表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BlueEarth 〜攻略=世界征服〜  作者: まとかな
地底都市ルガンダ/ケイヴ階層

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/507

60.最弱で最強

【第22階層ケイヴ:ドワーフ坑道】


前回のあらすじ:飛んで火にいる"最強"を捕獲した。


「いやー俺もどうやってポイント稼ごうかなーって悩んでたんだよ。【飢餓】の連中、またつまんねー事してくれるじゃん。

 ちょっと不貞腐れてたら見覚えのある【サテライトキャノン】が落ちてきたからさー。見に行ったらびっくり!

 そこのロリっ子がクアドラみたいでさー。興味湧いたからストーキングしてみた訳」


……あの段階から尾行されてたのか?

"まりも壱号"で爆走していたはずだが、どうやって追いついたんだ?


「あ、そうだ。紹介するぜ。俺の相棒だ」


クローバーがトロッコの底を足でノックすると──ぬるりと、黒染めの人魚?が生えてきた。顔は無い……が、銀河のような模様が()()されている。


「階層攻略にゃ移動手段は必須だろ?

 サブジョブが【ライダー】じゃなくても【調教(テイム)】済の魔物を相棒にするのは最前線じゃ常識なんだぜー。

 特に【至高帝国】は少数先鋭。移動目的だけでサブジョブを潰す訳にはいかなかったからな。戦闘行動指示はできないが、移動だけは協力してくれる。だから移動特化の子を選んだんだ。

 こいつは《ネビュラウィンドウ》って名前の魔物で、レイドボスの幼体だ。ここでいうケイヴワームみたいなポジションだな」


「レイドボス……第50〜59階層(オーシャン)の《コスモスゲート》か。だがあそこで幼体なんて見た事ないぞ。生態不明だし」


「そりゃあこいつは最前線で確保した、【井戸端報道】未発表の機密事項だからな。ちなみに【真紅道(レッドロード)】も【飢餓の爪傭兵団】も、この相棒の存在は知らない。

 名前は"スメラギ"」


「ぶっふぉ」


ドロシーと一緒に咳き込んでしまう。

いやとんでもない機密情報を平然とペラペラ喋ってくれちゃう事も大事件なのだが。


(なに、どうしたのドロシー)

("スメラギ"というのは、アシュラ(クローバー)が名を馳せたゲーム"オクブロ"シリーズの……ヒロインみたいな人気キャラの名前です。無意識で名付けてるとしたら、凄いと思います)


……現実の知識を持ってる弊害だな。不審がられないように話を進めよう。


「そ、そうか。初めまして"スメラギ"さん」


「ちょい待ち。《ネビュラウィンドウ》は異界遊泳能力があるが、発動条件は"手を繋ぐ"事だ。握手なんてしたら"スメラギ"の散歩に付き合わされるぞ」


「あぶねぇ!」


人型で敵対生物じゃないからって無警戒に握手しようとしてた。凄い危ない習性してんな。

──オーシャン階層のレイドボス《コスモスゲート》は階層ごとワープする超大型魔物。幼体というなら近しい性質を持って然るべき、ということか。


「地面に潜って泳ぐように移動するんだよ。空中以外はどこでも障害物の影響受けずに移動できる。このトロッコみたいに一個体の高速移動には追いつけないからこっそり乗車させてもらってたけど、ずっとそこの幼女が俺の真上に立ってて出られなかったんだよ。

 まりも君の荷台の時から今までずっとな! とんでもないなこの幼女!」


「不審だったのでね。グレゴリウス君が飛び降りた際に離れたが、その隙を突かれたか」


最初から気付いていたのかジョージ。

"最強の人類"と"最強のゲーマー"が並んでるわけだ。すごい男心をくすぐられるな。


「……で、だ。あんだけ啖呵切っておいてほぼ討伐ナシってのは気になる。何か策があるんだろ?」


……諸々、ドロシーを拾ってからここまで色んな話をした。どこまで聞き取れて、理解されているかはわからないが。

まぁクローバーにならバラしても問題ない、か?


「そうよ。あたし達の目的は──」


メアリーの口から語られる、今回の作戦。

クローバーは──出てきてからずっとそうだが──ただ楽しそうに、それを聞いていた。




──◇──




──20:00


『1日目終了ですな! ここより明日の8時まで、魔物討伐によるポイントは加算されませんのでご注意を!』


族長の声。ケイヴ階層の全土に放送が流れているのだろう。


『冒険者同時の戦闘も止めておきなよー。同期間中はちゃんと"PKペナルティ"が適応されるからね。勿論PKした奴は失格退場だからね』


『では早速ランキングの発表ですが、サティスさん。注目しているチームはありますか?』


『やはり本命は問題児クローバーですね。しかしチーム戦ですから。ソロとチームでは4倍差です。さしものあやつも4人がかりなら負けるでしょう』


『なるほど。ありがとうございます。

 ランキングを発表するのは上位3チームのみです。自チームのポイントについては個人メールにて配信されますので、そちらを確認なさいますようお願いします』


22階層の奥地にて、全員で一旦休憩する。

クローバーも面白半分で一時的に同行する事となったので、共に夕食がてら放送を確認する事にした。


『第3位は──チーム"バレルロード"、討伐ポイント452点! いや素晴らしい数値です』


『こちらの観則記録によると、ほとんど移動しながらの討伐ですね。第21階層に陣取って有利もぎ取ってたはずの【飢餓の爪傭兵団】には何らかのお仕置きを考えておいてください』


『深く心に刻みます』


OBと強面上司からのパワハラ全体放送やめたれ。

そしてゲラゲラ笑ってるクローバー。原因あんただろ。


『気を取り直しまして、第2位──チーム"穿孔"討伐ポイント562点! こちらは我らが【金の斧】の一団ですね。21階層に張り続けたチームです』


『流石ナメローさんの部下。【マツバキングダム】とのレベル差をものともしていない。流石に慣れがものを言った感じですかね』


「あっはは。さすがだなぁ【飢餓の爪傭兵団】」


「俺からすれば追われる側のスカーレット達がよくランクインしたって感じだよ。すげーなあいつら」


「そうか? じゃあ一位は誰だと思うんだライズ」


「他の【金の斧】か【マツバキングダム】だろ。他の冒険者に威嚇したりしてるかもだが、丸一日敵が弱い階層陣取ってんだから。慣れてる方か、レベルの高い方か、だ」


「ほーん?」


「なんだその顔は」


「べっつにぃー?」


なんというか、愉快な奴だなクローバー。

話をする事そのものを楽しんでないか?


『では本日の第1位は! ……えぇ〜……』


『どうしましたナメローさん』


『んん〜まぁ結果は間違いないですね。発表します。

 改めまして、第1位は──無所属、クローバー!

 獲得ポイントは1021点!』


……はい?

千点? 一人で?

()()()()()()()()()()()()


「あっはっは。どうよライズ。俺凄いだろ?」


「いやどうやってだよ。チーム組んで無いってことは、チーム換算で4000点くらい稼いでるって事だろ」


「そうよそうよ。コツを教えなさい」


「いいだろ別にー。おまえらの作戦通りにいけば勝ち確なんだから」


「知りたいもんは知りたいわよ。ゴースト班は普通にポイント稼がないといけないんだから」


「そうだなぁ。でも拍子抜けな答えだぜ。単純明快だ。実践するか?

 ──"スメラギ"!」


影から現れた宙海の人魚は、クローバーの意図を読み取り影に潜り──また浮上した。その手に魔物を引き連れて。


背中にエンジンを搭載した機械イモリ《ブースターオオイモリ》と、巨大コウモリ《ケイヴバット》。突然の転移に驚いているが、クローバーを認識すると攻撃体勢に移行。

それに反してクローバーは依然としてリラックス。

魔物の攻撃が飛んでくると同時に──


極光の壁が魔物を襲った。


「なっ──」


クローバーの手には──三ツ首の片手銃2つ。噂通りの二丁拳銃だ。


魔物は一瞬で絶命。いつ銃を抜いたかなんて、ジョージとアイコにしか見えなかっただろ。俺は絶対抜くと思って注視してたのに見えなかった。


「とまぁこんな感じで、"スメラギ"を使ったり使わなかったりして魔物を寄せたり近くに行ったりして、フツーに倒しただけだ」


「いやあの光の壁はなんなのよ。銃の攻撃じゃないでしょ」


「銃の攻撃だ。間違いない。

 だが……まぁ……まさか"最強"がそんなやり方すんのか!?

 それで"最強"になれんのか【Blueearth】!?」


「流石ジョブマニアと名高いライズ! 見抜かれちまった。ジョブもわかるよな?」


理解はできた。だがわからん。なんでそんな事考えた?


「ライズ、説明してよー」


「ああ。クローバーのジョブは【ガンスリンガー】だと思ってたが、違った。これはレンジャー系の隠しジョブの一つ──【ラピッドシューター】。高速射撃に特化したジョブだ」


俺が発見したジョブの一つでもある。が、この発見は大した事じゃなかった。だって──


「【ラピッドシューター】は【Blueearth】屈指の()()()()()()だ。ただ撃つのが速いだけ。マジで【ガンスリンガー】より強い所がそこしかないんだ」


現実なら"超速度で発砲できる"とか恐ろしいが、それは銃が一撃必殺、でなくとも当たれば絶大な効果を発揮できるからだ。

【Blueearth】では現実のそれとは大きく異なる。たかが銃弾一発当たったところで大したダメージではない。むしろ片手銃のダメージは、当てやすく、槍より距離を取って攻撃できるという優位性を考慮して低く設定されている。

だから【Blueearth】では、早撃ちできるからなんだよ、という話なのだ。

それに何より致命的な問題がある。ハズレジョブどころか第3職()()とまで呼ばれる所以。


「【ラピッドシューター】は通常の2倍攻撃できる。2丁拳銃なら普通の片手銃の4倍だな」


「凄いじゃない」


「だが一発あたりの威力が3分の1になる」


「……2倍攻撃して3分の2って、弱体化してるじゃない」


「だから最弱のハズレジョブなんだよ。いや凄いな。それで"最強"名乗れるのかアンタは」


どうやって、という部分は理解できた。発想には驚かされたが。


「──光の壁に見えたのは、全て"クリティカル演出"だ」


普通にやるより多くのダメージを与える手段。

弱点属性を突く、構造上の急所を突く……そして、低確率で発生するクリティカルヒットを出す。


「その武器は……俺は見た事ないが、【双頭の狂犬(オルトロス)】の三つ首版って事は3回ヒットする銃なんだろ。【ラピッドシューター】の2倍撃ちと合わせて12倍射撃をして、クリティカル確立を爆増させてるのか!

 当然簡単な話じゃない。クリティカル率が高すぎる。レベルアップボーナス全て"幸運"に振って、装備もアクセサリーも全部幸運上昇の奴なのか?

 正気か?」


自分で言ってて自信が無くなってきた。

クリティカルの恩恵はデカい。防御状態やバフデバフを無視するし、威力は2倍で計算される。だが所詮ラッキーヒット。それを戦術にする奴なんて聞いた事無い。


「ちょっとだけハズレだ。アビリティ《陽炎のガンマン》でヒット数が各自1発ずつ増えてて、スキル【乱撃錯乱】で更に3倍にしてるから72倍撃ちだ。そこにクリティカル関係のアビリティ《ジャックポット》《ダブルアップ》が重なって、一秒いらないくらいで確定クリティカルを実現してるって訳だ」


馬鹿か?


だが、俺はアシュラ(クローバー)を知っている。

こいつは現実で、運ゲーにしかならない【ハッピーラックモンスター】で世界最強を獲得している。

その時も、確か──


──────

「運でダメージが左右されるったってハズレがあるわけじゃないんだから別にいいんだよ。

 格ゲーの極論は"当たらず当てれば勝てる"なんだから、結局は倒れるまで攻撃を当て続けるしかない。そこに運なんて絡まないんだよな」

──────


こいつは、徹底してリアリストだ。

確立は試行回数でぶっ倒すタイプの、ゴリゴリ理系の理論家。そういう化け物だ。


「てなわけで、3分の1のダメージ軽減を考慮しても24人力だ。たった4人で俺には勝てないってもんだ」


数の暴力。

だが多数派はチームを組んでいる方ではなく、クローバーの方という事か。


「──流石に弾幕は避けきれないな、俺でも。

 ライズ君。多分俺は彼に勝てない。少なくともこの世界ではね」


ジョージ(最強の人類)からの降伏宣言。

これはもう本当に、誰もが疑うことの無いほどに。




「──"最強"じゃねぇか」



〜ナメロー友好伝説〜

《執筆:【井戸端報道】記者T》


本日ご紹介するのは【第20階層 地底都市】ルガンダと冒険者の友好関係のお話です。

かつてルガンダ……というよりケイヴ階層は、冒険者も寄りつかない地でした。

全体的に薄暗くじめじめしてて、原住民のドワーフは気難しく無口。気持ち悪いケイヴワームはわんさかいるし、レイドボスであるミドガルズオルムは序盤の階層でも当たり前に顔を出す危険地帯。

そこにメスを入れたのが、現【金の斧】ギルドマスターであるナメローさんです。

彼はまずドワーフとコミュニケーションを取るために、彼らの好きな鍛治を経験すべく鍛治ギルド【架け橋】を設立。

鍛治の技術をドワーフから教わる過程で仲良くなり、この階層の秘密──ケイヴワームとミドガルズオルムの関係性を知ったのです。

冒険者がそれを知らずにケイヴワームを討伐している事が、ミドガルズオルムの暴走の原因であるとナメローさんは推測。その凄みで……いや、真摯な態度でのお願いで冒険者達を統制し、ミドガルズオルムを29階層まで押し戻す事に成功したのです。

それからはドワーフと冒険者の仲も良好になり、ナメローさんはルガンダ内で地位を確立。悪い人がドワーフを騙さないよう、商業を取り仕切るようになります。

その後【飢餓の爪傭兵団】の傘下になる事で強力な後ろ盾を確保。その際にギルド【金の斧】を立ち上げ、現在はそちらで全商業を取り仕切っています。

ミドガルズオルムの抑制及び《拠点防衛戦》の抑制はアドレ王家からも表彰されており、いまやルガンダになくてはならない存在となっています。

……ですから、ちゃんと正攻法で凄い人なので。闇稼業の人ではありませんから。皆さん勘違いなさりませんよう。あれでいて結構傷付くそうですので。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ