかもしれんな。

……ただ、不安点もあるが。




──◇──




湖面で早速大蛇に襲われてるけど、僕たち──"夜明けの月B"は見ているだけ。

一人残ったプリステラさんが隣にやってきた。


「【サテライトキャノン(でっかいの)】ぶっ刺したりしないの? うちの子達もろとも」


「それしようとしたら僕を潰すために声掛けたんですよね。やりませんよ。

 それにこれはゲームですから。水差したらクローバーさん嫌だと思うんです」


僕を狙うプリステラさん、を止めるように囲むゴーストさんとアイコさん。

……なんか、物騒なメンバーが残りましたね。アイコさんは天使ですが、筋肉で救済するタイプの天使なので。物騒は物騒。


「……やぁねぇ。冗談よ。ドロシーちゃんが冗談で済ませてくれたから。ごめんなさいね?」


「いえいえ、こちらこそ失礼しました。ゴーストちゃん。武器しまって大丈夫ですよ」


「──consent:失礼しました」


「いいえ、武器はそのままがよろしいかと。アホが来る頃ですわ」


瞬間。聞き覚えのある甲高い声。




「おーっほっほっほっゲホゴホッ! カッ!

 ……見つけましたわプリ公このやろう! 泣いて逃げ出しやがって可愛い事してくれるじゃないのオラァ!」




信号機トリオを引き連れて現れるは【マツバキングダム】の特攻隊長プリンセス・グレゴリウスさん。プリステラさんとは並々ならぬ因縁あり。

今回のイベントのため、上の第30階層(クリック)の【飢餓の爪傭兵団】傘下ギルドから戦力を補充したようで、つまりは格上。愉快な人だけど結構危険な状況だ。


「目ェ腐ってんじゃないのグレ子。あんたが勝手に迷子になって見失ったんでしょうが」


「じゃかぁしぃ! 今日こそはこの聖具"釘バット"でボコボコのボコですわ〜!」


「クソリーチのノーコンでどう戦うのかしら。わたしの聖具"ハジキ"の前には無力よ」


この人達見た目凄い美人なのに言葉と持ち物が物騒すぎる。

と、プリステラさんが耳打ち。


(もしわたしが皆殺しにしちゃったら、そのぶっといので後ろから撃ってね?)


……冷静だこの人。自主的にチームから抜けられないルールだから死んで抜けないといけない事をわかってる。

つまり、これは……仲良しコンビのじゃれ合いだ。プロレスじゃん。


「ゴーストさん。アイコさん。僕達はグレゴリウスさんの後ろの3人を相手しつつ、無理そうなら撤退。アイコさんは可能なら湖に投げ飛ばして下さい」


あまり付き合ってられないな。まぁ30階層まで二人でやってきてたって言うし、そりゃ仲良しか。




「臓物ぶち撒けやプリ公! おらぁぁぁぁ!」


「脳天ぶち抜いたらぁグレ子ォ! うらぁぁぁぁ!」




──◇──




【第24階層ケイヴ:静寂の廃墟】


ミドガルズオルムの気紛れな食事によって露出した古代技術の地下シェルター。

終ぞ使われる事は無かったようで、滅んだ無人の機械都市には警備兵と魔物しか住み着いていない。


「スカーレット達も馬鹿じゃないわ。クローバーもついてるし。さっさと抜けるわよ」


「そうはいかない。次の階層に行くには必要な鍵があるからな。この階層にいる《キーガーディアン》を片っ端から倒して探す必要がある」


「法則性とか無いのか?」


「無い。完全に運だな。まぁそのうち見つかるだろ」


……と、思っていたのだが。




──10体討伐。


「またハズレ? 一体倒すのも大変なんだけど!?」


「自己回復するし逃げるし受けた攻撃手段や属性に耐性付けるからな。速攻撃破も難しい」


「火力押しになるとライズ君に頼るしかなくなるのが痛い所だな。俺は連続攻撃が基本だから相性が悪い!」




──20体討伐。


「ちなみに確立は?」


「まぁ1割くらいだな。下振れ下振れ!」




──25体討伐。


「オラァ追いついたわよメアリー……?」


「遅いわよスカーレット!手ぇ貸しなさい!」


「あ、うん」




──40体討伐。


「……お。おーいみんなー。落ちたぞぉ」


流石の幸運か。クローバーが遂に、鍵を入手した。

転移ゲートが起動する。

泣き喜ぶメアリーとスカーレット。

……酷い下振れを見た。


「……じゃ、競争再開! "まりも壱号"!」


「あ、ずっこい! "じいや"追うのよ!」


すぐに切り替えられるのはメアリーのいいところだ。

さて、僅かなリードを秒で捨て去ってしまったわけだが。


「ちょい待ち。もう時間だ」


クローバーが引き留める。

時刻は20:00。《巌窟大掃除》2日目が終了したタイミングだ。


「せっかく合流したんだしよ、また明日からヨーイドンで行こうぜ。夜通しやり合ってちゃ疲れるだろ」


……あと2日、あと5階層。徒歩ならともかく、高性能移動手段"まりも壱号"があるなら充分間に合うが。

メアリーとスカーレットは顔を見合わせ、小さく一息。


「……そうね。競い合うのは明日から。そうしましょうスカーレット」


「異論ないわ。朝はご馳走になったし、夕餉はこちらで振る舞わせていただくわ」


なんだかんだ仲良しな二人。

……年が近い同性の友達は希少だろう。そればかりは俺じゃどうにもならない。このままライバルにでもなってくれればメアリーにとってはかなりいいんだが。



──◇──




「あ、そうだライズ。一つ礼を言っとかないといけない事があったんだわ」


紅茶を啜りながら"スメラギ"と戯れるクローバー。

地面から生えてくるスメラギの頭を撫でながらもう一度沈める。イルカショーみたいだ。


「礼? なんかしたか俺。初対面だよな?」


「いやな、うちのハートと遊んでくれたらしいじゃねぇの。その辺ちゃんと感謝しねぇとなって事でさ」


「ハート……? 名前からして【至高帝国】の一員か? 流石に接点無いぞ。誰のことだ?」


クローバーという名前、たった四人のメンバー。大方トランプ縛りなのだろう。が、ハートなる人は知らないな。


「──ん、あいつ名乗らなかったのか。でなきゃ忘れるわけねぇからな。

 そうだな……端的に言うと──頭隠して他隠さずの変態」


「サメゴリラか!」


──ウィード階層にて巻き込まれた"強制嵐夜バグ"。

本来は《拠点防衛戦》でしか出会えないレベル200のレイドボス《テンペストクロー》と交戦した時、突如現れた変態がいた。


──────

「素晴らしい! この戦力で尚、彼奴を倒さんとするその熱い心臓(ハート)!」


「オレ様こそは……名乗る程も無い一介の美食家! 本日はお忍びである!」

──────


頭装備だけの半裸の変態。片手斧二刀流の【オーガタンク】。美食家を名乗る蛮族。

あんな変態は一人しかいない。そうであってくれ。

まさかアイツが【至高帝国】の一員だったのか!?


「嬉々として語ってたよ。人様に迷惑かけんなって叱っといた。悪かったな」


「いや、迷惑はかけられてない。助けられた。マジで。

 だがそっかぁ……確かにアホ強かったが、アレが【至高帝国】の前衛かぁ……。

 ウワサのウォリアーは【聖騎士】だと思ってたんだが、マジに"三種の神器"揃えてないんだな」


【聖騎士】【サテライトガンナー】【キャッスルビルダー】という各分野において他の追随を許さない強みを持つ、攻略するならこれ持っとけ感のある3ジョブ──通称"三種の神器"。

ハートは【オーガタンク】だった。【聖騎士】と同じウォリアー系だが【ナイト】派生ではなく【バーサーカー】派生で役割は大きく異なる。なんとも歪なパーティだな【至高帝国】。


「【聖騎士】と【キャッスルビルダー】の役割を1人でやってる奴がいるからな。そいつのおかげで【サテライトガンナー】からの攻撃も怖くないし」


そんな化け物が更にいるのか。

流石は僅か4人のギルド。一人一人が怪物だ。


「ハートがベタ褒めしてたぞ。おかげで最前線じゃちょっとした有名人だぞライズ。既知の仲の連中もいるわけだしな」


……知名度無いうちはこっそり進めるというプランが、既に崩れていた。

くそぅ。完璧な計画がぁ。

あの半裸ゴリラ、今度会ったら……

……以前のお礼にご飯くらいは奢ってやるべきか。うん。


〜魔物生態調査記録:カロン〜

《ジョージの書き残し》


スカーレット君ら【バレルロード】の移動手段として飼っている魔物、船守の骸骨カロンについて。



木船に乗った骸骨の渡守……のようだが、本体は船の方のようだ。《トロッコゴースト》のように、船に取り憑いたゴースト系のモンスターだな。

敵対する悪性もいるが、階層によっては移動手段となる中立のものもいるそうだ。

人間部分は疑似餌とコミュニケーション手段を兼ねているのだろう。敵対時は人間相手でも魔物相手でも人型の疑似餌が有効で、中立時は人間とコミュニケーションを取るため人間に近い形が有効だ。

《トロッコゴースト》とは異なり、船に憑依してかなり長いようだ。そして、自由に離れる事ができないらしい。

霊体という事もあり、地上では浮遊する。エンジンの無い木造船にしては異様に速い。移動手段としてはかなり上等だろう。

食事は霊体よろしく船上の生命から精気を奪う事で補っている。ゲームとしてはMP吸収で表現されている。

かなり長期的な憑依の結果、半同化している。多少の傷は食事で回復するようだ。

また、疑似餌部分が人型なので騙されたが、別に人間の霊体では無く、その知能は獣レベルのようだ。魔物や人間との共生で生きている動物と扱うべきだろう。

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